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【約1万字】早川書房・Kindle特大セールで“沼るべき13冊+α”を全力でまとめてみた。3000点以上のSF・ミステリー・人文書などが最大50%オフに。『プロジェクト・ヘイル・メアリー』から『高い城の男』まで。おいでよハヤカワの沼

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ここに沼がある。ひろくて、深い沼である。まるで宇宙みたいである。
あたたかくてきもちのよい、すてきなばしょだ。ここに来た人間はみんな帰ろうとしないので、まちがいない。

ようこそみなさん、ハヤカワの沼へ。特大Kindleセールのお時間です。

主にSFやミステリーなどの文芸小説で知られる出版社・早川書房。同社では定期的に電子書籍のセールを開催しているのだが、6月17日からKindle版でもそのセールが始まっている。その数なんと3000点以上、割引率は最大50%。

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(画像は3,000点以上が最大50%OFF! 早川書房 夏のKindle超ビッグセール【7月14日(月)まで】 | 特集- 早川書房オフィシャルサイトより)

め、めっちゃ紹介したい……!いい本がたくさんあるから知って欲しい!あわよくば引きずり込みたい。ここはわるい沼じゃないよ。

そんなことを編集部で言っていたところ「そこまで言うなら好きに書いてみたら?」と言われたので書きました。1万字弱くらいあります。編集デスクもちょっと引いてたのでやりすぎたかもしれません。でも言質は取れてるからね。

そんなわけで、ぜひおすすめしたい13冊+関連書籍や「この本好きならこっちも好きかも!」という勝手なチョイスで50冊ちょっと詰め込みました。あくまで筆者の個人的嗜好に基づいたものなので、独断と偏見と私の癖まみれですが、まあまあ幅広く「いいよね!」と言ってもらえそうなものを選んでいるつもりです。

まあぶっちゃけ買わなくてもここで紹介しているものはたいてい図書館にもあるので、ぜひ情報だけ仕入れて便利に使ってやるくらいの気持ちで読んでいただけると幸いです。拙文がみなさまの読書ライフをより豊かなものにすることをお祈りします。

執筆/恵那

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(画像はAmazon.co.jp:早川書房より)

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』何も言えないけど読んでくれ!読書好きに悲鳴をあげさせる名作

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は映画『オデッセイ』(原題『火星の人』)の原作でも知られるアンディ・ウィアーの作品。めちゃくちゃ面白いのだが、本作の面白さは作中の超重要ネタバレを抜きにしては語れない。そのため本書を読んだ人たちが「何も言えないんだけど面白いから読んでくれ……!」という悲鳴をあげる原因となっている。

物語は記憶を失った主人公が、宇宙空間を進む船《ヘイル・メアリー号》でひとり目を覚ますところから始まる。作中では主人公は何度も危機的な状況に陥るのだが、決して状況に絶望したりせず、その都度知恵を凝らした工夫で乗り切っていく。

ある種へこたれない陽気さというものが物語に通底しており、ハラハラしながらも「今度はどうやって乗り切るんだ!?」と常に明るい気持ちでワクワクしながら読める作品だ。すでに本作を読んで面白かった!という方は、同じ著者の『火星の人』や『アルテミス』なども大幅な値引き中となっているので、こちらもおすすめしたい。

『アルジャーノンに花束を』まず外さない、面白さ鉄板の名作

『アルジャーノンに花束を』はダニエル・キイスによる、知的な障害を持った主人公・チャーリイと、ねずみのアルジャーノンとを描いた小説作品。心を揺さぶる物語がSNSなどで紹介されたことで「普段はそれほど本を読まない」という人たちにまで爆発的に人気が広がったこともある名作だ。

作中でふたりは“画期的な脳外科手術”を受けることで著しく知能が向上することになるのだが、そのことでかえって以前には味わうことのなかったような感情なども覚えるようになってゆく。物語は善良なチャーリイの温かな感性と生きることの喜び、そして苦悩を丹念に描いており、読者の胸にさまざまな感情を去来させてゆく。

今日でも「おすすめの小説は?」という問いで真っ先に名前が上がるほど有名なタイトルだが、本書と同じく多くの人に愛読されているSFタイトルは数多くある。個人的に鉄板枠として推したいのは、せわしなくシニカルな笑いに満ちた『タイタンの妖女』、猫への愛と明るさに満ちた、とにかくポジティブな物語を奏でる『夏への扉』など。

また『アルジャーノン』に心動かされた人なら「21世紀のアルジャーノン」とも呼ばれる『くらやみの早さはどれくらい』もぜひ紹介したい。自閉症の主人公が「自閉症を“直す”」治療を前にして、“自閉症ではない自分とは”という問いに向かい合う物語で、読後には静かな感情が押し寄せてくるはずだ。美しいタイトルもまた心を打つ。

『天冥の標』ライトで読みやすくて超楽しい、なのに規格外の壮大すぎる国産の長編SF

『天冥の標』は小川一水が10年かけて書き上げた、全10巻、上下巻を含めのべ17冊からなる大作SF。シリーズ作ながら序盤はオムニバスのような形式となっており、宇宙のさまざまな時代・場所を舞台に物語が展開されてゆく。本作の最大の特徴は、あまりにも壮大な物語の構想と、信じがたい規模の謎と伏線の展開だろう。

基本的に話は1巻ごとに完結する一方、時代や場所を飛び越えながら他の巻で撒かれた伏線が驚くべき形で回収されたりするため、巻を進めるほど次の展開が気になって読む手が止まらない。壮大な叙事詩のような作品である一方、文体は非常に軽やかであり、身構える必要は全くない。SF的なギミックも「面白そうなものは全部やる!」という勢いでふんだんに詰め込まれており、全部盛りの特大デラックスパフェとして存分に楽しめるエンタメ大作だ。

壮大な規模で描かれる作品として、他にも次のようなものを紹介したい。例えば映画やゲームなどで話題になった『デューン 砂の惑星』は刊行から半世紀越しで非常にアツい“旬”を迎えている作品だ。「ロボット三原則」で知られるアイザック・アシモフの『ファウンデーション』シリーズもまた、宇宙を股に掛けた歴史を描く名作として非常に面白い。ファンタジー作品では『氷と炎の歌』『ウィッチャー』なども、ゲームやドラマの影響で名前が広まったタイトルで、これらも壮大な物語を味わえるだろう。

『虐殺器官』夭折の天才が遺した名作。これが、あなたによって語り継がれる、わたしというフィクション

『虐殺器官』は日本の作家、伊藤計劃によるミリタリー色の強いハードSF。研ぎ澄まさたナイフのような語り口や構成の巧みさ、そして著者である伊藤が後に早世したこともあって耳目を集めた。売れに売れたことで著者の他作品と共にアニメ映画化され、SFファンならずとも知名度の高い作品だ。

9.11以後のいわゆる“テロとの戦い”を背景に、特殊部隊の兵士である主人公が世界中を飛び回って、テロ事件の背後にいる謎の人物の正体を探っていく、というのが物語の筋書き。長い旅の果てに、主人公は人間のうちに眠る衝動“虐殺器官”というものについても知っていくことになる。

また伊藤計劃はゲームデザイナーの小島秀夫監督の熱狂的なファンとしても知られており、『メタルギア ソリッド』のノベライズを手がけたこともある。こちらは早川書房からの刊行ではないため残念ながらセール対象外だが、気になる方は調べてみてもいいだろう。セール対象の書籍としては、伊藤の次作『ハーモニー』が含まれている。

『走馬灯のセトリは考えておいて』“戦国武将じゃないほう”の柴田勝家が描く、バーチャルアイドル“この世から卒業”ライブ

柴田勝家という日本の戦国武将……ではなく“SF作家”が存在する。同氏を語ろうとすれば、まず最初にそこから説明する必要があるという非常に面倒なペンネームの作家なのだが、厄介なことに「SF作家」の柴田勝家氏本人も、なんとなく戦国武将の柴田勝家っぽい風貌なのである。そしてなお厄介なことに、その作品はすこぶる面白い

『走馬灯のセトリは考えておいて』は同氏の短編集。表題作は、ほんの少し技術が進んだ未来の世界で、“この世を卒業”するバーチャルアイドルが、正真正銘ラストライブをぶちかますまでを描いた物語だ。「セトリ」とは「セットリスト」の略で、アーティストがコンサートなどで演奏する曲のリストのことを指す。

ひとつの小さなSF的な設定から紡がれる物語が抜群に面白く、軽やかながらしっかりした文体と、小さな嘘を十全に活かした短編ならではの読みごたえが強い作品だ。他収録作も《異常論文》としてネットを賑わせた『クランツマンの秘仏』や、とあるゲームをプレイしたことのあるプレイヤーなら爆笑せざるを得ない『姫日記』など、粒ぞろいの良作が揃っている。

柴田勝家氏に限らず、現代日本には優れたSFの書き手が数多く存在する。有名どころでおすすめしたいのは冲方丁『マルドゥック・スクランブル』や伴名練『なめらかな世界と、その敵』、小川哲『嘘と正典』など。やや古典に近づきつつあるが、神林長平『戦闘妖精・雪風』シリーズも根強い人気があるタイトルだろう。

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ライター
ル・グィンの小説とホラー映画を愛する半人前ライター。「ジルオール」に性癖を破壊され、「CivilizationⅥ」に生活を破壊されて育つ。熱いパッションの創作物を吸って生きながらえています。正気です。

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