CCP Gamesは『EVE Online』の第13期「恒星管理評議会」のメンバーのひとりであるプレイヤーBRISC RUBALことBrian W. Schoeneman氏を、ゲームから永久にBANすることを発表した。Schoeneman氏は、現実世界では弁護士としてだけでなく議会などに働きかけるロビイストとして活動しており、それがこのスキャンダルへの注目をさらに集める事になっている。
CCP Gamesは慣例どおり、Schoeneman氏が具体的に何をしてBANに至ったかは発表していないが、「アライアンスメンバーと秘密情報を共有し、ほかのアライアンスメンバーが不正な取引を行うためにその情報を利用した。」と伝えている。また、これに関わったほか2名のプレイヤーを1年間のBANにしている。不正な方法で得たとされるゲーム内通貨や資源などは没収となった。
「恒星管理評議会」(「THE COUNCIL OF STELLAR MANAGEMENT」、以下CSM)とは、『EVE Online』でプレイヤーたちの投票で選出され、開発会社であるCCPと直接対話し意見する権限を持った役職だ。毎年行われるファンフェスから翌年のファンフェスまでの約1年間を任期とする、いわば民主的に選ばれたプレイヤーコミュニティの代表だといえる。
Schoeneman氏は、上記の通り現実ではバージニア州で海事法の分野のロビイストとしても活動している弁護士だ。ロビイストは政治家ではなく民間に所属する職業で、アメリカではロビイストは法律によって登録が義務付けられており、政府や司法などに影響を与えるために上院、下院、あるいは行政府へと働きかける。つまり、CSMと同様の行為を行う職業だと言える。
2018年のCSM選挙でSchoeneman氏はロビイストとしての経験を活かし、現実と見紛う様な選挙キャンペーンを展開した。「Make EVE Great Again」のスローガンが目を引く、上記の選挙公約や実績を伝える動画もその一環だ。こうしてSchoeneman氏は50人近い立候補者の中からCSMメンバー10人の一人として当選。これまで約1年間CSMとして活動してきた。
For those asking, I do not know why I was banned from EVE and removed from the CSM. I have asked for clarification and have received none. I categorically deny any wrongdoing and look forward to clearing my name and having my reputation restored. #tweetfleet
— Brian W. Schoeneman (@BrianSchoeneman) April 8, 2019
Schoeneman氏は自身のツイッターで、この決定に困惑しながらもこの判断を事実無根であると否定。CCPがいかなる連絡手段にも応じないため、『EVE Online』のサブレディットで長文の反論記事を発表している。
記事の中でCSMでのNDA違反をしたことがないこと、説明を求めたものの全て無視する不透明なCCPのコミュニティチームと違い、公人である弁護士として米国法のもとで働いてきたことを皮肉たっぷりに強調。この決定がゲーム内だけでなく、現実のキャリアの評判をも著しく貶めた事に対し、同じくBANされた2人の仲間を含め早急な名誉回復を道を模索するとまとめている。
『EVE Online』では通常のMMOゲームでは考えられないような事件が度々起こるため、このスキャンダルが外部の敵対者によって引き起こされた陰謀という可能性も否定できない。Schoeneman氏も徹底的にCCPと戦う気でいるようだ。皮肉なことだが、『EVE Online』で利用し、『EVE Online』によって傷つけられたロビイストで弁護士としての手腕を活かす絶好の機会だと言えるだろう。
とはいえ、ゲーム内のキャラクターを現実とあまりにも近づけすぎると、こういった問題が引き起こる可能性もあるという反面教師としても、この事件から大いに学ぶべきところがあるだろう。この事件が今後どの様な結末へ向かうのか、続報を待ちたい。
ライター/古嶋誉幸