みなさま、新年あけましておめでとうございます。黒木ほの香です。
令和七年が始まって、もう三週間も経つんですね。
うーん、早いような気もしますし、適切なスピードのような気も。なんとも言い難い感覚です。
わたしのお正月は、大阪にある実家で過ごしました。
親戚に会ったり、お雑煮を食べたり、コタツに入ってテレビを見たり。
はたまたコタツの前で正座し、手に汗を握りながら『風来のシレン6』をプレイしたり…。
穏やかに、のんびりと。心も体も休めることができて、いい時間でした。
帰省して二、三日の間は、父や母も嬉しそうにあれやこれやと喋りかけてくれていましたが、そこからまた数日家にいると、話すペースも少し落ち着いて、無言になることもあったりして。(個人的お正月あるある)
みなさんにはよくトーク力を褒めてもらいますが、持続力はまだまだ足りないようです。
そんな風にほどよく落ち着いていた両親でしたが、元旦に起きたアレをきっかけに、一触即発の瞬間が訪れました。
わたしが部屋のドアノブ破壊し、軽卒にも、そのことをXにポストしてしまったのです。
2025年を迎えたタイミングで世の女性声優たちが新年の目標を書き綴る中、ゲーム関連の投稿をしていたことについても小言を言われていたのに、ドアノブを破壊したポストが母に見つかり「古い家やと思われる!」「恥ずかしいからホンマやめてや」などと、久しぶりに両新からこっぴどく𠮟られてしまいました。
たしかに恥ずかしいよね…ごめんお母さん…お父さん…。
娘はとても反省しているよ…。と思っていたのも束の間。
いいね数が6000あたりを超えたところで「あんたバズってるやん!」と、母の嬉しそうな顔。
同じく父も、上ずった声で「お前、一万いいねも見えてきたぞ!」なんて興奮ぎみにスマホを見て叫んでいます。
その後もことあるごとに「もう12000やで、すごいわ」「宣伝せなアカンのちゃうか?」などと逐一報告してくる始末。
というか父よ…バズったら宣伝するという行為をなぜ知っているんだ…ツイッタラーめ…。
エッセイを綴っている今ではありがたいことに二万いいねがついていて、両親もとても喜んでいます。
見てくださったみなさまのおかげです、ありがとうございます。
さて、愉快な年末年始のお話は、レギュラーの番組などでもしているかと思われますのでこの辺にして…。
昨年の十二月更新の記事では、2024年をたっぷりと振り返ったのですが読んでいただけたでしょうか?
書いていて結構楽しかったので、みなさんにもフフッと笑ってもらえていると嬉しいなと思いつつ、実はまだ振り返り足りない部分があるんです。
去年のことでもあり、わたしの声優人生に紐づくことでもあります。
サンドリオンでの活動のことです。
2024年のクリスマスに解散したサンドリオンですが、その活動は約八年間に渡ります。
わたしは2016年の春に事務所に入所して、ほぼ同タイミングでユニット結成を見据えた練習活動をしていたので、その期間も含めると八年と七ヶ月くらいかな?すっごく長いですよね。
これまで受けさせていただいたインタビューなどで何度か言ってきたことですが、ユニットを組むこと(後のサンドリオン)は、事務所に所属するための条件の一つだったので「アイドル活動がやりたい!」と思って集まったメンバーではありませんでした。(※1)
それはそうです。声優になりたくて、声優部のオーディションを受けているんですから。
わたしに限って言えば、スターダストのオーディションを受ける段階で「そういう活動もありそうだな」と漠然と思っていたので、特に問題ありませんでした。アイドルが好きだったし、自分がそんな風になれるなら、きっと楽しいし、頑張ろう!と。
でも、実際に活動し始めると、そんな簡単な話ではなく…。
初めてのステージ衣装はグッズTシャツを使ったものだったし、セットリストはみんなで選んだカバー曲のみ。そのカバー曲の振り付けもリーダーが考えてくれたり…と、それはまぁ、手作りなユニットでした。
ステージでのお披露目の日も決まっていない内から、レッスンがとにかくあって、半年間くらい『星間飛行』の一曲を繰り返し練習していたこともあります。これはメンバーとダンスの先生の間で未だに擦られている笑い話ですが…(笑)
な、なんか、思ってた感じと違って、地味だ…!
そう気づくのに時間はかかりませんでした。
それに加えて、声優としての仕事がまだあまりなかったわたしたちに、どれだけの人が会いたいと思ってくれるか全くわからなくて、不安でした。
それでも、週に一回やっていた生配信と、イベント当日にチラシを配るという地道な広報活動のおかげで、初めてのライブステージの日は百人近くのお客さんが見に来てくれたんです。嬉しかったなぁ。
あの日、記録用に撮っていた定点カメラ映像は、折に触れて見返していました。
集まってくれたたくさんの方の頭の隙間から、踊っているわたしたちの上半身だけ見えるんです。ふふふ、いい景色でしょう。
初めてのステージは曲出しのタイミングなんかもグダグダで、マネージャーが音響卓をたたいていたから、まだ準備ポーズを取っていないのに曲が流れ始めたりしたなあ。
もちろん、これも今では笑い話です(笑)
そんな風に幕を開けたサンドリオンの活動は、波乱万丈でした。
それはもういろんなことがあって、みなさんが知っていることもあれば、知らないことも含めて、とにかく…いろんなことがありました!!
寄せ集めのわたしたち 個性は バラバラ 足並み バタバタ
(『S.T.A.R.T』より)
本当にこの歌詞の通りで、考え方が違う人間が集まっているから、足並みがそろうまでにかなりの時間がかかりました。
もちろん、わたしが尖っていたからでもあります。あの頃は本当にすみませんでした!!!!!!!!
ただ、メンバーのみんなはライバルだと思っていたんです。負けたくなかったから、馴れ合いたくなかった。
(今思えば、別に仲良くしててもライバルって言えたと思うんですけどね。若かったってことでここはひとつ…。)
ほんの少しだけダンスの経験があったけど、うまいメンバーには敵わなくて。
そしてなにより、わたしは歌が苦手だったんです。
決められたカバー曲の歌割りを見ては、悔しい気持ちになりました。歌割りの量に差はなかったので、露骨に目立たない…なんてことは全くありませんでしたが、時たま、おいしいパートをもらえても、ボイストレーニングの時間にみんなで歌ってみてわたしよりうまく歌える子がいれば、歌唱パートが交換になってしまうこともありました。
負けたくないから自分なりに練習して、演技レッスンも受けて、合間にアルバイトもして。
大変だったけど、充実していたなと思います。
見に来てくれるファンのみんながいたから、成長したいと思えました。
たまに、本当にたまにですが、ファンの方の言葉で傷ついたこともあります。
表に立つ仕事を長く続けていれば、避けては通れない道ではあるけれど、だからと言って受け入れたくもない。
「何も知らないくせに、勝手に決めつけないで」なんて思っていた時期もありました。
それでも、わたしにパワーをくれたのもまた、ファンのみんなの言葉でした。
パフォーマンスでこだわった部分に気づいてもらえるのは嬉しかったし、がんばったことを褒めてもらえるのも嬉しかった。
家族でも友達でもない人から、「黒木さんに出会えて幸せ」って何度も言ってもらえることなんて、きっと、サンドリオンの活動をしていなかったらありえませんでした。
この八年間で見てきた景色は本当に楽しくて、笑いがいっぱいで、とにかく面白かったです!
もちろん、笑えない状況に何度か直面したり「もっと早くコレができていれば」「もっとたくさんアレができていれば」と考えることも、本当にいっぱいありました。
それでも、サンドリオンとして活動してきたことは全く後悔していません。
みんなが一生懸命に気持ちを届け続けてくれたから、そう思えるんだと思います。
本当にありがとう。
推しメンの卒業を何度も経験してきて、何度もこの言葉を聞いて涙してきた側の人間なのですが…。
せっかくなのでもう一度、ラストライブの日に伝えた、あの言葉を言ってみてもいいですか?
わたしをアイドルにしてくれて、ありがとうございました!
サンドリオン オレンジ担当 黒木ほの香
P.S.ついぞお披露目することが叶わなかった詞を、ここに置いておきます。
書きためていた詞はほかにもたくさんあるのですが、一曲だけ。
『Go!Action』に続く、盛り上がり系トンチキソングがほしいな~と思っていた時に書いたものなので、別にかっこいい曲じゃないし、メンバーにも見せてないから恥ずかしいけど…。
誰かに、強く覚えておいてほしくなったのかもしれません。サンドリオンという最高の声優ユニットを。
※1…サンドリオンが結成されてからの数年間は、自分たちに対して『アイドル』という言葉を絶対に使わないようにしていました。わたしたちは声優になりたくてこの世界に飛び込んだし、声優のユニットとして見てほしかった。それはまぁ、解散した今でも変わらないんだけど、あの頃は特に神経質になっていました。月に1~2度おこなっていたイベントは入場無料のいわゆる“無銭現場”で、チェキを撮る特典会をたくさんしていたので、そりゃあ「地下アイドル」と称されても納得の状態でしたけど、自分たちではそう呼びたくなかった。わたしはアイドルが大好きだけど、どうしても“声優”でありたかったんです。
無料ライブをしていた時は、ライブ中に奇声を上げられたり、ステージに物を投げ込まれたり、客席後方の床で横になって寝られたりと、カオスな日もあったなぁ。この辺の出来事はさすがに悲しくて泣いたけど、数年後にメジャーデビューできたから、まぁ…思い出にします。(笑)
編集:川野優希
企画協力:スターダストプロモーション