“ロールプレイングゲーム”で重要なことってなんだろう?
魅力的なキャラクター、感動的なストーリー、手に汗握る戦闘システム。
それらは確かに全部重要。
でも一番重要なのは……ズバリ、「妄想力」だ!
見たことのない世界を冒険し、語られたことのない物語を聞き、ありもしない人間関係を構築する──。ゲーム内では直接的に描写されていない部分を“想像する”楽しさは、多くのゲーマーなら経験があるだろう。
だが、想像からもう一歩踏み込んだ、“妄想”はどうだろうか?
2010年に発売された『剣と魔法と学園モノ。3』(略して、『ととモノ。3』)は、パーティ内の人間関係を深読みせずにはいられない相性システムを搭載することで、妄想がはかどり過ぎるダンジョンRPGとして人気を博した作品である。
そんな本作を含む『ととモノ。』シリーズのリマスター作品が、15年の時を経て令和に登場する。本稿では、昭和のダンジョンRPGで育った筆者が、シリーズのうち3作目となる『剣と魔法と学園モノ。3 Remaster』の妄想プレイレポをお届けしよう。
※この記事は『剣と魔法と学園モノ。3 Remaster』の魅力をもっと知ってもらいたいアクワイアさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
学園RPGのノリが一変する、相性システムの魔力
『ととモノ。3』は、ターン制バトルを採用した一人称視点によるダンジョンRPGだ。基本的には、『ウィザードリィ』に代表されるシンプルなシステムを踏襲した、オールドスクールな手触りが特徴的なタイトルである。
ダンジョンRPGといえば、とかく陰鬱でジメジメした、死臭漂う冒険をイメージするかもしれないが、本作はキャラデザインを見てのとおり、ポップな世界観となっている。ゲームとなる舞台は学園で、ダンジョンRPGのイメージからは大きく違うのだ。
ゲーム内の各種システムや世界観も、学園に準じたものとなっている。たとえば新たなキャラクターを作成するときも、“入学させる”といった具合だ。
とりあえず今回のプレイでは、筆者が異世界転生したという脳内設定で、ヒューマンのナイトを主人公に。そのほかのメンバーは、“職員室”にて在学生から募った。クラス編成としては、前衛はナイト2名と戦士。後衛は盗賊、魔法担当の闇術師、そして回復役の光術師だ。


今回のプレイ中、特に筆者の目を引いたのが「相性」システムである。これは各キャラクターが、パーティ内の他メンバーに対して「好き・嫌い」を設定できるというものだ。
本作の冒険者たちは学生で、恋愛が気になる年頃だろう。「青春」の2文字には誰にだって甘酸っぱい思い出があるはず……男子校出身の筆者以外にはね!
村八分の闇術師、爆誕!悲劇と笑劇の妄想パーティ
現在のパーティ内でどのような相性が発生しているのかは、マンガやドラマなどで見かける相関図のような形で描かれる。
……おぉ、なにこれ面白そうじゃん!
相関図を見た途端、興味津々の筆者。説明には「相性によって特別な効果が発生したりする」とある。確かに、「好き」同士のメンバーなら、連携して強力な攻撃を繰り出せるのはイメージしやすい。

でも、「嫌い」だったらどうなるんだろう?
たとえばヒーラーが特定のキャラを「嫌い」にしたら、ピンチのときに回復を渋るとか……? 募る不安を抱えながら相関図を作り始める筆者。
ここで非常に悩ましいのが、各キャラは「好き」だけでなく、「嫌い」なメンバーも選ばねばならないことだ。本作の学園生活には、(おそらくはリアルと同様に)「み~んな、大好き!」などというお花畑なコミュニティは存在しないのである。
ゲームプレイを効率的に進めるために、生命線であるヒーラーには全員が媚びを売っておきたい。そして、筆者の生き写しのナイトはパーティの主力だし、できればみんなと仲良くしておきたい……。
こういった風に、筆者の個人的都合を最優先にした結果、下画像の相関図が完成した。

村八分の闇術師ユッキーが爆誕!!
これはひどい……。
「ゲーム序盤は魔法使いキャラがお荷物になりがちだし」と、あまり深く考えずに決めちゃったけど、こうやって絵にすると不憫すぎる。
……まぁでも、爆誕しちゃったものは仕方がないか!
それにしても、この相関図を眺めているだけで、闇術師のユッキー君がクラス内でいじめられている境遇が目に浮かぶようだ。この時点で、ゲームでは描かれていないバックストーリーの妄想が捗りまくりである。
妄想が大暴走! 「好き・嫌い」が織りなす人間関係ドラマ
「嫌い」による影響が気になっていたが、実際のダンジョン攻略において、大きなデメリットは無いようだ。ダンジョンRPGではおなじみのターン制のコマンド入力式なので、プレイヤーを無視してAIが勝手に行動するなんてこともない。
ヒーラーが闇術師のユッキー君に向けて、「あんたなんか回復したくないんだけど!」と言い放つ光景を妄想をしていたが、そこまでひどくはないようだ。
とはいえ、ゲームとは関係なく走り出した筆者の妄想は、もう止まらない。
「俺ら前衛が体張って戦ってんのに、なんでお前は後ろで防御ばかりしてんの?」
「いまの戦闘なら、お前が全体魔法を使えばラクに勝てたんじゃないか?」
普通にプレイしているだけで、各メンバーのユッキー君に対する非難の声が脳内から聞こえてくる。
「好き・嫌い」のシンプルな相関図を作っただけで、このようにプレイヤーの妄想を膨らませてしまうのは、マジで脱帽だ。
ちなみにこの相関図は、いつでも作り直せる。
そこで今度は、メンバー全員が主人公のナイトのことが大好きという、羨ましすぎるハーレム状態を構築してみた。
うーん、最高。俺もこんな学園生活を送りたかった!
ちなみにユッキー君は依然として全員に嫌われたまま。しかも、その村八分の彼ですら主人公が好きという、彼にとってはこのうえない屈辱的な状態となってしまった……。
その後も筆者は妄想の限りを尽くしてヘンな人間関係を構築しまくった。
前衛と後衛が派閥に分かれてガチりあう「二大巨頭パーティ」。
男は男同士、女は女同士でガチ恋愛をする「百合・薔薇パーティ」。
前衛・後衛の男女がドロ沼の三角関係を展開する「昼メロ愛憎劇パーティ」。
筆者の心の内が見透かされそうな偏重っぷりが炸裂したパーティを次々と誕生させ、そのたびに妄想を繰り広げてニヤニヤしてしまった。



……で、ひとしきりの妄想がひと段落したところで気が付く。
「あれ、ゲームが全然進んでなくね?」
和気あいあいも、ギスギスも、妄想プレイがキャラを生かす
「好き・嫌い」がダンジョン攻略にどのような影響を与えるのか。
まず、この相性関係に応じて、戦闘中に新たに使用可能となる攻撃スキルがある。これはいわゆる“友情パワー”的な効果で、なんとなくイメージしやすいだろう。

そして一方の「嫌い」だが、多くのメンバーから嫌われるとデバフ効果が発動する場合があるので要注意だ。
だが実は、この「嫌い」は筆者の妄想とは少し違っていて、「ライバル視」に近いニュアンスがあるようだ。そしてお互いが「嫌い」になる(お互いにライバル視する)ことで発動するスキルもある。
つまり、闇術師ユッキー君は、一方的にいじめられていたのではなく、逆境をバネに涙ぐましい努力を続けていたのである……!
筆者はこのことを知ったとき、ユッキー君に対する見方が180度変わり、これまでとは違った形で妄想が炸裂した。
そういえば彼はダンジョンの攻略中、メンバーの中で最後まで踏ん張って生き残びていたことが多かった。彼なりに歯を食いしばって頑張っていたんだなぁ……。ユッキー、俺達のパーティの主役はキミだ!

このように本作では、「好き・嫌い」の相性によってゲーム内でちょっとしたメリット・デメリットが生じる。ただ筆者にとっては、そういったメリット・デメリットよりも、妄想をとことん膨らませるためのスパイスとして機能しているのだと思えた。
パーティ内の人間関係を妄想するのが最高に楽しい!
『ウィザードリィ』に代表される昔ながらのダンジョンRPGのグラフィックは、ワイヤーフレームで描かれたダンジョンや解像度の粗いドット絵で構成された、あまりにもシンプル過ぎるものであった。
そして当時のプレイヤーは、それに対して物足りなさは感じず、ありあまる想像力で補い、ゲームを満喫していた。
筆者にとってもダンジョンRPGの原体験は『ザ・ブラックオニキス』(1984年。古すぎ!)だったこともあり、どちらかというと「ゲームのグラフィックなんて、あってもなくてもどうでもいい」というスタンスである。
そういったなか本作は、学園という舞台や、ほんわかとしたキャラデザイン、そして「好き・嫌い」の相性関係が加わることで、想像からさらに一歩踏み込んだ妄想を楽しめる。いや、妄想をせざるを得ないのである。
そして、その妄想が、この上なく楽しかった。
どんなに技術が進歩しても、AIが登場しても、人間の妄想を超える技術はこの世には存在しない。なんとなく、そんなことも考えてしまったのだ。
実はこう見えて骨太な難易度や、マップを少しずつ踏破する冒険感、トレハンを通じて強くなる達成感。『剣と魔法と学園モノ。3 Remaster』は、オールドスクールなダンジョンRPGを感じさせる手触りなのに、どこを切り取っても遊びやすい作品に仕上がっている。
あり余る妄想を膨らませるのが、これ以上はかどる作品は他にないんじゃないかと、筆者はマジで思った。