かつて私は、宇宙を旅する生活にどっぷりハマっていた。
より正確に言えば、宇宙でひとりの戦士として生き抜くスペース・オペラRPG『マスエフェクト』にハマっていた。これは「自分の選択により続編にまで強く影響を及ぼす」という、“お前だけの伝説”を宇宙に打ち立てる大作RPGシリーズであった。
そして時は流れ。あの“選択する喜び”を生み出した作り手たちが“あたらしい宇宙”を用意している。それが、新作SFアクションRPG『EXODUS(エクソダス)』だ。
また、宇宙を謳歌する感動を与えてくれるというのかい……?
本作の開発を手がけるArchetype Entertainmentには、『マスエフェクト』や『ドラゴンエイジ』を作ってきたBioWare出身のスタッフが集っている。
作中の登場人物も特徴的だ。なかには「タコ」の女の子も出てくる。

かわいいね。
どうみても、タコだ。当然のようにしゃべれるタコを投入してくるのが彼らだ。
この「人間以外のキャラクターを仲間に取り入れる」形式は、『マスエフェクト』シリーズでも恒例であったが……ここまでドストレートではなかった。気になる……どういうキャラなのだろう。
筆者は、幕張メッセで開催された「東京ゲームショウ2026」にて『エクソダス』を先行して体験した。そこで見えてきたのは、まさに“マスエフェクト仕込み”な「選択」がプレイに影響を与える濃密なRPG体験の片鱗であった──

さらに今回は、『マスエフェクト』や『マスエフェクト2』のメインシナリオを手がけたシナリオライター・脚本家のドリュー・カーピシン氏をはじめとする開発陣から、直接お話をうかがう貴重な機会にも恵まれた。
本稿をきっかけに、“物語の軸を自分で選びぬき、その結果を見届ける楽しさ”にすこしでも興味をもっていただければ幸いだ。
取材・文/TsushimaHiro
編集/海ソーマ
試遊版では頼もしい仲間たちとともに“カエルさん”の救出任務へ

今回プレイできたのはゲーム開始直後ではなく、主人公「ジュン」がある程度育った状態からはじまる場面。
ジュンは星間移動に必要な宇宙船のパーツを得るため、依頼をこなしていくことになる。今回挑むのは救出ミッションだ。
救出対象は、軌道上の宇宙ステーションを管理するカエルさん。
彼はただのカエルさんではなく、音楽を聴き、言葉も話す知性を得た動物「アウェイクン」と呼ばれる存在である。ちなみに先述したタコの「ソルト」も、この「アウェイクン」のひとりだ。
そして、今回の任務に同行してくれたのは、透明化して敵の背後に回り込めるアサシン的な能力を持つ青年「サリマン」と、パワードスーツをまとい高火力爆撃で支援してくれる女性「エリーズ」のふたりだった。
「サリマン」は合理的な判断をするタイプで、「先に進めないなら壁を壊せばいい」と即断できる、いわば影の主人公的な立ち回りとクールな口調が持ち味だ。
ただし、主人公が人情を見せた場面ではひそかに好感度が上がるというクーデレ的な魅力もある。個人的には「ギャレス」【※】っぽい魅力のあるキャラだと感じた。『マスエフェクト』を知らない方に向けていうと、某有名忍者マンガの“もうひとりの主人公”を思わせるテイストだ。
※ギャレス・ヴァカリアン
『マスエフェクト』シリーズに登場する仲間であり、スナイパー。皮肉屋でありながらも熱い正義感を持っており、主人公に対しては「宇宙で最も信頼できる相棒」として揺るぎない忠誠と友情を誓ってくれる。その格好良さと内面の魅力から国内外のファンコミュニティにおいて屈指の人気を誇る。

なお、戦闘中は回数制限つきながら、ふたりにスキルの使用を指示することもできる。
サリマンは背後からの奇襲、エリーズは広範囲への高火力爆撃と、それぞれの持ち味を状況に応じて頼れる。しゃがんでスニーキングしながら背後を突く、といったプレイも可能だ。
即座にスキルが発動できるため、自分がリロードしている間に時間を稼いでもらったり、高火力で一気に道を切りひらきたいときに活躍してくれる。本作の戦闘の手触りとしては「仲間がしっかりと頼もしいTPS」という印象を受けた。
「選択」が物語に影響を及ぼす手触りが健在
ここからは、RPGの醍醐味である「選択」について紹介する。
『マスエフェクト』の開発者がかかわっていることもあり、本作はしっかりと「プレイヤーの選択」の手ざわりを感じさせる作りになっていた。
たとえば、先に進むためのキーカードを持つロボットに、クレジットを支払うか奪い取るかという場面があった。そこに表示されたのは「買う」か「奪うか」の選択肢である。
奪えば「ロボットを石化させてカードを奪う」という無情な結末になり、お金を支払えばロボットはウキウキとカードを手渡してくれる。どちらを選んでも、その先の主人公の人生にどう響いてくるのか、気になるところだ。
また、行動ひとつひとつで周囲のキャラクターの好感度も上下する。
筆者は今回、道中で傷ついた人物に手を差し伸べるプレイを重視したが、「サリマン」の好感度はプレイ中ぐんぐん上昇していった。クールなフリをして、なかなかの人情家である。
そして、脱線できる寄り道の多さにも驚かされた。ちょっと脇道にそれるだけで探索できる範囲は大きく広がり、資源も確保できる。メインの目的そっちのけで、カエルたちに会いに行くだけでもかなりの時間を溶かせてしまう。
最後にはカエルたちの生活をおびやかす人物に出会うも、即座に「サリマン」が射殺。近くにいた巨大クマが激怒し、ボス戦となった。
カエルを救ったあと、「サリマン」はカエルたちを人間の王朝の庇護下におこうと交渉を持ちかける。そのかわり、未来にわたりカエルたちに忠誠を誓わせるのだという。
おいおいおい……この男、狡猾だぞ!?
助けてやったかわりに、かわいらしいカエルちゃんたちをまるごと支配下に置いちゃう気か!
そしてこの悪い顔である。
いきなりサリマンが嫌味なエリート系サラリーマンに見えてきた。
さて、カエルたちに忠誠を誓わせれば軍備力があがる。
そうしなければ、カエルたちは主人公たちの世代が生きている限り惜しまぬ協力を約束してくれる。
つまり、選択はプレイヤーに託される。
こうした選択の積み重ねが、「パラディン(良い人の選択)」か「イモータル(野望の選択)」かという主人公の進化の方向性、そして仲間からの好感度に少しずつ影響していくという設計だ。
そして、『マスエフェクト』のファンであれば「この選択が間違いなく後の展開に大きく影響を及ぼす」と理解する。
とくに、3部作を通じて自分の選択が最後まで影響を及ぼし続けた『マスエフェクト』を遊んできた身としては、この選択が、いずれ『エクソダス』での人生を左右していくという確信がある。
本作を手がけるArchetype Entertainmentは、そんな『エクソダス』をどのような作品にしようとしているのだろうか。その答えは、試遊後のインタビューで語られた。
『エクソダス』は“選択する楽しさ”を実現した新スタジオ最初の1本
本作を紹介してくれたのは、『エクソダス』のクリエイティブディレクターであるジェシー・スカイ氏、シナリオを手がけるナラティブディレクターのドリュー・カーピシン氏、マーケティングマネージャーのリサ・ゴンザレス氏。
ドリュー・カーピシン氏(以下、カーピシン氏)は、『マスエフェクト』や『マスエフェクト2』でメインシナリオを担当しており、数々の魅力的なキャラクターを宇宙で活躍させてきた人物だ。



まず彼らは、スタジオの掲げる目標について語ってくれた。
『エクソダス』を開発するArchetype Entertainmentは2019年に設立されたスタジオだ。このスタジオが掲げる使命はおもに3つ。
- 世界最高水準のストーリーを実現する。
- プレイヤーの主体的な選択を尊重する。
- それらをAAA級のゲームプレイにする。
まるで夢のような話だが、本スタジオのスタッフにはBioWare、343 Industries、Electronic Arts、Naughty Dogなどの有名なAAAスタジオ出身のゲーム業界のベテランが参加している。
そのスタジオが最初に放つ1本が『エクソダス』だ。今回遊ばせていただいたデモ版は、「東京ゲームショウ2026」が初のお披露目だという。

つぎに、カーピシン氏は本作の世界設定について、『エクソダス』の宇宙はアインシュタインの“相対性理論”に従っていると語った。ようは、「光より速く移動できるものは何もない」という理論に基づいている宇宙だ。
その世界設定は『DUNE 砂の惑星』『スター・ウォーズ』『インターステラー』といったSF作品から着想を得ているという。
なかでも『エクソダス』を特異な作品にしているのが、『インターステラー』にも通じる「時間の遅延(タイム・ディレーション)」だ。【※】
※タイム・ディレーション
時間の遅れや時間膨張ともいう。アインシュタインの相対性理論において、「速く動くほど、または重力が強いほど、時間の進み方が遅くなる」という現象を指す。光のスピード(秒速約30万キロメートル)に近づくほど、移動している物体の時間はそとから見ている人よりもゆっくりと進む理論だ。例えば宇宙ロケットで超高速の旅をして地球に戻ると、地球に残った人より自分の年齢が若くなる「ウラシマ効果」がこれに当たるという。
繰り返すが、光より速く移動できるものは何もないという理論には宇宙船や通信も含まれており、この一点が本作の恒星間の文明のあり方に大きく影響しているとカーピシン氏は説明する。

たとえば、主人公が故郷からほかの星系の惑星へ旅立てば、帰るまでには何年もかかる。しかし、光速に近い速度で移動する自分にとっては、時間はゆっくりと流れるという。
自分にとっては数日しか経っていなくても、故郷の家族や愛する人にとっては、何年、何十年もの時が過ぎている。この“ズレ”こそが、物語の核になるという。
“人外キャラ”の魅力をどう引き出すのか? 馴染みのある部分を描くことで、共通点が見つかっていく
続いて行われたインタビューでは、ジェシー・スカイ氏(以下、スカイ氏)とカーピシン氏にお話をうかがった。
『マスエフェクト』を遊んできたファンとして、数々のキャラクターを活躍させてきた彼らに“人間ではない仲間”の魅力の引き出し方についてを中心に話を聞いてみた。
──カーピシンさんは『マスエフェクト』でも人間以外の魅力的な仲間を活躍させてきました。『エクソダス』では、タコのような見た目傭兵「ソルト」が登場していますが、まずは彼女を入り口に“人ではないキャラクター”をどう魅力的に描いているのかを教えていただけますでしょうか?
カーピシン氏:
人間ではないキャラクターを描くときは、その“人間ではない部分”を面白く見せながら、プレイヤーのみなさんにとっても馴染みのある感情や、馴染みのある考え方・話し方に結びつける必要があると思います。
──たしかに。人間にもある郷愁や友情、恐怖といったさまざまな感情があると知ると、親しみが持てますね。
カーピシン氏:
はい。そうすることで、そのキャラクターならではのユニークさを感じ取りつつも、彼らと関係を築き、彼らから学び、彼らについて知り、コミュニケーションを取れるようになるんです。
──ところで、なぜ「タコの女の子」という形にしたのでしょうか。
カーピシン氏:
ソルトがなぜ“彼女”なのかについては明確な答えは言えませんが、タコは単独で狩りをする生きものなんですよ。ですから、彼女を賞金稼ぎにするのは、ユニークな狙いだと思いました。
賞金稼ぎは、報酬を得ること、獲物を見つけて仕留めることしか気にかけない。戦闘中心のゲームの仲間キャラクターとして、面白い原型だと思ったんです。
──なるほど、「タコ」の習性から性格や職業、立ち回りが浮かび上がるのですね。
カーピシン氏:
人間ではない仲間は、最初に出会ったときはとても手ごわいです。なぜなら、人間とはまるで違う考え方をしますからね。
でも、関係を築いていくうちにどこかに共通点が見つかっていく。それが、ソルトの物語です。
──そのお話を聞いて、ぜひ仲良くしたいと思いました。
カーピシン氏:
ありがとうございます。ひとつ補足しておきますと、知性を与えられた動物「アウェイクン」たちは地球からとある惑星に訪れた人類にとって、いわば“兄弟”のような存在なのです。
この星に住んでいた古代文明「セレスティアル」がひどく異質なのに対して、「アウェイクン」は地球で馴染みのあるものにずっと近いのです。
──カーピシンさんがキャラクターを物語のなかで描くうえで、いちばん大切にしていることは何ですか。
カーピシン氏:
プレイヤーが愛し、心を通わせるキャラクターを作るには、そのキャラクターに“現実味”がなければなりません。彼ら自身の物語の軸があり、彼ら自身の望みや目標、動機があるのです。そして、それは必ずしもプレイヤーの望みとは一致しません。
ときには、彼らとの摩擦や口論も必要だと思います。彼らは、こちらの言うことを何でもそのまま聞くわけではありません。交渉しなければならないんです。
向こうがこちらに反対することもあれば、逆に、向こうがこちらを説得することもあります。
──摩擦がうまれるからこそ、進展する関係性もあるということですね。
カーピシン氏:
そうですね。だからこそ、プレイヤーが好きになれる要素を持ちながら、いくらかの緊張感や馴染みのない部分、プレイヤーの思いどおりにならない部分も抱えています。
そういうキャラクターを作ることが、本当に大事なんです。そして、それをプレイヤーに探求してもらいたいですね。
──ここからは個人的な質問なんですが……「ソルト」を恋愛対象として見てしまうプレイヤーもいるんじゃないかと思うんです。これは、よくない考えでしょうか。
一同:(笑)
スカイ氏:
本作には恋愛(ロマンス)の要素があり、主人公の恋愛対象となるキャラクターは用意しています。ただ、「ソルト」は恋愛の対象ではありません。彼女はかなりの一匹狼で、警戒心が強く、簡単には心を開きません。
ですから、ソルトとは友情のような関係性を築くことはできても、恋愛関係にはなりませんね。

──ソルトとの特別な絆が育まれることを期待したいですね。そういえば、本作には「狼」のキャラクターも出てきますね。
カーピシン氏:
狼の名前は、「ヒューストン」といいます。彼は、実はあなたの義理の兄なんです。ジュンは辺境でヒューストンと一緒に育ちました。
ジュンはいわば孤児のような存在だったので、兄弟のような関係を築いています。彼はあなたをからかったりしながら、物語のなかであなたを地に足のついた存在にしてくれることでしょう。

──話の方向をすこし変えますが、ゲームプレイ上で優秀なパーティーメンバーとはどういう存在だと思いますか。
スカイ氏:
我々はプレイヤーにさまざまな仲間のなかから、自分の求めているものにあう関係性や性格、そしてキャラタイプやスキルセットを組み合わせる楽しみを感じてもらいたいと考えています。
ステルスでプレイする人はその遊び方を助けてくれる仲間を求めるし、よりひらけた派手な戦闘を好む人もいることでしょう。
──自分だけのチームを組む楽しみがありそうですね。
スカイ氏:
そうですね。ですから、多様な能力をそろえたいと思います。そして、システム以外で言うと多様な“性格”もそろえたい。すべてのキャラクターがすべてのプレイヤーと響き合うわけではありませんから。
でも、幅広いキャラクターがそろっていれば、自分の求めているものに合う関係性や性格を選び自分だけのチームを組むことができます。
──あえて関係性が良好ではない人物と任務に出撃する楽しみもありそうです。
スカイ氏:
チームを組んだあとは、その“管理”がゲームの大部分になります。彼らは互いに、あるいはあなたと意見が食い違うこともあるのです。全員を同じチームに、同じ方向へまとめる。そこも本作の遊びです。
常に幅広い選択肢を用意して、それを自由に組み合わせて楽しんでもらう。『エクソダス』は、そういう作り方をしています。
──最後に『エクソダス』を楽しみにしている日本のみなさんへメッセージをお願いします。
スカイ氏:
これほど長いあいだ取り組んできたものを、ようやくみなさんに見ていただける。それが、本当に楽しみです。
チームは『エクソダス』にたくさんの心と魂、努力と時間、そして愛を注いできました。私たちがこのゲームを愛しているのと同じくらい、みなさんにも愛してもらえたら嬉しいです。
カーピシン氏:
私自身も、チームの多くのメンバーも、日本の文化やエンターテインメントの大ファンです。
だからこそ、こうして日本に来られたことをとても光栄に思っています。ぜひ、『エクソダス』を遊んでみてください。
──ありがとうございました!(了)
振り返れば、人は人生においてどこまでも「選択」を積み重ねつづけている。
今日この日に胃袋へ納めるただ一食の糧ですら、己の意志を刻みつける分岐点だ。
「右か、左か」「与えるか、奪うか」「生きるか、潰えるか」
そんな途方もない数の決断と切り捨ての末、幾千の可能性の死骸を踏み越えて到達した「極限の今」に、我々という存在は立っている。
筆者はかつて遥か銀河の彼方で救世の艦長として星々を巡り、あるいは傷だらけの英雄としてふるい立った。その日々の記憶が『エクソダス』を遊んでよみがえった。
自らの手で運命の舵を切り、その結果として描かれる世界を噛み締めること。
それこそが、この果てしない宇宙を歩む者だけに与えられた至高の歓喜にほかならない。
選び取った一筋の光の背後で無数の未来が闇に消えていこうとも、己が意志で道を切り拓くその痛切な胸の高鳴りこそが、「選択するゲーム」という体験がもたらす最大の祝福なのだと思う。
「選択すること」の楽しさが、たしかに『エクソダス』には存在する。
Archetype Entertainmentが開発し、Wizards of the Coastが販売する新作RPG『エクソダス』はPC(Steam、Epic Games Store)、PS5、Xbox Series X|S向けに2027年4月7日発売予定だ。














