とんでもないゲームが発売されてしまいました。この手の題材をこれほどまで大胆に扱っているゲームを、私はほかに知らないです。
そのタイトルは『Cult of the Lamb』。
教祖となって信者を操り、「カルト教団」を経営するゲームです。
「経営」といっても、これまで培ってきたシミュレーションの経験はほぼ役に立ちません。実際にプレイしてみると、そこには予想のできない「教祖ライフ」が待っていました。
チュートリアルで叩き込まれる「洗脳」のノウハウ、信者からのトンデモ要望、上司と信者の板挟み、生贄の選定、日々の雑務など、教祖の仕事は想像以上に忙しい。
正直なところどこまで書くべきか迷う部分はありますが、起こったことをありのまま書いていこうと思います。1点だけ、ウンチの話がたくさん出てくるため、苦手な方や食事中の方はご注意ください。
『Cult of the Lamb』は現在、Nintendo Switch、PS4、PS5、Xbox One、Xbox Series X|S、PC(Steam、GOG.com)にて発売中です。
文/柳本マリエ
信者の忠誠心を操り、敵を恐怖に震え上がらせる
物語は、主人公である「子羊」が4人の「司教」に処刑されるところから始まります。どうやら司教たちは、とある予言が実現してしまうことを阻止するために儀式を行っているとのこと。
しかし処刑された子羊は、目が覚めると「待ち受けし者」と呼ばれる謎めいた存在から新しい命を与えられていました。そしてその命と引き換えに、「教団を作って信者を集める使命」を背負ってしまうこととなります。
というのも、じつはこの「待ち受けし者」は4人の司教によって封印されているため、身動きが取れません。そこで子羊を使って自分の名のもとに教団を発展させ、司教を倒し、最後には「自らの解放」を企んでいるというわけです。
なるほど。封印された理由がやや気になりますが、事情は理解しました。
このとき「待ち受けし者」は子羊に、かつて使っていたという「赤い王冠」も授けます。この王冠があれば、信者の忠誠心を操り、敵を恐怖に震え上がらせることができるとのこと。
つまり、子羊が教祖となって信者を操りながらも、その子羊は「待ち受けし者」によって操られている、という少し複雑なパワーバランスが背景にあります。これが「支配」か。
こうして子羊は、教団を発展させながら4人の司教たちを倒すこととなりました。最終的に「待ち受けし者」の解放を目指します。
ここまでゲーム開始から数分の展開ですが、クレジットやタイトルの入り方の演出が映画っぽくて期待が高まりました。
チュートリアルで叩き込まれる「洗脳」のノウハウ
本作は「教団の経営」と「ダンジョンの攻略」という、2つのパートから構成されています。
教団経営パートは、主に信者の信仰を高く保つことが目的。「祭壇」や「教会堂」など施設の建築に加え、教祖として「説教」や「儀式」を行うことで信者たちの弱い心を操ることができます。
一方ダンジョン攻略パートは、主に4人の司教やその信者たちを倒すことが目的。ランダムに生成されるダンジョンを探索することで、施設の建築に必要な「資金」や「資材」、そして「新たな信者」も見つけることができます。
新たな信者となりそうなターゲットを見つけたら、恩を着せて教団に入れさせるよう指導を受けました。
ダンジョンは4人の司教の支配下にあるため、その信者たちが生贄を捧げる儀式を行っている場合もあります。そのときに生贄を助ければ、こちらの教団に入らざるを得なくなるという寸法です。
敵を一掃することで無事に恩を着せることができました。
中ボスレベルの敵に関してはトドメの一撃を与えずに命乞いさせればチョロい。
また、敵と戦う以外の方法では、新たな信者をショップで「買う」こともできます。私は、91%割引でお得に購入することができました。ショップ内をよく見てみると、周りにたくさんの動物たちが吊るされていますね。
このように、いかなる手段を使ってでも「教団に入らざるを得なくなる」という状況に持っていくことがポイント。これは、子羊が「待ち受けし者」から命を与えられたときとまったく同じ構図ですね。
「ウンチ掃除」から「儀式」まで、忙しすぎる教祖ライフ
本作の最大の特徴は、なんといっても「カルト教団」を経営する点です。シミュレーションゲームは数あれど、教団を経営するゲームはやったことがありません。
そもそも教祖って、普段なにしてるんだろう……?
たとえば牧場を経営するシミュレーションゲームだったら、実際に牧場を経営したことがなくても「作物を育てながら動物のお世話をするんだろうな」と、なんとなく想像することができると思うんです。
そのジャンルが、歴史・恋愛・育成だったとしても同様に。
しかしながら本作の題材は、カルト教団です。ダンジョンで新たな信者を集めてきても、教祖の日常が謎すぎてどのようなコミュニケーションを取るのかまったく想像がつきません。
……などと思っていたところ、ひとりの信者から「要望」がありました。どうやら信者の要望に応えていくことで、信仰を高く保つことができるとのこと。ならばしっかり聞いていきたい。
信者:
「教団の周囲が汚すぎます! このまま掃除をしなければ、だれかが病気になってしまいますよ!」
どんな要望かと思いきや、あまりにも正当な要望すぎていきなり意表を突かれました。たしかによく見ると本拠地が信者の「ウンチ」で溢れています。信者は食事をするとだいたい15%の確率でウンチをするようで、そのウンチを放置していました。
ということで、ウンチ掃除から始めていきます。
信者が増えれば増えるほどウンチの数も増えていくので、ウンチ問題は放っておくことはできません。ゲーム内でこんなにウンチのことを気にかけるのは、『たまごっち』ぶりな気がします。
そうこうしているうちに、別の信者からも新たな要望がありました。今度はなんでしょうか。教祖っぽいことがしたいな。
信者:
「教祖よ、バルバトスにドッキリを仕掛けたらおもしろいとは思いませんか? やつは好き嫌いが激しいんです。だからウンチを食べさせましょう!」
……え???
思わず目を疑いました。「ウンチを食べさせましょう!」という提案を、人生で初めて聞いた気がします。というか「好き嫌いが多いからウンチを食べさせる」っていう発想が怖い。
なお、信者からの要望を断ってしまうと信仰が下がります。つまり選択肢はひとつ。無情にも、この会話のあと「ウンチ料理」が解放されました。こんなにうれしくないアンロックは初めてです。
幸い(?)なことに、ウンチ掃除をしてるためウンチは潤沢にあります。だいぶ抵抗がありますが、バルバトスにウンチ料理を食べるよう指示を出してみました。どうか病気になりませんように。
「教団」とは……。「教祖」とは……。
私はなぜ信者にウンチを食べさせているんだろう……。
さすがに病気が心配になったのでバルバトスのステータスを見てみると、さらに衝撃的な展開が待ち受けていました。なんとバルバトスは、「糞尿愛好症」の特性を持つ信者だったのです。病気になることで、むしろ信仰が高くなるとのこと。
ちなみにウンチを食べさせようと提案してきた信者は、一部始終を見て笑っていました。私は4人の司教よりも「待ち受けし者」よりも、この信者が怖い。
このような調子でウンチ関連以外にも、施設の建築・修理、信者全員分のベッドの確保、人探しなど、信者からの要望は絶え間なくつづきます。中には「好きな人に告白したいから花を集めてきてほしい」という要望もありました。教祖としてナメられているのでしょうか。
儀式で生贄に捧げた信者の「信者肉」は食べることができる
信者の要望を聞いて回っている一方で、「待ち受けし者」からは釘を刺されてしまいます。
待ち受けし者:
「信者の召使いになるなどという過ちは犯すなよ。奴らはお前に利用される存在なのだぞ!(中略)信仰心を糧に力を蓄え、非道の限りを尽くせ。奴らを意のままに操るのだ」
ギクッ……! 完全に信者との板挟みとなりました。雇われ教祖って中間管理職みたいなポジションですね。
ということで、もう少し威厳のある教祖を目指して「儀式」を試してみることにしました。儀式といえばやっぱり「生贄」ではないでしょうか。
「生贄の儀式」は信者を生贄にすることで、戦いに有利な武器などが使えるようになるとのこと。なるほど、ダンジョン攻略との相互性があるんですね。
生贄に捧げる信者は選ぶことができます。生贄になることを望む信者もいるので、そういう信者がいる場合は率先して生贄に捧げてあげるといいかもしれません。
信者を生贄に捧げると、「信者肉」が手に入ります。この信者肉は、教団を離れようとする離反者に食べさせると75%の確率で離反をやめるとのこと。ただし、同じく75%の確率で病気になるので注意が必要です。
「生贄の儀式」以外にも、「大篝火の儀式」、「祝宴の儀式」、「信者昇天の儀式」、「結婚式」、「葬式」など、さまざまな儀式を行うことができます。
このように、儀式など教団の活動を通して「信仰」を高めていくことによりダンジョンで使える武器や新しい機能が増えていくため、戦いを有利に進めることができます。そして、戦いに勝てば勝つほど教団は成長してさらに強くなる。
司教を倒すことで教団は飛躍的に成長します。参考までに、私は4人いる司教のひとり目を倒すまで3〜4時間ほどでした。
どんなに従順な信者を育てても、「寿命」で死んでしまう
本作は「教団の経営」と「ダンジョンの攻略」の相互性が高く、どちらも緊張感のある設計になっているところが革命的だと思いました。
たとえば教団の経営については、どんなに従順な信者を育てても「寿命」でいずれ死んでしまいます。私の場合は、ゲーム内時間の20日目で信者のひとりが亡くなってしまいました。
そのため教団は常に新たな信者を招き入れる必要があります。別の特性を持つ別の信者が入れ替わり立ち代わり入ってくるので、教祖はいつまでたっても忙しい。
また、ダンジョンの攻略においては、いわゆる「ローグライク」でランダムに生成されるダンジョンのため気を抜くことができません。
武器や発動スキルも毎回変わるので、慣れていないものだとやや緊張感が走ります。
「教団の経営」と「ダンジョンの攻略」のどちらか一方におもしろさが偏っていないところにしびれました。カルト教団という尖った題材を扱っていながらも、演出やビジュアルの細かな部分にもこだわりを感じるゲームです。
気になった方はぜひ、自分好みのカルト教団を作ってみてはいかがでしょうか。
『Cult of the Lamb』は現在、Nintendo Switch、PS4、PS5、Xbox One、Xbox Series X|S、PC(Steam、GOG.com)にて発売中。
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