いま読まれている記事

【今日は何の日?】『龍が如く』が発売された日(12月8日)。「極道」というゲームでは珍しいテーマを通じて裏社会を舞台にした重厚な人間ドラマを描く

article-thumbnail-221208a

 12月8日は『龍が如く』シリーズが誕生した日だ。

 『龍が如く』シリーズは東京都新宿区の「歌舞伎町」をまるごとゲーム内で再現し、「神室町」(かむろちょう)と名を変え、その中で自由度の高いアクションやアドベンチャーで遊べる点が大きな特徴の作品だ。

 主人公の桐生一馬(きりゅうかずま)はケンカにめっぽう強い伝説の元極道で、降りかかるトラブルを拳の強さで跳ね返し、時には絆や人情で心の繋がりを修復していく。シリーズを通して「裏社会」のリアリティが描写されており、現実の模倣とは異なった、リアリティのあるフィクションとして重厚な人間ドラマが展開されていく点が共通している。

 本稿ではそんな『龍が如く』シリーズについて、ナンバリングタイトルを中心にご紹介していきたい。

『龍が如く』
(画像はWii U『龍が如く 1&2 HD for Wii U』ダウンロードページより)

文/夏川77


PS2で誕生し、後には「極」としてリメイクもされた初代『龍が如く』

 シリーズ最初の作品は、2005年12月8日にPS2向けに発売された『龍が如く』
 日本一の歓楽街・神室町で「堂島の龍」の異名をとる桐生一馬は、「親殺し」の罪により刑務所に10年間収監される。出所を間近にして手紙で神室町での10年間の出来事を知った桐生は、東城会から消えた100億円の鍵を握る謎の少女・遥を守るため戦う。

 本作は2016年に『龍が如く 極』としてリメイクされ、PS3、PS4で発売された。現在は『Yakuza Kiwami』というタイトルでSteam、Xbox Game Passでも配信されている。オリジナル版と比較してグラフィックは大きく向上し、アクションやUIなども爽快感が強化され、プレイスポットも何種類も追加されているため、神室町をよりディープに楽しめるリメイクとなっている。

 『龍が如く 極』では、オリジナル版で描写が少なかった桐生の親友・錦山彰のエピソードが掘り下げられている。他にも1作目から東城会幹部として登場し、大きな人気を獲得している真島組組長・真島吾朗が、神室町のありとあらゆる場所で桐生と因縁を深めるイベントなど、多数の追加要素がある。

『龍が如く 極』
(画像は『龍が如く 極』公式サイトより)

 シリーズ2作目の『龍が如く2』は2006年12月7日にPS2向けに発売された。ストーリーは前作から1年経った神室町で、東城会五代目会長の寺田行雄が凶弾に倒れたことから大きく動き出す。弱体化した東城会を狙う関西の大規模組織・近江連合との抗争を避けるため、桐生は関西随一の歓楽街・蒼天堀へと降り立つ。「関西の龍」で知られる近江連合の郷田龍司、「ヤクザ狩りの女」と呼ばれる府警の刑事狭山薫などとの新たな出会い、衝突、絆が、神室町と蒼天堀でクロスしながら展開される。

『龍が如く2』
(画像はセガ『龍が如く2』公式ページより)

 本作は2017年にPS4向けに『龍が如く 極2』のタイトルでリメイクがされた。現在、Steam、Xbox Game Passでは『Yakuza Kiwami 2』のタイトルで配信がされている。

 『龍が如く 極2』も前作のリメイクと同様に、グラフィックやアクションなどの遊び心地が大きく改良されているのだが、ゲームエンジンが『龍が如く6』以降で採用されているドラゴンエンジンへと一新されたため、前作の『龍が如く 極』とはまた違った神室町を体験することができる。
 さらに『龍が如く 極2』には『龍が如く0』の後日談となるシナリオが新たに追加されており、真島吾朗を操作してプレイすることができる

『龍が如く 極2』
(画像は『龍が如く 極2』公式サイトより)

 PS2で発売された『龍が如く』の2作は、2012年11月1日に『龍が如く1&2 HD EDITION』のタイトルでPS3版が、2013年8月8日に『龍が如く1&2 HD for Wii U』のタイトルでWiiU版が発売されている。解像度を向上させ、UIに改良を加えた以外はオリジナル版に忠実なリマスタータイトルだ。

 音楽をクレイジーケンバンドが担当している点や、桐生が新人ホスト・カズマとしてホストクラブで働くサブストーリー(『龍が如く2』収録)などは『極』シリーズには収録されていない。
 また、『龍が如く1』と『2』はシナリオ監修に『不夜城』『少年と犬』などの作品で知られる小説家の馳星周氏が起用されているため、『龍が如く 極』『極2』でメインストーリーに変更は加えられてないとはいえ、『龍が如く 1&2 HD』でシリーズの原点を体験するのも非常におすすめであることを筆者は個人的には主張したい。

『龍が如く1&2 HD for Wii U』
(画像はWii U『龍が如く 1&2 HD for Wii U』ダウンロードページより)

沖縄、福岡、札幌、名古屋など舞台の幅を広げていったナンバリングタイトル

 続くナンバリング作品『龍が如く3』『龍が如く4 伝説を継ぐもの』『龍が如く5 夢、叶えし者』はPS3で発売され、その後PS4、Steam、Xbox One、Xbox Game Passでリマスター版が配信された。

 『龍が如く3』がPS3向けに発売されたのは2009年2月26日。ストーリーは、桐生と遥が神室町を去り、桐生が沖縄に建てた養護施設「アサガオ」で子供たちとの共同生活を送る中から始まる。時の政権が推し進める「基地拡大計画」と「リゾート開発計画」によって土地買収の標的にされたアサガオから、地元組織、東城会、果ては国家までが絡み合う一大事件へと、桐生は大切な人たちを守るため戦いに身を投じることになる。

 『龍が如く3』では神室町の他に、沖縄随一の歓楽街・琉球街を散策できる点や、カラオケボックス、ダーツなど、その後のナンバリング作品にも引き継がれる多くのプレイスポットが追加されている点が特徴だ。

『龍が如く3』
(画像は『龍が如く3』公式サイトより)

 『龍が如く4 伝説を継ぐもの』がPS3向けに発売されたのは2010年3月18日。ストーリーは神室町を舞台にくり広げられる。ある日、東城会系の弱小組織・金村興業のシマで、東城会と親戚関係にある上野誠和会の構成員が死んでしまう発砲事件が起きた。金村興業の若衆たちが事態の収拾に奔走する中、さらに金村興業の組長が刺殺死体となって発見される。これらの事件は大きな陰謀の一端にすぎず、謎の金貸し・秋山駿、18人殺しの死刑囚・冴島大河、神室町のダニの異名を取る汚職警官・谷村正義、そして伝説の元極道・桐生一馬たちがそれぞれバラバラに抱える事情が交錯しながら、ひとつの真実に収束してゆく。

 本作は操作可能なキャラクターが桐生一馬だけではなく、初めて複数人となったタイトルだ。桐生のほかにも秋山、冴島、谷村のそれぞれが主人公となる章が用意されており、戦闘スタイルも異なるため、神室町を舞台に各キャラクターの個性を堪能することができる。また、神室町に地下街と亜細亜街が登場するのも本作が初めてである。

『龍が如く4 伝説を継ぐもの』
(画像は『龍が如く4』公式サイトより)

 『龍が如く5 夢、叶えし者』がPS3向けに発売されたのは2012年12月6日。ストーリーは福岡の歓楽街の片隅から始まる。素性を隠し、大切な人の夢を叶えるため、タクシードライバーとしての日々を淡々と勤め上げる桐生一馬。その頃、東城会六代目会長・堂島大吾と五分盃を交わしていた近江連合の七代目会長が世を去り、両組織の平和的な関係は終わりを迎えていた。東と西の一大戦争が現実化しかねない緊張状態の中、大吾は地方の古豪組織と手を組むため、全国の主要都市を奔走する。その中には福岡の永洲街も含まれていたのであった。

 前作と同様に、本作も操作可能なキャラクターが複数おり、主人公の桐生一馬のほか、前作から続投している秋山駿、冴島大河にくわえ、新たに球界を追放された元ピッチャー・品田辰雄と、大阪の芸能事務所でアイドルの卵としてトレーニングに明け暮れる澤村遥(シリーズ1作目では9歳児だったあの「遥」である)の総勢5名を操作することが可能になっている。

 前作では各キャラクターがメインとなる章が用意されていたが、本作ではさらに各キャラクターが活動する「街」も用意されているため、シリーズ最多の全国5都市の歓楽街が体験できるのが大きな特徴だ。福岡の永洲街、札幌の月見野、名古屋の錦栄町は現在も『龍が如く5』の中でしか訪れることができない。

 ちなみに、近年突如人気が沸騰したカラオケソング「ばかみたい」の初出は『龍が如く5』である

『龍が如く5 夢、叶えし者』
(画像は『龍が如く5』公式サイトより)

 『龍が如く』シリーズの『3』から『5』は2018年から2019年にかけてリマスター化がされている。主な変更点は解像度が向上した点だが、サブイベントなどの一部要素も諸事情により変更や削除などが施されている。
 とくに『4』は谷村正義役を務めた俳優の芸能界引退に伴い、キャラクターモデルがまるごと入れ替わり、ボイスも増田俊樹氏に交代するという大きな変更が加えられた。

『龍が如く4 伝説を継ぐもの』
(画像は『龍が如く4』公式サイトより)

「桐生一馬伝説」の最終章を経て、新たな主人公「春日一番」が登場した『龍が如く7』

 続くナンバリング作品は、2015年3月12日にPS3、PS4向けに発売された『龍が如く0 誓いの場所』である。現在はSteamとXbox Game Passでも配信されている。
 舞台は1988年の神室町で、土地の価値が天井知らずに上がり続ける、バブル経済の好景気に湧いていた時代。ストーリーは神室町に再開発計画が持ち上がったところから始まる。巨大商業施設・ミレニアムタワーを建設するために必要な土地を揃え、この街の支配者となるため、金と権力が欲望の権化となってアジア最大の歓楽街で渦巻いていた。

 本作の特徴は、主人公が20歳の桐生一馬と24歳の真島吾朗のふたりであり、神室町と蒼天堀でそれぞれの物語が展開する点である。20歳の桐生は行動も思考も荒削りで若さを感じさせる要素が強く、逆に真島は沈思黙考してから冷静沈着に事を運ぶような、初代『龍が如く』と比較すると真逆に思えるキャラクターを見せている。このふたりがどのようにして2005年の初代『龍が如く』へと繋がっていくのか、神室町の「土地買収」を巡って展開する事件がふたりに与えた大きな影響が本作の見どころだ。

 また、本作では敵を殴ると金が舞い、戦闘終了後には大金を手にしている点も大きな特徴だ。ただし物価も相応に非常に高くなっているため、金銭面でゲームバランスが崩壊しているようなことはない。

『龍が如く0 誓いの場所』
(画像は『龍が如く0 誓いの場所』公式サイトより)

 続くナンバリング作品は、2016年12月8日にPS4向けに発売された『龍が如く6 命の詩。』で、現在はSteamとXbox Game Passでも配信されている。
 本作は公式に「桐生一馬伝説、最終章」と言われており、桐生一馬を主人公にした『龍が如く』シリーズが一旦の完結を見せることが予告されていた。ちなみに2016年時点で桐生は48歳である。

 本作は神室町の他に、広島の古い町・尾道仁涯町でストーリーが展開する。ストーリーは遥が神室町で交通事故に遭い、意識不明の重体となってしまったことから動き出す。沖縄のアサガオに帰っていた遥であったが、行方をくらまし、空白期間を経て、再びその姿が神室町で確認された矢先であった。失踪中の遥が広島に身を寄せていたことを知った桐生は、謎を解く手がかりを求めて尾道仁涯町へと足を踏み入れる。

 本作の大きな特徴は、PS4専用に新たに開発された「ドラゴンエンジン」で、神室町などの舞台を体験できる点である。グラフィックもアクションもリアリティが一新されており、移動中は障害物をまたいだり、乗り越えたり、「街中を歩いている」臨場感がこれまで以上にリアルに再現されている。戦闘も完全にシームレスに発生する。

『龍が如く6 命の詩。』
(画像は『龍が如く6 命の詩。』公式サイトより)

 2020年1月16日、PS4向けに『龍が如く7 光と闇の行方』が発売された。現在はSteamとXbox Game Pass向けにも配信されている。
 ストーリーは東城会三次団体の荒川組に所属する主人公・春日一番(かすがいちばん)が、組長に頼み込まれて若頭の罪を被り、18年間服役して2019年に出所したところから動き出す。

 春日の服役中に神室町からは東城会が姿を消し、警察と近江連合が完全支配する街へと大きく様相を変えていた。その状況を作り出したのが荒川組の“親っさん”らしいと知った春日は、荒川組組長・荒川真澄に真相を問いただそうとするも、荒川の拳銃に撃たれて生死の境をさまようことになる。意識を取り戻した春日の目に飛び込んできた光景は、ダンボールとブルーシートで作られたホームレスたちの溜まり場であった。

 本作の特徴は横浜の伊勢佐木異人町を舞台に、無一文のホームレスから春日一番が成り上がり、仲間たちと巨悪を打ち砕く熱い人間ドラマが展開されるところにある。住むところををどうにか手に入れ、ハローワークに行き、職を得て……と、刑務所から出所した人間が地道に社会復帰をし、下剋上を目指すストーリーは胸が熱くなること請け合いだ。

 そして本作の最も大きな特徴は、これまでの『龍が如く』シリーズの戦闘がリアルタイムのコマンドアクションだったのに対し、ターン制のコマンド入力RPGにシステムを大きく変更した点である。コマンドアクションはプレイヤーの瞬発力や集中力を求められる場面が多くなりがちだが、RPGである本作はコマンドの入力を完了すればオートで実行してくれる(コマンド選択をAIに操作を任せることも可能である)ため、アクションに苦手意識を持つプレイヤーであっても、『龍が如く』シリーズを新たに手に取りやすくなったことは間違いない。

『龍が如く7 光と闇の行方』
(画像は『龍が如く7 光と闇の行方』公式サイトより)

 2023年11月9日、『龍が如く7外伝 名を消した男』が発売された。対応ハードはPS4/5、Steam、Xbox One、Xbox Series X|Sだ。

 かつて大切な人を守るため、死を偽装し、人生を捨てる道を選んだ桐生一馬。そのとき手を借りた大道寺一派の元に、「浄龍」という名で身を寄せ、時おり任務を与えられるエージェントとなって日々を過ごしていた。
 本作は自分が生きていることを隠さなければならない桐生一馬の、『龍が如く6』以降の空白期間を描いた作品で、続く『龍が如く8』にストーリーが繋がる作りとなっている。

 本作の特徴は、『龍が如く7』でコマンド入力RPGになったバトルシステムが、従来のリアルタイムアクションを踏襲した新しいコマンドアクションとして帰ってきた点だ。
 全く新しい「エージェント」とお馴染みの「応龍」の戦闘スタイルを使い分けて、プレイヤーは再び桐生一馬となって敵を蹴散らすことができる。

ナンバリング最新作『龍が如く8』が待ち受ける

 2023年現在、「龍が如くスタジオ」で代表・制作総指揮を務める横山昌義氏は、インタビューで「『龍が如く』はカレーのルーみたいなもの」と語っている。ルーをカレーライスやカレーうどんなどのあらゆる形に合わせることができ、トッピングも様々なものを楽しむことができる。フランチャイズのカレー屋に近いイメージで、人が入れ替わっても同じ味を提供することができる。「カレーくらいの汎用性の高さを目指そう」という意識共有は、スタジオ内でも横山氏がよく言っているとのことだ。

 その龍が如くスタジオが予定している今後の新作は、2024年1月24日発売予定の『龍が如く8』。対応ハードはPS4/5、Steam、Xbox One、Xbox Series X|Sだ。

 『龍が如く8』では、シリーズ初の海外舞台として、新たにハワイのリゾート地をプレイすることが可能になっている。
 ストーリーは桐生一馬と春日一番のダブル主人公で、春日が生みの親を訪ねることから話は展開していくのだが、「どういう顛末で桐生が生きてきて、どうやってここまでたどり着いたのか」もちゃんと描いているとのことだ。
 バトルシステムは、前作のコマンド入力RPGを下敷きにしながら、戦略性とアクション性が大きく進化。キャラクターの位置関係を意識することで、連携攻撃が繰り出されるといった要素が多数追加されている。本作のバトルは、自由度と爽快感が増した「新ライブコマンドRPGバトル」だ。

 龍が如くスタジオは他にも、スマートフォン向けの『龍が如く ONLINE』や、コラボタイトルの『北斗が如く』、派生作品の『クロヒョウ』シリーズや『ジャッジ』シリーズなどを展開している。芯にある遊び心地はブレさせず、いつもの「カレーのルー」を使用した味わいは変化させずに、どのタイトルも「新しいのにいつもの味がしてホッとする」という、唯一無二の世界観を作り出している。

 この先も龍が如くスタジオが、どのようなスタイルやトッピングで『龍が如く』の料理を変えていくのか、期待しながら楽しみに待ちたい。

ライター
『討鬼伝』シリーズを3000時間やり込んでいる元麻雀プロ。家を出て5メートルで職務質問されたことがある。中世ヨーロッパ風ファンタジーが好きで『ファイナルファンタジータクティクス』が最も好きだが、三国志など古代~近世の東洋も好き。好きな武将は細川政元。
Twitter:@natsukawa77tem

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合がございます

新着記事

新着記事

ピックアップ

連載・特集一覧

カテゴリ

その他

若ゲのいたり

カテゴリーピックアップ