筆者にとって、2000年8月にPlayStation向けに発売された『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち(以下、DQ7)』は、歴代ナンバリング作のなかでも特別な存在だ。
DQ7の冒険の目的は、RPGで王道の“魔王討伐”ではない。
石版を集め、失われた世界を取り戻して再構築するという壮大なテーマ。短編小説のような形式で、島や街ごとに展開する、一話完結型のストーリー。過去と現在の対比が生む人間ドラマの数々。これらは今も深く心に刻み込まれている。
しかし同時に、DQ7はファンのあいだで、最も好き嫌いが分かれる作品としても知られている。
その深さ・長さ・重さはコアなファンにとっては最高のやり込み要素だったが、最初の戦闘までが長すぎる、石版集めが単調といった、序盤のハードルの高さもまた事実であった。
そんなDQ7が、原作の課題をすべて乗り越えたリメイク版『ドラゴンクエストVII Reimagined』として、2026年2月5日に発売される。
『ドラゴンクエストVII Reimagined』では、キャラクターのリアルな人形をスキャンして3Dモデルを作成する「ドールルック」と呼ばれる技術を採用したことで、画面全体の見た目が大きく変化した。
しかも、それだけではない。ゲーム全体がブラッシュアップされ、原作で賛否が分かれた部分をことごとく潰し、あらゆる面で快適になったのだ。
今回、本作の先行プレイ取材を行う機会を得たので、動画と合わせてプレイレポートをお届けしよう。
爆速&オートバトルで展開する戦闘が快適すぎ!
今回の試遊会では、別々の地点からスタートする2つのセーブデータを、それぞれ1時間程度プレイできた。
まずは「エンゴウの村」からスタートする、キャラクターレベル6のセーブデータを選択。原作では本編の序盤で訪れる、「ほむら祭り」を巡るエピソードが印象的な場所だ。
ドールルックによる画面全体の印象がまるで違うことも驚きだが、バトルに挑んでさらに驚かされた。
バトルスピードは3段階でいつでも変更可能。最速の「超はやい」にすれば、まさに一瞬で決着がついてしまう。
さらにオートバトルも搭載しており、このときはAIライクに最適な攻撃を繰り出してくれる。こちらもワンボタンで発動可能で、ボタンをポンポンと押しているだけで、みるみるゲームが進行していく。
隣でプレイを見ていたスクエニの担当さんによると、「今回は遊びやすさを追求しました」とのこと。確かに遊びやすい。
特殊な戦術を行わない限りは、オートバトルに任せて良さそうだし、レベル上げのようなシンプルな作業も楽々と行えそうだ。
最良の一手を選択する楽しさ
快適なザコ戦とは裏腹に、ボス戦は歯ごたえたっぷりのバランスとなっているという。
今回挑戦したボスは「炎の巨人」だ。
これは防御力がとにかく高く、パーティ内で攻撃の要といえるキーファですら、一桁台のダメージしか与えられない。それなのに、向こうは全体攻撃を連発してくるのだ。
ジワジワと追い詰められ、初プレイ時はあえなく全滅してしまった……。
しかし今作では、職業ごとに用意された「とくぎ」を選択する際に、敵にどの程度効くのかが、アイコンで事前に分かるようになっている。たとえば「かえん斬り」が「いまいち」な相手でも、「ギガスラッシュ」なら「ばつぐん」かもしれないのだ。
これを参考にすることで、何度も試行錯誤をして検証をせずとも、最適な行動を選びやすい。これを踏まえつつ、キャラの限られた戦術で戦闘をしのいでいくのがアツい。
そして炎の巨人を無事に撃破。
ターン制バトルって、こんなに楽しかったんだ!
キャラの育成幅は大幅にアップ
続いてプレイしたのは、物語中盤の「ハーメリアの町」のセーブデータ。
パーティーメンバーは主人公、マリベル、ガボ、アイラの4人。キャラレベルは21だ。
主人公一行は、邪悪な力で洪水に襲われ寸断してしまったハーメリアを救うため、ボスの「グラコス」に挑んでほしいとのこと。
……あれ、おかしいぞ?
というのも、原作ではグラコスを倒した後に仲間になるはずのアイラが、既に加入しているのだ。
スタッフさんに聞くと、「シナリオを全体的に見直し、アイラに関してはパーティへ加入するタイミングを早めました」とのこと。
原作では賛否ある「離脱劇」の後、しばらく3人パーティーが続いていたが、アイラの加入が早まることで戦力が大幅に上昇している。また、これによりストーリー展開も微妙に変化しているそうだ。
しかも1人のキャラは、(上級職に転職する前から)同時に2つの職業に就ける。職業の組み合わせによる「とくぎ」や戦術の幅も一気に広くなっているのだ。
そのほかにもアンロックされていない職業が多数確認できた、「ダーマの水晶」を使っていつでも転職ができたり、「モンスターの心」を装備してパッシブスキルを付与したりと、育成幅は原作とはまるで別物だ。
そうして準備万端で迎えたグラコス戦。
毒系やハリケーンなどの全体攻撃を主軸に、2回攻撃を繰り出してくる厄介なボスモンスターだ。
しかしこっちも、上述の準備を万端にして挑む。
さらに「ばつぐん」判定の「とくぎ」を中心に、職業ごとの必殺技が使えるようになる「バースト」も組み合わせる。また、アイラのオートバトルによるサポートに何度も助けられながらも、見事に討伐できた。
シナリオも、プレイフィールも、遊びやすさをとことん追求
大苦戦しながらもグラコスを倒した一部始終を見守っていたスタッフさんは、「今回は、戦闘の難易度も細かく設定できるんです」と言ってくれた。
本作には「楽ちんプレイ」「バッチリ冒険」「いばらの道だぜ」の3種類のプリセットに加え、「与えるダメージ」「経験値」「モンスターの強さ」「戦闘後HP回復」などの項目を個別に調整できる。しかもゲーム中いつでも変更可能だ。
これなら骨太な戦闘を求めるプレイヤーから、普段はポテチ片手に遊んでいるような筆者まで、誰でもちょうどいい難度で楽しめるだろう。
さらに本作では、クラシカルなウィンドウUIから視認性の高いデザインへと刷新されている。これが本当に直感的で、サクサク操作できて快適だ。個人的には、これが本作の一番の改編だと思えた。
ほかにも、石版のありかや次の目的地、宝箱がミニマップに表示されるようになり、行き先を探して迷うこともない。原作では過去世界で使えなかったルーラが、どこでも(ダンジョン含む)使用可能にもなっている。
こうした地味ながら丁寧な改良の積み重ねが、ゲームプレイの心地よさにつながっている印象だ。「遊びやすさ」をとことん追求したリメイクだ。
さまざまな新機軸を盛り込んでも「ドラクエ7らしさ」がある
「ドールルック」と呼ばれるグラフィック表現は素晴らしいの一言。キャラクターはまるで本当に人形が動いているような質感があり、画面を埋め尽くすオブジェクトのひとつの数々も実在感がある。ゲーム内世界そのものが、箱庭のような温かみを感じさせてくれるのだ。
モンスターの表現も秀逸で、「わらいぶくろ」は粗めの布、「ストーンマン」は硬そうな石の質感がある。グラコスの肌は緑でぷにぷにしていて、個人的には草餅に見え、思わず食べたくなってしまった。
DQ7では、石版を揃えることで新たなマップが出現する。まるで短編小説のページを1枚ずつめくるように物語を進めていくワクワク感は、筆者のお気に入りだった。
エンディングまでが長いゲームだとよく言われるが、個人的には長さを感じなかった。むしろ、この物語がいつまでも続いてほしいと願い、あえてエンディングを回避して、時間の許す限り石版探しに没頭した。
そして最後の石版を見つけた瞬間は、筆者はこのうえない達成感とともに、どうしようもない寂しさも感じたものだ。
「ああ、旅が終わってしまう」。
そんな気持ちにさせてくれたゲームだった。
© ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX
© SUGIYAMA KOBO
℗ SUGIYAMA KOBO
※画面はすべて PS5 版の開発中のものです。















