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【今日は何の日?】『メタルギア』シリーズが生まれた日(7月13日)。生みの親は小島秀夫監督、ハードスペックの制約の中から誕生したステルスアクションゲームの金字塔

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 7月13日は『メタルギア』シリーズが誕生した日だ。

 初代『メタルギア』は1987年7月13日、PCの共通規格「MSX2」用のゲームソフトとして発売された。『メタルギア』のほか『ポリスノーツ』『ZONE OF THE ENDERS』シリーズ、近年では『デス・ストランディング』などで知られる小島秀夫監督の処女作である。

 「敵を倒して進む」アクションゲームが人気を博す時代のなか、本作は可能な限り戦闘を回避し、敵から隠れながら進んでいく異色のタイトルとして称賛を受けた。2008年にはギネス世界記録「GAMER’S EDITION 2008」で「ステルス要素を完全に取り入れた最初のビデオゲーム」として認定されている。

 主人公となるのは、以後のシリーズ作品でも活躍する大人気キャラクター「ソリッド・スネーク」。本作の時点では「FOX HOUND」部隊に入隊したばかりの新米隊員として描かれている。のちにはWiiのバーチャルコンソールなどでも配信された。

『メタルギア』
(画像はコナミ『メタルギア』商品紹介ページより)

 約3年後にあたる1990年7月20日、『メタルギア2 ソリッドスネーク』が発売。前作の「ステルスゲーム」としての特徴を受け継ぎつつ、ゲームシステムを大きく改良。「壁たたき」による陽動や、足音や銃声で発見されてしまうなど聴覚に関するギミックが導入され、のちのシリーズにおける基本概念とも言える要素を確立した。

 そのほかにも戦車や机、床などのオブジェクトの下に潜むことができる「ホフク移動」「動体反応レーダー」といったシステムも登場。後に発売される『メタルギアソリッド』に繋がるようなアイデアが数多く採用されている。

『メタルギア2 ソリッドスネーク』
(画像はコナミ『メタルギア2 ソリッドスネーク』商品紹介ページより)

 その『メタルギアソリッド』は1998年9月3日、初代プレイステーション向けに発売。シリーズ初のリアルタイム・フルポリゴンを導入した3D表現を用いて『メタルギア』本来のゲームデザインを実現。世界的に高い評価を獲得することに成功した。

 ゲーム中に登場する兵器や銃火器の設定は、制作時の最新の軍事情報をもとに考証されたもの。さらに実際の軍事基地や各施設などへの取材も行い、当時のゲーム制作としては異例ともいえる多くの取材の上に作り上げられている。

 そのうえで、20世紀最大の恐怖と言われた「核兵器の脅威」や21世紀初頭の「テロリズムの台頭」といった重厚なテーマをゲームの世界の中でリアリティとともに表現。「真の娯楽とは、楽しんだ後に心に何かが残るもの」という小島秀夫監督の信念を体現した一作と言えるだろう。

 本作はのちに音声を英語吹替とし難易度設定を追加した『メタルギアソリッド インテグラル』、グラフィックやアクション性を向上させた『メタルギアソリッド ザ・ツインスネークス』などが発売。ゲームアーカイブスなども通じてさまざまなハードウェアに移植されている。

『メタルギアソリッド』
(画像はGOG『メタルギアソリッド』販売ページより)

 続く『メタルギアソリッド2 サンズ・オブ・リバティ』は2001年11月29日にPS2向けに発売された。プラットフォームがPS2に移ったことでグラフィックやシステム面でのスペックが向上、主観視点での操作による遠距離の射撃を実現し、ゲーム性にも変化を与えている。

 本作のストーリーは「タンカー編」と「プラント編」の2部構成となっており、そのうちの「プラント編」ではシリーズの主要キャラクターのひとり「雷電」がはじめて主人公に抜擢。また「ミーム」をテーマとし、インターネット社会における問題、無人兵器の脅威などに触れた、現代を予見したような物語も高い評価を獲得している。
 
 システム面では上述した主観視点での射撃のほか、敵兵をホールドアップさせたり、倒れた敵兵を引きずって動かしたりといった、のちのシリーズ作品にも受け継がれていく多彩なアクションを採用。「21世紀最高のゲームシステム」と評され、アメリカ最大のゲームショウ「E3」では最優秀賞を受賞した。

 のちに日本語字幕付きの英語音声に変わり、新たな難易度やステージクリア型の「MISSIONS」モードなどが追加された『メタルギアソリッド2 サブスタンス』が発売。2011年に発売された『メタルギアソリッド HD エディション』にはこちらの仕様で収録されている。

『メタルギアソリッド2 サンズ・オブ・リバティ』
(画像は『メタルギアソリッド HDエディション』公式ページより)

 正史シリーズの5作目にあたる『メタルギアソリッド3 スネークイーター』は2004年12月16日、PS2向けに発売。本作は後にニンテンドー3DSに向け『メタルギアソリッド スネークイーター 3D』として移植も行われ、こちらにはなんと『マリオ』シリーズの「ヨッシー」がゲーム内に登場している。

 これまでのシリーズ作品で展開されていた市街地戦や建造物への潜入作戦から打って変わって、大自然のジャングルを舞台に「サバイバル」をコンセプトに据えた生々しいステルスアクションへと進化を遂げた。

 周囲の環境に溶け込むよう自らの装いを変える「カムフラージュ」や格闘アクション「CQC」、野生の動植物を仕留め食料にする「フードキャプチャー」、負傷を自らで治療する「キュア」などといったシステムを採用。新しいゲーム性を獲得することで「ステルスゲーム」が珍しくなくなった時代の中でも輝く作品となった。

 本作は『メタルギア』サーガのはじまりの物語であり、「ネイキッド・スネーク」というコードネームを与えられたひとりの男が「ビッグボス」の称号を得るまでを描く。「宇宙開発競争」「キューバ危機」といった現実の出来事と物語をリンクさせつつ、東西冷戦の転換期を表したストーリーは、2010年4月29日発売の『メタルギアソリッド ピースウォーカー』へと繋がっていく形となる。

『メタルギアソリッド3 スネークイーター』
(画像は『メタルギアソリッド HDエディション』公式ページより)

 『メタルギアソリッド ピースウォーカー』はPSP向けのタイトルであり、本作より前に発売された『メタルギアソリッド ポータブルオプス』にて採用された「部隊を運営する」といったゲームプレイを拡張。基地運営を行う「オペレーション」と、従来のシリーズ作品でおなじみの潜入作戦に当たる「ミッション」の要素を融合させた。

 本作の最大の特徴は協力プレイ「CO-OPS」の存在だ。PSP本体の基本機能のひとつである「アドホック通信機能」を利用した手軽な通信プレイは、ひとつのミッションを複数のプレイヤーで攻略することでアクションゲームが苦手なユーザーもフォローすることに成功。初めて『メタルギア』シリーズに触れるというプレイヤーを多く生むことに貢献したという。

 小島秀夫監督は本作について「今回は携帯ゲーム機とその先にある未来を見据えた横の可能性を追求した」と語っている。ハードウェアの成長とともに進化を遂げてきた本シリーズの中でも『メタルギアソリッド ピースウォーカー』が挑戦的なタイトルであったことがうかがえる。

『メタルギアソリッド ピースウォーカー』
(画像は『メタルギアソリッド ピースウォーカー』公式サイトより)

 時を少し戻した2008年6月12日には、それまでのシリーズ作品で描かれてきた伏線や謎を解明する内容となる『メタルギアソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』が発売。本作はシリーズで初めてPS3向けに発売された作品であり、2層式ブルーレイディスクの中に収まりきらないほどの膨大なデータを詰め込んでいる。

 特定の施設などではなく「戦場」という状況の中へ潜入を行うという新たなゲームデザインに挑戦しており、周囲の地形に溶け込むように擬態する「オクトカム」を用いて隠れる場所がない状況をも潜り抜けていく。

 「ソリッド・スネーク」の物語としては完結編にあたり、民間軍事会社(PMC)や無人兵器の台頭する近未来的な戦争を描いたストーリーが特徴となる。『虐殺器官』や『ハーモニー』で知られる伊藤計劃氏による小説版も執筆された。

『メタルギアソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』
(画像は『メタルギアソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』公式サイトより)

 正史シリーズとしての最新作である『メタルギアソリッドV』は、序章にあたる『メタルギアソリッドV グラウンド・ゼロズ』が2014年3月20日に、本編『メタルギアソリッドV ファントムペイン』(以下、ファントムペイン)は2015年9月2日に発売された。

 2作品を通じて『メタルギアソリッド ピースウォーカー』から地続きの物語を描いており、特に『ファントムペイン』には拠点となる「マザーベース」の運営や、敵兵士や捕虜を回収し仲間に引き込む「フルトン回収」システムも登場。人員のほかにも、車や固定兵器、資源を格納したコンテナなども回収することが可能だ。

 『ファントムペイン』はオープンワールド形式を採用しており、時には馬や車両も活用しながら広大なフィールドを移動可能。潜入する敵拠点に対しどのようなアプローチをかけるか、プレイヤー自身が考え挑む戦略的な自由度も高い。くわえて、特定のキャラクターをパートナーとして同行させ、その能力に応じた支援を受けられる「バディシステム」を採用している。

『メタルギアソリッドV』
(画像はSteam『メタルギアソリッドV ファントムペイン』販売ページより)

 このほか外伝、スピンオフ作品として『メタルギア アシッド』シリーズや『メタルギアソリッド ポータブルオプス』『メタルギア ライジング リベンジェンス』『メタルギア サヴァイヴ』などが展開されてきた。以下では『メタルギア』シリーズ公式サイトに登録されている作品について簡単に紹介していく。

 2000年4月27日にゲームボーイカラー向けに発売された『メタルギア ゴーストバベル』はシリーズ初の携帯型ゲーム機用ソフト。専用に書き下ろされたシナリオが展開していくストーリーモードや異なるミッションも楽しめる「ステージセレクト」、仮想空間での訓練をモチーフにした「VRミッション」などの要素を収録していた。

 通信対戦にも対応しており、「対戦相手は自分の視界に捉えなければ見ることができない」というルールを設けることで『メタルギア』らしい戦略的な要素を表現している。

『メタルギア ゴーストバベル』
(画像は『メタルギア ゴーストバベル』公式サイトより)

 『メタルギアアシッド』は「アクションではない『メタルギア』」としてカードゲーム要素を提案したシリーズであり、2004年12月16日に『メタルギアアシッド』が、2005年12月8日には『メタルギアアシッド2』が発売された。

 武器「SOCOM」やアイテム「レーション」など、さまざまなアクションをカードを使って表現。プレイヤーは事前に組んだ「デッキ」を駆使してミッションに挑む。カードという独特の要素を採り入れながらも、壁を叩いて敵をおびき寄せたり、ダンボールで敵の監視の目から逃れたりと『メタルギア』らしいゲームプレイを踏襲していた。

『メタルギアアシッド2』
(画像はコナミ『メタルギアアシッド2』商品紹介ページより)

 2006年9月21日にはPSP向けに『メタルギアソリッド バンドデシネ』が発売。『メタルギアソリッド』の物語をコミックアーティストのアシュレー・ウッド氏が完全コミック化した「METAL GEAR SOLID: OFFICIAL COMIC BOOK」をデジタル・コミックとして表現した作品である。

 2008年6月12日には『メタルギアソリッド2 サンズ・オブ・リバティ』をベースとし、同様の形で表現した『メタルギアソリッド2 バンドデシネ』もDVDとして発売されている。

『メタルギアソリッド2 バンドデシネ』
(画像はコナミ『メタルギアソリッド2 バンドデシネ』商品紹介ページより)

 PSP向けの作品としてはこのほか、2006年12月21日に発売された『メタルギアソリッド ポータブルオプス』が挙げられる。捕らえた敵を味方に引き込み、彼らと交代しながら潜入任務を遂行するというシステムが特徴で、本作で産まれた「部隊運営」という要素が『メタルギアソリッド ピースウォーカー』へと受け継がれた形だ。

 2007年9月20日には、新たに「インフィニティミッション」などの新要素を追加し、「雷電」、「オールド・スネーク」などのキャラクターも参戦した『メタルギアソリッド ポータブル・オプス+』がリリースされている。

『メタルギアソリッド ポータブル・オプス』
(画像はコナミ『メタルギアソリッド ポータブル・オプス』商品紹介ページより)

 『メタルギアソリッド2 サンズ・オブ・リバティ』で主人公を担った「雷電」に焦点をあてた『メタルギア ライジング リベンジェンス』は2013年2月21日発売。『ベヨネッタ』シリーズなどで知られるプラチナゲームズが開発を担当しており、サイボーグの普及が進む世界を舞台に爽快感あふれる超人的なアクションを楽しめる作品となっている。

 銃弾をはねつけ高速で走る「ニンジャラン」や、超高速の斬撃をハイスピードカメラ風に再現する「斬撃モード」など、ゲームシステム面でもサイボーグの主人公ならでは演出が満載。ほかの『メタルギア』シリーズとは一線を画すゲームデザインが特徴だ。

 また2018年2月21日には『メタルギア サヴァイヴ』が発売。『メタルギアソリッドV ファントムペイン』の高いアクション性を受け継ぎ、サバイバルアクションとして再構築したスピンオフ作品である。

 ワームホールに飲み込まれたどり着いてしまった異次元の世界が舞台となっており、異形の怪物「ワンダラー」と化した人間がエネミーとして現れるなど独特の設定が特徴。ストーリーを進めていくシングルプレイのほか、最大4人で隊員の救助や「イリスエナジー」の採掘を行うミッションに取り組むマルチプレイモードが収録されている。

『メタルギアサヴァイヴ』
(画像はSteam『メタルギアサヴァイヴ』販売ページより)

 このほか、単一のタイトルではないものの『メタルギアソリッド3 サブシスタンス』を皮切りに『メタルギアソリッド ポータブルオプス』や『メタルギアソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』、『メタルギアソリッドV ファントムペイン』などでは『メタルギアオンライン』と呼ばれるオンラインマルチプレイゲームが収録されていた。

 ベースとなった作品ごとに仕様は異なるが、現在もPS4、Xbox One、PC(Steam)で稼働中の『メタルギアソリッドV ファントムペイン』を土台としたものでは、最大16人での対戦が可能。ミッション設定で「ユニークキャラクター」を有効にすれば「スネーク」「オセロット」など本編の主要キャラクターも利用可能であり、専用の武器やアクションを用いた、その他のプレイヤーキャラクターとは異なるプレイングを体験できる。

『メタルギアオンライン』
(画像は『メタルギアオンライン』公式サイトより)

 そして2023年5月には『メタルギアソリッド3 スネークイーター』のフルリメイク作品にあたる『メタルギアソリッドΔ SNAKE EATER』が発表された。対応プラットフォームはPS5、Xbox Series X|S、PC(Steam)で、最新のグラフィックで究極のサバイバルステルスアクションを楽しめる作品になるという。

 くわえて歴代の『メタルギアソリッド』シリーズを発売当時のまま最新プラットフォームで遊べる『METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION』の展開も決定しており、今後はシリーズ作品に触れやすい環境が整っていくことも期待できる。

 近年でも『メタルギアソリッド』の新たなグリッチが発見されたり、今なお実写映画化のプロジェクトが進行中であることが報じられたり、『メタルギアソリッドV ファントムペイン』のワンシーンがネットミーム化したりと、強い存在感を放ち続ける『メタルギア』シリーズ。

 今でこそメジャーになったステルスアクションというジャンルを開拓し、そして独自性を失わないまま進化を続けてきた名作と言えるだろう。『メタルギアソリッドΔ SNAKE EATER』をはじめ、シリーズの今後の展開にも注目していきたいところだ。

ライター
1998年生まれ。静岡大学情報学部にてプログラマーの道を志すも、FPSゲーム「Overwatch」に熱中するあまり中途退学。少年期に「アーマード・コア」「ドラッグ オン ドラグーン」などから受けた刺激を忘れられず、プログラミング言語から日本語にシフト。自分の言葉で真実の愛を語るべく奮闘中。「おもしろき こともなき世を おもしろく」するコンピューターゲームの力を信じている。道端のスズメに恋をする乙女。

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