新たな旅立ち。「跳ね橋部隊」の仲間たち
そう。本作の物語は、もっとも愛する者(ルー)を失ったサムが再び立ち上がるシーンから始まる。
フラジャイルは、新たに結成された民間組織「跳ね橋部隊」のリーダーとして、サムを勧誘する。
自殺することしかやることのなかったサムは、言われるがままにフラジャイルについていく。
「跳ね橋部隊」の目的は、通信が分断されてしまった「オーストラリア大陸」を繋ぐこと。
メキシコと同じように、地道にオーストラリアの地域同士を繋ぐことを目下の目的としている。
増え続ける災害。触れると休息に老化・老朽化が進んでしまう雨「時雨(ときう)」の頻発など事態は深刻だ。
アメリカを繋ぐことには成功したサムだが、依然として人類絶滅の危機に瀕しているのは変わらない。
このままだと、各地を繋がなければ世界はすぐに破滅してしまうという。
以降、サムは移動基地「DHVマゼラン」の一員として暮らし、「跳ね橋部隊」のバックアップを受けながら通信圏外となっているオーストラリアを繋ぐ旅へと出発する。
以下は、前述したフラジャイルを除く「跳ね橋部隊」のおもなメンバーだ。
DHVマゼランの艦長であり、操縦士「タールマン」

医者と地球物理学者というハイスペックな経歴を持つ男。
サムやフラジャイルと同じく能力者(DOOMS)で、片腕が死後の世界と繋がっている。
この状態を利用して、タールを用いて通信が繋がれた地点にファストトラベルできる能力を有している。
本作において、一度行ったことのある通信を繋いだ箇所にファストトラベルする際は彼の能力に頼ることとなる。これは、彼の片腕が死後の世界と繋がっている特殊な状態のため、可能な行為だ。
なぜか、タールでできているっぽい猫ちゃんを連れている。
人形に魂を宿す男「ドールマン」

魂を人形に宿しており、自分で歩くことができない不思議な人物だが、本人が言うには「れっきとした人間」とのこと。口癖は「ねー」。
フラジャイルが言うには、彼はもとは霊媒師だったようだ。この姿になってその能力は消えてしまったという。
ドールマンは、オーストラリアを繋ぐ旅こそが「サムの心を癒してくれる」と語る。
作中ではサムの腰あたりに装着され、常に前向きな言葉を語りかけてくれるカウンセラー的な存在となってくれる。
また、その場からぶん投げると偵察ドローンのような役割も果たしてくれるので、便利。
寝る前にはハーマン・メルヴィル氏の小説「白鯨」などの本を読み聞かせてくれたりもする。
なんて良いヤツなんだ。わかった、キミのことは「光の杉田智和」と呼ぼう。
BB(ブリッジ・ベイビー)のメンテナンスを担当していた男「デッドマン」

額(ひたい)に巨大な縫合後がある監察医。
身体の臓器のほとんどを“臓器移植で補って造られた”という経歴から、自分には魂(カー)がないと信じており、たとえ自分が死んでも死後の世界「ビーチ」にたどり着くことはないと嘆き、自らを「デッドマン(死んだ男)」と名乗っていた。
本作ではサムがたどり着いた研究所にて、ホログラム映像として登場。
すでに亡くなっていたが、自身がじつは能力者(DOOMS)であることに気づき、人体のほとんどが移植で補われているにも関わらずビーチへと向かうシーンが描かれる。
彼は「死は別れじゃない」と、意味深なセリフを残してビーチへと去る。
そんな彼がどのような活躍を見せるのかは、ぜひその目で確かめてみてほしい。
21分毎に心停止してしまう古生物学者「ハートマン」

「デス・ストランディング」現象とBTの調査・研究をしている人物。
1日に60回心停止し、60回蘇るという特殊な状態で、心停止している間は「ビーチ」に向かい、あの世にいると思われる妻と娘を探し続けている。
本作でもその状態は健在(?)で、限りある時間でサムに協力してくれる頼もしい仲間だ。
周囲に“雨”を降らせる能力者(DOOMS)「レイニー」

この世界での雨は、先述したように触れた物体、もしくは生物の老朽化を急速に加速させる「時雨(ときう)」と呼ばれる特殊な現象と化している。
レイニーは自身の周辺に雨を降らせる能力者(DOOMS)であり、時雨にも耐性がある。
しかし、その能力ゆえに生まれの故郷で迫害を受け、亡命するために人工授精プログラムに参加。お腹に子どもを身ごもるも、やはり迫害の手はゆるまず逃亡。
路頭に迷っている最中でフラジャイルに拾われ、跳ね橋部隊の一員となる。
なお、レイニーの雨を降らせる能力は非常に危険にも思えるが、自身の約1m付近の生命を修復(回復)する能力もあわせ持っている。
作中では、大火事が発生した際に雨を降らせて消火したりと、本人の優しい性根が反映されているかのような使い方をしている。
ところで……本作の登場人物はみんな「良い笑顔」をするのだが、とくに女性はみんなかわいくて素晴らしいので要注目。レイニー(モデル:忽那汐里さん)のハニカミスマイルはずっと見ていられそう。
謎のパトロン「チャーリー」

「跳ね橋部隊」のパトロンであり、正体不明の人物。
「私たちとともに この大陸を繋いでほしい」と、サムに依頼してくる。
うん……1万歩譲って怪しいだろコイツ……なんで正体不明なんだよ…
というのが第一印象。
怪しまれているのは重々承知なのか、「少しでも信じられるように」とハートマン、デッドマン、ロックネ、ダイハードマンと、前作に登場した人物の音声をプレイヤーが選択し、チャーリーがその声で話してくれる謎の仕様だ。(豪華すぎないか?)
筆者は、シルエットと顔が「なんとなく似てる」と感じたので、「ダイハードマン」を選択した。
すると、チャーリーの音声がダイハードマンの日本語音声である大塚明夫さんとなる。
チャーリーは作戦の概要を説明する立場にあるので、大塚明夫さんが担当するとすごくしっくりくる。しっくりきすぎるくらいだ。
旅の道中で出会うさまざまな人物
これまで「跳ね橋部隊」の仲間たちをざっと紹介してきたが、サムは旅の道中でほかにもさまざまな人物と出会う。
その相手は、ときに敵だったり、謎の協力者として命を救ってくれるような存在もいる。なかには、前作でもラスボス的存在だった、あの男も。
“死者の世界”でサムに戦いを挑む謎の男「ニール」

オーストラリアを繋ぐ旅の道中。巨大なタール溜まりに近づいたら死者の世界に引き込まれてしまうサム。そこには多数の死者が彷徨っており、兵士のような恰好をして骸の部隊を率いるバンダナの男、ニールが立ちはだかる。
映画『マッドマックス』ばりのバイクアクションを披露する骸の部隊。いきなり「HONDA NSR250R」に乗って登場するニール。何が目的なんだ……よくわからないがカッコイイ、恰好いいぞ、ニール。頭に巻いてるバンダナがめっちゃ“スネーク”っぽいしな。
しかし、この時点で何故サムを襲撃するのか…
その理由は不明。ニールは行く先々で、サムに戦いを挑んでくる。
なお、ニールのモデルとなったのはイタリアの俳優ルカ・マリネッリ氏。
過去にトラウマを抱え、自身の殻に閉じこもる少年少女たちを描いた『素数たちの孤独』の映画版で主演をつとめ多くの視聴者から注目を浴びた俳優で、2015年に公開された映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』ではダヴィッド・ディ・ドナテッロ助演男優賞を受賞。そのほかにも、数々の主演男優賞や、イタリア・ゴールデングローブ最優秀男優賞を受賞した時の人だ。
ニール役をお願いしたルカ・マリネッリさん。イタリア映画「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーク」の敵役(ジンガロ)で、彼の存在を初めて知りました。2020年日本公開のジャック・ロンドンの自伝的映画「マーティン・エデン」で、彼の演技力に惚れ込みました。素晴らしい映画だったので、公開時の宣伝協力をさせ… pic.twitter.com/ogAidY622l
— 小島秀夫 (@Kojima_Hideo) March 11, 2025
本作を手がけた小島監督は、自身のX(旧Twitter)で『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーク』の敵役(ジンガロ役)でルカ氏の存在を知り、2020年に国内で公開された映画『マーティン・エデン』でルカ氏の演技力に惚れ込み、公開時の宣伝協力を行ったというエピソードを語っている。
ルカ氏は小島監督に「自分はメタルギアで育った。あなたの大ファンです。自分の主演映画を観てくれて非常に光栄です。このことをあなたに直接伝えたかった」とお礼のメールを送り、『メタルギア』シリーズの大ファンであることを語っている。
小島監督はルカ氏の出演している他作品も視聴し、「やはりニール役はルカさんしかいない」と確信し、オファーのメールを送った。なんと本人は撮影中でチベットの山の中におり、小島監督からの着信を見る前に偶然にも小島監督のことを考えていたという。
死者の世界で彷徨っていた謎の女性「トゥモロウ」

ニールが戦いを挑んできた死者の世界で彷徨っていた謎の女性。
触れたものを腐らせる(急速に劣化させる)能力者(DOOMS)で、最初は特定のものしか口にすることもできず、言葉もほとんど喋らなかった。
名前も存在しないようなので、フラジャイルはこの子に「トゥモロウ(明日)」と名づけた。その後、フラジャイルとレイニーの献身により、しだいに心を開くようになる。
しかし、死者の世界から連れてきた人間を、はたして生者の世界にとどめておいていいものなのか。前代未聞の出来事なので、跳ね橋部隊のメンバーも会議でちょっと揉める。
「死者の世界とはいえ家族がいるはずだから帰してやるべきだ」
「あんな地獄みたいな世界に置いておくべきではない」
と、意見が割れてしまう。
このもめまくってる様子を見たトゥモロウは「自分のせいで皆がケンカしてしまった」と感じ、心を痛めながらマゼランを去ってしまう。
サムは逃げ出してしまったトゥモロウの足跡を追う。
生者の世界についてほとんど知らないトゥモロウにとって、ここは意味不明の所だらけだろう。「そんなに遠くへは言っていないはず」と捜索を始めるが……。
どうやら建築用の道具やロープ、梯子など、普段サムが現場で使用する道具を持ち出していたようで、やたらと的確にロープや梯子、休憩ポイントなどを配置して難所をクリアしていることが判明する。
トゥモロウ……お前さん、配達人の才能があるかもよ。
ようやく発見したところ、赤いロボット集団に襲撃されるサムとトゥモロウ。
トゥモロウは自身の能力を発揮させ、ロボットを急速に劣化させる。その隙をついて、サムが攻撃という連携プレイでこの場は切り抜ける。
みんなに言い争ってほしくなったトゥモロウは、「私 船にいてもいい?」とサムに問いかける。サムは「ああ」とだけ答える。Cool
以降、フラジャイルの必殺技「いたいだけいていいの」が発動し、トゥモロウは晴れて「跳ね橋部隊」の一員となり、はじめて笑顔を見せてくれる。かわいい。
最初はリンゴや花も触れるだけで腐らせてしまうトゥモロウだが、修行をすると……?
さて、トゥモロウのモデルとなっているエル・ファニング氏は、アメリカの大人気女優。
映画『マレフィセント』と『マレフィセント2』にてオーロラ姫を演じているれっきとしたディズニープリンセス……リアルお姫様だ。
正式に跳ね橋部隊の仲間となった後は、エル・ファニングさん特有のハニカミスマイルが炸裂。レイニー(忽那汐里さん)のハニカミスマイルと合わさって最強になる。この二人、かわいすぎてずっと見てられる……。
ところで、今こうして書いてみるまで気づかなかったが、これってゲームなんだよな……。
女優さん含め、キャラクターの表情があまりにも自然すぎて、普通に収録された映画のワンシーンを観ているような感覚に陥っていた。
黄金仮面の男「ヒッグス」

前作にて、いわゆるラスボスとして立ちはだかった男。
「しっかりお別れしたはずなのに……」また出てきてしまうあたりが「ヒッグスだなぁ」と感じる。彼はさまざまな力を持つDOOMSの中でもトップクラスの能力者で、BTと時雨を操り、高度なテレポート能力も有している。
かつては優秀な配達人のひとりであったが、やがて自己承認欲求が勝り破壊活動を行うように。以降は自らデス・ストランディング現象を引き起こそうとする危険思想の持ち主となってしまった。
“伝説の配達人”として名高いサムに異常なまでの執着を見せており、本作ではサムの“死んでも蘇る”という能力を利用して、“無限に死に続ける拷問”を押し付けてこようとする。最悪の敵である。
ちなみに、最初にしてくるのは「無限首絞め地獄」だ。想像するだけでも苦しすぎるので、マジでやめてほしい。
そして、一歩引いて客観視してみるとヒーローとヴィランはトムとジェリーのような切って切れない存在であることがわかる。ライバルを超えた必然の存在。スネークとリキッド、サムとヒッグスのように。「レゴ バトマン・ムービー」はその暗黙の了解にあえて踏み込んだ傑作。 https://t.co/Q0Ga8gbOU1
— 小島秀夫 (@Kojima_Hideo) March 13, 2022
ヒッグスについて、小島監督は自身のXアカウントにて、「ヒーローを創るにはヴィランが必要となる」と持論を展開。
ヒーローとヴィランは『トムとジェリー』のような切っても切れない存在であるとして、『メタルギア』のスネークとリキッド、『デススト』でいうサムとヒッグスの関係性も同様であると解説。
残虐非道なヒッグスも、本作において非常に重要な役割を果たしていると言えるのだろう。
サムがピンチの時に現れる「謎の赤きサイボーグ忍者」

最後に紹介するキャラクターはコイツだ。
こいつに関しては、お伝えできる範囲では「筋骨隆々の巨躯を誇り、赤熱した日本刀を用いて敵を一網打尽にするメカメカしいサイボーグ忍者」…というしかない。
ヒッグス率いる赤装束の集団に襲撃された際に唐突に現れては、サムを危機から救ってくれる謎のお助けキャラだ。そのウデマエはかなりのもので、瞬時に4体の敵を斬り伏せる瞬発力と膂力を持っている。
彼は、サムがヒッグスに絞殺されかけているところでも登場し「電撃と弾丸を放つエレキギター」で戦うヒッグスとも激しいバトルを繰り広げる。
赤装束の集団はあっという間に斬り倒され、ヒッグスの両足を切断して実力的に圧倒するサイボーグ忍者。戦闘中は、なぜか「赤ん坊の泣き声」が聞こえてくる。
サイボーグ忍者はサムを助けるだけ助けて去ってしまう謎の存在。
立ち去る直前、前作プレイヤーであれば聞き覚えのある「オルゴール音」を発する。
果たして、こいつの正体は何者なのか?ぜひ、その目でプレイして確かめてほしい。