時に弾幕とサーカス的レーザーが襲いかかってくる程度に戦闘はハードだが、救済措置もバッチリ。安心して挑もう
一方で、こうも可愛らしい世界観でキャラクターも集う内容でありながら、アクションゲームとしても思いのほかハード寄りであるというのも、本作の特徴だろう。
序盤こそ、敵の攻撃は近接や一本調子の遠距離攻撃などのシンプルなものが多く、ダッシュ中の無敵を駆使しながら近づき、接近して近接攻撃でコンボを叩き込む力押しで突破していくことができるものの、序盤を終えた辺りから狙撃、居合斬りなどの一風変わった攻撃を仕掛けてくる敵が現れるようになり、慎重な判断が求められてくる。
ボスに至っては序盤から容赦なく、素早く動きながら苛烈な攻撃を繰り出してくるほか、ダメージを一定量与えると攻撃パターンが激化する特徴を持ち合わせているため、安易に力押ししようとすれば返り討ちにされかねない。
中盤になると、どこの弾幕シューティングだとツッコミたくなる攻撃を仕掛けてくるボスも出てくる。見た目の可愛らしさと、序盤の力押しの効きやすいバランスから、本作にはユルく遊べる難易度を想像しやすいところがあるが、実際は意外にハード。
特にボス戦は本格的で、アクションゲームに手慣れたプレイヤーでも気を引き締めて挑むべきだろう。
逆に言えば、アクションゲームが苦手な人にはツラい内容なのかと身構えてしまうところだが、本作には難易度選択機能も存在しているので、その点は安心して欲しい。
それもゲーム中、いつでも好きなタイミングで切り替えられるので、ストーリー優先で進めたい遊び方にも対応。難易度を下げると特定の素材などが手に入らないといった制約もないので安心だ。
難易度を下げても中盤のボスには多少、根気と操作技術が求められるところもあるが、力押しは効きやすくなるので、ツラいと感じたら切り替えるのがオススメである。
それに本作はRPGらしく、とにかくキャラを強くしてなんとかするという対処法も存在する。ダンジョン探索での戦闘ではなく、パン作りとそれを売ることに従事するという点で、だいぶ異色のアプローチではあるが、パンを作ること、パン屋で働くことに注力するほど、ゲーム的な余裕も生まれていくはずだ。
ステータス強化などにおいても、基本的に項目を選んで決定する簡易設計で、特殊なミニゲームをやらされるようなこともない。そうしたテンポ周りや快適性にも非常に気を遣っているため、ストレスなく取り組める設計だ。
むしろ、あまりにテンポよく進んでいくため、人によっては時間を忘れて没頭してしまう部分もある。実際、本作はロード時間もほぼ皆無に加えて、メニュー周りのキーレスポンスもサクサク、イベントシーンの規模も長すぎない程度の塩梅、台詞の会話送りも早めと、もたつくということが滅多にない。
故に勢い誤ると本当に時間泥棒ゲーと化すので、その点は要注意……かもしれない。ちなみに筆者は気付いたら深夜4時前だった、なんてことがあった(直後、寝ました)。
「チャヤ、後ろ、後ろ!」プレイヤー側をヤキモキさせる絶妙なストーリー運びに心くすぐられ、気付けば“やめられないとまらない”
また、ストーリーもゆるふわコメディ的な雰囲気を漂わせつつ、随所に不穏な要素が散りばめられた先行きの気になる内容になっている。
とりわけ、プレイヤー側は気づいているのにキャラクターたちは全く気づいていないという、いわゆる「志村、後ろ、後ろ!」的な要素があり、ヤキモキさせられる部分が面白い。
前述したように、本作はイーフィのパン屋にあるオーブンの爆発をきっかけに幕を開ける。だが、どうしてチャヤがやってきたタイミングでオーブンが爆発したのか? 偶然にしても出来すぎではと勘ぐっていると、ズバリその通り。
この爆発はチャヤの後をつけてきたアヤしい“黒い霧”が引き起こしたのだ。

そしてこの黒い霧、さまざまなトラブルを引き起こすのだが、厄介なことにチャヤを始めとするキャラクターたちはこの存在になかなか気づかないまま、ストーリーが進んでいくのである。プレイヤー側はハッキリと犯人が誰か分かっているのに、本編のキャラクターたちは全然気づかない。
こうしたヤキモキさせられる要素は非常に古典的と言えるが、それだけに効能も折り紙付きと言え、否が応でも興味を引く内容になっている。
一体、どこでこのキャラクターたちは犯人の存在に気づくのか、そもそも気づけるのか? そして、気づいた後にどんなことが起きるのか。もし、そんな具合に興味が高まってしまったら、おそらくストーリーを進めていく手が止まらなくなってしまうだろう。

ストーリーに関しては、コムギ広場を巻き込んだ大きめのイベントが多数用意されているのも見所。そのイベントではミニゲームを体験できる機会もあるのだが、それが実質、ひとつのゲームとしても成り立つ本格的なものになっており、いろんな意味でインパクト絶大。ぜひプレイしてこの驚きを体験して欲しい。
一例として、ガチガチのリズムゲームが用意されているだけでも、作り込み具合を察せられるはずだ。どのタイミングで遊べるようになるかは実際に遊んでのお楽しみだが、きっと「なぜこんなのを作った!?」といい意味でツッコミたくなるはずである。
ダメージを受けた時のヒットストップがない関係で体力の減りに気付きにくい、序盤は力押しが効きやすいことから操作やアクション的にも単調な手応えが強い、イベントの進め方によっては新キャラクター登場時の会話内容が前後してしまうなど、やや引っ掛かりを覚える箇所もない訳ではない。
しかし、何をするにしてもパンに行きつくゲームデザインは実にユニークだ。ほとんど待たせないテンポの良さと快適性が生み出す、アクションRPGとしての熱中度も特筆に値するものがある。
ハイブリッドアクションRPGの公称の通り、基本は既存のゲームジャンルの組み合わせではあるのだが、その盛りだくさんぶりとパンへと繋がるサイクルによって独自の魅力を持った作品に仕上げられている。
何をしてもパンへと行きついてしまう独特のアクションRPG。パンの偉大さと影響力の大きさも並行して思い知らされるので、少しでも興味を抱いたのであればぜひお試しを。ケモミミ要素もたっぷりなので、そちらのファンの方もどうぞ。







