──狂気的な恋愛。
これを聞いてみなさんはどんな恋愛ゲームを思い浮かべるでしょうか。『ドキドキ文芸部』、『君と彼女と彼女の恋』など同ジャンルにはいくつもの名作があげられます。一例として挙げた上記の2作品の共通点を挙げるのならば、どちらもヒロインたちのサイコな言動が作品の“狂気”に直結していることでしょう。
しかし、今回紹介する『狂気より愛をこめて』の“狂気”は上記作品とベクトルが違います。
そう……。
“絶対にキャラクターとの会話が噛み合わない”のです。
なのに、ストーリーが破綻せずに恋愛シミュレーションを楽しめてしまうのです。なんというか怖くないですか? だって、会話のキャッチボールができてないのに恋愛が成就しちゃうんですもの。
日本語っぽい言葉を話しているけど、全く意味がわからない。あるいは、そもそも日本語じゃない。
しかし裏を返せば“狂気”な一面があるからこそ、得られる体験やキャラクターの魅力に気づけ、結果としてテンポの良いストーリーに繋がっています。
というわけで、本稿では7月18日リリースの『狂気より愛をこめて』の“狂気”な一面に隠れたストーリーの魅力についてネタバレなしで紹介していきます。なお、本作には刺激の強い描写やメタ要素が多く含まれるためプレイする際には十分注意してください。
「会話が一切成立しない」恋愛ゲーム??
『狂気より愛をこめて』はPLAYISMより7月18日(火)に販売された「絶対に会話がかみ合わない男たち」との学園を描く恋愛アドベンチャーゲームです。
プレイヤーはもともと通っていた学校がテロリストにより爆破されたことにより、近所にあった「私立古詩庵歌羅芽琉院学園」(しりつこしあんからめるいんがくえん)に転校することに。しかし、転校先の学校の生徒には、まともに会話のできる生徒がひとりもいなかったのです。
登場キャラクターは、
- 関連性もない単語をひたすら羅列するだけの陽気なイケメン「佐伯祐介」
- 髪にタツノオトシゴが絡まったセクシーな保健の先生「荒川修司」
- 可愛いらしい見た目と裏腹に毒舌で暴言を吐いてくる少年「田村マシュマロ」
- 青白い肌で異国言語を話す生徒会長「アオルタ」
の4名。会話は全てフルボイスで展開されます。
ちなみにプレイヤーの文章はおかしくないので、一見まともそうですがたまにとんでもない発言や行動を取ります。つまり、全員狂人です。
このように、一風変わった恋愛ゲームなのですが、基本的なシステム自体は既存の恋愛シミュレーションと至って変わりません。あくまで本作が変わっている点と言えば、個性的なキャラクターたちとそれを取り巻く学校だけです。
なので、普通の恋愛シミュレーションと同様に、水着イベントや下校イベントなど、定番のやつも発生します。ただし、一切会話が成立することはありません。
改めて説明してみると、恋愛ゲームとしては破綻しているようにしか見えません。「会話が一切噛み合わない恋愛ゲーム」っておかしくないですか??
でも実際にプレイしてみると、不思議なことになぜか破綻しておらず、普通の恋愛ゲームと同じように、意中の男の子と恋愛ができてしまう(ように感じられる)し、それっぽいストーリーが展開されている(ように感じられる)のです。
自分でも書いていて意味不明極まりないですが、その理由について具体的に見ていきましょう。
“感情”レスポンスで展開される恋愛ストーリー
さて、本題に入る前に一つだけ言わせてください。本作のキャラクターは最っっっっっっっっっっ高にかわいい!
ドットで描かれるキャラクターは、エキセントリックなゲームの内容とは裏腹にデフォルメチックで、あたたかなやわらかい雰囲気を醸し出しています。
それに加えて本作のキャラクターたちは、言葉が一切通じないのですが、その代わりに(?)感情表現がめちゃくちゃ豊かです。キャラごとの立ち絵は複数用意されており、選択肢を選ぶごとに文章が支離滅裂でも声のトーンや表情でプレイヤーに分かるように応えてくれるのです。
なにより、キャラクターたちが感情を積極的に表に出してくれることで、否が応でも情が湧いてきます。選択肢の中から回答を選ぶと、支離滅裂な言葉とともに感情を顔に出してくれます。
これが前述の通り、最高にかわいい……!
「言葉が分からない」というデメリットはむしろ小動物をあやしているような感覚になり、そんな小動物的な彼らがオーバーリアクションで返答してくれると、めちゃくちゃ嬉しくなってしまいます。筆者は男性ですが、女性が彼らに惚れる理由がとても理解できた気がしました。
要するに、このゲームはキャラの感情表現が最高にかわいいので、なんか言葉がいらなくなるんです。
会話もストーリーも、言葉のやりとりではなく、プレイヤーとキャラクターとの“感情”のレスポンスで展開されます。その結果としてストーリーも詰まることなく、1年間の学校生活を楽しむことが出来ます。
たとえ一切言葉が通じなくても、伝えたいことは理解できる。そんな人間的なコミュニケーションの本質を見せつけられてしまう作品となっています。もはや言葉はいらない……。
結局、狂気より愛が勝つ
本作を遊んで分かったことは、「結局、狂気より愛が勝つ」ということ。筆者はゲームを遊ぶにつれ、どんどんキャラクターの魅力に惹き込まれ、いつのまにか狂気は恋愛の二の次になっていました。
この感情は、文章の意味がわからなくてもストーリー構成や感情表現が秀逸だからこそ得られたものだと思います。
個性的な4人のキャラクター、詰まることなくハイテンポで繰り広げられるストーリー、恋愛シミュレーションとしてのボリューム。どれをとっても本作には想定以上のクオリティが作品に詰まっていました。
正直な話、筆者は恋愛ゲームはそこまで得意ではないほうで、遊ぶ前は少し不安を感じていました。しかし実際に遊んでみたら、同じ男性でありながら、キャラのかわいさに魅入られてしまうほどの魔力を感じました。
“狂気”をミックスすることでまったく新しい、唯一無二な恋愛シミュレーションとして完成した『狂気より愛をこめて』はPC(Steam)にて販売中。興味があれば是非とも本作を遊んで、素敵で狂気な学園ライフを送ってみてはいかがでしょうか。