2024年10月3日よりスタートしたTVアニメ『メカウデ』。
自主映画の制作をメインに活動していた学生サークルより企画が生まれ、2016年秋のクラウドファンディングを経て、ポニーキャニオンというスポンサーを得てTVアニメまで漕ぎつけた──という異色のプロジェクトです。
そんな『メカウデ』の先行上映会&トークショーが2024年9月28日(土)に東京・ユナイテッドシネマ豊洲にて開催され、ヒカル役・豊永利行さん、アルマ役・杉田智和さん、アキ役・嶋村侑さん、オカモト監督、総監修の松山洋さん(サイバーコネクトツー代表取締役)が登壇。作品の見どころなどを語りました。
本記事ではそんなトークショー(第2部)の模様をお届けします。
3話までを一挙上映。ボーイ・ミーツ・ガールならぬ“ボーイ・ミーツ・メカウデ”な物語や、一筋縄ではいかない敵味方のやりとり
先行上映会では、まずアニメ第1話から第3話の本編映像を上映。キタカガミ市に住む中学生アマツガ・ヒカルが謎の“ウデ”型機械生命体・アルマと出会い、大企業“カガミグループ”や謎の組織“ARMS(アームズ)”との戦いに巻き込まれていくさまが堪能できました。
トークショーのレポートの前に、まずは本記事の担当ライターがアニメ序盤の見どころだと感じた部分をネタバレ控えめで付記しようと思います。
まず、印象的だったのは「主人公・ヒカルと相棒・アルマの親しみやすさ」です。本作の主人公であるヒカルは、等身大の中学生。いわゆる巻き込まれ型の主人公で自己肯定感も低いのですが、心優しく芯が強いので感情移入しやすいのが特徴。
ときおりくり出す切れ味鋭いツッコミも、ヒカル役の声優・豊永利行さんの好演によってスルッと入ってきます。そんな彼がアルマと出会い、唯一無二のバディとなっていく過程には王道感があります。
まさにボーイ・ミーツ・ガールならぬ“ボーイ・ミーツ・メカウデ”という感じですね。
そして、本作のキーになるのがメカウデという謎の機械生命体。彼らは無骨な腕につぶらな瞳がついているというシンプルなフォルムではありますが、手の形や指の角度などからもストレートに感情が伝わってくるのが魅力。
とくに眼球の雰囲気にはアルマの心情がたっぷりと凝縮されており、目は口ほどに物をいうとはまさにこのことかと感心するほど……。
アルマを演じているのは、デビュー直後から機械やデータプログラムなど非人間のバディを数多く演じてきた声優・杉田智和さん。杉田さんといえば低音で厳かな声をイメージするファンも多いかと思いますが、アルマの声はとてもやわらかく、愛嬌、そしてやさしさが強くにじんでいるように感じました。
また、序盤からコミカルながらも緊迫感のあるバトルシーンが多く、3話連続での上映でも中だるみを感じませんでした(とくに第3話のクライマックスには迫力のあるシーンが!)。張り詰めた展開が続く一方で、何気ない日常のやりとりもボリューミーに描かれており、それが清涼剤としての役目を果たしているようにも感じます。
澤野弘之さんやKOHTA YAMAMOTOさん、DAIKI(AWSM.)さんらが手がける音楽も物語の加速度に大きく寄与している印象でした。
あわせて、本作にはメカウデたちの自我を奪って兵器化しようとしている大企業“カガミグループ”という明確な敵が登場します。ですが、それに対立してメカウデたちを解放しようとしている組織“ARMS”も主人公・ヒカルの味方と断言できるような存在ではありません。誰が味方で誰が敵となるのかもわからないような状況ですが、登場キャラクターはおしなべて個性的。
嶋村侑さん演じるARMSのメカウデ使い・アキも女性ながらに豪胆かつ武骨で、石川界人さん演じる双子のメカウデ・シニス&デキスとの凸凹なやりとりがなんともクセになります。
当時アルバイトの監督が描いた、1枚のイラストが目に留まってアニメ化⁉︎
トークショーの参加者は以下の5名(敬省略)。
・豊永利行(声優/ヒカル役)
・杉田智和(声優/アルマ役)
・嶋村 侑(声優/アキ役)
・オカモト(原案・監督)
・松山 洋(総監修)
トークショーでは、アニメ『メカウデ』の制作の経緯が改めて説明されました。
『メカウデ』を手がけるTriFスタジオの前身は、6人の学生による自主映像制作サークル。実写、3DCG、イラストレーション等、それぞれの得意分野を活かした活動を中心に活動して事業化したのだが、そんな折、オカモトさん(なんと当時はアルバイト!)が息抜きで描いた1枚のイラストが麻生秀一プロデューサー(現:TriFスタジオ代表)の目に留まり、「アニメにしよう!」と企画が動き出したのだとか。
マチアソビの物販・展示ブースではメカウデを紹介するパネルを展示しています。
— TVアニメ『メカウデ』@2024年10月放送! (@mechaude_JP) October 5, 2018
その中にはメカウデの初期スケッチも公開していますよ✨
是非見に来てください😆#メカウデ #マチアソビ pic.twitter.com/p1Iz15rM6j
しかし当時のTriFスタジオにはアニメ制作のノウハウがまったくなかったそうで、そこで相談を受けたのが、同じ福岡のゲーム制作会社・サイバーコネクトツーの代表取締役の松山洋さん。それから8年近くプロジェクトを見守ってきた松山さんは、アニメ『メカウデ』にも総監修としてクレジットされており、この日のトークショーでも司会を担当することとなりました。
これらの経緯が改めて説明されると、キャスト陣も「アニメの制作ってそんなノリで決まっていいの!?」と大盛り上がり。
松山さんも「最初に聞かれたのが、声優さんに連絡をするときはどうすればいいのかという質問で、キャスティングの仕方よりもまずアニメを作る方が先だろうと思った」とこぼれ話とともに昔を懐かしんでいました。松山さんはイチから──それこそ契約書の作り方からTriFスタジオにサイバーコネクトツーのノウハウを伝授したのだとか。
アニメの第1話のアフレコは数年前に完了していたそうで、アキ役の嶋村さんはアフレコはしたが完成したアニメには入っていないシーンがあることについても言及。収録の後ろでスタッフが相談することが多かったり、パク(口の動き)に関係なくお芝居をしてもいいと言われたりといったことからスタッフが探り探り挑戦していたのを現場でも感じていたそう。
収録現場で作品が大きく変化していくのはアニメの制作現場としてはかなり珍しく感じますが、キャスト陣はそんな熱意のある現場に好感を持っていたとのこと。
豊永さんが「『メカウデ』はみんなで作っている感じが強くて!僕は舞台出身なので、舞台をみんなで作っている感覚を思い出してほっこりしました」と熱く語ると、杉田さんも「わからないことはちゃんと答えてくれるし、失礼だとか何も考えていないと感じたことは一度もありません」とプロジェクト全体の誠実さを言語化していました。
また、トークショーではお気に入りのシーンの話題も。
杉田さんは「ここで本当のことを言って“あったあった……”となるより嘘をついて余白を残しておきたい」と、(もちろん今のところ製品化予定のない)『メカウデ』のお菓子やグッズ展開の話をしゃべり始めます。
まさに劇中のアルマのように“自由なトーク”でトークショーを盛り上げる杉田さんでしたが、ここぞというタイミングで冷静なツッコミを入れて軌道修正していたのが豊永さん。キャストトークにもバディ感がにじんでいて、うれしくなったファンも多いのでは。
ちなみに杉田さんが急に話をはぐらかし始めたのは、アフレコから期間が空いていたのでストーリーの時系列があやふやになっていたのも一因だった模様。ただ、話題から派生させる形で記憶を失ったアルマがヒカルと出会うシーンについて言及するあたりもさすがの杉田さん。
「記憶喪失になったことがないのでわからないけれど、記憶を失った場合はこういう口調でしゃべるんじゃないか」とイメージを膨らませながら演じたことに触れ、「記憶喪失のアルマが最初に出会った人間がヒカルでよかった」としみじみ語っていました。
一方、オカモト監督が挙げたお気に入りのシーンは、第2話に登場する“アルマがトイレットペーパーに興味を持って紙で個室をあふれさせるシーン”。監督によると「カッコいいシーンは望まれているので当たり前のようにやりますが、日常シーンもいっぱい入れたかった」という理由によるものだそうです。
こういった力が入っているけれど本筋とは関わりのないシーンは第4話以降もたくさんあるようで、「要所要所で監督の性格が出ていると思います」と松山さんもうなずいていました。
なお、トイレのシーンが話題に出たことから、杉田さんが「『メカウデ』の番外編を印刷したアルマのトイレットペーパーがグッズに~」と嘘のグッズトークを展開しようとしますが、すかさず「ほしい!」と意外な反応を示したのが嶋村さん。
じつはオカモト監督は嶋村さんに『メカウデ』の番外エピソードを漫画にして送っていたようで、トイレットペーパーに番外編を印刷するという企画はじゅうぶんに実現可能なことが発覚。乗り気な姿勢を見せるオカモト監督に、まさかの展開に驚く杉田さんや豊永さんの姿が印象的でした。
アニメ『メカウデ』は、TOKYO MX、テレビ西日本、BS朝日、関西テレビにて好評放送中。
また、ABEMAにて毎週木曜25:30〜単独最速先行配信をおこなっているほか、各配信プラットフォームにて順次配信を予定しています。
オカモト監督が構想から10年をかけて想いを結実させた本作。放送開始直後のいまこそ、ぜひ注目してほしい一作です。