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限界社会人の病んだ精神風景を描くメトロイドヴァニア『Constance』が不穏すぎて、心がキュっとなる。終わらない仕事、子供時代のトラウマ、家族とのすれ違い……。憂鬱な感情が渦巻く世界の旅路で、主人公の行く先に救いはあるのか

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「涙すら出ないほどにつらく、なにもかもがうまくいかない」──。人生の長い道のりの中では、誰しもがそういった状態に陥る可能性があります。

……のっけから辛気臭い話題で恐縮なのですが、今回紹介する『Constance』は、そんな人間の“病める心”や“メンタルヘルス”をテーマとした2Dアクション・メトロイドヴァニアです。

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「メンタルヘルス」と「メトロイドヴァニア」ってどういう取り合わせ?と思われるかもしれませんが……。本作のストーリーでは、主人公が抱える様々な形のトラウマや辛い経験が随所で開示され、その様子は時に痛々しいほどです。

筆者も当初、編集部から「アートスタイルが特徴的な作品らしいです」と紹介されたのですが、Steamの説明文を見ると……。

「絵筆をあやつる主人公は、自らの病んだ心が生み出した、カラフルながらも退廃的な精神世界から逃れ出るべく奔走する。」

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画像はSteamで10% OFF:Constanceより

ゲームを起動すると“いの一番”に表示される警告文には……。

「本作はメンタルヘルスをテーマにしています。燃え尽き症候群、家族内対立、トラウマ、不安、うつなどの描写が作中に登場します。気分が悪くなったらすぐにプレイをやめ、回復するまで時間を置いてください」という注意書きが。なんだか不穏な文言が並びます。

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本作はゲームとしてはたいへん遊びやすく、やりごたえもあるメトロイドヴァニアで楽しいのですが、その一方で真剣にこの「メンタルヘルス」という題材と向き合った作品でもあります。

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作中では、主人公の苦しみやトラウマがたびたび描写されます。感情移入しすぎて、見ていてちょっと辛くなる部分もあるのですが、その分だけ物語の展開も気になるし、世界観の考察を深めたくもなってしまう。

物語には深い共感を覚えましたし、心からプレイして良かったと感じるゲームだと思いました。

今回はそんな『Constance』を紹介していきます。紹介の都合上、本稿でも前述した注意書きのような題材・シーンを取り上げます。また、ストーリー途中までのネタバレも含みますので、ご注意ください。

執筆/なからい
編集/恵那

※この記事は『Constance』の魅力をもっと知ってもらいたいPARCO GAMESさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。

多くを語らない、不思議で不穏なキャラクターやストーリー。「ロープでグルグル巻きにされた列車」って……なに?

冒頭にも述べた通り、本作『Constance』は、そのストーリー描写の中で“人の病んだ心”だとか、“メンタルヘルス”といった題材に向き合ったゲームです。アクションゲーム・メトロイドヴァニアとしてのおもしろさもそうなのですが、筆者はそのストーリーや世界観にも強く引き込まれました。

なので、まずはその物語の概要について説明したいのですが……。正直なところ、本作のお話はけっこう抽象的で、解釈次第なところもあります。そのためひとまず、筆者がプレイした際の時系列を追っていただき、その時に感じたことを、なるべくそのまま紹介していきたいと思います。

本作の主人公は、ゲームのタイトルにもなっている「コンスタンス」という女性。髪の毛は薄紫の“インク”で出来ており、絵筆を振り回して戦います。どうやら絵画やイラストがモチーフのキャラクターのようです。

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物語は突然、妙にカラフルな世界に降り立ったコンスタンスの視点から始まります。特に説明もなく、状況が掴めないまま先に進んでいくと、出会ったNPCたちとの会話が発生。ただ、そこでのやり取りも非常に断片的です。

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出会うなり、武器となる絵筆をプレゼントしてくれる女性。コンスタンスの事を待ちわびていたようですが、真意はよくわかりません。

コンスタンスがいわゆる“セリフを喋らない”タイプの主人公なこともあり、「今話しているNPCは何者なのか?」「この世界はなんなのか?」といった情報は、ほとんど得られず曖昧で、明確には明らかにされません。

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ゲームの開始時には、謎のPC画面が表示。なんでPC……?

登場するNPCたちも「タヌキの商人」から「雑音交じりに喋る、自称ロボット市長」まで、悪く言えばすこしちぐはぐな印象。「どういった世界観の作品なのだろう?」という疑問を抱えながら、先に進んでいくことになります。

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本作のビジュアルは、全体的にカラフルな手書き調でかわいらしく統一されていますが、同時に、制御の利かない夢を見ている時のような、不思議な感覚もします。

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研究のし過ぎで様子がおかしくなってしまった学者など、登場人物も妙に不穏です

ただひとつ、会話の流れから明確に分かるのは、「コンスタンスは家に帰りたい」ということ。ストーリーを進めると、どうやら町にある「列車」に乗ることで、この世界の外に出ることができるということがわかります。

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ただ、その「列車」は、謎のロープでがんじがらめにされており、現在は運行を停止中。いまのところ、どんな道具を用いても、そのロープを解くことはできないそうです。

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情報を集めていると、どうやらこの世界にちらばる“涙”と呼ばれるアイテムの力で、そのロープを切ることができるかもしれないそう。「涙でロープを切るってどういうことなんだ?」と思いましたが、その涙には大きなエネルギーが秘められているようなんです。

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そこからコンスタンスは、各地にある涙を探して旅をすることになります。

だんだん広がっていく世界が楽しい、メトロイドヴァニアのアクション要素。ボスの攻撃は苛烈でリトライ必至

絵画をモチーフとした能力を持つコンスタンスですが、旅を進めていくことで新たなアクションなどが開放されていったり、それによって「行けなかった場所に後から進めるようになる」といった要素もあり、その点はメトロイドヴァニアのセオリーに沿っている感じで、アクションとしても満足度が高いです。

大雑把にひとことでまとめてしまうと、本作『Constance』は、メトロイドヴァニアとして非常に遊びやすく、なかなかやりごたえもある作品です。

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いわゆる「パーク」の装備スロットが、スケッチブックに絵を書いていく形式なのがカワイイ

たとえば、インクとして液状化することで無敵ダッシュをしたり、壁に張り付いて三角ジャンプをしたり。後半に行くほど高速で多様な移動・攻撃が充実していき、スピード感が増していくのも楽しいです。

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空中のアンカーに向かって瞬間移動できるスキルなどは、覚えた時点で世界が変わりました。ヒュンヒュン飛び回れてたのしい&むずかしい!

「遊びやすさ」の面でも言うと、地図はいつでも見られますし、操作画面でミニマップのようにして表示することも可能。

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なんなら、「今習得しているアクションだと行けなそうだけど、なんだか気になるところ」を写真に写してメモっておける機能すらあります。未踏の地を探索するのが醍醐味のメトロイドヴァニアとして、非常にストレスが少ない作りになっていると感じました。

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天井に張り付いた鉱石。今は手が届きませんが、後から来たら取れるかも

一方、だからと言って本作は決してヌルゲーというわけでもありません。新エリアに行って覚えた新しいアクションをフル活用して、「落下したり、トゲに触れたりしたら最初からやり直し」なアスレチックを要求されるシーンもあります。

筆者が下手なせいもありますが、掛値なしに同じところで30回くらいやりなおしたような箇所も……。物語に惹かれたとお伝えしましたが、こうしたアクション要素も遊びごたえがあります。

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高速移動のスキルを連続で駆使して、狭い足場を乗り継いでいく。落ちたらやりなおしです

現時点で筆者はストーリークリアまでプレイしていますが、この絶妙な難度がクセになり、アスレチック・探索系の実績埋めにも取りかかっている段階です。「この扉、どうやって開くんだろう……」と頭をひねった箇所も結構ありますし、それを解決した際の達成感もうれしい。

アクションゲームの華であるボス戦も、多彩な攻撃と、それを乗り越えたくなる塩梅がすごくおもしろい!
初見では回避が難しい苛烈な攻撃を、メチャメチャに食らいながらパターンを覚える。そこからリトライを繰り返し、華麗に回避を続け、大きな隙ができたら攻撃を叩き込む。そんな感じで、いわゆる「死にゲー」的な要素もあります。

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ボス戦の手前には大抵きちんとセーブポイントがあるので、思う存分リトライできます

画面全体に広がる縦方向のビリビリ電撃と、横方向の真っ黒い球をごちゃまぜに飛ばしてくる暴走殺人マシーンとか、愚鈍なスライムかと思ったら、いきなり騎士に変身して機敏な分身攻撃をしてくる敵とか……。

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「とことん避けてから、その後の大きな隙を狙う」という方針はけっこう共通しているのですが、そのバリエーションが豊富で、どのボスもたいへん楽しく(けっこうムキになりながら)攻略できました。新しいエリアでは大抵、きちんと最新のアクション要素がギミックに盛り込まれていたりもしますしね。

“涙”を獲得した先に見えるのは……。主人公の辛いトラウマシーンに心がキュっとなる

話はコンスタンスが「ひとつめの“涙”」を獲得したところに戻ります。言われるがまま第1のエリアを攻略し、さまざまなギミックを攻略して、最初のボスを倒すことができました。

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ちなみに涙は全部で4つ存在するらしい

主人公のコンスタンスは、家に帰りたい。
帰るための列車は、ロープに縛られて動けない。
ロープを解くためには、“涙”が必要。それがここまでのストーリーでした。

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「ロープを切るのになんで“涙”?ハサミとかじゃないの?」という疑問が残ったまま、第1エリアのボスを攻略。先ほど話した、電撃を使ってくる暴走マシーンがそれでした。

そして、倒したボスから現れた“涙”をコンスタンスが獲得……。すると突然、視界が切り替わります。

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目の前には、PCのモニターが見えている。そしてログイン画面には「Constance」というユーザー名が。なにやらいろいろとウィンドウが表示されており、ゲーム開始時の画面に似ています。

画面には、上司からのチャットが。仕事関係の連絡のようです。

「先方は修正したファイルを印刷したいようだ、それも今日中に!」

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ファイルを開くと、どうやら音楽関係のポスターのようです。上司によると、ロゴの大きさと位置を調整してほしいということ。

言われた通りにファイルを修正。ゲーム内でも実際にイラストレーションソフトの操作をしたりします。一体何が起きているんだ……?

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これだけたくさんのファイル、全部修正するの……?

状況がうまく飲みこめずにいると、今度は同僚からのチャット。

「クライアントから、動画のラフ案を確認したいと言われて……。すぐに書きだしてくれる?」

言われた通りにします。ただスペックの問題かサイズの問題か、書き出しには時間がかかる。

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ボスを倒したと思ったら、なぜいきなりお仕事ゲームが始まっているんだ……? 突然始まった展開と、これまでのゲーム内容とのギャップに面くらいます。

……そういえば、Steamの説明文には「病んだ心が生み出した精神世界を旅する」と言ったことが書かれていました。

ということはつまり、いま見えている世界こそ「精神世界ではない、現実世界のコンスタンス」ということなのでしょうか。

絵筆やインクを駆使して戦うゲーム内のコンスタンスと同じように、現実世界の彼女はグラフィック関係の仕事をしているようです。

続いて、別のアシスタントからもチャットが舞い込みます。

「例のメール、クライアントが確認したいそうだから転送してくれますか?急ぎでお願いします。」

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手が追いつかない。ポスターの修正用ファイルはフォルダいっぱいに入っているし、動画の書き出しは時間がかかる。連絡が多すぎるせいでメールの転送をし忘れてしまいます。

「やっぱり動画のサイズを変更してくれる?」「ついでにこれもお願いします!」要求は増え続けます。

同僚たちも最初は「○○してください、ありがとう!」という慇懃な態度でお願いをしてきていたのに、作業が切羽詰まるのにつれて、「××はまだ!?」「クライアントが催促しているんだけど!!」と、いらだちを隠さずチャットを連打してくるように。確認が忙しすぎて、肝心の作業がいっこうに進まない……。

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新着メールの通知が消えない……

信じられない量の催促チャットで頭がパンクしたところに、最後には上司からの通話が着信。

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「良いニュースだ!さっき頼んでいたポスターの修正は、月曜日でもよくなった。よく考えたら、この時間から印刷できるわけないしな!」

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……最後には、荒れ果てた仕事部屋、PCデスクの前で疲れ果てた表情をする、ぷっつりと糸が切れたような顔の「コンスタンス」が映し出され、このシーンは終わります。

トラウマを通じて、世界の見え方が変わっていく。コンスタンスが戦う敵は、いったい何なのか

もう、なんか、生々しすぎるんですよ……。
最初は丁寧に連絡してくるのに、切羽詰まるとメチャクチャな催促をしてくる人とか、タイミング悪くそれが重なって死ぬほど忙しいのに、それでもお構いなしに飛んでくる修正依頼とか、曖昧でコロコロ変わる指示内容とか……。

あまりにも限界な状況がひしひしと感じられて、こっちまで辛くなります。

通話用アイコンのにこやかなコンスタンスと、部屋でひとり、うんざりしている顔のコンスタンス。この対比も非常に辛い。

このように本作『Constance』では、エリアを攻略した証の“涙”を手に入れる度、現実世界のコンスタンスが経験したであろう「つらい思い出」や「トラウマ」などの回想シーンが挿入されます。

その後もゲームが進むごとに「小さい頃、バイオリンを習っていた時に、音楽の先生に『これまでなにを練習していたの?』と激詰めされる」シーンだとか……。

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「仕事がうまくいかなくてふさぎ込み、弟が心配して連絡をくれたのに、それすら無視してしまい半ば呆れられる」といった、本当に「心に来る」シーンが再生されます。浴びせられるセリフの数々も、絶妙にリアリティがあって、余計に辛い気持ちになります。

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前者の音楽の先生のシーンは、筆者も個人的に似たような経験がありました。関連する職種の方には申し訳ないのですが、幼い頃のつらい思い出に“習い事の先生”を持ち出すのは、解像度が高すぎるよ……。

家族との不和を描くシーンでは、コンスタンス自身は兄弟の連絡を無視しながら“アルバム”の写真を整理しているのですが……。

小さい頃の写真はにこやかに、朗らかに家族と写っているのに対し、徐々に時代を下ると、荒れ放題の部屋で必死に絵を描いているコンスタンスが写されているなど、だんだんと暗い写真になっていくんです。
こういったシーンを見るたび、心がキュっとなりました。

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そしていま一度、本作のSteamストアページの説明文を引用します。

「絵筆をあやつる主人公は、自らの病んだ心が生み出した、カラフルながらも退廃的な精神世界から逃れ出るべく奔走する。」

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画像はSteamで10% OFF:Constanceより

ということは、この「ゲーム内で絵筆を振って戦うコンスタンス」と「彼女がいる世界」は、困難に直面している「現実世界のコンスタンス」の、心が影響したものなのではないでしょうか?

たしかなことは言えません。でもそう考えると、これまで経験してきた、抽象的な物語の端々にも、なんだか説明がつくような気がしたんです。

なのでここからは、筆者の個人的な考察を挟ませていただきます。「これが正解だ」というつもりはないのですが、こうした深堀りをしたくなってしまうほど、この世界のことが気になってしょうがないんです。

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ゲーム内のコンスタンスは「家に帰りたい」と話していました。少なくとも彼女は、この世界の中で迷っています。折り合いの悪い弟がいるようですが、彼女自身は元の家に戻りたいと考えている。

そして、その為の手段は「列車に乗る」ということです。ただしその列車は、謎の糸に封じられ、運行を停止しています。旅をすること、先へ進むこと。今の彼女には、この状況から脱する術がありません。

彼女が仕事上で困難を抱えていたことを考えると、通勤や通学の象徴でもある列車が動けないのは、ある種の忌避感の表れのようにも思えます。

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家に帰りたいと願い旅をするコンスタンスと、その方法を失った世界。この世界がコンスタンス自身の心象風景であるのなら、この一見自己矛盾した状態は何を意味するのか?これから先の展開が非常に気になります。

深読みすぎるかもしれませんが、彼女の抱える不安やトラウマを見た後だと、これまで倒してきたボスたちも、そうした経験の象徴に思えてならないんです。

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本作のアクションを紹介する項でも話しましたが、たとえば、暴走マシーンで回避困難な雷を打ってくるボス。これは中に「ブライアン」というパイロットが乗っていたのですが、彼は「自分の意思ではなく、無理やりマシンに閉じ込められて戦っていた」ということが示唆されています。

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マシンを操縦していたブライアンは、どこかに逃げ出してしまいます。

そして彼を倒して手に入れた涙から見えるのは、先述した「限界社会人」のコンスタンス

「自分の意思とは関係なく、やらなきゃいけないから、やらなきゃいけない」「失敗すると分かっているのに、そうしなくてはならない」……。社会で働く厳しさや苦しさのようなものを、ブライアンからは感じます。

また、もうひとつ紹介した「怠惰なスライムが変身して、騎士のような姿になって突進してくる」というボス。彼はドロドロのスライム形態と、キビキビ動く騎士形態の2つに変身して戦う敵です。

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騎士形態では回避困難なほど高速の分身・突進を繰り出してきて非常に厄介なのですが、気になるのはスライム形態の攻撃方法。

彼はどす黒いオーラを発しており、ボス部屋の全域に嘔吐してゲロまみれにしてきます。毒沼が床からせり上がってくる感じです。

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このスライムのようになったことのある人、いないでしょうか。ぶっちゃけると、筆者はあります。「仕事だぞ!」と張りきって、カラ元気で自分でも信じられないほどのパフォーマンスを発揮する。ただ、それが終わり、自分ひとりの状態になったあと、疲れを吐き出すだけのドロドロと化す。

コンスタンスのトラウマを見た後だと、こうしたボスの一挙手一投足すらも、なにかを訴えているような気がしてしまうんです。

『Constance』は、「涙を取り戻す物語」?主人公の旅路の先には、何が待ち受けているのか

自らの病んだ心の精神世界を旅し、そこから抜け出そうともがくコンスタンス。そう考えると、彼女が集めている“涙”とはなんなのか……。

さすがに深読み過ぎるかもしれませんが、ここまで劇中に現れるコンスタンス、泣いていないんですよ。記憶が正しければ、精神世界のコンスタンスも、現実世界で辛い目に合っているコンスタンスもです。少なくとも、ここまでの作中で描写はされていなかったと思います。

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PC前でサイアクになっているコンスタンスも、ゲッソリしているけど泣いてはいない

「感情が死ぬ」という表現は、ちょっとネットスラング的すぎるかもしれませんが……。

そういうことって、実際にあると思うんです。つらすぎて、それが自分のことだとうまく認識できず、だから泣いたり怒ったりという反応すらできない。

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積極的に答えを探す訳でもなく、グルグルと自分の中で、モヤモヤが渦巻いている……。本作の世界から受ける、「具合の悪い時の夢」みたいな、ある種のチグハグさのような感覚はその現れなんじゃないか?と思いました。

そんな世界で、コンスタンスは“涙”を取り戻していきます。

さらにストーリーを進めていくと、謎の黒い影が語りかけてくる場面も。明らかに黒幕のような印象ですが、コンスタンスをあざけり、謗るような言葉を投げかけてきます。

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なぜコンスタンスは冒険を続けるのか?この世界は、そしてこの黒幕はいったいなんなのか?

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本作『Constance』は、ここまで紹介したように、主人公・コンスタンスが抱える問題や苦しみを追体験し、曖昧に語られるストーリーの中で、それをひも解いていく感覚が魅力的な作品です。

本稿では特に印象的だったシーンを取り上げたため、少し悲しい場面の紹介が多くなってしまいましたが……。純粋にメトロイドヴァニアとしても楽しいですし、クリアした時には本当に「プレイして良かった」と感じるゲームでした。

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病んだ心の世界で旅をし、戦い、“涙”を取り戻していくコンスタンス。

彼女の道のりの先には、なにが待ち受けているのか。果たして彼女は、列車に乗ることができるのか。そして列車に乗った先には、いったい何があるのか。その結末は、ぜひご自身でプレイして見届けていただければと思います。


いかがだったでしょうか。謎の多いストーリーの性質上、筆者の個人的な考察が多い紹介となってしまい恐縮ですが……。不思議な世界に戸惑いながらも、プレイヤーとしてコンスタンスの足跡を追い、気づけば彼女の行く末が気になって仕方ない。そういう意味でも、非常に没入感の高い作品だと感じました。

『Constance』は、11/25から発売中。PC(Steam)でプレイ可能です。

ライター
スパイスからカレー作っちゃう系の元バンドマン。占いも覚えたが占いたいことがないのですぐ忘れた。思い出のゲームは『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』
編集・ライター
ル・グィンの小説とホラー映画を愛する半人前ライター。「ジルオール」に性癖を破壊され、「CivilizationⅥ」に生活を破壊されて育つ。熱いパッションの創作物を吸って生きながらえています。正気です。

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