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【検証:地球防衛軍】刃牙もビックリ!? 2200倍の超巨大アリ&クモの戦闘力を科学的に計算。その恐るべき生態に即死覚悟!?【空想科学ゲーム読本】

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 「地球防衛軍」という言葉には、ココロ踊る響きがある。
 そんな組織が実際にあったら、ぜひとも入隊して地球のために戦いたい!

 ――などと思っているのは筆者だけではないと思うが、そういうヒトにぴったりなのが、ゲーム『地球防衛軍』である。

 近く、新たに『5』が発売される予定だそうなので、その前に筆者は『4』をやってみた。すると……

 で~~~~~~~~~~~~~~っ。
 もうたちまち腰が抜けた。怖い! というか、不気味すぎです、これ。

 ある日突然、 UFOの大軍が飛来、巨大な生物が大量に現れ、人々を襲う。この地球外生物というのが、とてつもなくオソロシイのだ。
 たとえば、侵略性外来生物αおよびβ。αはアリに、βはクモにそっくりなのだが、公式発表によれば、巨大アリは体長11m! 巨大グモの体長は発表されていないが、ゲームの画面では成人男性の10倍ほどもある!

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アリ似のα(画像左)と、クモ似のβ(画像右)
(画像は【PS4】地球防衛軍5 2ndPV UFO襲来より)

 ゲームには、はるかに強大な怪物も出てきて、αやβはどちらかというと「倒しやすい怪物」らしいのだが、科学的にはとんでもない。

 ゲームには、これらの生物がウジャウジャ出てきて、全地球防衛機構軍EDF(Earth Deffence Force)の人々は、これらと勇敢に戦うのだが、勇敢にもほどがある。

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勇猛果敢に立ち向かうEDFの隊員
(画像は地球防衛軍5公式サイトより)

 こんなのと戦わねばならないのなら、筆者はとっとと除隊させてもらいます。
 今回は、『5』に登場する侵略性外来生物αとβを題材に、『地球防衛軍』の世界がいかにオソロシイかを考えよう。

※本記事では、虫の拡大画像などを使用しております。気をつけて閲覧ください。(編集部)

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イラスト/近藤ゆたか

恐怖ポイント1:トラウマ必至! 脅威の拡大率!

 繰り返すけど、侵略性外来生物αはアリに、βはクモにそっくりである。
 ここで「だったら怖くないのでは?」などと思ったあなたは、ぜひともEDFに入隊して、そのアリやクモと対峙していただきたい。

 日本でよく見られるクロヤマアリは体長5mm前後。侵略性外来生物αの体長11mとは、その2200倍である。

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日本中どこでも目にすることができるクロヤマアリも、2200倍の大きさと言われると…
(画像はWikipediaより)

 また、トリクイグモというタランチュラの一種は、体長が30cmにもなるが、侵略性外来生物βの体長が筆者の目測どおり17m(1.7m×10)なら、その57倍

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トリクイグモは、そのままでも十分に巨大…
(画像はどうぶつのくに.netより)

 つまり、それらが地球のアリやクモの拡大版だとしても、尋常ではない拡大率なのであり、たとえばこの顕微鏡写真のように見えるはずなのだ。

 

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(画像は岩手大学HPより)

 

むえ~っ!

 

 自分で掲出しておきながら、実にオソロシイ。

 しかも、アリの顕微鏡写真は、これで100倍程度なのだ。侵略性外来生物αは、2200倍という驚異の拡大率なのである。もう「見なくてもいいイロイロなもの」がクッキリ鮮やかに見えてしまい、生涯引きずるトラウマになりそうだ。想像しただけで嫌じゃ~~。

恐怖ポイント2:踏まれたら即死! 驚異的な体重

 原稿を書きながら泣き叫んでいる場合ではない。この二大生物の脅威を考えなければ。

 たとえば、アリによく似た侵略性外来生物αが、運動能力や習性までアリと同じだとしたらどうなるだろうか。

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(画像は地球防衛軍5公式サイトより)

 アリは口に強力な大アゴがあり、これで自分の体重の5倍のものを持ち上げる。クロヤマアリの体重は4mg。体長が2200倍のαは、体の横幅も高さも2200倍で、体重はなんと43tという計算になる。ぎょぎょ。こんなのに踏まれたら、即死間違いナシですなあ。

 それほど重い体重の5倍を持ち上げられるとしたら、リフトアップ可能重量は215t!
 自衛隊の10式(ヒトマルしき)戦車は全長9.42m、全備重量44tだから、この生物にとっては屁でもあるまい。平然と持ち上げて、ポイポイ空中に放り投げられる……と思われる。EDFの主力戦闘車両ブラッカーE1も油断大敵である。

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もはや戦車ごときでは太刀打ちできないのか!?
(画像はWikipediaより)

 さらに、アリには、尻に毒針を持つものと、尻から蟻酸(ぎさん)を噴射するものがいる。蟻酸は、生物の皮膚をただれさせ、人間の場合は目に浴びると失明する。

 そして、侵略性外来生物αについて、公式HPにはこうある。

攻撃の際には大きな牙が武器となるが、さらに恐ろしいのは強酸を放出する能力である。
酸は100メートルほどの距離まで放出され、金属を数秒で融解することが確認された。

 金属を溶かすとはオソロシイ。それは、蟻酸よりはるかに強力な、塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸だ。いずれも、銃や戦車さえも溶かされてしまう。こんな生物に近づいてはいけません!

恐怖ポイント3:捕まったら最期! 強力なクモの糸

 では、侵略性外来生物βが、運動能力や習性もクモと同じだとしたらどうなるだろうか。

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侵略性外来生物β。体長17m、体重31t
(画像は地球防衛軍5公式サイトより)

 トリクイグモの大きなものは、体重が170gにも達する。これと、筆者が推定した体長17mから計算すると、βの体重は31t。

 やっぱり踏まれれば死にますなあ。

 βの恐ろしい点は、クモと同じように糸を出すことだ。
 クモには、巣を作る「造網性」のものと、作らない「徘徊性」のものがある。βは巣を作らないから、地球のクモの分類に当てはめれば徘徊性であり、糸を出すのは獲物を捕らえるためと考えられる。

 この糸につかまったら、大変だ。
 日頃見ているクモの糸は切れやすいが、それは細いから。日本でよく見られるジョロウグモの糸は直径0.005mmしかないが、βの糸は、どう見ても直径10cmはある。これを引きちぎるのに必要な力は、なんと1600t。これはもう絶対に切れません。

 クモは、獲物を捕まえると、毒を注入して麻痺させ、消化液を注入して生きたまま消化し、栄養たっぷりの液体をチュウチュウ吸う。βも同じ方法で、筆者を液体化してチュウチュウ吸うのでしょうか。わー。そんな死に方だけは、絶対にしたくないー。

恐怖ポイント4:頑丈すぎる! 機関砲にも耐える身体

 EDFの人々は、こんなオソロシイ生物たちに果敢に立ち向かうのだ。この人たちには、恐怖心というものが欠如していて、ちょっとおかしいのでは……いや、われわれのために戦ってくれるEDFに向かって、何を言うのか自分!?

 彼らの活躍を具体的に見てみよう。
 たとえば、EDFに機関砲発射を要請すると、背後から弾丸が飛んできて、βを50mほどぶっ飛ばす!

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中央に浮いている巨影は、ぶっ飛ばされているβ
(画像は【PS4】地球防衛軍5 3rdPV:EDF密着取材より)

 これはすごい機関砲だ。飛距離が50mなら、体重31tのβは時速80㎞でぶっ飛ばされたと思われる。
 大型の機関砲は、口径40㎜、重量1.6㎏の弾丸を秒速1000mほどで発射するが、βに当たった弾丸が10発だとすれば、次のような弾丸が発射されたことになる。

 弾丸が通常と同じ口径40㎜、重量1.6㎏なら、発射速度は秒速4万2000m!
 発射速度が通常と同じ秒速1000mなら、口径140㎜、弾丸重量68㎏!

 う~む。こんなモノを食らったら、普通はぶっ飛ぶのではなく、貫通するのではないか。

 弾丸の貫通力は「弾丸の重さ×弾丸の速度の2乗÷弾丸の断面積」で決まる。すると、貫通力は、前者なら現実世界の40㎜機関砲の1800倍、後者なら3.5倍になる。どちらにしろ、すごい貫通力だ。ところが貫通することもなく吹っ飛んだということは?

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イラスト/近藤ゆたか

 そう、βは体がモノスゴク頑丈なはず!

 うえ~っ。EDFの大活躍を検証するうちに、侵略性外来生物がますます恐ろしい存在になってきた。もうどうしたらいいんだか。

 「地球防衛軍」という言葉の響きに憧れるあなたも筆者も、もしそんな組織が実際に作られても、入隊したりせず、このゲームでEDFを応援するくらいに留めておくのが正解だと思います。(了)

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著者
理系作家。空想科学研究所の主任研究員として、書籍の執筆を続ける一方で、各地での講演、ラジオ・TV番組への出演など精力的に活動。2007年には『空想科学 図書館通信』の無料配信を始め、現在も継続中。代表作『空想科学読本』シリーズは、現在17巻まで刊行。明治大学理工学部の非常勤講師。2017年6月17日、角川文庫『空想科学読本 正義のパンチは光の速さ!?』発売。
空想科学研究所公式サイト:www.kusokagaku.co.jp
Twitter:@KUSOLAB

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