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ナチス!オカルト!魔女!虫!“B級趣味”が好きなら間違いなくグッとくるゲーム『Nine Witches: 家族騒動』をオススメしたい

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 ナチス、オカルト、魔女、虫、トイレ、奇天烈な人間、メタフィクション、宇宙人、地球温暖化、睾丸が3つあるサーモン……
 こうした単語にピンと来る方は、このゲームをきっと気に入るはずだ。

 オーストラリアのデベロッパー・Blowfishによるオカルトアドベンチャーゲーム『Nine Witches: 家族騒動』は、ナチスやオカルトなどのいわゆる“B級趣味”な要素がふんだんに盛り込まれた作品だ。

 美麗なピクセルアートが印象的でありながら、ストーリーではその美しさとは正反対に、シニカルでブラックなユーモアがこれでもかと詰め込まれている。
 また、ポイント&クリック型という最近のアドベンチャーゲームとしては比較的硬派な作りでありながら、さまざまなギミックも随所に散りばめられており、予想もつかないハチャメチャな展開が繰り返される。

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 ゲームボリュームもほどよく、5時間程度でさくっと楽しむことができる。冒頭に挙げた単語たちに嫌悪感がなければ、ぜひ触ってみてほしい作品だ。

文/tnhr
編集/実存


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ナチスドイツのオカルト計画を阻止せよ

 ゲームの舞台は1944年のノルウェーに位置するサンデーという村。頭上では禍々しい雰囲気を放つダーク・ムーンが輝き続け、住民は奇怪な現象に悩まされている。

 1944年といえば、第二次世界大戦の真っただなか。ナチスドイツ軍によって構成される秘密部隊である「オカルト-55」は、ある計画のためにサンデー村を侵略。戦争のためならどんな手でも使おうとするナチスドイツは、魔女の呪いを解き放つために極秘に動いていた。

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 そんなナチスの計画を阻止し世界の平和を守るために、オカルト科学の申し子アレクセイ・クラコヴィッツ博士と助手のアキロウ・カガサワが立ち上がる。オカルト-55の謎を解明するために、サンデー村に潜入することとなった。

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左:アレクセイ・クラコヴィッツ博士 右:アキロウ・カガサワ

 プレイしてみればすぐにわかるが、このゲームに登場するキャラはどいつもこいつもとにかく様子がおかしい。不気味に笑い続けるのは序の口で、ところかまわず排泄を行うキャラまでいる。ひたすらに奇妙極まりないが、こうした描写が間違いなくこの作品のゆがんだ魅力を引き立たせている。

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客層をピンポイントに絞ったコアなギャグ要素

 プレイヤーはナチスの陰謀を止めるべく、サンデーの謎を解き明かしていくのだが、道中には多種多様なブラックユーモアがてんこ盛りだ。しかも、まったく“ぬるさ”がない。右翼も左翼もナチスもユダヤ人も神も悪魔も平等にいじくるストロングスタイルを貫いている。

 たとえば、酒場の片隅にはナチが設置した焚書マシンが置かれているのだが、これは「反ファシズムの本」を入れなければ動かない。ちなみに、その本を入れるとコインが大量に吐き出され、そのお金を攻略に利用することができる。なんて気前のいい。

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 もちろんゲームならではのメタフィクションネタも満載だ。人によっては好みが分かれるかもしれないが、本作に限っては「ゲームの没入感が失われる」ような懸念はほぼないといってよいだろう。メタネタも気軽にぶちこんでくるその軽さもまた魅力のひとつになっている。

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 登場するキャラはどれもインパクトが強い。誰が何を喋ってもプレイヤーを笑わせてこようとするため、会話のテンポの良さは折り紙付きだ。

意外にも硬派な探索パートと、幽体離脱を使ったアクロバティックな散策

 プレイヤーはアレクセイ博士と助手のアキロウのふたりを操作していくことになるのだが、役割は明確に分かれている。

 助手のアキロウは一般的なアドベンチャーゲームらしく、ものを拾ったりギミックを解いたり、体を使った作業を中心に探索を行うことになる。アキロウの記したメモを参考にしながら、サンデーの住人やドイツ兵に話を聞きつつゲームを進めていこう。

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 面白いのは、基本的には「総当たりでオブジェクトを調べていく」という、いまどきのアドベンチャーゲームとは思えない古風な作り方になっていることだ。また、マップに出てくる住人やドイツ兵などのNPCはだいたい適当なことしか喋らないのだが、その内容を聞き逃してはいけない。
 適当なセリフに見えながらも、そのなかに謎解きのヒントが隠されているというパターンがしばしばあるからだ。そのため、往年のゲームらしくしっかりと街の住人に話しかけて情報を集める必要がある。

 という具合に、ゲームとしてはなかなか硬派でクラシカルな作りなのだが、それが本作に流れるB級感をいっそう加速させる味わいとなっている。

 体を使った探索を行うアキロウに対して、全身麻痺のため車いすに乗っているアレクセイ博士は、なにかを手に取ったり道具を使ったりすることができない。

 その代わりに、渾身のオカルト技法である「幽体離脱」を使うことができる。幽体離脱すると死者とコミュニケーションを取ったり、鍵の閉まったドアをすり抜けたりすることができる。
 調べることのできるオブジェクトには青みがかったオーラが表示されるため、次に解くべき謎の結果を具体的にイメージしながら、謎ときに取り掛かろう。

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 博士とアキロウのふたりは、ことあるごとに『サウスパーク』並にキツいジョークを飛ばしあうので、初見ではびっくりするかもしれない。しかしゲームを進めていけば、なんだかんだでホームズとワトソンのような固い信頼で結ばれた関係性であることがわかってくる。妙なところで丁寧なキャラ描写も本作の魅力のひとつだ。

急にアクションゲームになる上にそこそこ難しい。死んだらサタンと協力してナチを蹴散らそう

 先ほど硬派なアドベンチャーゲームだと述べたが、もちろん本作は最後までそのまま大人しくしているわけがない。ナチス兵との銃撃戦が始まったと思ったら、急にアクションゲームになるのだ。しかも、そこそこ難しい。

 横方向にしか銃弾の飛ばない大味な銃撃戦ではあるのだが、いままで総当りクリックしかしていなかったゲーム筋にはつらいアクションだ。

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 さらに、銃撃戦で死亡してしまうとゲームオーバー……ではなく、地獄に堕ちてサタンとご対面。サタンと契約を結ぶと、一緒に銃撃戦に参加してくれるようになり、ナチス軍に雷を落としてくれる。難しければさっさと死んで、サタンと協力してナチを打ちのめそう。

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 ナチス、魔女、宇宙人、ゾンビときて、流石にもう次はないだろう……と思っていたらサタンが登場する。つねにプレイヤーの想像の斜め上をゆくこの荒唐無稽さが本作の最大の魅力だろう。


 『Nine Witches: 家族騒動』の魅力はそのあまりにダークでシニカルなストーリーだが、翻訳の完成度は非常に高い。日本語でも問題なく楽しむことができるだろう。

 ポイント&クリック型の硬派なアドベンチャーゲームではあるものの、ふたりのキャラクターの使い分けやさまざまな謎解きギミックが心地よいテンポ感を生み出しており、クリアまで足を止めることなくプレイすることができる。

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 むしろ令和のいま、こんなにクラシカルなアドベンチャーゲームを遊べる機会はほとんどないだろうし、その意味でもプレイしてみる価値はあるだろう。徹頭徹尾ブラックユーモアに溢れ、縦横無尽に展開していく奇妙で奇天烈な世界を一度覗いてみてはいかがだろうか。

ライター
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『プリパラ』、『妖怪ウォッチ』ありがとう。黙々とゲームに没頭する日々。こっそりと同人ゲーム、同人誌を作っています。
Twitter:@zombie_haruchan
編集
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ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

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