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『龍が如く8』“King Gnu”井口理さんの起用は「ランニングに短パンで走っている姿」にスタジオ代表・横山昌義氏が惚れ込んだから!?

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 9月20日「RGG SUMMIT FALL 2023」にて披露された『龍が如く8』のストーリートレーラーは、公開されるやいなや大きな話題となった。

 ショート動画全盛期のいま、あえて10分を超える映像。これまでのシリーズとは異なる空気感。初となる海外を舞台にしたドラマ。そして、桐生一馬の病

 桐生本人が「俺は残された時間を少しでもやるべきことに使いたい」と語るなど、見る側としては“桐生の死”を想像せずにはいられない内容となっており、インターネット上も騒然。2024年1月26日の発売決定の報も合わせ、シリーズファンはもちろん、これまで『龍が如く』に触れたことのない人たちの心も、グッと引き寄せる発表会となった。

 東京ゲームショウ2023では、『龍が如く7外伝 名を消した男』(以下、『龍が如く7外伝』)と『龍が如く8』の試遊台をダブル出展。全日程で早々に整理券配布が終了するなど、連日多くの人が押し寄せ、期待の高さを表していた。

 『龍が如く7 光と闇の行方』(以下、『龍が如く7』)では主人公が春日一番に代わり、アクションからRPGへジャンルが変更するなど、大規模な刷新を経て、ますます勢いを増している「龍が如くスタジオ」。開発陣が抱く『龍が如く』のビジョンについて、TGS会場で話を聞いた。

 インタビューは、TGS3日目となる9月23日に実施。龍が如くスタジオ代表/制作総指揮を務める横山昌義氏と『龍が如く』シリーズチーフプロデューサーの阪本寛之氏、そしてチーフディレクターの堀井亮佑氏の3名に、『龍が如く8』に関する話題を中心に話をうかがった。

取材/豊田恵吾


『龍が如く8』は歴代でも一番明るい!?

──本日はよろしくお願いいたします。『龍が如く8』の情報が大々的に発表された「RGG SUMMIT FALL 2023」から立て続けでのTGS開催となりました。まず、反響についてお聞かせください。

横山昌義氏(以下、横山氏):
 おかげ様で大盛況ですね。今日(9月23日)は12時前くらいにもう整理券配布が終わってしまいまして……。遊べなかったファンの皆さんには非常に申し訳ないなと。

──『龍が如く7外伝』と『龍が如く8』の両タイトルが遊べるということで、プラチナチケット化していたと思います。

阪本寛之氏(以下、阪本氏):
 入場規制が解けた瞬間に人が一気に集まる危険を避けるため、整理券配布方式を取りました。ただ、本当に過去一番のにぎわいだったと思います。

横山氏:
 今年からTGS自体に人が一気に戻ってきた印象があります。コロナ禍も少し落ち着き、皆さんの「動きたい!」という情熱がたぎって来ているんだろうな……と思うんですが、これってじつは『龍が如く8』で狙っていた現象でもあるんですよ。

──と、言いますと?

横山氏:
 僕は「コロナ明けはハッピーな話が流行る」とずっと言っていたんです。殺伐としたダークな話がウケるのは世の中が幸せなときだと思っていて、世の中が暗いときにはハッピーで牧歌的なものがウケると。先日公開したトレーラーは少し違うテイストに見えているかもしれませんが、実際の中身はめちゃくちゃノリがいい、歴代シリーズでもいちばん明るいくらいの話なんですよ。

 ハワイという舞台も“コロナ明け”で旅行に行けるようになった世相を反映しています。「旅」というテーマもふくめて、我々が狙ったものが今回のTGSで結実してきているという実感がありますね。

 まだコロナが完全に明けたとは言えないかもしれませんが、皆さんがすごい勢いで外に出始めているじゃないですか。このTGSの熱狂ぶりもその一部ですよね。この世の中の流れに乗るというのは『龍が如く8』で本当に狙ってきていた部分なんです。

 だからステージもハッピーな感じで、堀井に歌ってもらったりもしました(笑)。

───“歌うゲームディレクター”というのは世界初だと思います(笑)。堀井さんとしては、横山さんに「TGSのステージで歌え」と言われてどう思ったのですか?

堀井亮佑氏(以下、堀井氏):
 「マジっすか!?」と(笑)。でもビジネスデイで歌うのはさすがにキツいかもなと。

横山氏:
 ビジネスデイはメディアの方が多いですから、人が集まらない可能性があったので「じゃあ一般日にやろうか」という話になりました。

 今回、ステージでは『龍が如く』ファンを喜ばせることだけを考えていたんです。『龍が如く』の代表的なミニゲームである「カラオケ」は、みんなが好きな要素じゃないですか。堀井を知らなくても歌っていれば盛り上がるんじゃないか。そんな確信があったんですよ。

堀井氏:
 じつは僕本人としてはまんざらでもなかったりするんですけどね(笑)。実際、やってみたらすごく楽しかったんですよ。あんなに大きなステージで、あんなに多くの方の前で歌えたことは、本当に気持ちよかったなと。

横山氏:
 ウイカさん【※】もすごく気持ち良かったとおっしゃっていました。「“龍フェス”やりたい」と(笑)。

※タレントのファーストサマーウイカさん。『龍が如く7外伝』では蒼天堀のなんでも屋「赤目」を演じる。

堀井氏:
ゲームって家で遊ぶものなので、外に集まる機会ってそれほどないんですよね。そういう意味でもちょっと珍しい、良いイベントにできたんじゃないかと思っています。たくさんのユーザーさんに楽しんでいただけた、という手ごたえはありますね。

『7外伝』と『8』では桐生の人生観にも迫る

──「RGG SUMMIT」で『龍が如く8』の新規映像を見たときに感じたのは「これまでのシリーズ作とは空気が違うな」ということだったんですね。それは、さきほど横山さんがおっしゃった「明るい、ハッピーな話」という狙いからそう感じたことだと腑に落ちました。

 ただ、どこか初代『龍が如く』を思い出すようなところもありまして……。

 『龍が如く』では、当時知っているけど行ったことはないという人が多かった「歌舞伎町」を再現した「神室町」が舞台。一方、『龍が如く8』では行ったことがある人は多くはないであろうハワイが舞台となっています。また、『龍が如く』では伝説の極道の傍に守るべき少女が立っており、『龍が如く8』では病に侵された桐生の隣りに未来を託す春日がいる……。こういった部分をセルフオマージュのように感じたんですよね。もちろん、雰囲気はぜんぜん違うのですが。

横山氏:
 特に初代『龍が如く』に寄せているわけではないんですが、チャレンジングなことをやるときって、どこか似てくるんだと思いますよ。一歩踏み出た感じというのはあるのかもしれません。「新しいことが始まるんだ」というオーラですかね。

──発表で驚いたのは「桐生がガンを患っている」という、ストーリー中の重大なポイントを発表されたことでした。「なんで公式が発売前にそれを言っちゃうの?」と疑問に思ったのですが、しばらくして気づいたことがあったんです。

 あくまでも個人的な感想ですが、『龍が如く7』では「桐生から春日へ“主人公のバトン”がちゃんと渡されていない」というモヤモヤがずっとあったんですね。今回、発売前に桐生がガンであることが明らかにされたことで、『龍が如く8』ではしっかりと春日に主人公のバトンが渡されるんじゃないか、と気づいたんです。それもあって、いまはすごく期待が高まっていて。

堀井氏:
 桐生一馬というキャラクターにちゃんと向き合わなければならない、というのはありました。『龍が如く7』ではレジェンド的な立ち位置で登場していましたが、やはり毎作続けてレジェンドキャラクターとして出すのもどうかというところがあるじゃないですか。桐生をそういう“便利なコマ”として使い続けるべきではないですし。

 ですので、『龍が如く7外伝』と『龍が如く8』では、どういう顛末で桐生が生きてきて、どうやってここまでたどり着いたのかというところをちゃんと描いています。このあたりは開発チーム内でも相当しっかり議論して、いまの形にたどり着いています。

──何というか繋げ方が見事だな、と。『龍が如く8』のストーリーは『龍が如く7』を作り終えてから手がけられたわけですよね?

横山氏:
 もちろんです。究極の後付けですよ(笑)。

阪本氏:
 『龍が如く7』は売れる保証もなければ、そのあとに続編を出せる保証もありませんでした。ですので、後付けで何とかしています(笑)。

──週刊連載のマンガと同じですよね。その場その場でもっとも盛り上がることをやるといいますか。

横山氏:
 我々は後付けがすごくうまい、という自負はあります。屁理屈が上手なんですね(笑)。

阪本氏:
 一方で、年表みたいな部分はきっちりとやっています。ファンの皆さんが違和感を覚えないように、キャラクターの年齢などの部分ではまったくウソをついていません。桐生についても年齢不詳のスーパーマンにはしたくなかったので、ちゃんと歳をとって……というところを描いています。

──ファンの目線からしても、仮に桐生が死ぬとしたら誰かに殺されるより、病気で亡くなるほうが受け入れやすいと感じました。

横山氏:
 一応言っておきますと、桐生が死ぬと決まったわけではないですからね(笑)。ただ仮に「病気で死ぬ」としても、それもいわば開発側の都合ではあるじゃないですか。ですので「桐生が死ぬところなんて見たくない」とか、「そんな展開にしなくていいのに」という声があがるのも理解できるんです。

 だからこそ、桐生のストーリーの中で「病気の原因になったかもしれない事件」というものはちゃんと描いています。もちろん人が病気になった本当の理由なんてわかりませんので、明確にしているわけではありませんが。

 ただ「この事件がなかったら、こうはなっていなかったかもしれない」という背景を描いているわけです。その事件を経てなお、彼が「“どう生きる”と決めたのか」というところに注目していただきたいですね。

──なるほど……。桐生の人生観みたいなものが見えてくるわけですね。

横山氏:
 桐生って、職業選択の自由があるようでない人生だったわけですよ。春日一番と桐生一馬、ふたりの主人公の共通点ってじつはここなんです。ふたりとも“なるしかなかったもの”になり、なるようにしかならない人生を過ごしてきた。

 もうひとつ共通しているのが、無実の罪で人生の長い時間を潰されてしまったというところですね。若くて、もっとも楽しいはずの時間を過ごしていないわけじゃないですか。だからこそ、歳をとってから何かを取り戻すように生き生きと動くんだと思うんです。

 たとえば一番なんかは、まだ精神的に「中学生」くらいのところがあると思っていて。だから紗栄子へのプロポーズも、見ようによっては“中学生の告白”みたいな面があるんじゃないでしょうか(笑)。

龍が如く8』開発者インタビュー【TGS2023】_001

堀井氏:
 40を超えた人間とは思えない面を持っていますよね。

横山氏:
 こんなことはゲーム中では一切触れていないんですが、僕が思うに一番は「バレンタインを意識するような40代」なのではないかなと。チョコレートがもらえるかもらえないかでソワソワしている、普通の40代がとっくの昔に通り過ぎた感覚を持っている人物だと思いますよ。

 『龍が如く8』ではそんな春日の感覚と、桐生の達観した……生き急いだ先の人生観が混ざり合い、独特の面白さに結びついていると思います。先ほどのバトンを渡すという話にもちょっとつながるかもしれません。

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副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。

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