自由意志を持ったアンドロイドが感情と合わせて直面するもの、それは悩みである。
人間と同じような繊細な心を持ちながらも、「アンドロイド」というアイデンティティを持つ彼ら彼女らが思い悩むトピックは、もしかしたら我々以上に切実なものかもしれない。
青エビ研究所が手がける『バイナリ・シンドローム』は、そんなトラウマや答えのない悩みといった人間でも共感できる悩みを抱えたアンドロイドたちを描くアドベンチャーゲームだ。
1月20日・21日(土・日)に開催された東京ゲームダンジョンにて、本作を試遊することができたので、本稿ではそのプレイレポートをお送りする。なお、体験版はオンラインにて無料で配信されている。
文/anymo
十アンドロイド十色な悩み
今回プレイした体験版に登場したのは、研究所で雑務を行う汎用アンドロイド「リーゼ」、オーダーメイドの養育用アンドロイド「シヲン」、軍事用アンドロイド「ニゲル」の3名。「ニゲル」は戦場での出来事をきっかけに正反対の性格になってしまったり、「リーゼ」は研究員の一言から失敗が続いたりと人間におけるトラウマを思わせるような悩みを抱えているようだ。
プレイヤーはこの中から1名を選択して、人工島の実験都市「ゼルノア」のカウンセラーとしてアンドロイドらにカウンセリングを施していくこととなる。
アンドロイドならではの悩みに人間的な方法で寄り添う
試遊で選択したのは「シヲン」。彼女は「養育対象にアンドロイドとバレてはいけない」という規約を守るため、養育対象であるハルに嘘をついてまでアンドロイドであることを隠している。それに対して深く罪悪感を抱いているようだ。彼女は冒頭で自身が嘘が苦手であることを吐露しながら、誠実さと両親の狭間での苦悶を少しずつ語る。
カウンセリング中は「LOOK」、「TALK」、「THINK」、「MOVE」のコマンドを選択することができ、アンドロイドの悩みをじっくりと傾聴して解決策を共に考える。ときには相手の考えがまとまるまで様子を伺うことも必要だ。
「DATA」として閲覧できる資料にはカウンセリングを進めていくことで更新されていくカルテのほかに「カウンセリングの心得」などが含まれている。
「カウンセリングの心得」には、相手の話を相手の立場に立って聞く共感的理解などロジャーズの3原則を引用した3つのルールが書かれているほか、主人公の書いた研究報告書には人間と同様のカウンセリングがアンドロイドにも効果があることが記されていた。
これらの資料には、アンドロイドであるからこその悩みに話を聞いて寄り添うという極めて人間的とも言える手段で向き合うという本作のユニークさが現れている。特に研究報告書には「該当記録データの削除、体罰」などのアンドロイドの権利を侵害するようなこれまでの修理手法が記されており、胸が痛む。
彼女と会話を進めていくと、主人公も似た過去を持つことが明かされる。お互いの共通点を開示することでシヲンの悩みの解決への道が開けるのだ。
かわいくてダウナーなPC98リスペクトビジュアル
本作を試遊した「東京ゲームダンジョン」では、多くの作品が展示されていた。そんな中でパッと目を引くほどの魅力的なビジュアルも『バイナリ・シンドローム』の大きな魅力だろう。
PC-98をモチーフにしたレトロなインターフェースはわかりやすさと、世界観の構築を両立しているうえ、少しデフォルメされたキャラクターデザインともトーンが合っている。近未来という世界に生きる彼ら彼女らにハマるデザインは、キャラクターをメインにしている作品だからこそ必要だ。どの画面にいても作品の世界観を損なわず、感情移入したままプレイを進めることができる。
また、かわいさがありながらもネイビーなどの落ち着いたカラーリングも特徴だ。ポップすぎない画面は、本作で感じられるじんわりとした暖かさのような、ダウナーな良さを体現しているかのようだ。
さらに今回は、試遊後に配布されたカードからキャラクター愛が詰まった「おまけ情報」に飛ぶことができた。未解禁の情報などが詰まった同投稿はPIXIV FANBOXにて同じ内容を公開予定とのことで、本作の世界をより深く知ることができることができる。体験版をプレイして本作にキュンと来た方は、ぜひこちらもあわせてチェックしてほしい。
『バイナリ・シンドローム』はBOOTHにてPC向けに体験版を無料で配信中。同作者の『廃品回送』や『シルヴァーレコードにおやすみを』などといった、近未来的なテーマを扱った他作品も配信されている。