2月22日は初代Xboxが日本で発売された日だ。
マイクロソフトが送り出した初の家庭用ゲーム機であるXbox(初代)は、2001年11月15日に北米で発売された後、約3カ月後の2002年2月22日に日本でも販売が開始された。Xboxの日本発売から約1年前の2001年3月には、セガがドリームキャストの生産を終了しており、奇しくもゲームハードの世代交代を目の当たりにすることとなった。
2000年3月のGame Developers Conference(GDC)で、当時マイクロソフトの会長だったビル・ゲイツ氏から、同社の家庭用ゲーム機事業参入と初代Xboxのデモ機が発表された際には、ゲーム業界内外の反応は複雑だった。マイクロソフトはもちろんWindowsで知られるIT業界の巨人であり、PCゲームでは『Microsoft Flight Simulator』や『エイジ オブ エンパイア』といったタイトルで実績を挙げていたが、家庭用ゲーム機とはこれまでほぼ無縁だったからだ。
そうした反応はマイクロソフト側も理解しており、Xboxのローンチにあたっては日本でのプロモーションにも力が入れられていた。Xbox発売前の2001年、当時は春と秋の年2回開催だった東京ゲームショウ(TGS)では、春にビル・ゲイツ氏が日本のゲーム業界人に向けて基調講演を行っただけでなく、秋にはゲイツ氏自らTGSの展示ブースを巡って積極的なアピールを行った。
そして日本でのXbox発売日である2月22日には、東京・渋谷QFRONTのTSUTAYAにビル・ゲイツ氏が登場。早朝から詰めかけた日本のゲームファンにXbox本体を自ら手渡すというサービスで、日本のみならず世界の人々を驚かせた。
初代Xboxは本体にハードディスクが標準搭載された初の家庭用ゲーム機である。そのため、プレイヤーが自分でメニュー画面を開いたりしなくてもオートセーブでゲーム進行を保存できたり、ローディングをまったく意識せずに広いマップをシームレスに移動したりといった、現在のオープンワールドゲームでは当たり前となっているプレイ体験を、ここから家庭用ゲームでも味わえるようになった。
ちなみに、アメリカで発売された初代Xboxは、本体に同梱されたコントローラがかなり大きなサイズになっていたが、日本発売にあたってはデザインを大きく変更された日本独自のコントローラとなっていた。この日本版コントローラは後に、海外でも初代Xboxに同梱されるようになる。
また初代Xboxにはブロードバンド対応のLANポートが標準搭載されており、インターネットへの対応を前提とした設計になっていた。しかし、肝心のオンラインサービスである「Xbox LIVE」は、本体発売後から約1年後の2003年1月からの開始となった。そのためオンラインプレイ未対応の『Halo』第1作目などを対戦する際には、Xbox本体同士をLANケーブルで接続するLANパーティーのような形式で行われていた。
Xbox LIVEには初代Xboxの時点から、オンラインアップデートやダウンロードコンテンツへの対応、さらには体験版やダウンロード専用ゲームの配信など、現在のオンラインゲームサービスで日常的に利用されている機能がすでに揃っていた。しかしサービス開始が遅れたために利用していた人はそれほど多いとは言えず、Xbox LIVEの実力が本格的に発揮されるのは、後継機であるXbox 360の登場を待つことになる。
初代Xboxを代表するゲームソフトといえば、まず一番に挙げられるのは『Halo』だろう。「キーボードとマウス以外でFPSをプレイするなんてあり得ない」と言われていた時代に、コントローラで快適な操作感を実現した『Halo』は、初登場から20年以上を経た2024年現在でもXboxの代名詞的なFPSシリーズとなっている。
日本のXboxで人気の高かったソフトとしては、テクモ(現・コーエーテクモゲームス)の『DEAD OR ALIVE』シリーズが挙げられる。初代Xbox本体と同時に発売された『DEAD OR ALIVE 3』に加えて、『DOA』シリーズ1作目と2作目をリメイクした『DEAD OR ALIVE ULTIMATE』も初代Xboxでリリースされた。さらにリュウ・ハヤブサが主人公の3Dアクションゲーム『NINJA GAIDEN』のシリーズも、初代Xboxからスタートしている。
そして、『DOA』シリーズの女性キャラクターが水着で南国リゾートを楽しむ『デッド オア アライブ エクストリーム ビーチバレーボール』もまた、初代Xboxからシリーズが始まっている。ちなみに初代Xbox本体には『DOA』シリーズとコラボした限定カラーの「Xboxかすみちゃんブルー」も存在している。
また初代Xboxからは、他のゲームハードではなかなか体験できないようなインパクトの強いゲームソフトが各社から発売されている。ロボットのコックピットを再現した超特大の専用コントローラで操作する、カプコンの『鉄騎』はその筆頭だ。
フロムソフトウェアからは、アメリカ大統領が自らパワードスーツを身につけて悪と戦うという豪快なノリのアクションゲーム『メタルウルフカオス』が、初代Xboxで登場している。このゲームは長らく伝説のゲームとなっていたが、2024年現在はリメイク版の『METAL WOLF CHAOS XD』がリリースされている。
前述のとおり、初代Xboxの発売前にドリームキャストの生産を終了して他社のハードにゲームを供給するようになったセガからは、『パンツァードラグーンオルタ』や『JSRF ジェットセットラジオフューチャー』といった、名作ゲームのシリーズに連なる作品が初代Xboxで発売されている。さらにセガからは、アーケードの人気アクションゲームを家庭用にアレンジして移植した『スパイクアウト バトルストリート』といったタイトルもリリースされている。
また他機種からも発売されているタイトルだが、日本での初代Xboxソフトのリリースが少なくなったハード後半の時期に、カプコンの『レッドデッドリボルバー』やユービーアイソフトの『スプリンターセル』シリーズなど、ゲーム内容だけでなくローカライズの面でもクオリティの高いソフトがリリースされていたのが印象的だ。
初代Xboxに続いてXbox 360、Xbox ONE、Xbox Series X|Sと、マイクロソフトはその後も20年以上に渡って、家庭用ゲーム機の世界にXboxシリーズを送り出している。2024年2月には、Xbox独占ソフトのうち数タイトルを他の家庭用ゲーム機でもリリースする計画があることを明らかにした一方で、Xboxには今後も力を入れ続けていくことを明言した。20年以上を経てさらなる進化を遂げるXboxに、今後も注目していきたい。