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『マイクラ』で「桜」が実装されるけど、「桜の木の色」って本当にピンク色なの? と思ったので実際の「桜染め」を体験してみた。黄色い桜の木材に秘められた、花びらにも負けない鮮やかなピンクに感動した話

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 『マインクラフト』(以下、マイクラ)では2023年2月、次期大型アップデート「1.20」の内容のひとつとして「桜バイオーム」が発表され、SNSで大きな反響があった。

筆者がスナップショット版で撮影した桜バイオーム

 日本の昔話のような幻想的な風景も素晴らしいが、桜バイオームに生える桜の木から作れる木材を使うと、ピンク色の建築ができるのもまた魅力的だ。さらに花びらを使えば、ピンク色の染物もクラフトできる。

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 さて、盛り上がるツイッターの感想を眺めていた私はこのような意見を目にした。

 「綺麗だけど、実際の桜の木は黄色なのに『マイクラ』の木材はピンクなんだね」

 確かに桜の木材の色は黄色である。しかし実は、その黄色には鮮やかなピンクが隠れているのをご存知だろうか。

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黄色い桜の枝

 日本には古来から「桜染め」という染色法がある。『マイクラ』では桜の花から染料をつくりだせるが、実際の桜染めでは開花前の桜の木の枝からさまざまな方法でピンク色を抽出する。その鮮やかな色味は決して花びらにも劣らず、染め上げられた布は非常に美しい。

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桜染めで染められた布

 むかし、国語の教科書でその話を読んだのを思い出した私は「桜染め」を知識として知ってはいても、具体的にどのような事なのかを知らない事に気づき、がぜん興味が湧いてきた。そこで急遽、東京都台東区にある染物屋のMaito Design Worksさにご連絡し、桜染めの体験会を取材させていただくことになった。

 実際に見てみた桜染めは想像より遥かに科学的で、繊細で、興味深い作業だった。

 マインクラフトの桜バイオームは今春ではなく、年内にリリースだという。桜の実装を待つ方や、『マイクラ』をより楽しみたい方に、桜染めの魅力の一端をお伝えしたい。

 なお桜染めの工程は本来、体験会に参加した方のみが知る情報なので、この記事では少し表現をぼかさせていただく。興味がわいた方はぜひ、以下のURLから違う草木染めの体験会に申し込み、実際に体験してみて欲しい。

取材・文/ShoyoFILMS
編集/久田晴


 Maito Design Worksさんは東京都蔵前駅から歩いて2分のところにある。うかがうと漫画やアニメ、ゲームで見たことがあるようなイメージ通りの現代的な工房があり、非常に興奮したのを覚えている。

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 桜染めをはじめとして多くの草木染めを製作しているこの工房は、多くの素材を収納する引き出しの他、煮出すためのコンロや布を脱水する為の洗濯機などがある。

 桜染の体験会がはじまると、まずは布の濃染(のうせん)作業がはじまった。これは布を洗ってゴミなどを取り除くとともに、色をしっかりつけるため薬品をしみこませる作業だ。

 濃染作業が終わり、脱水を行っている間に染料の座学と抽出が行われる。まず桜染めに使われる布は絹や木綿などの天然のものであり、桜は山桜の樹齢が200年から300年の老木が望ましく、なるべく白い花の品種で花咲く前の枝が良いという。
 補足しておくとこの流儀はMaito Design Worksさんのものであり、他にもいろいろな方法があるそうだ。

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桜染めに使用する枝

 同じ枝でも桜の皮、枝先、枝元でそれぞれ違う表情の色が抽出できるので、枝から部位に分けていく。削がれた樹皮はゴボウのようだ。

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 この桜染め体験会で繰り返し言われたのは「ピンク色に染めるには枝にふくまれる黄色い成分(フラボノイド)を取り除くのが重要」ということ。これは黄色が混ざるとオレンジ色になってしまうためである。そこでまずは、枝を煮てフラボノイドを抜いていく。

 続いてピンクの色素であるタンニンを煮だして抽出していく。こちらはフラボノイドを抜く時とは違う種類の液体を使っている。液体のphも重要なので、木を燃やした灰や酢、炭酸カルシウムなどを入れて調整する。
 作成した液を火にかけ、枝の部位を煮だすと赤色が現れた。それを空気と混ぜると反応がさらに進み、より鮮やかな色になっていく。

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抽出した黄色い色素と赤い色素。ちなみにかき混ぜなどに使う棒も化学的な反応を起こさないようにステンレス製の物が使われているそうだ。

 各部位から抽出した色素は、自然光の下で見て色の最終確認をする。色素が完成したら、いよいよ布を染めていく作業だ。

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工房外の日光の下で実際の色を確認する

 作成したそれぞれの部位から抽出した色素をバケツに入れ、何度も布を染めていく。参加者の中には途中で色素にフラボノイドを戻し、ピンクとオレンジでグラデーションを作る方もいた。

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染め上げたばかりの布。乾かすと更に淡いピンク色になる。

 『マイクラ』の桜の木材は、花の色のイメージや他の木材との兼ね合いを優先してピンク色になっているのかもしれない。しかし確かに、現実の桜の木もピンク色の色素を持っていた。

 正直に話すと、実際の作業を見学させてもらうまで、私は桜染めというのは「桜の枝をまるごと煮て色を煮出して布に移す」だけの素朴で単純な作業だと思っていた。

 しかし実際には科学的な手順を重ね、鮮やかな色を作り出す繊細な作業だった。取材を通して、物事を知った気になってしまうのが一番自分を腐らせるのだと実感した。今回の経験で様々なインスピレーションを得られたし、この事を思い出して今後は『マイクラ』内で楽しく染物をクラフトできそうだ。

 近々実装される『マイクラ』の桜バイオーム、いち早く体験したい方はワールド生成時に“実験的機能”をオンにすることで楽しむことができる。マップ中で探すのが大変な場合は、クリエイティブモードなどにしてコマンドを有効にすると楽にたどり着けるはずだ。

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実験的機能の1.20のアップデートをオンにしている様子(Java版)

 また、このたびお世話になったMaito Design Worksさんではこのような体験会のほか、様々な草木で染めた製作物の販売も行っている。興味を持たれた方は、ぜひ公式ホームページを見ていただきたい。

Maito Design Works

https://maitokomuro.com/

〒111-0051
東京都台東区蔵前4-14-12 1F
Tel. 03-3863-1128
Fax. 03-3863-1127

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桜で染めた財布
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ライター
元ゲームプランナー。現在はWebエンジニアをやりながらゲーム制作を勉強中。動画、イラストなど創作活動にも手を伸ばす。好きなゲームは「TOBAL2」等
Twitter:@shoyofilms

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