公園で拾ったデカビタの空き瓶に拾った枝やナメクジを入れたり、汚い葉っぱを桶に集めて魔女のポーションを作ったり、理由もなく牛乳パックに大量のおたまじゃくしを詰め込んでみたり……。
とにかく、ばっちくて“お下品”な物体を混ぜた「謎の汁」を、誰しもが幼少期に作ったことがあるはずだ。(あるはずだ……。)
そうした「お下品でちょっと幼稚な、クリエイティブ謎汁づくり」に、きわめて理性的で「ただのお下品」では決して喜ぶことがないはずの“大人”も熱中してしまう。
そんな素敵なお料理ローグライクゲームが、Forest Regesの開発する『SATED』だ。
繰り返す。大人という存在は本来、ただお下品な行為をするだけでは喜べない。
ナメクジを瓶に詰めて笑顔になれたのは、せいぜい小学生まで。
ではなぜ筆者は、東京ゲームショウ2026のホール4 C08に位置するCRITICAL REFLEXブースで、ウジムシや得体のしれない歯、ゴミを鍋にブチ込ぐるぐるぐるぐるかき混ぜることに真剣になっていたのか。
理由はひとつ。
「汚い汁づくり」に、命がかかっているからだ。
「汚い」は「かっこいい」。だから、大人でも楽しい汚物クッキング
本作のゲームプレイは、ガジェットにまみれた鉄道車両の中で開始する。
車両が停車すると入り口が展開。そして車両のドアが開いた先には、おなかを空かせたクリーチャーが鎮座している。車両の中には運転するためのハンドルと、スロットマシンのようなレバーがついた冷蔵庫、そして怪しい調理台が存在する。
ゲームを進行するためには料理をする必要があるため、さっそくキッチンに立ってみる。
ここで、どうやら「お料理」が本作の中心となる行動であることが分かったが、どこか様子がおかしい。
まず、冷蔵庫に食材を取りに行く。冷蔵庫はスロットのように回転し、食材をランダムに吐き出してくれるのだが……
出てくるのは、ウジ虫、歯、乾電池、ヒトデ、人間の目玉、ゴミなどのラインナップ。
お下品というか、もはや邪悪さムンムンである。
そして、それらを混ぜれば「とにかく汚いスープ」が完成する。
言ってしまえばシンプルだが、ややローポリな質感を活かした荒々しいスタイルで描かれるウジ虫や内臓などは非常にダークな魅力を放っていて、なんだか魅力的。
また、3Dで表現された車両の中を歩き、冷蔵庫から蠢くウジ虫を取り出したり、マウスを動かしてぐるぐると鍋をかき混ぜるのもなんだか楽しい。
なにより、汚物料理を作る行為には、どこか“悪いことをしている”ような喜びがある。

そうした手触りの良さと邪悪なビジュアル、シチュエーションは、まさに子供がかなり気持ち悪い虫や汚物でおままごとをするが如く、幼稚で暴力的な快楽の世界に“立派な大人”のプレイヤーも引き込んでくれる。
さて、とてつもなく邪悪なスープは、自分では飲みたくない。
そんなものは、目の前に鎮座するクリーチャーに食べさせれば良いだろう。
クリーチャー様は、ただ適当に作ったスープはお気に召さなかったらしい。
そして食い殺された。
テキトーな汚物汁は己を殺す。命をかけたお料理ローグライク、ここに開幕
そう、このゲームは「クリーチャーの給餌をして生き抜くお料理ローグライクゲーム」なのだ。
ただ楽しく汚い汁を作っていればいいわけではない。正解の汁を作れなければ、プレイヤーは食われて死ぬ。だからプレイヤーは真剣に、正しく汚い汁を作らなければならない。

“汚い汁”ことスープの正しさは、お客様として迎えるクリーチャーごとに大きく異なる。
ゲームは新たな食材やアイテムの獲得、クリーチャーが配置された樹状のマップを舞台に進行していくが、クリーチャーが存在するマスに止まると、まずクリーチャーの触手などを介して「注文が書かれた紙」を手渡される(条件次第でオレを食い殺してくるのに、非常にチャーミング)。
要求する紙には求める満足度の値、そして「正しいスープを構成する属性の割合」が記載されており、これらの値は入れる食材の種類と順番によって決定される。
属性、満足度の値はどちらも食材ごとに異なり、たとえばヒトデなら属性は「海洋」で満足度が3、眼球なら「内臓」ウジ虫なら「生物」といったように設定されているわけだ。
しかし、謎の冷蔵庫は一度レバーを落とすごとに「食材のデッキ」からランダムかつ限定個数の出力をする。だから、クリーチャー要求を達成するための食材集めでは、複数回スロットを回すことが多いだろう。
さらに、2度目以降に冷蔵庫が食材を出力するためにはお金がかかり、回数がかさむほど消費するお金も増えていく。
一度冷蔵庫から取り出せば食材は料理を作るまで保持されるのだが、一度の料理に使える食材の数にも上限があるし、いわゆるリロールをした際に獲得したすべての食材をパクられるイベントもしばしば発生する。
マジでギャンブルだ。

言ってしまえば本作は「お料理ギャンブルデッキ構築ローグライク」のようなスタイルの作品となっている。
良い感じに「食材のデッキ」にカードを追加したり、引いたりしながら、死ぬまでにバフを与えるアイテム「素子」を獲得してパワーアップしつつ、ギャンブル冷蔵庫を手名付けて運命を切り開き、クリーチャーの期待に答えた汚い汁を作りだす。


そこには、汚い汁を作るというお下品な行為と、戦略的に「食材デッキ」を強化していく知略的な遊び、そしてレバーを引いて運命を勝ち取り、数字がどんどん大きくなっていくドーパミンジャンキー向けの喜びが同居している。
あくまでも今回プレイした遊した範囲での感想だが、一見矛盾する「お下品さ」と「知性」が同居する点こそ、「ただの悪趣味」には決して留まらない本作ならではの魅力かもしれない……。

優れた汚い汁を作れば生き残り、ただの汚い汁を作れば、作った本人が食われる。
戦略的に食材を選び、運を手繰り寄せていくうちに、気づけば「汚い汁」に夢中になっていく。
そんな独特すぎる体験を味わいたい方は、ぜひTOKYOゲームショウ・ホール4 C08に位置するCRITICAL REFLEXブースで『SATED』をプレイしてみてはいかがだろうか。
CRITICAL REFLEXブースでは『SATED』だけでなく『Mouthwashing』『No, I’m not a Human』といった人気作や、日本語デモの初公開となる耳掃除ホラーゲーム『Tiny Chills – Not From Ear』がプレイできるため、これらの作品にも要注目だ。






