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『龍が如く8』“King Gnu”井口理さんの起用は「ランニングに短パンで走っている姿」にスタジオ代表・横山昌義氏が惚れ込んだから!?

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期間の短い2タイトルの発売は“ファンの熱量”を冷まさないため

──TGS会場で阪本さんと談笑した際、「今回発表した内容はまだまだゲーム全体の一部です」とうかがったのですが……。

横山氏:
 本当に一部ですね。ゲームプレイ的なところもそうですし、ストーリー上のキャラクターも、まだ出てきていないインパクトのある奴らがたくさんいます。朝倉未来さんのキャラクターも、まだお見せしていないですよね。ただ、ストーリートレーラーは今後一切作る気はありません。

──それは、今回公開したストーリートレーラーで語るべきは入れ込んでいるということなのですね。ちなみに、新作発表会の最後に流れたのはオープニングムービーなんでしょうか?

横山氏:
 そうです。本当は最後に「これから第1章で流れるオープニング映像を上映してこの回を終了したいと思います」とお伝えするつもりだったんですけど、先に「ありがとうございました」と言ってしまって。そうしたら、みんなも手を振り始めて暗転しちゃったんですよね(笑)。

 発表会は予定よりも30分くらいオーバーしてしまったのですが、パーティーメンバー全員が壇上に集まっているというのをはじめ、内容としてはすごく良かったと思います。

──たしかに、ゲーム中の雰囲気が伝わるやり取りを見ることができました。

横山氏:
 外部の方も含めて、いま本作に携わっている人はみんな『龍が如く』のことが本当に好きで集まってくれていると思います。その感じが伝わると、お客さんとしても輪の中に入れるような楽しさを味わえるんじゃないかと考えていて。

 今回のトレーラーの最後に入れた「世界中の仲間たちよ 良い旅を! BON VOYAGE」というのは、完全にファンの皆さんに向けたメッセージです。

──「パーティメンバー+プレイヤーで旅をしよう!」と。

横山氏:
 もうひとつ決めていたのは、先ほどお伝えしたように、ストーリートレーラーを何本も作らないということです。あれ以上、ストーリーの情報を出しても仕方がないと思うので。「主題歌が決まったのでPV作ります!」 みたいなこともやるつもりはありません。

 その代わりじゃないですが、今後はキャラクターの紹介映像とか、未公開キャストの発表などで新情報やヒントを出していこうと思っています。

 今回のPVについて言えば、普通に考えたら10分のムービー出すのってナンセンスじゃないですか。でも再生回数は過去一のペースなんですよ。

──それはすごいですね。

横山氏:
 10分でも面白ければ観てもらえるんです。「動画は短いほうが観られる」と最近はみなさん口を揃えて言うんですけども、その理由って単に「飽きたら観なくなる」ということじゃないですか。10分でも、飽きないくらい面白かったら最後まで観てもらえるんですよ。

 もちろん最初は反対の意見もありましたが、完成したらみんな「10分には感じない」と言ってくれました。

──龍が如くスタジオは、新しいことをやるときに「面白さ」だったり「内容」で何も言えなくさせていますよね。『龍が如く7』も発売前は不安の声が大きかったわけですが、いざ発売されたら、その面白さによって不安の声を吹き飛ばしていましたし。

堀井氏:
 自分たちが面白いと思うものを作っているだけなんですよね。ほかの人がどう思っているか、というところはあまり気にはしていません。『龍が如く7』もいろいろありましたけど、僕らとしては面白いのはわかっていたので。

阪本氏:
 一般よりも絶対に斜め上のものを作ろうというプライドはあると思います。想像できないような作品を作ろう、と。もちろん、反発はあるんですけどね。

横山氏:
 面白いかどうかは、味見すればわかってもらえることですから。

 『龍が如く8』でも「みんながこうしてほしい話」とか「幸せな桐生」というのは容易に想像がつくんですが、我々はそれをやらない。究極の後付けをもって、普通じゃ思いつかないようなストーリーをやっていくんです。

──チャレンジする姿勢は変わらない……とでも言えばいいんでしょうか。

横山氏:
 チャレンジとさえ思っていないんですよ。チャレンジってどこか背伸びした、無理した行為じゃないですか。そうじゃなくて、根っから頭のネジが外れていないといけない(笑)。

 僕自身、自分でストーリーの最初のセットアップを考えているとき「気が狂ってるな」と思いますもん。それにあっさりついてきてくれる開発陣みんなもすごいですよね。

堀井氏:
 “ワクワク”が何よりも最優先ですよね。自分が「こうだったら楽しいじゃん」と思う作品をどう実現するか。その追求という一点がブレないチームだと思います。

阪本氏:
 折衷案になることが少ないんですよ。誰も想像しないような横山の一発アイデアを実現してしまう。こじんまりとした話から作っていってもつまらないですよね。

龍が如く8』開発者インタビュー【TGS2023】_006
(画像はSteam『龍が如く8』ストアページより)

──なるほど。しかし恐ろしいふたつのタイトルの発売間隔の短さですよね。『龍が如く7外伝』が11月8日発売、『龍が如く8』が2024年1月26日発売ですから、約3ヶ月のあいだしか空いていないわけですから。

横山氏:
 さすがにあいだが短すぎるんじゃないか、というのは正直あります。あるんですけど、熱量ってすぐに冷めてしまうんですよね。

 『龍が如く7外伝』はボリューム的にはコンパクトなので、こちらで桐生に対する感情を高めて、すぐに『龍が如く8』を遊んでいただけるような流れがベストかなと思っています。体験版を付けたのもそういう意図があります。

 エンタメって冷却期間があるとダメなんですよ。いま「絶対買う!」と考えてくださってる方も、キャンセルする理由ってあとからいくらでも生まれてくると思うんです。それ自体はまったく悪いことじゃなくて、新しく魅力的なものが出てきたらそっちに乗り換えるというのはすごく自然な行為じゃないですか。

 だから熱いうちに『龍が如く8』は発売します。発売を遅らせようかという話もあったんですけど、結果的に逆に1週間くらい前倒しになりました(笑)。

『龍が如く』はもはやひとつのジャンルなのかもしれない

──では最後に、発売を待ち望んでいるファンへそれぞれひと言ずつお願いします。

堀井氏:
 ワクワクしながらお待ちいただいているファンの方がたくさんいらっしゃるかと思いますが、本当に楽しいゲームなので、期待を裏切るようなことはない作品に仕上がっていると言えます。

 僕は『龍が如く7外伝』と『龍が如く8』でディレクターをさせていただいたうえで、この作品のテーマが「幸せってなんだろう」とか、「人生ってなんだろう」というお話だと思っているんです。

 たとえば『龍が如く7外伝』の桐生って名前もないし、会いたい人にも会えない。でもアクションではすごく動けるという状態。一方で『龍が如く8』の桐生はガンになっているということもあり、仲間を頼らざるを得ない。このどちらが“幸せ”なのかというのは、見る人によって異なる感想を抱くと思うんです……。

 ただ2作品を続けてプレイしていただくことで「桐生にとっての幸せってなんだろう」というか、そういう深みを感じ取っていただけるんじゃないかなと。一気に遊ぶことで、とても良いエンタメとドラマが待っていますので、ぜひ手に取ってみてください。

龍が如く8』開発者インタビュー【TGS2023】_007

阪本氏:
 この短期間で違うジャンル、違う主人公、違うストーリーを世に放つのってプロモーション的にも難しいんですよね。というのも、感動してもらえる要素が多すぎて、どこを切り取ってお伝えすれば良いかわからないんです。正直、伝えきれていない部分があるな、というのは僕自身も認めています。

 でも2作品をどちらも遊んでくださると、私たちが裏で積み上げてきたものをちゃんと感じ取っていただける出来栄えになっていると思います。『龍が如く』史上最高のドラマ体験というのを味わっていただけます。ぜひ信じて、遊んでいただけるとうれしいです。

横山氏:
 我々には「ゲームを作っている自負」というものがすごく強くあるんですね。「俺らはゲームを作ってる、映画じゃねえ」という。でも、この東京ゲームショウを含めた数日間は“ゲームでさえないもの”を作っているんじゃないかという感覚に襲われていて。

 ここまでの話でも出ていましたけど、トークの内容が“人の一生”とかじゃないですか。人生とは、みたいな話がどんどん飛び出してくる。

──たしかに、今日はそういうテーマがたくさん聞けました。

横山氏:
 今回のTGSでは「神室町 RADIO STATION」の出張版みたいなことをやっていたんですね。そこで『龍が如く8』の中身を知らない宇垣さん【※】が無邪気にいろいろ聞いてきて、それに僕と黒田さん【※2】が答えたりしているんだけど、その内容がもはや「桐生一馬」という実在の人物の生涯を話しているんじゃないかっていう感覚に陥るもので。

 それでトーク番組が成立しちゃうって、変なんですよね。もちろんゲームを作っているんだけど、映画でもないし、ゲームでもないし、別のジャンルのものを作っているのかもしれない。だから『龍が如く』っていうジャンルがあるんじゃないかと最近は思っているんですよ。

※:声優の宇垣秀成氏。『龍が如く』シリーズでは真島吾朗役を演じる。
※2:声優の黒田崇矢氏、『龍が如く』シリーズでは桐生一馬役を演じる。

──あー、それはすごくわかります。

横山氏:
 昔からよく「映画みたいだね」って言ってくださる方はたくさんいて。それはきっと「映像作品として優れている」とか「ストーリーがすごい」という意味だと思うんですけど、最近は黒田さんとかも「大河ドラマみたいだね」って言ってくれるんですよ。

 大河ドラマにゲームが乗っかっているとか、ゲームで大河ドラマができるとか。これこそが成長なのかなと感じているんです。一度切りで終わる作品ではなくて、続いていく前提でユーザーさんが話題にしてくださっているんですよ。だって、もう『龍が如く9』の話を聞いてくる人もいるんですよ?(笑)。

──まだ『8』も発売されていないのに(笑)。

横山氏:
 でも、これもある種のチームに対する信頼の表れなんですよね。このチームならすぐに『龍が如く9』を作ってくれるだろう、と。

 『龍が如く』というブランドに「続編が出るまでのペースが速い」とか、「ストーリーが良い」とか、そういうイメージが付与されているんですよね。あと「奇想天外なことをやる」とか、「賛否の否のほうをやりがち」とかもあるかもしれない(笑)。すでにいろいろな前提ができあがっていて、それをみんなが楽しんでくれているような気がしています。

 この数日間で、そういう期待の中で僕らはモノづくりをしているんだなぁというのを実感しました。そういう期待に応える作品として『龍が如く7外伝』と『龍が如く8』は最強だと思っています。

横山氏:
 もう少し話してしまうと、『龍が如く8』はいろいろなスタッフの才能がすごく詰め込まれている作品なんです。

 たとえば、キービジュアルは選ばれたもの以外にも良いアートがたくさんあったんですよ。もっと視認性が良いものとかもあったんですけど、“とにかくカッコいい”という理由でこれに決まりました。隙間がないからテキストが入れられなかったりもしたんですけど、こういうのは理屈じゃないんですよね。

 ロングトレーラーを作ったのはスタジオに入って5年目くらいのプランナーで、もともとは映画とかをやっていた人間です。彼は『龍が如く8』という作品を言葉という意味ではもっとも理解していて、かつ映像編集のノウハウも持っていたので「やってみる?」と声をかけたら、あれが出てきたんですよ。曲の配置とかまとめ方もうまくて、本当に映画の予告編みたいに仕上げてくれたんです。

 オープニングムービーだって、デザインチームやイベントチームのスタッフが「こういう風にチャレンジしたい」と言い出したもので。僕自身も指示は出しているんですけど、自分じゃ作れないものをみんなが作って、それがどんどんカッコよくなっているのを目の当たりにしていると「超良いな!」という感じがしますね。

──お伝えしたように『龍が如く8』は「空気がいままでと違う」と感じています。多くの方にそれは伝わっているのかな、と思いますね。

横山氏:
 TGSでも、いろいろな業界の方にめちゃくちゃ声をかけてもらえました。みんな興奮気味に「『龍が如く8』良いね!」という話をしてくれまして、本当にありがたい限りです。

堀井氏:
 Samsungさんのステージでのお話なんですけど、トークショウで登壇した際、カプコン『ストリートファイター6』のディレクターさんやスクウェア・エニックス『ファイナルファンタジー』のディレクターさんにも『龍が如く8』の発表を大絶賛していただいて。ステージ上でもわざわざ宣伝してくださったんですよ。

──他社さんが公の場で褒めてくれるというのは、またすごい話ですね……!

横山氏:
 総合して、この一連のイベントは本当に「良かった」ですね。まだ終わったわけじゃないんだけど(笑)。

──ひとりのシリーズファンとしても、楽しみにさせていただいております。本日はありがとうございました。(了)

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副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。

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