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Key最新作『anemoi』の浴びるほど濃厚な家族愛で超泣いてる。ブランド初となる実妹メインヒロインの「重すぎる愛」で、兄としての自覚を叩き込まれる日々。やっぱりKeyの描く家族は最高だ

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※この記事には、物語の核心や個別ルート以降のネタバレは含まれていません。ただし、作品の魅力を伝えるため、共通ルートで描かれる日常シーンの一部には言及しています。まっさらな気持ちで『anemoi』の世界に飛び込みたい! という方は、閲覧にご注意ください。

Key最新作『anemoi』をクリアした。気づけば、手元にあったはずのティッシュが消えていた。

プレイを開始して3時間が経過したとき、思った。「家族っていいな……」と。モニターに向かって深く息をついていた。

そして、すべての物語を見届けエンディングを迎えたときも、同じ言葉を口にしていた。「家族っていいな……」と。目の前にあるモニターはなぜかぼやけていた。

しかし、このふたつの瞬間に抱いた感情は、まったく別物である。全編を通して、毛色の違う「家族愛」にひたすらタコ殴りにされる。それが『anemoi』という作品だ。

すべての物語を見届けたあとに訪れる、「家族っていいな」という感情については、ここでは語らないでおこう。

それは、『anemoi』をクリアまで駆け抜けたプレイヤーだけが受けとれる、特別な体験としてとっておきたいからだ。こればかりは、誰かの言葉で知るべきではない。ぜひ自身の目で確かめてほしい。

だが、プレイ開始3時間という序盤で生じた「家族っていいな」についてなら、この記事で触れることができる。

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主人公の妹。速川六花(はやかわりっか)。

その中心にいたのは、ひとりの妹だった。速川六花。Keyが紡いできた歴史のなかで、意外にも初となる「妹」メインヒロイン。「実妹」である。

これまで数々の作品でさまざまな「家族」の形を描いてきたKeyが、満を持してメインヒロインに据えた「妹」。彼女の存在はあまりにも愛おしく、そして、少しばかり狂っていた

文/竹中プレジデント


Keyが描く初の妹メインヒロインがかわいすぎる。気づけば彼女に堕ちている

「俺(主人公)の妹がかわいすぎる」

共通ルートを読み進めているとき、こうつぶやかずにはいられなかった。

順を追って説明しよう。本作のジャンルは恋愛アドベンチャーゲーム。オープニングを経てから始まる共通ルートでは、町の掲示板に貼られた「依頼書」を選ぶことでストーリーが進行していく。

選んだ依頼に応じて特定のヒロインや住人との交流イベントが発生する。プレイヤーは少しずつ、物語の舞台となる北の地「真澄町」での生活に馴染んでいく仕組みだ。

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しかし、妹である六花だけは前提がまったく違う。

依頼の有無など関係ない。1日の始まりと終わりには、必ず彼女との一幕が挟み込まれるのだ。家族だからだ。

同じ屋根の下で暮らし、朝はともに目覚め、夜はともに眠りにつく。兄と妹なら自然の摂理だ。

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すでに“初ちゅー”を兄とすませているという事実がさらりと明かされるが、それすらも些末なこととして処理される。

兄と妹だから。家族だから。一緒に並んで寝ても問題ない。なにも起きない。それがふたりの日常なのだ。

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共通ルートをプレイしていると、他ヒロインと比べても明らかに「妹成分」が濃厚であるように感じられた

物語上の主人公は、すでに何年もの歳月をこの妹と過ごしてきた。しかし、我々プレイヤーにとって彼女は「出会ったばかりのヒロイン」である。その過ごしてきた時間のギャップを埋めるかのように、妹との日常をこれでもかと体験させてくる。そういう狙いがあるのではと勝手に解釈している。

兄と妹。ふたりのやりとりに大きな事件が起きることはない。ただ朝起きて、ご飯を食べ、夜眠る。兄と妹としての他愛のない生活だ。

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しかし、共通ルート全体を通してその「何気ない日常」を丁寧に描くことで、我々に「これが彼らが築いてきた家族の形である」とわからせてくる。

「おかえりなさい」と優しく微笑む妹。
朝起きたらご飯を作ってくれている妹。
無防備な兄の寝顔を観察してくる妹。
息遣いが聞こえるほどすぐ隣に並んで眠る妹。
すやすやと眠りながら「兄さん」と寝言をこぼす妹。

……こんなものを見せられて、妹を好きにならない兄がいるのだろうか? いや、いない。少なくとも筆者は完全に堕ちていた。

我々プレイヤーは共通ルートの日常を通して、彼女の重力に絡めとられ、ただひたすらに「速川六花」というヒロインに惹かれていくのだ。速川六花、めっちゃ好き家族っていいなあ……

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チャイナ服姿も見せてくれる。かわいらしい。

兄をダメにするブラコン妹の「重すぎる家族愛」

しかし、速川六花はただの「かわいい妹」では終わらない。少しばかり……いや、かなり変わっている。ひと言でいえば、兄への愛が重すぎるのだ。

「家族の絆」という言葉でギリギリ偽装されている(?)が、彼女の想いの質量は明らかに常軌を逸している。

たとえば、町の人からカップルと間違えられ、冗談めかして人口増加を期待された際のことだ。彼女は平然と「増やしますか?」と、兄との禁断の少子化対策を実行に移そうとする

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まあこの程度ならかわいいものだ。ええ、なんの問題もありませんとも。実妹だが。

ただ、彼女の生きがいが「嫁検定ノートをつけること」だと判明したあたりから、雲行きが怪しくなってくる。

これは、周囲の人間が兄に対してとった行動を逐一メモし、独自の基準でプラスマイナスの採点をしていくという恐るべき代物だ。妹の立場から、ヒロイン陣をきびしく査定しているのだ。

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さらには、自分自身のスペックをバロメーターにしつつ、兄の好み(身長、胸、髪の長さなど)を探ろうとする一幕もある。

なお、すべてを「妹と同じ」と答えることもできる。妹が妹なら、兄も兄である。ちなみに、そこまでしても何も起きない。なぜなら彼らは家族だからだ。

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彼女の兄への執着は、ついには種族の壁すら越える。鳥類への嫉妬である。

作中では、ひょんなことから「ツミレ」という名の鳥類(ウミガラス)をペットとして飼うことになるのだが、ツミレのお腹の柔らかさに兄が一瞬で安らかな眠りについたとき、妹の嫉妬心は爆発する。

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「旅の途中、疲れている兄さんの枕はいつもわたしの膝でした」という謎のプライドとともに、強引に膝枕を提供してくる。

あたたかく、どこか馴染みのある感触。妹の膝枕はまさに“実家そのものの安らぎ”だったのだが……。「なぜわたしの膝では一瞬で寝落ちしないのか」と理不尽にご立腹なさる。理不尽極まりない。だが、それがいい。

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兄への想いが振り切れている彼女は、もはや「兄全肯定マシーン」と化している。どんな行動をとっても「ご立派です」と無条件で称えてくれる。甘やかされすぎてダメになってしまいそうだ。なってもいい気がしている。

そして……その想いが加速しすぎた結果、我々の目の前に「兄さんカルタ」という狂気の産物が提示されることになる。

学校の子どもたちと一緒に遊ぶために作ったもので、どうやらプレイすることで「兄の素晴らしさを学ぶことができる」らしい。

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……いや、どういうことだい? 子どもたちにどんな布教活動をしようとしているんだ妹よ???

だが不思議なことに、これほどまでに愛が重く、これほどまでに狂気じみていてもなお、彼女の根底にあるのは紛れもない「家族愛」なのである

我々は共通ルートの日常を過ごすうちに、彼女によって「兄としての自覚」を教育されているのかもしれない。

なお、ビジュアルアーツ公式YouTubeチャンネルでも、「兄さん、ご立派です!」がくり返される1時間ループ動画が投稿されている。「ご立派な兄となるのだ」という開発陣からのメッセージを感じて仕方ない。

血の繋がりだけが家族じゃない。特大ボリュームで描かれる真澄町という「大きな家族」

さて、ここまで妹との家族愛を中心に紹介してきたが、もちろん『anemoi』の魅力は彼女だけにとどまらない。

他のメインヒロインたちも、妹に一歩も引けを取らないほどの個性を放っている。彼女たちとの会話劇は、隙あらばボケとツッコミが乱れ飛ぶ「言葉のドッジボール」状態だ。

この軽快でテンポのいいテキストこそ、Key作品が長年培ってきた「おなじみの空気」である。往年のファンであれば、実家のような安心感に頬が緩むはずだ。

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ピザが得意料理の辻倉朱比華(つじくら すぴか)。主人公とはボケとツッコミのかけあいが多い。
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ときどき傘をさして空から降ってくる総羽愛乃(ふさば あいの)。主人公とはボケとツッコミのかけあいが多い。
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少々エキセントリックすぎる淡雪陽彩(あわゆき ひいろ)。主人公とはボケとツッコミのかけあいが多い。
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主人公の名前を覚えてくれない白渡小詠(しらと こよみ)。主人公とはボケとツッコミのかけあいが多い。

なにより印象的だったのが、町の住人との関わりである。

キービジュアルに描かれる5人のメインヒロインだけではない。本作は「立ち絵のないキャラクター」との関わりすらも、じっくりと描いている

彼らと言葉を交わしていくうちに、我々プレイヤーはいつしか北の町の住人として、真澄町の日常にすっかり溶け込んでいる自分に気づくはずだ。

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冒頭でも触れた通り、本作はどこまでも「家族愛」にあふれた作品だ。

主人公たち兄妹はもちろんのこと、作中ではさまざまな形での家族の絆が描かれている。たとえ血が繋がっていなくとも、真澄町というコミュニティ全体が、ひとつの大きな家族のように互いを支え合って生きているのだ。

※具体的なエピソードは重大なネタバレに直結するため、ここでの言及は伏せさせていただく。

フルプライス作品ならではの特大ボリュームで展開される共通ルートと個別ルート。本作はその膨大なテキスト量を贅沢に活かし、何気ない日常の積み重ねを通して「家族愛」というテーマをどこまでも丁寧に、そしてじっくりと描き出している。

そんな緩やかな日常を彩るキーアイテムとして、なぜか「ピザ」が一貫した存在感を放っていることにも触れておきたい。

ありとあらゆる場面で登場人物たちはピザを食す。本作『anemoi』における象徴的なソウルフードとなっている。

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『CLANNAD』のあんパン、『Summer Pockets』のチャーハン。アニメ作品に広げると『Angel Beats!』の激辛麻婆豆腐、『Charlotte』のオムライス。Key作品を語るうえで欠かせない「印象的な食べ物」の系譜を、本作ではピザがしっかりと継承している

この演出のもっとも恐ろしいところは、プレイしている我々まで猛烈にピザが食べたくなってくるという点だ。ゲームを進めながら、何度ピザをデリバリーする衝動と戦ったことか(0勝3敗)。

これがこんにゃくや野菜スティックであればどれほど健康的だっただろうかと、恨めしく思ったほどだ。


変人だらけの登場人物たちが織りなす、ギャグのドッジボール。
日常に潜む「すこし不思議(SF)」な要素。
そして、人から人へと受け継がれていく想いと、家族愛。

本作には、Keyがこれまで長年かけて築き上げ、ファンから愛され続けてきた「Keyらしさ」が詰め込まれている

往年のファンに向けた言葉になるが、『CLANNAD』のアフターストーリーが刺さった方なら、好きな雰囲気だと思う。我々は再び、「だんご大家族」になるのだ。

泣きゲーの代名詞たるKeyの最新作は、とにかく「心にじわーっと染みわたる、切なくも温かいゲーム」だった。

そんな『anemoi』は2026年4月24日より発売中。Keyとしてフルプライス作品は6年ぶり。価格はパッケージ版が1万780円(税込)、ダウンロード版が7700円(税込)となっている。

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……さて、最後にひとつだけ。

プレイを開始する前、筆者は公式サイトを眺めながら、メインヒロインの人数を数えていた。なぜか? 『anemoi』がKey作品だからだ。

ヒロインたちに儚さを感じずにはいられない。それが我々の愛するKeyの文法だからだ。実際どうなるのか……。その美しい結末はぜひ自身の目で確かめてほしい。

ただひとつ確かな事実として言えるのは、筆者の目の前にあったティッシュが消え去ったということだけだ。


©VISUAL ARTS/Key

編集者
美少女ゲームとアニメが好きです。「課金額は食費以下」が人生の目標。 本サイトではおもにインタビュー記事や特集記事の編集を担当。
Twitter:@takepresident

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