突然ですが、チーム戦のゲームで遊んでいるときに「全員自分でチームを組んでみたい」と思ったことはありませんか?
そんな欲望が実現したのが、今回ご紹介する『Lysfanga: The Time Shift Warrior』(以下、リスファンガ)です。本作は主人公・イメが持つ「時を巻き戻す力」により、過去の自分が分身となって一緒に戦ってくれる……という、まさに“チームメイト……全員俺!”みたいなゲームなんです。
助けてほしいタイミングでカバーをしてくれたり、フォーカスをバッチリあわせた集中攻撃で一気に敵を倒したり。そんな夢のようなチームをプレイヤーの手で誕生させることができるというわけですね。
とはいえリアルタイムで全員を動かすわけではないので、どんな立ち回りをしておくかはしっかり考える必要があります。がっつりアクションでありながら、同時にパズル的な楽しみも味わえる、新感覚の体験が『リスファンガ』の最大の持ち味と言えるでしょう。もちろん、このシステムを活かしたプレイヤーの頭を悩ませるギミックも満載です。
本稿ではそんな『リスファンガ』の独創性あふれるゲーム性を中心に、王道のストーリーや世界設定にも触れつつ、本作の魅力をお届けしていきたいと思います。
文/SINSI
チームメイトは“全員自分”。レムナントを戦略的に操り勝利を目指そう
本作のバトルの特徴は、ひと言で語ると「時間を巻き戻して過去の自分と共闘する」システムです。とはいえ、これだけでは「どういうこと?」となる方も多いでしょうから、順を追ってご紹介していきましょう。
本作はすべての戦闘において一定の制限時間が設けられており、制限時間以内にマップ上の敵を全滅させないと時間が巻き戻されて戦闘の初めからやり直しとなってしまいます。
その“やり直し”の際に生み出されるのが「レムナント」という過去の自分の行動を完全に再現してくれる分身です。移動した道筋はもちろん、与えたダメージなども再現されるので、この分身と共闘してステージクリアを目指す、というのが本作の基本的なゲームプレイとなります。
画像の左上部に表示されている数字は現在召喚することができるレムナントの数を示しています。
レムナントの数は時間を巻き戻すことができる回数とも共通となっており、分身の数=残機の数となっています。つまり、初期状態では時間を3回巻き戻すまでに戦闘に勝利すればクリアとなるわけですね。
時間が巻き戻る条件は複数あり、
・時間切れになる。
・イメが一定のダメージを受けて倒される。
・手動で時間を巻き戻す。(手動で巻き戻した際のみ効果が発揮されるスキルなども存在しています)
となっています。
そして本作は基本的にレムナントを召喚して戦うこと前提の敵の数や配置となっているので、事前にどのルートを通るのか、何人目のイメでそのルートの敵を排除しに行くかなどをあらかじめ計算して攻略に挑むことになります。
ちなみに本作は戦闘中にマップを見渡すことができないため、戦闘開始後は画像左上に表示されている「生存している敵の残数(下のドクロマークは倒した数)」と、イメの周囲に表示される敵の方角を示す矢印を頼りにして敵の殲滅を行うことになります。
さらに本作はレムナント(過去の自分)に干渉することで未来が変化してしまうことがあるので、今戦っているのが最後の敵かと思いきやどこかでズレが生じてしまい、気が付いたら「何体か倒してない扱いになってるー!?」なんて事態が巻き起こることも。
詳しくは後述しますが、例えば時間的な余裕ができたらといって″同時に撃破しないと復活してしまう敵″にちょっかいをかけてしまうと、逆に早く倒しすぎて同時撃破のタイミングがズレて復活してしまったりなどします。
なお、ステージをクリアすると付近に「ポータル・レリック」という紫色の光が出現し、再びクリアしたステージに挑むことができます。本作ではすべてのステージに目標タイムが設定されており、タイムアタックも楽しむことができる作りとなっているので、やり込みがお好きな方はぜひともチャレンジしていただければと思います。
ちなみに目標タイムを達成せずとも先のステージへ進むことはできるので、こちらはあくまでもやりこみ要素のひとつとなっています。
アクションの腕前だけでは勝ち抜けない!行く手を阻む様々なギミックがいやらしすぎる
筆者が本作を少し触った段階ではアクション要素がかなり前面に押し出されていると感じました。なので、多少強引な戦略を立てても「アクションゲームの腕前さえあれば、ゴリ押しでクリアできてしまうのでは……? リスファンガ、早くも″理解″いたしました」なんて余裕をぶっこいて遊んでいましたら……しっかりと対策されていました。
なので、ここからは本作のいやらしすぎる(ほめ言葉)ギミックをいくつかご紹介させていただきます。
まずはこちらの「ツインズ」です。
読者の皆さんも一度はRPGやアクションゲームで対峙したことがあるであろう、「同時に撃破しないと復活するタイプの敵」です。このタイプの敵……マジで苦手なんですよね……。
ツインズは序盤から登場する敵なのですが、彼の出現によって一気に戦闘開始前にマップを見渡し、戦略を立てる時間の重要性が増したのが面白かったです。
しかもステージが進むにつれて一度に登場するツインズの数が1組だけでなく、2組、3組と段々増えていくので、ゲーム終盤までツインズの存在には頭を悩まされることになりました。
こちらは「魔法の扉」です。
扉にエネルギーを供給しているクリスタルを砕くことで通過することができるようになります。
基本的には扉から遠くにクリスタルが配置されていることが多いので、ひとり目のイメでクリスタルを破壊しに向かい、ふたり目のイメでは道中の敵を処理しつつ扉が開くタイミングに合わせて現地に向かうといった、シンプルながらも実に本作らしい立ち回りが要求されることになります。
続いては「ガーディアン」です。
巨大な盾を装備しているラクセス(敵)で、正面からの攻撃をすべて無効化してくる厄介な敵です。
過去の分身に注意を引いてもらうなどして、その隙に背後からお仕置きしちゃいましょう!
ちなみに本作の敵には複数の倒し方が用意されている場合があるので、本作をプレイした際にはぜひとも様々な方法を模索しながら楽しんでいただければと思います。
最後に「ボムウィング」です。
ボムウィングは止めを刺した際に向いていた方向へと一直線に飛んでいき、敵や障害物に接触すると爆発して大ダメージを与えることができます。爆発した際の火力が本作でも随一の高さを誇っているため、敵ながらも上手く利用することができた際にはめちゃくちゃ頼もしい味方になってくれます。
3種の武器はどれも扱いやすく、“動かしていて楽しい”性能
本作でイメが使用する武器は全部で3種類存在しており、どれも強力で個性的な能力を有しています。
武器は戦闘中にワンボタンで素早く切り替えを行うことができるので、戦況に見合った武器を切り替えながら戦闘を有利に進めていきましょう。
まずは初期装備となる「シャムシールと盾」です。
通常攻撃の火力も高く、特殊攻撃を行うことで敵をスタン状態にすることができるので、序盤から終盤まで常に扱いやすいポジションに居てくれる頼もしい武器です。
ちなみに通常攻撃と特殊攻撃はコンボにすることが可能となっており、好きなタイミングでボタンを押すことでどちらの攻撃にも派生してくれる仕様となっています。
残念ながら本作の盾は敵を殴ること専用となっているのでガードは行えませんが、共通システムとして用意されている回避が非常に優秀な無敵時間を誇るため、防御面に関して不安になることはありませんでした。
続いては「チャクラム」です。
発生も早く、攻撃範囲も広い通常攻撃が優秀ですが、チャクラムの一番の特徴となるのは特殊攻撃を行うことで武器を投擲し、遠距離攻撃を素早く行うことができる点です。
返ってきたチャクラムをキャッチしたタイミングで通常攻撃ボタンを押すことで素早く近接攻撃に移行することも可能な上に、素早く移動しながら攻撃を行うことができるのもチャクラムの持つ魅力でしょう。
初期武器であるシャムシールと盾も充分に扱いやすいのですが、筆者はチャクラムを手にした際に「この武器めっちゃ強くない!?」と即座に感じた程度にはこちらも扱いやすく、動かしていて楽しい武器となっています。
そして最後は「トライデント」です。
通常攻撃の発生が早くリーチも長いという言うことなしの性能をしているほか、特殊攻撃では通常攻撃を行うことでトライデントにチャージされる魔力を解放し、敵に大ダメージの範囲攻撃を行うことができるというこれまた穴のない性能をしています。
こちらもチャクラムほどではないものの移動しながら攻撃を行うことができるため、ヒット&アウェイをしつつ安全に敵と戦うことができます。
そしてチャクラムを入手した段階でもめちゃくちゃ強いと思ったのですが、トライデントは更にそれを上回ってくるのか……!?と感じるくらい扱いやすく強力でした。
新しい武器を入手した時のワクワクってどのゲームをプレイしていても共通のものだと思うのですが、シャムシールからトライデントに至るまでの武器すべてにおいて「もしかしてこれが本作の最強武器なんじゃないか……?」と考えさせられる性能をしていたのは、本作をプレイしていてとても楽しかった部分のひとつでした。
多彩な強化システムで自分好みのプレイスタイルを構築しよう
本作では武器の他にスペル(魔法)やルーン(特殊魔法)、女神の力をイメに装着することで、ラクセスとの戦闘を有利に進めることができます。このカスタマイズ性の高さ、言い換えればプレイスタイルの多様性も魅力のひとつと言えるでしょう。
簡単に説明させていただくと、スペルは一定時間ごとに使用することができる強力な効果を持った魔法攻撃で、ルーンはいわゆるパッシブスキル。女神の力は攻撃することで蓄積されていくゲージを消費することで発動することができる超必殺技のようなものとなっています。
それではいくつかのスペルとルーン、女神の力をご紹介させていただきます。
まずは「掌握のボルテックス」です。
こちらは最初から使用することができるスペルで、自分の周りにエネルギーの波動を飛ばして近くに居る小型のラクセスを引き寄せてダメージを与えることができます。
時間制限が存在している本作ではまとめて敵を狩ることができるスペルは非常に便利で、筆者はしばらくの間こちらのスペルにお世話になっていました。
続いては「衝撃の閃光」です。
イメの前方に居るラクセスを吹き飛ばして三秒間スタンさせ、ダメージを与えるといったものです。
本作の敵は複数体で固まっている場合が多々あるほか、スーパーアーマーを持っているラクセスが配置されることも多くあるため、スタン効果を持ったスペルはそんな一癖あるラクセスたちを相手にする際に非常に役立ってくれました。
そして最後にご紹介させていただくスペルは「瞑想」です。
こちらは疑似的にガードを行うことができるスペルとなっており、基本的には回避しか防御システムが用意されていない本作においては貴重な″相手の攻撃を直接受け止めることができるスペル″となっています。
また相手の攻撃を受け止めた際にはイメが強力な反撃を行ってくれるので、ただの防御技ではなくカウンター技としての側面も持っています。
ちなみに筆者はこちらのスペルに一番お世話になりました。
つい調子に乗って攻めすぎて回避が間に合わなくなってしまった際のフォローや、相手に張り付いたまま効率よく戦いたい時など非常に重宝しました。
ここからはルーンのご紹介をさせていただきます。
まずは「保護のルーン」です。
装備することでイメが被弾することができる回数を一回増やすことができるというシンプルなものです。
通常時では二回ほどダメージを受けたらイメが倒れて巻き戻しが始まってしまうのですが、こちらを装備することでゴリ押しができる場面も増えて非常に重宝しました。
「残り時間が少ないけどこいつだけはどうしても倒しておきたい!!」みたいな状況が本作では頻発するので、筆者は序盤から終盤までとてもお世話になりました。
続いては「武器習熟のルーン」です。
コンボ中に武器の切り替えを行うことで、周囲にダメージを与える衝撃波を繰り出します。
衝撃波の威力もそこそこ高く、本作は武器によって攻撃中の移動速度が異なるので、上手く扱うことでラクセス殲滅速度の向上を図ることができます。
そして何よりも衝撃波のエフェクトが派手でかっこいい(重要)ので、プレイが華やかになること間違いなしなルーンとなっています。
最後にご紹介させていただくルーンは「時間崩壊のルーン」です。
先ほど本作ではステージに時間制限があるというお話をさせていただきましたが、時には制限時間が通常よりも短いステージが登場することがあります。
そんな時に役立つのがこちらのルーンで、装備することで巻き戻しまでの時間を延長する効果を発揮してくれます。巻き戻しまでの時間が伸びるということは一度のループで敵を多く殲滅することにも繋がってくるので、場合によっては攻撃系のルーンよりもこちらを選択した方が良い状況も存在するかもしれません。
ここからは女神の力についてご紹介させていただきます。
まずは「激発」です。
こちらは最初に入手することになる女神の力で、発動することでイメの周囲に大ダメージを与えるだけでなく、イメが放った衝撃波の中にレムナントが居た場合に連鎖的に衝撃波を放つことができます。
単体で発動しても強力な効果を持った女神の力ですが、レムナントとの連鎖を狙いやすいステージやボス戦などで特に重宝すると感じました。
そして最後にご紹介させていただくのは「神の刃」です。
発動することで一定時間イメの周囲を回転する光の刃を召喚し、接触した敵にダメージを継続的に与えることができます。また神の刃の発動中は無敵状態となるため咄嗟の緊急回避にも使用できるほか、光の刃に触れたレムナントに攻撃力アップのバフが付与され、追加のダメージを与えられるようになります。
純粋な攻撃力では先述した激発には劣るものの、攻守ともに万能な性能をしているので筆者が非常にお世話になった女神の力です。やはり無敵時間は正義……!
双子の姉弟を中心とした物語は王道的なワクワクがいっぱい
最後になりますが、軽く本作の世界設定についてご紹介できればと思います。くわしくはこの先を読んでいただければ分かるかと思いますが、本作では“双子”の姉弟にまつわる「王道的なワクワク」を感じさせる物語が展開されていきます。
物語のきっかけは500年前、謎の魔物「ラクセス」と共に封印されていた古代都市の封印が何者かによって解かれ、再び世界はラクセスの脅威に包まれてしまいます。プレイヤーは本作の主人公となるリスファンガの「イメ」を操作し、ラクセスや古代都市の謎に立ち向かっていくことになります。
ラクセスは500年前に突如発生し、世界を恐怖に陥れました。しかしマユラ(主人公たちの国)の女王コメーラが「昇天の儀式」を行い、神になることで数多の古代都市の時間を止めてラクセスを封印することに成功します。その後マユラでは一世代に一人、女王コメーラの力を受け継いだ運命の戦士「リスファンガ」が誕生するようになりました。
本来であれば一人しか生まれないはずのリスファンガでしたが、本編では双子が誕生するという予想外の事態が発生します。本来であれば二人ともリスファンガとして使命を託されるはずでしたが、弟の「ケホル」は突如として行方不明になってしまいました。
そして数年後、女王コメーラによって施されていたはずの時の封印が解かれ、主人公であるイメはマユラの古代都市へとその原因を探る旅に赴くことになります。
本来なら一人しか生まれないはずのリスファンガが双子として生まれ、その片割れが行方不明になっている部分とか「おいおいこんなの絶対に姉弟で争うじゃん……!」と、個人的にはかなりテンションが上がりました。
ちなみに弟のケホルにはゲームを開始してわりとすぐに再会します。
案の定、闇落ちしているっぽい上に、久しぶりの再会が道端に居るゴーレムをいじめている場面とかお姉ちゃん気まずすぎるよ……。
なんかラクセス操ってるし!!!
いや、敵をけしかけられている時点で喜ぶ場面ではないのですが、ケホルのビジュアルがあまりにもカッコよくて好みだったことと、やっぱり姉弟で争うんだ……という個人的な癖での喜びがですね!
とにかく来るなと言われても怪しさ満点のケホルを追いかけない理由が存在しないので、イメは古代都市の更に奥へと歩みを進めることとなります……。この先の物語は、ぜひ実際にプレイしてお楽しみください。
『リスファンガ』の最大の特徴である「時間を巻き戻して過去の自分と共闘し、突き進む」要素は、文面を見ただけではピンと来ない部分もあるかもしれません。しかし、いざゲームを開始してみれば、すぐにその強烈なオリジナリティを体験することができるでしょう。本作はそのくらい“表現したいこと”が直感的に伝わるような作りをしています。
時間を巻き戻し、過去の自分を幾重にも積み重ねてプレイヤーの理想の戦術を再現するという体験。これこそが本作の特徴であり、同時に「もっと遊んでみたい!」と短時間でプレイヤーに感じさせるほどの強力な魅力でした。
王道なアクションゲームでありつつ、パズルのような戦略性と深みをあわせもった『リスファンガ』。本稿を読んで興味が湧いたという方はぜひ、本作をプレイしていただければ幸いです。
『Lysfanga: The Time Shift Warrior』は2024年2月14日(水)より発売中。対応プラットフォームはPC(Steam, Epic Games Store)、価格は2,800円。日本語字幕に対応しています。