アメリカテキサス州のビデオゲーム博物館「National Videogame Museum」は、かねてより存在が噂されていた「光速船」(Vectrex)の小型プロトタイプを入手したことを発表した。収蔵当初は壊れていたものの修理が完了し、この度公開された。ゲームも完全に動作している。
IT'S ALIIIIVE! We dug a little deeper into the Mini Vectrex console this weekend and we're happy to report it is now back to working order! Check out this video of the console in action! pic.twitter.com/9PFlcnYQlr
— National Videogame Museum (@nvmusa) November 19, 2018
光速船はモニターとゲーム機、そしてコントローラーが一体となった、テレビなどに映像を出力せずにゲームをプレイすることができるコンソール機だ。大きな特徴である備え付けのモニターは、普通のテレビモニタのようなラスタースキャンではなく、オシロスコープなどで利用されるベクタースキャンが用いられており、独特のビジュアル描写が特徴である。1982年にアメリカでGeneral Consumer Electronicsから発売されたあと、日本でもバンダイから83年に光速船という名前で販売された。
今回発掘されたプロトタイプの内部を調べたところ、この小型光速船には従来の光速船の部品とほぼ同じのものが使われているが、小型化に合わせて配置が変更されているという。
アメリカで、いわゆる「アタリショック」とも呼ばれる1983年のゲーム業界の売上不振を受け大幅に値下げを重ねたものの、1984年に販売は終了。ビジネス面では失敗に終わったと言えるが、その形状や独特のグラフィックからいまなお多くのファンに愛されているコンソール機でもある。
実際に2012年から毎年11月1日は「International Play Your Vectrex Day」(光速船をプレイする国際記念日)とされ、光速船の所有者たちがゲームを遊んだりハイスコアに挑戦する姿が、写真や動画などさまざまなかたちでシェアされてきた。
また愛好家によって現在も解析が進められており、もともと画面に半透明のカラーシートをかぶせてカラーを表現していた光速船だが、今年1月にはあるハッカーが光速船をカラー化する改造を行ったことが話題となった。
iOSではアプリが無料で配信されており、現在でも手軽に光速船を体験できる。
今回発見された小型光速船は、実は存在するのではないかと以前より噂されていた。2003年に発刊されたEdge Magazineの122号には、工場で靴箱のような形をした見たことのない光速船を見たことがあるというとある弁護士の話が掲載。21世紀初頭からインターネット上では小型光速船は噂になっていたものの、確たる証拠はなく存在は疑問視されていた。
その7年後、2010年には光速船の販売メーカーGeneral Consumer Electronicsを買収したMilton Bradley Companyの元従業員の息子を主張する人物の手で、小型光速船の写真がアップロードされた。この写真により存在の信憑性は高くなったが、それでも実機が世に出ることはなかった。
そのさらにに8年後となる今回の発表で、このコンソールの存在が完全に証明されたこととなる。どのような経緯でこの秘密のコンソールが博物館にたどり着いたのかも気になるところだが、ひとまずゲーム用コンソールの歴史にまた一台新たな機体が加わることとなる。
文/古嶋誉幸