12月17日はPlayStation Vitaが発売された日だ。
PlayStation Vita(以下、PS Vita)は、2011年12月17日にSCE(現・SIE)から発売された。PlayStation Portable(PSP)に続く、PlayStationブランドの携帯ゲーム機だ。
PSPの4倍となる960×544の高解像度ディスプレイを搭載し、初期型のPCH-1000シリーズでは有機ELディスプレイを携帯ゲーム機として初採用(PCH-2000シリーズは液晶ディスプレイ)。当時の携帯ゲーム機の概念を覆す、非常に美しい画面表示を実現している。
操作面では左右2つのアナログスティックに加えて、ディスプレイもマルチタップ対応のタッチ操作が可能。さらに本体背面にもタッチパッドを備えており、多彩な操作を楽しむことができる。
Wi-Fi接続でインターネットにアクセスできるほか、PCH-1000シリーズでは携帯電話回線に直接接続できる3G/Wi-Fiモデルも用意された。
ゲームソフトに関しては、PSPでは光学ディスクのUMDが使用されていたが、PS VitaではフラッシュメモリーのPlayStation Vitaカードとなった。インターネットのPS Storeからダウンロードソフトも購入可能で、PS Vitaに対応しているPSPのゲームをダウンロード版で遊ぶこともできた。ただしセーブデータやダウンロードコンテンツの保存には、PS Vita専用のメモリーカードが必要だった。
※『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』 オープニングムービー。
据置ゲーム機にも匹敵する美しい画面と多彩な操作方法を有するPS Vitaには、『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』『メタルギアソリッド HDエディション』『ファイナルファンタジーX/X-2 HDリマスター』といった、据置ゲーム機の人気タイトルが相次いで移植された。これにより外出先でもプレイできたり、PS3版とセーブデータを共有できたりと遊び方も広がった。
また、『討鬼伝』『ガンダムブレイカー』『GOD EATER 2』などのオリジナルタイトルも各社から発売された。ただ、こうしたタイトルはPSPやPS3、PS4などでも並行して展開されるものも多かったため、PS Vita独自のカラーを確立するのはやや難しかったようだ。
そんななかでもSIEは、『GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において彼女の内宇宙に生じた摂動』『SOUL SACRIFICE』『FREEDOM WARS』といった個性的なゲームを積極的に発表した。なかでも『リトルビッグプラネット』のメディアモレキュールが制作した『Tearaway ~はがれた世界の大冒険~』は、背面タッチパッドをはじめとするPS Vitaの機能をフルに活かした内容になっている。
PS Vitaが活躍したのは、日本でもPCのインディーゲームが話題となり、家庭用ゲーム機でもゲームソフトをダウンロードで購入するのが一般的になっていく時期と重なっている。世界的大ヒットとなったクラフトゲーム『Minecraft』の、日本でのブレイクを牽引する要因のひとつがPS Vita版だったのは興味深い。
PS Vita版『Minecraft』がリリースされた2015年頃、PCや据置ゲーム機とは縁の薄かった当時の小中学生の間で、『Minecraft』を手軽に遊べるハードとしてPS Vitaに注目が集まった。2016年には、オリジナルデザインが刻印されたPS Vita本体と『Minecraft』のソフトが同梱された数量限定版も発売されたほどだ。
2013年に登場した新型PS Vita「PCH-2000シリーズ」は、有機EL液晶ディスプレイの代わりに通常の液晶ディスプレイが搭載された一方で、PCH-1000シリーズよりも薄型軽量となったモデルだ。またPS Vitaは据置ゲーム機に匹敵するクオリティのゲームを楽しめるだけに、家庭のTVに接続してPS Vitaのゲームをプレイできる専用ハード「PlayStation Vita TV」も、2013年にリリースされている。
2011年に登場したPS Vitaだが、その後のスマートフォンの普及と高性能化によって、携帯ゲーム機を取り巻く環境は大きく変化した。PS Vitaも2019年3月には全モデルの生産を完了し、2023年現在、専用ソフトの動作するハードとしてはSIE最後の携帯ゲーム機となっている。
だがSIEは2023年11月15日に、PlayStation 5のリモートプレイ専用機「PlayStation Portal リモートプレーヤー」を発売した。その形状からはどことなく、PSPやPS VitaといったSIEの携帯ゲーム機の系譜が感じられる。