人生には予想外の出来事ってのがつきものだ。例えば……YouTubeとかSpotifyでサジェストされてきたものを開いたらすごくツボにハマったとか、なんとなく目について入ったメシ屋がすげえ美味しいとか……メメクラゲに左腕を噛まれるとかはじめて手に入れたSレアアイドルの池袋晶葉ちゃんを育ててみたらものすごく愛らしくて沼にハマるとか……そういうことってあるよな。
ゲームとの出会いもけっこうそういうことあってさ、ジャケ買いしたりとか安売りだったから程度で買ったゲームが予想外におもしろくてドハマりしちゃうとなんかうれしかったりするよね。
私が去年、そういう形で夢中になったゲームが今回紹介する『ガスステーションシミュレーター』だ。
めちゃめちゃ忙しいガソリンスタンド営業を体験できる!
『ガスステーションシミュレーター』はDRAGO entertainmentが2021年9月にリリースしたゲーム。名前からだいたい想像できるとおり、ガスステーション……日本でいうガソリンスタンドだね。の、経営をまるで本当にお仕事してるみたいに体験できるシミュレーターです。
ジャンルとしては以前タイアップ記事を書いた『ファーミングシミュレーター22』と同じ棚に入れちゃってもいいかもしんないね。ゲーム性は当然ぜんぜん違いますが……みんなも知っての通り農業とガソリンスタンド経営はまったく違うお仕事だからな。
これがねえ、どうせ一発ネタのシュールなバカ系シミュレーターなんじゃないですか? とナメながら起動してみたらもう、たまらない体験となったね。
このゲーム、マジで意外すぎるほど中毒性が高ぇ。やめ時が見つからないんだよ……。みんなも騙されたと思って遊んでみて欲しいぜ。安いし。
ゲームはオンボロのガソリンスタンドを購入するところから始まる。導入部の目的はこのオンボロ物件を整えること……つまり、失われた電源を入れ直したり、廃墟同然になっているスタンドを片付け、キレイにしたりする必要がある。なにせこのゲームは「ガスステーション」の経営「シミュレーター」だからな。
買ったらピッカピカの物件がいきなり手に入って2秒で商売を始められるなんてテレビゲームみたいなことはありえないってわけだ。言うなれば本作はもうひとつの現実……。次元……。メタバースと言うこともできるだろう。
準備が整ったらいよいよ経営開始。ガソリンスタンドでの商売は複数あり、ゲームが進行するごとに段々解禁されていくが以下の4つ。
例えばコンビニ業務は日本ではあまり馴染みのないベルトコンベアー式のレジを使い、商品を落とさないようにスキャンしていくミニゲーム。商品の挙動には物理演算が用いられており、変なぶつけ方・入れ方をしちゃうと吹っ飛んで失敗扱いになってしまい客が怒る。だから慎重にスキャンしなければならない。
逆にノーミスでの精算を連続で成功させれば「スキャンコンボ」が繋がり、客からもらえるチップが増える。かといって失敗を恐れてトロトロ商品をスキャンしていると行列がどんどんできてしまう。そのため素早いレジ作業も求められる。
さらにさらにレジ打ちをしているとだんだんコンベアーが汚れてきて引っかかってくるので、都度都度スポンジでの掃除も行わなければならない……とマルチシンクを求められる。
いやホントにこの操作のしっちゃかめっちゃかっぷりがね! めちゃめちゃ忙しいの! 操作めちゃめちゃ忙しいの! ほとんどリズムゲームに近いッスわマジで。
この操作めちゃめちゃ忙しい感覚が仕事めちゃめちゃ忙しい! という感情に見事に変化していくのがこのゲームの偉いところだぜ。
んでね~。この忙しさにレジスキャンのピピッピピッという音とかお金のジャリジャリ音が組み合わさってね……ず~っとやってるとだんだん「ゾーン」に入っていくんだよな。
コンビニでバイトしたことがある人類ならわかると思うんだけど朝のさあ、通勤時間帯のクソ忙しいときとかさ、レジ打ちに集中しすぎて入ることあるんだよな「ゾーン」に。入門できるのはスポーツ選手だけだと思ってたかい? 接客業ナメんなよ。
そんなところまで体感できてしまうこのゲーム、マジですごいと思います。
あとお仕事では車の整備も大好き。とくにボルトをひとつひとつ外して取り付けし直すタイヤ交換がものすごく……「何が?」って言われると返答に困るんだが、楽しい。ボルトのギチギチ音がたまらないんだよなあ。
あと車の整備はほかの業務に比べてもらえるお金が多いから「稼いだな~!」って気分になりやすいのも楽しいポイントかな。後述するけどこのゲームではバイトも雇える。雇えるんだけど私は車の整備こそ我社の屋台骨と考えているので整備だけはバイトに任せられない社長……というロールプレイでやっとる。マジで楽しいぜ。
そうそう、あとアメリカが舞台ってことでトイレも有料だったりするのでこれも地味な収入源になる。とはいえこいつに関してはプレイヤーが能動的にしなきゃいけないことは掃除だけで、オマケみたいなもんだけどね。
商売のセンスは仕入れに現れる
だが当然ガソリンスタンド経営は楽しいことばかりじゃねえ。常にどうすれば利益を最大化できるかを考え……工夫して利益率を上げ、客単価を上げ、プロモーションしていかなければならねえ。
つまりなにをしなきゃあいけねえかって言うと仕入れだ。このゲームでもっとも難しいのがこの要素だ。コンビニで売ってる商品は意外とすぐに品切れしてしまう。
さらにその品目もスナック菓子にジュース、酒、本・新聞、車の掃除用具、タバコ、メガネ、帽子、テディベア……など「こんなにいろいろ売る?????????」とビビってしまうほど多彩。当然単価が高めのものを売りたくなるが、客の大半は飲み物やスナック菓子を求めにくるためそれらを蔑ろにはできない。
でも品揃えが悪いと客が不満を口にして評価が下がるのでそれも困っちゃう。どの商品をどれだけ備蓄しておくかは本作を遊ぶにあたって……そしておそらく、現実にガソリンスタンドを経営していくにあたってももっとも頭を悩ませるところだろうな。
しかも倉庫にはなかなか厳しい備蓄制限があり(レベルアップで増築することで上限を上げることは可能)、アレもコレもと買っておこうとすると案外すぐにパンパンになってしまう。仕入れはけっこうこまめに……というかほぼ毎日卸業者に連絡するハメになる。
さらにさらにさらに本作のコンビニ販売商品・整備用パーツには価格の変動という要素もあり、これも無視するわけにはいかない。売値は決まっているので当然、安いときにたくさん仕入れれば利益は広がるんだよな。
しかし当然お金にも倉庫の容量にも限界があるので無限には買えないし、必要なときに枯渇してるのも困るのでそうも言ってられん。
とくに整備用パーツは必要なものが無いと作業を中断せざるを得ない。すると当然客にブチ切れられてしまうので常に余裕を持って確保しておかないといざというときに泣きを見ることになる。なので泣く泣く利益がほとんど無い値段で仕入れたりしなきゃあならん。ううっ。商売って大変だぜ。
そして仕入れ作業もただ注文すりゃあいいというわけではなくて「荷受け」をしなきゃあならねえ。やってきた業者のトラックに応じて倉庫のシャッターを開け、荷台のドアを開けて荷物を下ろして棚にしまい、トラックを見送って倉庫のシャッターを閉める……という一連の作業だ。
バイトを雇うことでレジ打ちや給油、掃除などはやらせることができるのだが、なぜかこの荷受け作業だけは自分で絶対にやらなきゃあならないので絶妙に面倒で大変だ。
っていうかお前が下ろせよお前が!!! シャッター開けるのは自分でやるからさ! 荷物下ろすのはやってくれよ! なにボーッと見てんだ指示待ち人間めが。なんで私が自分で下ろさなきゃあならないんだ?
こうした作業は閉店中にやれりゃあベストなんだが実際はそうも行かず、めちゃめちゃ忙しいときにうっかり商品が足りなくなりそうなことに気づいて慌てて発注、レジに大量の客を並ばせたまま荷受けに行くなんてことが頻発するのでマジで頭のリソースを使い切ってしまいます。忙しいんだって!
砂漠唯一の憩いなガソリンスタンドにはトラブルがいっぱい
お店は砂漠のど真ん中にあるので客が出入りするとどんどん砂埃が貯まる。なので頻繁にブラシがけして掃除もしなきゃあならねえ。不潔なお店には客が寄り付いてくれないからな……。
あとお店にはゴミ箱が据え付けられてるんだけどこれもバンバン客がゴミを捨てていくので定期的に片付けないとすさまじい腐臭を放ち始めるので1日に何回もゴミ袋に詰め替えてゴミ捨て場に持って帰って……という作業が必要になってくる。
しかもゴミ箱があるのにも関わらず客どもはガンガン床にゴミを捨てていきやがる。なんなの? こういうのあっちでは普通なんですか? ここの治安が悪いだけ? なのでお金稼ぎ作業や商品補充の傍ら頻繁な掃除も要求される。
ランダムで発生するお邪魔キャラも存在。どこからともなく徒歩で現れる悪ガキがそれだ。砂漠の真ん中にある店なのにこいつどこからやってくるんだ???
こいつは癇に障る笑い声とともに現れ、忙しいってのに壁に落書きをしていきやがる。お前……このやろう! バカ!
ちなみに落書きされる前に適当なゴミとかをぶつければ撃退することができます。
ここがゲームの明確な不満点で……正直なところゴミをぶつけるなんて生ぬるいことをやらずに私はこのガキにショットガンをぶっ放したくてならねえんだよな。なんで? これはアメリカのガソリンスタンドのゲームだろ? だったらナメた客が現れたらレジカウンターの下からショットガンが出せたりしないと……おかしいぜ!
どうするんだ? ゴロツキが強盗に来る可能性もあるし……。銃、銃がほしかったな。偏屈な店の親父になって客にショットガンをつきつけたかったよ。
落書きは上からペイントして消さなければならない。このペイント作業もタイミングよくマウスをクリックするミニゲームとなっていて、失敗すると地面に塗料が飛んで汚れてしまうのでなかなか神経を使わされるぜ。
ちなみにペイント機能を使ってお店のカラーリングを好きにカスタマイズすることも可能なので自分なりにオシャレなお店を作っていくのも楽しいぜ。塗装は時間の経過とともにどんどん汚れてくるので、これまた定期的にペイントし直さなければならないのが手間だが……。大きくなるとともに小洒落ていく自分の店を眺めるのは気分がいいもんだ。
そのほか、敷地内に車をスタックさせる砂山を残していく砂嵐や、EDMをガンガンにかけながら大量の旅行客を運んでくる観光バスといったイベントも発生するのでこうした日常を彩るさまざまなトラブルに対処しながら金を稼ぎ、店をデカくしていく。
バイトを雇え! 経済圏を作れ!
と、まあ散々書いてきたがとにかくこのゲームは無限にやることがあり、死ぬほど忙しい。休むヒマがないっていうか業務内容が増えていけば増えていくほどワンオペでは回らなくなっていく。なのでバイトを雇う必要が出てくる。
バイトくんたちはなぜか通うという概念が無く、専用のトレーラーハウスとその敷地を与え、住み込みで働かせることしかできない。
まあ呼べばすぐ来てくれるからその点では便利なんだけどせっかくの休憩中もとくになにもすることなくボケーッとして過ごしているその姿には若干の悲哀を覚えないこともないぜ。
これまでも何度か書いてきたように彼らにはレジ打ちや給油を任せることができる。当然給料を払う必要はあるが、そこまでべらぼうに高い金を要求されるわけじゃないし、むしろガンガン使ってガンガン経済を回したほうが効率的に稼げるので基本的に雇わないという選択肢は無い。
やらせればやらせるほど業務のスキルも上がっていくよ。ただし、給油やレジ打ちのコンボによるチップは発生しないのでその点は注意が必要。1ドルでも多く稼ぎたい場合はそのへんの業務を自分でやる必要があるぜ。
こうやって給油やレジ打ちをバイトに任せ、ガレージでぼんやり整備の客を待ってると豊かな気分になれて楽しいぜ~っ。
今日もドアやタイヤをボコボコにした客が訪れる……。お前、またダメにしやがったのか。車はもっと大事に乗ってやんな……と軽い説教を聞く気があるんだか無いんだか、曖昧な笑いを返す兄ちゃんに垂らしながらコキコキタイヤを交換する……。うーん。これよ。この理想の生活感よ。なんか『湾岸ミッドナイト』みたいでイイ。カスタムはしてねえけど。
だが基本優秀なバイト機能にもなぜか欠点があって……。掃除が異常にヘタなんだよ! なんでだろ。任せるといつまで経っても掃き掃除が終わんないんだよね。なんで?
そのクセゴミは的確に捨てるので、私がわざと捨てずに店内にコレクションしてた生魚とかを勝手にゴミ袋に捨てやがる! ちょっと! なんでそんなことするの!
もう……もういい!
私がやったほうが速いわい!
どけい! 私がやったほうが速いんじゃい!!!
……と、「部下に教えるより自分でやったほうが速いわと思ってしまうダメな上司」のロールプレイまでできるすごいゲームです。いやマジでこうなるんだよ。ホントなんだって。
ゲームはせわしないほうが楽しい
と、まあこんな感じで非常に忙しく、楽しいゲームです。
やっていってると本当に目が回るほど忙しくて「これ……もうゲームじゃなくて仕事じゃん!」ってなっていきます。でもさ、結局ゲームのおもしろいところってさ、自分が操作したことに対して画面が反応を示すことじゃない。で、その頻度が高ければ高いほどなんか楽しいもんじゃない?
そういった意味ではこのゲームってマジでずっと忙しいので本当にずっと楽しいんだよね。やめどきが無い。なのでアメリカのガソリンスタンド文化に親しみつつ、ゲームの根源に触れることもでき、なおかつ中毒性も高いすごいゲームになっております。頼む! 騙されたと思ってやってみてくれ。冗談みたいな佇まいではあるけど本当におもしろいよ。
あと客の車にロックピックで強盗しかけたりとかわざと渋滞させて強盗しまくったりとかUFOにキャトらせるとかワニにゴミを食わせるとかいろんな要素が盛りだくさんで楽しいのでオススメです。やろう! ガスステーションシミュレーター!
おまけ
おわり