ぐにゃぐにゃのボディが特徴的なキャラクター「ヒューマン」を操作し、ステージ内に配置されたオブジェクトや仕掛けを動かしながらゴールを目指す物理演算系3Dアクションパズルゲーム『ヒューマン フォール フラット』。
No Brakes Gamesが開発し2016年にリリースされた本作は、ぐねぐね曲がる不安定なキャラクターや、ゆるめのデザインとギャップのあるリアルな物理演算を使った謎解き要素によって注目を集め、現在も複数人での協力プレイゲームの定番として親しまれている。
さて、今回紹介するのはさまざまな分野の専門家と共にゲームの世界を「さんぽ」して、世界の見え方の違いを共有するゲーム実況企画“ゲームさんぽ”を投稿するニコニコチャンネル「ゲームさんぽ/よそ見」にて公開された『【ゲームで実験】物理&工学を『HUMAN Fall Flat』で学ぼう/ゲームさんぽ』という動画。
本動画ではいいださんとホドウさんが案内人、そして湘南工科大学の工学部で教鞭を執る野中誉子(複合材料工学)さん、大見敏仁(材料強度学)さん、宗秀哉(無線通信工学)さん、稲毛達朗(航空宇宙流体工学)さん、池原忠明(スポーツ工学)さんが出演し、物理&工学の専門家の視点から『ヒューマン フォール フラット』の世界をさんぽする様子が収められている。
本稿では動画『【ゲームで実験】物理&工学を『HUMAN Fall Flat』で学ぼう/ゲームさんぽ』より工事現場ステージの一場面をピックアップ。専門家の目を通してみる『ヒューマン フォール フラット』の世界をご紹介する。
文/富士脇 水面
いいだ:
次のステージ(工事現場)に行ってみましょう。
稲毛:
このゲームはクリアするのに正解は一個じゃないって感じ?
いいだ:
そんなルート行けた?みたいなルートもあります。
稲毛:
そう意味では長いこと楽しめる良いゲームだと。
いいだ:
別にゲームの宣伝はしなくていいですよ(笑)。今日はどちらかと言えば先生方に、湘南工科大学のいいところを出して頂ければと思っています。
野中:
このゲームはどうなったらクリアなんですか?
ホドウ:
奥のほうにある非常口のマークがある場所に飛び込むとクリアで、次のステージに落ちていきます。
宗:
じゃあ、ある種の脱出ゲームみたいになっている?
ホドウ:
そうですね、かなり脱出ゲームっぽい感じ。この場所も壁に囲まれてどうしたらいいかわからない感じ。
ここの板をですね、剥がして先に進んでもいいんですけど、窓ガラスを何とかできないかなと。
大見:
この木の板で窓ガラスをかち割る。
稲毛:
お、いいですね!やってみましょう。アモルファス【※】の破壊を。
※アモルファス
原子の配列が不規則で結晶構造を持たない物質のこと。
ホドウ:
木の棒でいけるか!?
ちょっと気の棒だと頼りないのかもしれないので、こっちのクッションを使ってみましょう。
宗:
クッション?
(クッションを押し付けて破壊したガラスを見て)
いいだ:
っていうのが一応ここの正解っぽいやり方。
ホドウ:
木を外す以外だと、これで行けそうみたいな感じです。
破壊の専門家としてはどうでしょうか?
大見:
ガラスは割れている絵になってますけど、たぶんこれは(破壊する瞬間に)この形に割れるって計算しているわけではない。
「ガラスって割れるとこんな形になるよね」っていうのをあらかじめプログラミングして、あのパーツごとのグラフィックを作っているはずです。
野中:
どこ叩いても同じ形に割れるっていう感じじゃないですかね。
(次のガラスは)あの消火器投げたら割れない?
稲毛:
そうですね、(一点にしかぶつけていないのに)全部消えるっておかしいですもんね。
野中:
あそこしか叩いていないのに(全部が壊れた)。あれぐらいの大きさに対して右端しか叩いていないのに、左の端まで綺麗に落ちるっていうのはあまり考えられないですよね。
いいだ:
なるほど、やっぱりその周辺から壊れていく?
野中:
うん。強化ガラスみたいに綺麗にパリパリって亀裂が伝播するようなやつだと(異なる割れ方をする)。
ホドウ:
強化ガラスだと亀裂が綺麗に伝播するんですか?
大見:
もともと割れにくいようにガラス自体に力をかけていて、残留応力って言うんですけど。
いいだ:
残留応力?
大見:
誰も触っていなくてもガラス自体が壊れないようにその中にもう力がかかっている。そのバランスを崩しちゃうと一気にもともとあった力のバランスで亀裂が(広がる)。
それを考えるとこれも端っこだけ傷つけても全体がいくっていうのは、ありえるかなっていう。
ホドウ:
次もまた矢印が書いてあるんですけど。
稲毛:
あのレバー使わないんですか(笑)? ワクワクしてたのに。
池原:
使ったら何が動くのかなって。
ホドウ:
何が起きるかの前に現状をお知らせしておこうかと思いまして。
この壁がどうにもならないってところで、最後の最後にあのレバーに行こうかと。
稲毛:
焦っちゃった(笑)。
大見:
あ、これ(レバー操作)は揺らすだけ?ちょっとしか移動しないんだ。
ホドウ:
左にやると左にレールを移動します。下の振り子と上のレールを見ると受験の二体問題【※】を思い出すんですけど、二つの動きが一つの系に収まってるみたいな。
※二体問題
互いに相互作用を及ぼす2つの点の動きを扱う問題。例としては惑星の周りを回る衛星、恒星の周りを回る惑星、原子核の周りを電子など。
いいだ:
定番の問題なんですね。
ホドウ:
皆さんは問題を作られることもあるんですか?
大見:
我々の、自分の担当している授業の問題は作りますけど、大学入試はちょっと秘密です(笑)。
ホドウ:
シークレットですね(笑)。
(破壊された壁を見て)
いいだ:
破壊実験やるときって、やっぱり実験の段階では壊れるまでやりますか?
大見:
そうですね、壊して「どのくらいの条件で壊れるのか」っていうのを調べたりする。
いいだ:
ソファで例えば「5万回座れました!」みたいな、結構えげつない回数大丈夫ですよみたいなのがありあすが、ああいうのって本当に5万回座るんですか?
大見:
多分やってると思います。5万回とか10万回とか。
稲毛:
(人が座らず)押すやつで。
稲毛:
(このステージは)なんの工事現場なんだろう。
野中:
なんの工場現場かは明らかにされていないんですか?我々が今回は明らかにしてもらっていないだけではなくゲーム自体が?
ホドウ:
もう工事現場としか書かれていないので、工事現場なんだろうなーと思ってました。
野中:
えー!そんなの納得いかなーい。
いいだ:
じゃあ今日明らかにしましょう(笑)。皆さんの英知を結集していったいここが工事現場なのかを。
いいだ:
ちなみにヒューマンはちょっと工事現場にいそうな雰囲気の服装をしていますけど、これは今回の収録に合わせてホドウ君が「工学っぽい衣装」を選んでくれています。
池原:
どこらへんが(工学っぽい)ですか?
野中:
私もちょっとそこは問い詰めたいなとは思った(笑)。
稲毛:
赤いマフラーだとか(笑)。
ホドウ:
医学部は白衣とかですけど工学部はこれみたいな、着がちな服とかありますか?
野中:
機械工学科は作業服が一応ありますね。
部屋に入ったら上だけ作業服着替えて授業行かれたりしている先生が結構多いです。
稲毛:
電気電子工学科なんかも一応帯電防止とかで。
宗:
そうですね、着たりとかはあったりしますけど、僕は大体パーカーが多いかな(笑)。
いいだ:
ゆるめの人もいる(笑)。
池原:
人間環境学科は医療系の先生もいますので、白衣を着ている先生もいます。
体育とかスポーツとかだと血を採ったりとかするので、そういったときには白衣だったりとか。
ホドウ:
工学って言っても結構いろいろなユニフォームがあるんですね。
エンジニアとか言って用意してきましたけど……。
いいだ:
これだけじゃないよっていう(笑)。
稲毛:
これは着たことないですね(笑)。
物理&工学の専門家と『ヒューマン フォール フラット』をさんぽする本動画では、本稿で紹介したステージを含め三つのステージでさまざまなものの見え方を共有。
専門家の視点から見る操作キャラクターの生態や、工学的な視点を持った謎解きが披露されているため、ぜひ動画をチェックしてみてほしい。