現地時間の6月10日(土)~12日(月)にかけてアメリカ・ロサンゼルスで開催されたUbisoft Forwardのリアルイベントにて、『アサシンクリード』シリーズ3作品の最新情報が公開された。本稿では『アサシンクリード ミラージュ』のナラティブディレクター・Sarah Beaulieu氏へのインタビューとともに、その模様をお届けする。
なお、本イベントにおいては『アサシンクリード』作品のプレイアブルデモは出展されておらず、本稿は現地でのプレゼンテーションをまとめる形となることには留意されたい。
取材・文/久田晴
アサシンクリード ネクサス
『アサシンクリード ネクサス』は6月2日(金)の「Meta Quest Gaming Showcase」にて発表されたMeta Quest向けタイトル。『アサシンクリード2』などの主人公・エツィオ、『アサシンクリード3』の主人公・コナー、そして『アサシンクリード オデッセイ』の女性主人公・カサンドラを操作する一人称視点のVRアクションゲームである。
本作は『アサシンクリード』シリーズとして初のVRゲームであるのみならず、初の一人称視点の作品でもある。ここ10年間、『Eagle Flight』や『Werewolves Within』などをはじめとするVRゲームに注力してきたUbisoftだが、ついに『アサシンクリード』もVR化されるというわけだ。
プレイヤーはVRヘッドセットとモーションコントローラーを身に着け、3人のアサシンになりきって、体を動かしながらシリーズを象徴するアクションを堪能できる。それぞれ異なる時代・場所を生きた彼ら3人の、いまだ語られていないストーリーをシングルプレイヤーキャンペーンとして体験できるという。
ゲーム中ではパルクールや高所から飛び降りながらの暗殺など『アサシンクリード』シリーズでおなじみのアクションを駆使してストーリーを進めていく。ただしVRゲームということもあり、パルクールをする代わりにテレポート形式で移動できたり、高所恐怖症のプレイヤーを手助けする機能など、アクセシビリティも充実させるとしている。
記事執筆時点では発売日、価格などの詳細は明らかにされていないが、Meta Quest Storeでストアページがオープンしている。興味を持たれた方はウィッシュリストに登録して続報を待とう。
アサシンクリード ジェイド
『アサシンクリード ジェイド』はスマートフォン(iOS、Android)向けの配信を予定している作品で、開発はLevel Infiniteが担当する。『アサシンクリード』のゲームプレイやストーリー、ビジュアルをはじめとする象徴的な要素をモバイルで不足なく楽しめる作品とすることを目指しているそうだ。
開発にはアンリアルエンジンを採用し、高品質なグラフィックを用意。またアクションもモバイルのタッチパネルを使った操作に最適化し、オープンワールドの探索やパルクールアクション、戦闘アクション、ステルスキルといった『アサシンクリード』シリーズらしい要素をしっかりと備えているという。
以前にも発表された通り、舞台となるのは古代中国の王朝で、「始皇帝」の存在でも知られる秦朝。時系列的には『アサシンクリード オデッセイ』と『アサシンクリード オリジンズ』の間にあたるそうだ。ゲーム中ではまだ新しい「万里の長城」なども見られるとのこと。
プレイヤーはひとりのアサシンとして、秦朝に隠された秘密の真相を突き詰めていく。幅広い種類の衣装を組み合わせたキャラクターカスタマイズが可能となっており、中には一見した限りでは『アサシンクリード』シリーズのアサシンとは思えないような風体も登場していた。
本作は今年の夏以降からはじまるさまざまなベータフェーズを通して、プレイヤーのフィードバックを収集していく構え。同じく夏にはさらなるゲームの詳細を明らかにするそうなので、引き続き続報に注目していきたいところだ。
アサシンクリード ミラージュ
最後のひとつが『アサシンクリード ミラージュ』。『アサシンクリード ヴァルハラ』に登場したキャラクター・バシムを主人公に据え、シリーズの原点回帰を謳う作品である。おもな開発は2017年に設立された「Ubisoft Boardeaux(ボルドー)」が担っているが、そのほかにも計11か所のUbisoftスタジオが参加しているとのこと。
本作の特徴はパルクールとステルス、暗殺に重きを置いた、初期のシリーズ作品をイメージしたゲームプレイになっている点だ。物語の舞台も中東へ戻り、バシムはアサシン支部で依頼を受け、手がかりを集めてターゲットを影から始末する。パルクールもさらに改善され、よりスムーズに移動できるようになっているという。
イベントでは開発中のバージョンを用いたプレイ映像も公開され、暗殺の後に街中でパルクールを駆使して追手をまいたり、市民の間に紛れて敵地へ潜入していく模様が紹介された。また複数人の敵をマークし、テレポートのように移動しながら瞬時に連続ステルスキルを行うアクションも非常に印象深い。
バシムは吹き矢や煙玉など、多彩なガジェットを活用して敵の目を逃れ、状況をコントロールしていく。改善されたというパルクールのアクションは非常に滑らかで、まさに“アサシン”といった雰囲気のプレイを観ることができた。
アサシンクリード ミラージュ:ナラティブディレクター・Sarah Beaulieu氏インタビュー
──本日はよろしくお願いいたします。
Sarah Beaulieu氏(以下、Beaulieu氏):
はい、よろしくお願いします。
──ではまず本作のストーリーについてですが、ずばり物語のテーマは何になるのでしょう?
Beaulieu氏:
『アサシンクリード ミラージュ』のテーマは「自由」ですね。主人公のバシムはアサシン教団の前身となる暗殺者集団・“隠れし者”の一員ですが、彼自身もとある問題を抱えている……といった具合になっています。
この「自由」というのも本作では大きく分けてふたつの自由が描写されていまして、ひとつはバシムの師になるロシャンという人物が語る「アサシンである」という自由。そしてもうひとつが、反乱軍に属するキャラクターたちが持つ「自分が好きなようにやる」という自由ですね。
もちろんアサシンとして活動するバシムは暗殺を行っていくわけですが、ゲームプレイの中でもいくつか選択する場面が訪れます。全体を通して「アサシンとは何か?」を考えさせるようなシナリオを用意しましたので、そういったところを感じ取っていただけると嬉しく思います。
──なるほど。選択肢が用意されるというのは、エンディングが分岐するということでしょうか?
Beaulieu氏:
いえ、エンディングはひとつだけです。あまり深くはお伝えできませんが、暗殺という行為に対する、バシムなりの葛藤のようなものが描かれていくと考えていただけるとよいかもしれません。
──公開された映像では、バシムが謎の怪物のようなものと相対するシーンも描かれていましたが、あれにはどのような意味があるのでしょうか。
Beaulieu氏:
あれはバシムの心の中にある“何か”が怪物の形で表れているものですね。敵キャラクターというわけではありません。
──ちなみに、バシム自体『アサシンクリード ヴァルハラ』で登場したキャラクターですが、『アサシンクリード ミラージュ』は前作をプレイしていなくても問題なく遊べる内容と考えてよいのでしょうか。
Beaulieu氏:
はい、本作は単体で誰でも理解できるストーリーとして完結していますので、過去作品を遊んでいなければならない、というわけではありません。本作ひとつで良いストーリーだな、と感じていただける出来だと思っています。ただ『ヴァルハラ』のプレイ経験がある方には「なるほど!」と思っていただけるような要素を用意しています。
──ありがとうございます。今回はボリュームを近年の作品からは大きく削って、原点回帰を掲げた作品となっていますよね。
Beaulieu氏:
そうですね、初代『アサシンクリード』と同じくらいのボリュームになるように意識しています。また、あくまでバシムというキャラクターにフォーカスした作品となっていますので、プレイヤーの意思が介入するというよりは、バシム本人の物語が独立して進んでいくような形になっています。それも全体的な長さを短くした、ひとつの理由ですね。
バシムという現時点でのメインシリーズの最新作で登場したキャラクターをメインに据えて、『アサシンクリード』の原点に回帰する。まさに過去と現代の『アサシンクリード』が合わさってできた最新作、というわけです。
──ありがとうございます。これは個人的な好みから気になっているポイントなんですが、本作に最近のシリーズではおなじみとなっている「ディスカバリーツアー」【※】は搭載されるんでしょうか……?
※ディスカバリーツアー:『アサシンクリード』シリーズで展開している教育目的の専用モード。綿密な時代考証に基づいて再現されている各タイトルの世界を、戦闘やクエストが存在しない状態で探索して楽しめる。
Beaulieu氏:
はい! 用意しています。「バグダッドの歴史」モードとして、歴史の専門家の監修のもと、リアルに再現された街並みを作り込んでいますよ。
──嬉しいです、楽しみにしております……! それでは最後に、日本のファンに向けたメッセージをいただけますでしょうか。
Beaulieu氏:
日本のプレイヤーの皆さんからはたくさんの好意的な反応をいただいており、私たちも誇りに思っております。また本作の制作の中ではいろいろとチャレンジした部分もありますので、そうしたポイントが伝わってくださると嬉しいですね!
──ありがとうございました。(了)