好むと好まざるに関わらず、タクシーで発生するのが運転手との会話だ。
けんこうランドによる『TIMEMOON』は、その点に着目してSFへと昇華したソリッドシチュエーションな作品となっている。

主人公は月面都市のタクシー運転手、クラークとその相棒のしゃべるタクシー。そしてそのタクシーはタイムマシンでもあった。

(画像は『TIMEMOON』Steamストアページより)
月面都市の住民には、生活態度によって市民ランクが設けられている。
クラークは市民ランクを上げるため、月面都市を揺るがせた「大統領暗殺事件」の解決を目指す。容疑者である乗客を観察し、その言葉の「オモテ」と「ウラ」を探りだすのが本作の目的だ。

そんな本作は、タクシーというモチーフの活かし方が秀逸で、キャラクターとしての「必然」と、プレイヤーとしての「欲求」を見事にリンクさせ、さらにバチッとハマった演出まで被せてくるすごい作品だった。
ということで、ほんの10分の試遊のあいだに、見事に心を掴まれてしまった『TIMEMOON』を紹介していこう。

シチュエーションを活かしたお話作りがうますぎる
本作をプレイして真っ先に感動したのは、シチュエーションを活かしたお話作りの巧みさだ。
本作はタクシーというモチーフを十全に活かし、コンパクトながら奥行きある物語を見せることに成功している(少なくとも試遊の段階では)。

たとえば、タクシーの運転手ならまず「どちらまで?」と聞くのは自然なことだ。行き先がわからなくては仕事ができない。
が、先述したようにこのタクシーはタイムマシンである。乗客がなぜ、その時間帯に向かいたいのか。その時間でなにをしたいのか。
クラークは乗客の求める時間に向かうため、そして大統領暗殺事件の真相に迫るため、業務上の必然的なセリフに自身の思惑を忍ばせながら、客との雑談を交わし続けるのだ。
しかし相手もさる者。
ときにはクラークが逆に尋問めいて詰められることも。
そうした緊迫感の比喩が、夜景やトンネルの照明として表現され、プレイヤーの気持ちは自然と気持ちはクラークと一体化していく。

選択肢もウインカー音とともに表示されて「気が利いてるッ!」と唸らされる。
「会話のハンドリング」みたいな慣用句があるが、まさに会話のハンドルを握って離さないようにするのが本作の肝となっているのだ。

タクシー運転手なので休憩中はタバコも吸うし新聞も読む。新聞の内容は単なるフレーバーではなく、会話を優位に進めるためのヒントにもなっている。
試遊では乗客ひとり分、約10分ほどの短いプレイだったが、その巧みなモチーフの用い方と優れたキャラ造型によって、良質な読切マンガを読んだあとのような気持ちになることができた。いや〜おもしろいっス。うめぇッス。
個人的には今回の試遊では会話できなかったが、作中ギミックにも関わっていそうな雰囲気の美少女、Dr.ウィンターなども気になるところで、製品版リリースを楽しみに待ちたい。

(画像は『TIMEMOON』Steamストアページより)
『TIME MOON』はSteamにて2026年発売予定。9月25日から9月28日にかけて幕張メッセで開催されている「東京ゲームショウ 2025」では、本作の試遊をおこなうことができる。
現地に赴いた際はぜひブース(ホール9−11、E-08)へ立ち寄り、スリリングな時間旅行のハンドルを握ってみてはいかがだろうか。