金曜の夜、2時間だけテスト解放される『アーケロン(Arkheron)』の「フライデーナイト・ファイツ」。
その終了まであと30分というとき、筆者は最後の1戦でトドメの一撃を放っていた。
言わせてほしい。このゲーム、1億点!
……いや、正直に告白する。この日、2時間やり続けて筆者はたったの2回しか勝てていない。PCでPvPをプレイして22年、それがこのザマである。
人数有利を作ったはずが追いかけ回している間にひっくり返され、気づけば1対3。
今年で一番焦った30分だった。
それでも、「また遊びたい!」と思った。
思い描いた通りに動けて勝てた、あの最後の瞬間があまりにも気持ちよすぎたからだ。勝率がどうこうという話ではない。1勝の重みが、勝利数のカウント以上の何かを筆者に残していった。
そんなアーケロンの全世界同時クローズドベータテストが、7月16日10:00にスタートする。なぜこれほど気持ちよかったのか、プレイレポートとしてお届けしたい。
見た目はMOBAやハクスラ。でも中身は、ピュアな“殴り合い”のアクションだ
筆者がこの日ハマっていたのは、『アーケロン』に登場した新モード「スパイアーズ」だ。
対人戦の仕組みやアイテムの組み合わせを学ぶためのモードなのだが、これがとんでもなく熱かった。まずは、その戦いの手触りから語らせてほしい。
『アーケロン』のゲーム画面を初めて見た人は、たぶん「MOBAかな? ハクスラかな?」と思う。筆者もそうだった。そして、ワチャワチャしたお祭りみたいなゲームを想像して飛び込み──あっけなく轢き殺された。
実際の操作はWASD移動で、カメラと照準が連動する。スタミナやダッシュの概念もある。つまり本作、見下ろし型の皮をかぶった、かなりピュアなアクションPvPなのだ。MOBAよりむしろ、シューターを普段遊んでいる人のほうが馴染みやすいかもしれない。
スパイアーズの実際は、達人の間合いでの牽制合戦から始まる。というか、始めなくてはいけない。
遮蔽物は攻撃を通さないし、大きなダメージを一部カットするシールド(耐久力)を全員が共通で持っている。ちなみにこれはスパイアーズ特有の要素ではなく、『アーケロン』の基本システムだ。
シールドが強力なぶん、いかに相手の耐久力を先に削るか──その間合いの測り合いから戦いは始まる。この感覚、見た目はMOBAでも、エッセンスは完全にFPSのそれだ。
敵の動きを読むことが大事だし、精密にエイムすることも、回避もリソース管理も大事になる。筆者は最終的にチャクラム「リングブレード」とクロスボウ「タロンフライト・クロスボウ」を主軸にした遠距離ビルドに落ち着いたので、FPSの立ち回りの知識がかなり役に立った。


一人でキャリーするのは簡単ではないが、個人の活躍がしっかり状況の好転につながる。勝ったときのカタルシスが大きいのは、運要素が薄く、勝敗に実力を強く感じられるからだろう。
そして、この操作と思考を絶えず求められるゲームに、決定的な気持ちよさを足しているのが手触りの良さだ。
筆者はすべてのゲームにキモチイイ音とエフェクトを求めるタイプのやっかいなゲーマーなのだが、過去に『アーケロン』を触ったときには少し物足りなさを感じていた。それが今回のバージョンでは、「敵を殴った感」が段違いにわかりやすくなっていた。
ヒットサウンドがとにかくデカく、体力ゲージの視認性もいいので、その一撃でどれだけ削れたかが一目でわかる。
この手応えは見下ろし型では弱くなりがちで、特に近接は当てたかどうかすら曖昧になりやすい。しかし本作は、正直、敵を殴っているだけで気持ちがいい。上手く殴れば勝てるゲームなのだから、上手く殴れたら気持ちいい音が鳴るべきなのだ。
タコ負け街道でも折れずに戦えたのは、この手触りの良さも間違いなく効いていた。
戦いの中身は歯ごたえたっぷり。でもルールは拍子抜けするほどシンプルだ
これだけ濃い戦闘が繰り広げられるスパイアーズだが、ルール自体は拍子抜けするほどシンプルにできている。3人チーム同士がアリーナでぶつかり、相手を全員倒せばラウンド獲得。2本先取で1マッチが決まる。要は3vs3のチームデスマッチである。
メインモードの「アセンション」が塔を昇っていくバトルロイヤルなのに対し、スパイアーズには漁夫の利もなければ、ゼロからのファームもない。全員が最初から装備を整えて殴り合う。装備格差が存在しないぶん、勝敗は純粋に実力へ寄っていく。
この「遊びやすさ」を支えているのが、対戦前の準備フェーズだ。
マッチングして3人チームが決まると、「チェックポイント」と呼ばれる待機場所に入る。ここで仲間と装備を整え、戦略を練り、準備が完了してから相手チームとのマッチメイキングを始められる。
バトロワのアセンションが常に時間に追われるのに対し、スパイアーズは本当に自分の準備が済んでから戦いが始まる。このマイペースさが、初心者にはとにかくありがたい。


そしてこのモードには、「ライフ」と「ラン」という個人スコアの仕組みがある。プレイヤーはそれぞれライフを3つ持ち、2本先取のマッチに負けるたびに1つ失う。ライフがゼロになるまでの一連の挑戦が「ラン」だ。
1マッチ勝つごとに1つ上へ勝ち上がっていき、3回負けるまでにどこまで進めるかを競う──要は個人のスコアアタックでもある。
ちなみにマッチメイキングが気に入らなければ、ランを維持したまま入り直すこともできる。そのまんま、配信企画の「○回負けたら即終了」だ。ゲームに慣れていても緊張感は損なわれないし、配信映えもしそうな仕組みである。
奥深さの正体は、「攻めが報われる」システムと、シビアなリソース管理にある
技の性能はチェックポイントでいくらでも試せるが、システム周りはなんとなく遊んでいると見落としやすい。ここを知ると、本作の哲学が少し見えてくるので紹介したい。なお、以下はスパイアーズ限定ではなく『アーケロン』共通の仕組みだ。
まず本作は、アグレッシブな行動がとにかく評価される。敵を殴り続けたりキルを取ったりすると、攻撃力と防御力が跳ね上がる強力なバフ「Empower」が発動する。さらにキルを取れば体力も一部回復する。
攻めた者が強くなり、しかも回復までする──このあたりは対戦格闘ゲームに通ずるところがあるかもしれない。うまく殴り続けられるチームが、最終的に勝つ仕組みなのだ。

ただし、攻めが正義だからといって、劣勢に一切の望みがないわけではない。「Empower」は劣勢のときほど発動しやすかったりと、逆転の芽はちゃんと残されている。
加えて、ダウンした味方を起こせるDBNO(Down But Not Out)もある。最近のゲーム、特にバトロワなら無いほうが不思議なシステムだ。
実際、筆者は3vs2で人数有利を作ったと思ったら、1人を追い回している間に味方を復活させられて逆転負けを喫したことがある。
要素が多いぶん、多様なピンチも多様なチャンスも生まれる。戦局がコロコロ変わるから、ほどよく忙しくて面白い。
そしてもう一つ、スパイアーズの緊張感を決定づけているのがリソース管理だ。
本作の回復アイテムには所持上限があるのだが、スパイアーズではラウンドをまたいでもこれが回復しない。使い切りの強力な「アンカースキル」──死を免れたり体力を全回復できたりする切り札──も、同じ試合で使えるのは1度きりだ。

勝てそうな時に万難を排して使うのか、負けそうな時にここぞの逆転を狙って使うのか。この判断が常に付きまとう。ちなみに筆者は割とうかつなタイプなので、切るタイミングを結構後悔している。つまり伸びしろだ。
悔しくなったり熱くなったりする要素は多いが、お互いの条件は公平で、回転も早い。次こそはとリプレイの手が止まらなくなって、2時間が正直あっという間だった。
そして「スパイアーズ」は、メインモード“アセンション”の最高の練習場になっている
『アーケロン』はキャラクターを選ぶゲームではない。現地で拾ったアイテムの組み合わせ──ビルドによって戦い方が決まる。
同じ装備を集めると強力なセット効果が発動し、特定の装備を4つ揃えると「エターナル」に変身して専用スキルまで解放される。
このビルドまわりの奥深さこそ本作の核なのだが、そこを掘り始めると一本の記事では収まらない。基本的なゲームプレイは以前にも本誌で紹介しているので、興味が湧いたらぜひ読んでほしい。
ここで言いたいのは、スパイアーズがこの「ビルドと戦闘の答え合わせ」を高速で回してくれる、ということだ。
メインモードのアセンションでは、戦闘システムを深く理解していなくても、漁夫の利を狙ったり装備差で殴ったりと、戦略的な勝ち方が狙えてしまう。だが純粋なガチンコの殴り合いも同じくらい奥深くて面白い──それをスパイアーズで思い知った。
というか、たぶんそこが本作の一番推したいところなのだ。
そもそもバトロワは、突き詰めれば「敵を全員倒せば勝ち」のゲームである。塔を登るアセンションも、アリーナで殴り合うスパイアーズも、戦闘のコアは同じ。だからスパイアーズでの練習が、そのままアセンションの力になる。
しかも回転が早いぶん、使って覚え、やられて覚える学習ループがグルグル回る。この学習は、アセンションのプレイではどうしても時間がかかる部分だ。勝ちたいなら、どんなエターナルが存在するのかを知っておいたほうがいい。

筆者もうろ覚えのまま挑み、知らないスキルや仕様に散々苦しめられた。それでも終わる頃には、連敗記録を忘れて「次は勝てそう」という自信を得るくらいには、知識をアンロックできていた。
だからスパイアーズは、単純にライトにしただけのお遊びモードではない。初心者から上級者まで本気で挑めるチャレンジングなモードとして、真剣に作られている。
ライフを失わずに勝ち“続ける”つもりなら、ちゃんと積み上げが必要だ。その積み上げは、そのままアセンションで勝つための力になる。
もちろん、勝ちにこだわらない遊び方も許されている。お気に入りのエターナルを1体見つけてこすり続けるのも手っ取り早いし、ランにこだわらず「1勝だけ」を何度も目指したっていい。
勝ちたいからこそ練習になる──けれど、練習しろと言われて素直に練習できる人間は、だいぶストイックなのだから。
“入口”のはずが、単体でも十分においしい。それがスパイアーズだった
あらためて『アーケロン』というゲームを短く表すなら、「バトロワ×MOBA×ハクスラ×ローグライク」と言うほかない。そこに高いアクション性が乗る。個人的なフィーリングとしては、見下ろし型の皮をかぶったヒーローシューターを遊んでいる感覚に近い。
面白いのは、プレイヤーのバックグラウンドによって印象がまるで変わることだ。ハクスラ好きならセット装備が完成する快感を、ローグライク好きならシナジーと取捨選択の判断を、バトロワ好きならランダムなエンカウントの緊張感を──それぞれが自分の“おいしい部分”を見つけられる。とにかく全部乗せで、そして浅瀬がない。
念のため言っておくと、メインコンテンツは相変わらずアセンションだ。開発の位置づけとしても、現時点でスパイアーズはあくまで遊びやすい入口である。

だが個人的には、スパイアーズは単体でも流行るんじゃないかと思っている。
理由は単純で、戦闘が面白いからだ。
モードがどうという以前に、いろいろなゲームの要素が盛り込まれ、ピュアなスキルを求められる本作の戦闘そのものが、エキゾチックでエキサイティングなのだ。
しかもスパイアーズは、テストのたびに調整が重ねられている。戦闘システムがさらに進化して、もっと面白くなる余地がある。となれば、その先にあるアセンションの進化にも期待していいだろう。
新モードの登場で、高速で知識をアンロックできるようになったハクスラバトロワ『アーケロン』。冒頭でお伝えしたとおり、7月16日10:00に、本作の全世界クローズドテストプレイがスタートする。
筆者はもちろん、また性懲りもなく挑むつもりだ。







