外付けモニターは、徐々に「一般的なガジェット」になっている。
今までは「外付けモニター」といえば「ITのプロフェッショナルの持ち物」というイメージだったが、やはりテレワークの普遍化の影響か、ごく普通の会社員でも外付けモニターを持つ人が増えているように思う。これは間違いなく「文明の進歩」だ。
そしてこの外付けモニターはゲームをプレイする上でもその機能を発揮してくれる。数ある外付けモニターの中でも、今回は「PSILANDEX」という製品を紹介したい。
なぜなら「PSILANDEX」は、32:9という極端な横長モニターでありながら、この手の製品にしては珍しくタッチパネルに対応しているからである。しかも4K高画質。
最近では、32:9という比率のモニターが数多く開発されるようになった。
今回紹介する32:9モニター「PSILANDEX」には、いくつか大きな利点がある。まずひとつは、持ち運びが便利な設計になっているため製品自体をまとめられること。無駄な高さがない分、バッグに「ストン」と落とし込むことができる。
もうひとつは、「横長」ということは同時に「縦長」でもあるということだ。これはTwitterやFacebookなど、SNSのタイムライン表示に適している。
そしてその上で、「PSILANDEX」にはタッチパネル機能が搭載されている。
これはTwitterのタイムラインを上から下へ流すのにも便利だし、Googleドキュメントで物書きをする際にも使える。いちいちマウスを動かす必要がない、というわけだ。しかしこの「PSILANDEX」の本領は、ゲームでこそ発揮されるのではないか?
というわけで、さっそくSteam配信のゲームで「PSILANDEX」のパフォーマンスを試してみる。
しかし、ここで問題が発生してしまう。Steamで配信されているゲームすべてが、「タッチパネルを導入することで操作性が向上するタイトル」とは限らないのだ。
筆者が当初「このタイトルなら「PSILANDEX」とピッタリなのでは?」と見込んでいたものはことごとく期待外れで、その後いろいろと試行錯誤した結果、ようやく「これは!?」というタイトルに出くわした。
それが、1930年代のヨーロッパの選挙を題材にした『Evil Democracy: 1932』である。この持ち運びできるほどの小さなワイドモニターで、国を動かす大きな野望を叶えたい。
そこで本稿では外付けモニター「PSILANDEX」を使って、政治シュミレーションゲーム『Evil Democracy: 1932』をプレイした所感を述べていこうと思う。
文/野比ノビコフ
選挙でナチス躍進を阻止することで史実と異なる結末へ
『Evil Democracy: 1932』と聞いても、「何それ? そんなタイトル知らないぞ」と言う人のほうが多いだろうとは、あらかじめ想像している。
プレイヤーはドイツ、イギリス、フランスのいずれかを選択し、政党を率いて実際にあった総選挙での勝利を目指すという内容だ。
1932年ドイツ。この時、アドルフ・ヒトラー率いるナチスが国民からの熱狂的な支持を受け、国会選挙でも大躍進が確実視されていた。
なぜならナチスの選挙戦術は、極めて斬新だったからである。ヒトラーの顔と名前のみが印刷されたビラを大量にバラ撒き、映画フィルムとレコードで有権者に政策を訴えたのだ。ヒトラーは飛行機に乗ってドイツ各地を遊説している。このような候補者は前例がなかった。
しかし、『Evil Democracy: 1932』は史実通りナチスを選挙で勝利させるゲームではない。むしろその逆だ。ナチス以外の政党を選択し、日の昇る勢いのナチスを敗北させるというものである。
この時代のドイツは、複数の政党が存在した(のちにナチスが野党を禁止した)。最有力候補はドイツ社会民主党である。資金も潤沢で各地に根強い支持者もいるから、攻略難易度も低め。それ以外にもドイツ共産党、ドイツ国家人民党、ドイツ鉄兜団なども選択することができる。
また、それから3年後のイギリスで行われた総選挙もゲームに組み込まれている。この選挙では左派政党の労働党が強い存在感を発揮したことで知られているが、それは同時に「労働者階級が大きな票田になった」ということでもある。
自分の党がどのような思想を持つかをカスタマイズすることができる
『ダウントン・アビー』というイギリスのドラマをご存知だろうか?
これは1910年代から20年代にかけてのイギリスの貴族階級を舞台にした作品だが、この時代の貴族は徐々に経済的困窮を強いられるようにもなっていた。
貴族を支えていた封建制度はもはや昔の話。莫大な資産を銀行に預けているのはいいが、それもいつまで維持できるか分からない。そして弱体化する貴族と反比例するかのように、各地の労働者階級が労働組合という形で組織化され、政治的発言力を持つようになった。『ダウントン・アビー』は、そのような時代の転換点を描いたドラマでもある。
『Evil Democracy: 1932』では、自分の党がどのような思想を持つかをカスタマイズすることが可能だ。右派か左派か中道派か、それとも極右か極左か。また、党の思想や公約を発表しなければならず、そのために新聞記者を雇ってビラや機関紙を発行する。機関紙には党関係者のインタビュー記事のほか、他党への誹謗中傷も掲載できる。
各地の選挙区にはメガホンを持った扇動者、機関紙を配る推進者(新聞配達の子供)、そしてどういうわけか棍棒を持った強面の活動家を送り込むことも可能だ。特に活動家はとても民主主義選挙に相応しくない人たちなのではと思ってしまうが、そこは1930年代だから仕方ない(他党の政治集会に棍棒と鉄拳でご挨拶することは、当時よくあった)。
そのような歴史的事実も再現できるゲーム、それが『Evil Democracy: 1932』なのだ。
タッチパネルで操作疲れなし! 32:9はむしろ見やすい比率
『Evil Democracy: 1932』は32:9の外付けモニター「PSILANDEX」を導入すると非常に快適なプレイが実現できる。
とにかくこのゲームは、カーソルを合わせてクリックしなければならない項目が多い。1ターンの間にやることもいろいろあるから、マウスでの操作では右手首が疲れてしまう。その点、タッチパネルなら文字通り「ポン、ポン、ポン」という具合にゲームを進めることができる。
感度も申し分ないし、「PSILANDEX」を接続してこちらをメインディスプレイにしたら、『Evil Democracy: 1932』のプレイ画面も自動的に最適化される。従って、そのスクショ画面も32:9だ。これはむしろ広々として見やすい比率なのではないだろうか。
しかしながら、冒頭でも述べたようにすべてのゲームがタッチパネルを導入することで操作性が向上するとは限らない。最大リフレッシュレートは60Hzなので、動きのあるゲームよりも『Evil Democracy: 1932』のようなシナリオ性重視のゲームのほうが向いていると思われる。文字やマップなどの細かい情報を一度にたくさん表示させたいときに重宝するからだ。
今回紹介した外付けモニター「PSILANDEX」は、クラウドファンディング「GREENFUNDING」で4万1680円(製品1台提供・7月現在)からの出資枠を公開している。
この記事を執筆している時点で、『Evil Democracy: 1932』に関する記事を書いている日本語ゲームメディアは他にないそうだ(あったらごめんなさい!)。それだけ知られていないタイトルということだが、読者の諸兄諸姉にはぜひ一度プレイしていただきたい。
【市販されているワイドモニター】