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なぜファミコンのビジュアルは “生々しくないのに怖い” のか? 『国産RPGクロニクル』(イースト・プレス)の著者らが80年代から90年代にかけてのレトロゲームを語りつくす

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1作目だけどIV!『桃鉄』をパロディ化したすごろくゲーム『決戦! ドカポン王国IV ~伝説の勇者たち~』

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渡辺さん:
 皆さん『桃太郎電鉄』(以下『桃鉄』)はご存知だと思いますが、この『決戦! ドカポン王国IV ~伝説の勇者たち~』(以下、『ドカポン王国IV』)はいわばファンタジーRPG風の『桃鉄』です。そもそも『桃鉄』が『桃太郎伝説』というRPGのパロディとして生まれたすごろくゲームなんですが、その『桃鉄』をさらにパロディ化したのがこの、『ドカポン王国IV』なんです。

 いろいろとぶっ飛んだゲームデザインがめちゃくちゃ面白い。僕は中・高時代に友達の家に泊まって、いったい何回徹夜したかわからないくらい、長期間遊んでいました。

 『ドカポン王国IV』と、あたかも歴史あるタイトルのように見えますが、じつはこれが一作目なんです。一作目なんだけど、当時のRPG風の『ドラクエ』や『FF』みたいな雰囲気を出すために最初から『IV』っていうタイトルを付けていて、二作目として出たのが『ドカポン3・2・1 ~嵐を呼ぶ友情~』です。

 とにかく一作目の『ドカポン王国IV』は神がかったゲームデザインでした。『桃鉄』の場合は、ルーレットに示された目的地をみんなで目指しますが、これは「ドカポンランド」という王国のどこかにボスモンスターがドロップします。そのボスモンスターをみんなで倒しに行き、最初にボスモンスターを倒した人が称えられるというルール。

 各村を支配しているモンスターとの戦闘があるため、一般の村に止まったときもモンスターと戦う必要があり、勝つとその村を解放することができます。解放された村で装備品を買って自分を強化していく流れです。

 この戦闘システムがとにかくよくできていて衝撃的でした。ジャンケンをベースにしたシンプルなゲームシステムだけど、駆け引きも戦略性もあり、プレイヤー同士でも奥深い対戦ができる。

 「できる」というより、同じマスに止まると強制的い戦闘になって、負けたプレイヤーはお金やアイテムを奪われて一回休みとなるので、相当険悪になるんです(笑)。CMでも積極的に「友情破壊ゲーム」みたいなことを謳っていました。

 ボードゲームでは負けているプレイヤーへの救済措置も重要で、『桃鉄』ではそれが徳政令カードだったりキングボンビーだったりするんですが、『ドカポン王国IV』では悪魔に魂を売ることができるんです。悪魔化すると一時的にめちゃくちゃ強くなるので、その間に他のプレイヤーをボコボコにして逆転できたりして。

 とにかくゲームデザインがよくできていて、僕も後にボードゲーム開発のプロになるとは当時は思っていませんでしたが、めちゃくちゃ影響を受けました。例えば僕が総合ディレクションをしているKaiju on the Earthシリーズの『ユグドラサス』というゲームは、よく見ると実は『ドカポン』っぽい遊びになっています。

神になれるすごいゲーム『アクトレイザー』

橋本さん:
 『アクトレイザー』はすごいゲームです。スーパーファミコンのローンチとほぼ同時期に出たタイトルなんですけど、何がすごいって、「神になれる」んです。アクションと『シムシティ』が合体したようなゲーム性なんですけど、ただ合体しているのではなく、神になってその土地を開発していくというふたつのモードがセットになっています。

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渡辺さん:
 主人公は神となり、何もないところから人間を生み育てていき、人間の共同体を作っていきます。人間の共同体から、神のパワーみたいなものが充填されていき、それがある程度貯まったところで魔物の巣に主人公が乗り込んでいく。そうすると突然、2Dの横スクロールアクションになるんです。

橋本さん:
 とにかく演出が全部すごいんです。ただ切り替わるのではなく、空に浮いている神殿にいる神が、突入していくときにスカイダイビングのような目線になり、石像に落ちる。そしてその石像が実体となって走り出し、敵を倒していく演出がめっちゃかっこいい。

RAM RIDERさん:
 これがスーパーファミコンの「拡大回転機能」と呼ばれているやつですね。。

渡辺さん:
 ゲームの成り立ちとしては、『アクトレイザー』の前に『ポピュラス』という神になって人類を育てるゲームがあったので、その影響を受けてそうですね。

橋本さん:
 『シムシティ』はその後?

渡辺さん:
 いや、『シムシティ』があって『ポピュラス』かな。その二つはほぼ同時期です。『アクトレイザー』は、2Dの見下ろし画面で街を作っていく『シムシティ』や、神になって天地創造をしていく『ポピュラス』の影響を受けています。それらのゲームの要素をシミュレーションゲームモードに入れ込み、さらに「それだけだと日本人にはウケなそう」ということで、横スクロールアクションも足したんでしょうね。

橋本さん:
 そのシステムがうまくできていて、街を成長させると神のヒットポイントが上がっていくから戦闘も楽になってくる。ちゃんと繋がっているので、戦闘を頑張ろうと思うんですよ。

渡辺さん:
 今でいう『天穂のサクナヒメ』のシステムに近いかもしれません。稲作を頑張ると稲作パワーが貯まっていき、農業の神である主人公が強くなる。

橋本さん:
 「人間を可愛がることによって俺も強くなる」と思えるから戦うシーンも「人間のために頑張ろう」という気持ちでやるじゃないですか。なぜなら俺は神だから(笑)。アクションゲーム部分はけっこう難しいですが、頑張れる。『アクトレイザー』は続編の『アクトレイザー2』も出ていますよね。

RAM RIDERさん:
 『アクトレイザー2』は、ゲーム雑誌の広告ページでいつ見ても「980円」と出ていた記憶があります。

渡辺さん:
 残念なことに『アクトレイザー2』はアクションゲームパートだけになってしまっていて、「一番個性的な部分を削るってどんな判断だ!」と思いました。

橋本さん:
 どうやら海外のユーザーからは「シミュレーションモードが余計だ」という意見が多かったって話もあったみたいですが。『アクトレイザー』のゲームの良さはふたつのモードがあるその “掛け算” だと思ってましたからね。

 でもそんな中、『アクトレイザー』は近年リメイクが出て、そういった全部のストレスが解消されているんです。アクションゲームの難易度もやさしい感じもあり、音楽もグレードアップしていて。天使と間たちの見た目がアニメ調になっていてそこが現代風でしたね。
 ただ、この民衆たちが神に祈りをささげるとき、スーファミ版の1作目は跪いてくるんですけど、アニメ版の民衆たちは跪いてないんですよ。そこがちょっと神感がなくて寂しかったかも(笑)

 でも、神が地上に降り立つシーンはリメイクのほうがいい。グラフィックも音楽もグレードアップして、神の『HALOジャンプ』みたいになっています(笑)。

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ある意味『アクトレイザー』の真の続編『ソウルブレイダー』

渡辺さん:
 『ソウルブレイダー』は『アクトレイザー2』とはまた別の意味で『アクトレイザー』の続編なんです。

一同:
 え? そうなんだ。

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渡辺さん:
 エニックスが『アクトレイザー』の二年後に出したゲームなんですけど、開発チームも同じクインテットですし、僕は『アクトレイザー』の真の継承者は『ソウルブレイダー』だと思っています。『アクトレイザー』は好きだけど『アクトレイザー2』にガッカリした人は、ぜひ『ソウルブレイダー』を遊んでほしい。

 『ソウルブレイダー』は当時の感覚でもパッケージイラストとかいろいろ垢抜けていなくて、中古で投げ売りになっていたんです。僕も中学生のころ中古で買って遊んでみたんですけど、遊んでみたら神ゲーだと思いました。神ゲーというのは主人公が神の使徒だからというのもあるんですが(笑)めちゃよくできたゲームです。アクトレイザーとはちょっと違って主人公自身は神ではなく、神から地上に使わされた天使みたいな存在です。

 ゲーム開始時、地上は魔王に封印されていてほとんど何もありません。なにもない荒野にダンジョンがあるのでそこに潜って冒険します。ダンジョン内にある「魔物の巣」から産まれる魔物を剣や魔法で倒していき、1グループすべて倒しきると魔物の巣が封印されるという仕組み。魔物の巣がひとつ封印される毎に地上のどこかに家や人物などが復活して、どんどん地上に人類が戻り、街ができていきます。

 街に住む人々はそれぞれにシナリオがあり、悩みを解決してあげると、アイテムがもらえたり、魔法をパワーアップできたりと主人公が強くなり、またダンジョンに潜っていくというサイクルになります。

 ひとつのダンジョンのラスボスを倒すと街が完全に復活して別の地域に行くことになり、海、山、都会などそれぞれの街を復活させていくゲームです。

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橋本さん:
 まさに『アクトレイザー』じゃないですか!

渡辺さん:
 そうなんですよ!ある意味、僕たちが思い描いていた理想の『アクトレイザー』です。『アクトレイザー』の場合はアクションパートとシミュレーションパートが二個一の面白さがありましたが、それが完全には融合してなくて、分離している欠点がありました。その欠点が解消されたのが『ソウルブレイダー』なんです。

橋本さん:
 それだ!『アクトレイザー』のリメイクで追加されたタワーディフェンス要素…に似た要素が『ソウルブレイダー』にはもうすでに備わっていたんですね。『アクトレイザー』のリメイクでは地上に魔物が出てきたときに弓矢で倒していくんですけど、地上に出てきた魔物に関しては「天使の弓矢が届かないのでタワーディフェンスゲームになります」というアレンジが入っていて、賛否両論になりました。それを、完全に小回りの利くキャラでやるという意味では、『ソウルブレイダー』の方が正当的な続編に思えますね。

渡辺さん:
 なので、僕はスクエニさんは『ソウルブレイダー』を『真アクトレイザー』としてリメイクすべきだと思います。自分がスクエニ社員だった頃に提案しろよって話ですが(笑)。

橋本さん:
 いや、一番の願いは『レーシングラグーン』のリメイクですよ。それを言うべきでしょ(笑)。

渡辺さん:
 それは橋本さんの願いでしょ(笑)。ちなみに『ソウルブレイダー』に続くエニックスのアクションRPG『天地創造』『ガイア幻想紀』は全て同じクインテットが開発しているので「クインテット三部作」と呼ばれていて、三本ともすべて「神と人類の物語」なので『アクトレイザー』ファンにはオススメです。

ツインスティックのコックピット感がすごかった『電脳戦機バーチャロン』

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渡辺さん:
 続いては1995年にセガから出た『電脳戦機バーチャロン』(以下、『バーチャロン』)というアーケードゲーム。「3Dロボット対戦ゲーム」というジャンルそのものを打ち立てた、様々な意味での金字塔です。

 3D空間で手前に自分のロボがいて、向こう側にいる敵のロボと戦うゲームは、今でこそジャンルとして確立されていますが、当時はこうしたゲームを各メーカーが手探りで開発し初めていた中でのいきなりの決定版で、まずそこが画期的でしたね。

 あと、そういったゲーム性に加えて『バーチャロン』はアーケード筐体がすごいんです。「ツインスティック」という2本のスティックを持って操作するのですが、本物のようなコクピット感を味わえます。その筐体がふたつ繋がっていて、1プレイヤー側と2プレイヤー側で対戦するというような仕組みになっていました。

 僕は格ゲー勢ではありませんが、世代ではあるので『ストリートファイター2』やPlayStation版の『鉄拳1』『鉄拳2』はそれなりに遊びました。とはいえ格ゲーに関してはそんなに詳しくなく、何よりゲーセンではほとんど遊んでいませんでした。

 だけど『電脳戦機バーチャロン』の登場は、ロボットアニメファンの血も騒ぎ「これは俺たちの夢のゲームが出た」と本当に興奮したんです。僕がゲーセンに通い詰めた、最初で最後のタイトルが『電脳戦機バーチャロン』でした。おふたりはやっていますか?

RAM RIDERさん:
 僕もめちゃめちゃやりましたよ。初代『バーチャロン』はもちろん、『電脳戦機バーチャロン オラトリオ・タングラム』(以下、『オラトリオ・タングラム』)もやりました。

渡辺さん:
 バーチャロンのロボたちは「バーチャロイド」と呼ばれているんですが、どれも背中にセガサターンを背負っているデザインなんですよね。それが続編の2にあたる『オラトリオ・タングラム』ではドリームキャストになっている。コンシューマ版ではどちらも家庭用のツインスティックまで発売されてました。これ、すごいクオリティでしたよね。

RAM RIDERさん:
 そうですね。「本当のロボットの操作ってこれじゃん!」みたいな説得力がありました。

渡辺さん:
 もちろん家庭用はパットでも遊べるんですけど、やっぱりツインスティックでやらないと“バーチャロン感” は薄いですよね。

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 セガって『ハングオン』とか『R360』みたいな大型筐体のゲームにも力を入れる社風があったと思いますが、バーチャロンはその系譜のゲームでもありますね。

橋本さん:
 セガって逸話が多いゲームメーカーじゃないですか。振り返ると、やっぱすごいタイトルが多かったと思います。『バーチャロン』は当時メディアで最初に見たんですけど「超未来じゃん」と思ってぶち上がったことを覚えています。

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RAM RIDERさん:
 僕は当時、東京の大森に住んでいました。そこに「セガワールド大森」というセガのゲームセンターがあったんですけどそこでは常に情報の出ていない筐体のロケテストが行われていたので、「ゲーセンで人だかりを見る」という初めての体験をしました。『バーチャロン』もそこで見ました。

橋本さん:
 ゲーム雑誌とかにもまだ載っていない状態の筐体に遭遇するっていう。

RAM RIDERさん:
 はい。毎回必ずワンプレイ200円なんですよ。大体30秒くらいで終わっちゃうんですけど、行列になってみんなガンガンやっていましたね。

渡辺さん:
 例えば『ガンダム』関連のロボットゲームは今も昔もいっぱいありますが、『バーチャロン』はその世界観も含めて完全オリジナルなのもよかったんですよ。設定資料集を読むとかなりハイブロウなSF設定があって、既存のロボットアニメとも全く異なる、新世代のロボットものを作るんだ、という気合に圧倒されます。さらに、当時の設定資料集にはプロデューサーの亙さんによる『バーチャロン』の企画書がほとんど全文掲載されていて、これには個人的に影響を受けまくりました。

橋本さん:
 『バーチャロン』の企画書が! 内部文書じゃん!

渡辺さん:
 そうなんです。大学生の時に僕はその企画書を見てマジでショックを受けて、後にゲーム業界に進んだきっかけのひとつになっていると思います。しかも僕は、ほぼそれしか「ゲームの企画書」というものを見たことがない状態でゲーム業界の就職活動をおこなったので、企画職志望者が提出しなくてはいけない企画書の課題でも、完全に亙さんの『バーチャロン』企画書を元にして書きました。ところが実際にプロの企画職になってから振り返ってみると、この企画書はだいぶ普通の企画書ではなかったんです(笑)。

 冒頭でかなりの長文で思想というか激励文のようなものが書かれている構成で、一般的にはそういう企画書ってなかなか読んでもらえないじゃないですか!

橋本さん:
 たしかに骨子が分かるまで時間かかるのは問題かもしれないけど、企画書のストーリーはあったほうが絶対いいと思いますよ。僕は今、企画書を見る側と出す側のどちらも経験があるので分かりますが、ガワだけ書いてあるものって意外と選びづらいというか……。

渡辺さん:
 確かに、何周か回ったうえでこの企画書はやっぱりすごいし「アリ」だとも思うんですけどね。この企画書には魂がありますから!

橋本さん:
 熱いものがこもっていることが伝わるんでしょうね。

渡辺さん:
 もの作りの元になるパワーだから、企画書に魂は必要ですよね。ただ、新卒採用で自分の思想を延々何ページも読ませるような企画書を出してしまったのは、やっぱり失敗だったと思います(笑)。

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ライター
ライター/編集者。コンピューターホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。 現在はゲームやホビー、IT、XR系のメディアを中心に、イベント取材やインタビュー、レビュー、コラム記事などを執筆しています。

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