いつからだろうか。「ガールズバンド=ギスギスした人間関係」みたいな風潮が生まれたのは。
みんな一生懸命バンドをやっているというのに、やれ音楽性の違いだの、やれ解散だの、あまたの災難がバンドガールに降り注ぐ。女の子が人間関係で苦しんでいるのを見るのが、そんなに楽しいのだろうか。
残念ながら、『配信少女ノ裏垢迷宮』(以下『はのうら』)の制作陣もまた、バンドの女の子が苦しんでいるのを見るのが大好きな連中らしい。
このゲームでは、数あるガールズバンド物の作品史上でも稀にみる空気の悪さを感じることができる。
なにせ、開始時点でボーカルが死んでいるのだ。おまけに「メンバーの誰かがボーカルを殺した」との告発がおこなわれ、全員が疑心暗鬼になっている。
ガールズバンドで死人を出すな。ガールズバンドで殺人を告発するな。
東京ゲームショウ2026では、『はのうら』の初の試遊展示がおこなわれている。本稿では、試遊を通じて判明したその空気の悪さ、もといゲーム内容を紹介したいと思う。一緒に嫌な気持ちになってもらおう。
この子たち、多分大丈夫!
冒頭でお伝えしたように、ゲーム開幕からボーカルが死んでるわバンドメンバーは殺人の容疑を掛けられるわで、始まる前から不穏な情報が飛び交う『はのうら』だが、同時に、筆者はこれがただの“鬱ゲー”では終わらないとも信じている。
というのも、筆者は本作の前作に当たる『魔法少女ノ魔女裁判』(通称『まのさば』)をプレイした経験があるからだ。
『まのさば』もまた、女の子が苦しむ様子を嫌というほど見せることを公言するゲームであった。
しかし、それを最後までプレイすることで、この苦しみが単に彼女たちを苦しめたい一心で用意されたものではなく、彼女たちの物語が希望の未来へと辿り着くために必要だったとわかる内容に仕上がっていた。
だから『はのうら』で起こっているろくでもないことも、きっとまた仲良くバンドをするための前段階なのだろう。ゆえに、あまり心配せずとも大丈夫というわけだ。
この子たち、大丈夫じゃないかもしれない。
というわけで試遊に挑む。
物語の序盤では、バンドのギターボーカル担当である彩家リイルが、自宅で配信をしている場面が描かれる。ボーカルを担当していた灯野ネオンの死と、「ネオンの死はバンドメンバーによる殺害である」という告発によって、グループは大炎上中。
だというのに、リイルはへらへらと言い訳を重ねる。案の定コメント欄を荒らされまくり、なにも物事が好転しないまま、配信は終了してしまった。失意に駆られた彼女が、突発的に自殺を図ろうとしたところでシーンは終わる。

この子は大丈夫なんですか……?
リイルのことが心配になってきている筆者をよそに、ゲームはダイジェスト的にあらすじを追いながら、次のシーンへと進む。どうやら、リイルの自殺は、彼女の所属するバンド「ラグドロップス」の集合がかけられたことで阻止されたようだ。
バンドメンバーたちは集まって、ボーカルの死について言い争いをはじめるのだが、突然、謎のアプリ「裏Uアプリ」によって、異界に引きずりこまれてしまう。
この異界は、名を「裏アカダンジョン」という。彼女たちは言い争いながらも、この怪しげなダンジョンから脱出するための策を考えることとなった。ここで彼女たちの語らいを聞いていて、バンドメンバーの人となりが少しわかったので、軽く紹介しよう。
水無月メイカ。ギャル。キーボード担当。明るいのは結構だが、まったく場の空気を読まない。
一ノ瀬カイリ。ギター担当。ちっちゃい。お人形みたいなビジュアルだが、とにかく口が悪い。すぐ人を攻撃するのは本当にやめた方がいい。
狭間ナギ。ベース担当。ボソボソとずっとネガティブなことを言っている。あとやっぱり口が悪い。なんで口が悪い奴がふたりもいるんだ。
神楽クロア。ドラム担当のおっとり系。癒し枠かと思いきや、「天使さま」というぬいぐるみを妄信し、あまつさえ会話までし始める。
最後に、さっき自殺しようとしてた彩家リイル。いざ他人と話すのを見て気がつくことだが、この子はコミュニケーションのリズムがおかしい。あとすぐ自殺を仄めかす。さっきのあれはよくあることだったのかよ……。
……あの、筋の通ったまともなコミュニケーションがさっぱり見られないのですが、このバンドは大丈夫なんですか?

若干、いやだいぶ不安になってきた。空気が悪すぎる。しかも、こいつらは初対面とかではなく、ずっとバンドをやっていた仲間のはずだ。本当にここから関係が改善することなどあるのだろうか。
あ、あの正しそうなシルエットは……!! 彼女が来れば、もう大丈夫だ! ……いや、大丈夫か……?
その後、死んだはずのボーカルの姿を見かけた彼女たちは、その影を追って、「裏アカダンジョン」を進んでいく。
すると、敵が出現した。今作のダンジョンには、ちゃんと敵がでるのだ。

アア、完全に終わった。こんな足並みの揃わない奴らが、無事に生きて帰れるわけがない。

!?この声は!?

に、二階堂ヒロさんじゃないか!!!
『まのさば』に出演したことでも有名な二階堂ヒロさんが助けに来てくれた。これで安心だ。二階堂ヒロさんがいれば、この子たちも大丈夫だろう。
……いや本当に大丈夫だろうか。冷静に考えたら、“あの”二階堂ヒロさんである。二階堂ヒロさんのせいで、バンドが余計こじれたりしないだろうか。それどころか、二階堂ヒロさんならこの次のシーンでいきなり死んでいてもおかしくないのではないだろうか。
若干の不安を抱えたところで、試遊は終わった。二階堂ヒロさん……!!

今回の試遊はADVパートだけだったが、このあと「裏アカダンジョン」を踏破して、その主である少女の「裏の姿」を暴いていくのが、『はのうら』の一連の流れになるらしい。少女の「裏の姿」を暴くことで、ネオンの死や告発の秘密にも近づいていくようだ。
しかしまぁ、試遊の範囲はほんの触りだったにも関わらず、既に心配でたまらない。「裏の姿」なんて暴いて大丈夫なのだろうか。
だって人間関係もっとこじれるじゃん!

本当にここからハッピーエンドいけるんでしょうか。
『配信少女ノ裏垢迷宮』はPC(Steam)、Nintendo Switchへ向けて2026年発売予定だ。制作は、“あの”Acaciaである。信じて待とう。







