台湾のインディーゲームスタジオRed Candle Gamesが開発したホラーゲーム『返校 Detention』。同作の映画版の予告編が公開された。映画化の発表は2017年に伝えられていたが、今回、初めて予告編が解禁され、台湾で9月20日公開されることが決まった。
ゲーム『返校 Detention』は、1960年代の台湾を舞台に、厳令下に国民党政権によって反体制派に対して行われていた政治的弾圧・白色テロをテーマにしているホラーゲーム。架空の学校である翠華高校の学生たちが体験する恐ろしくも悲しいストーリーを描いている。
台湾産のゲームが映画化されるのは初めてのことであり、台湾の文化部(文化庁)が全面的バックアップしている。映画はオリジナルの精神を忠実でありつつ、ゲームではあまり描かれていないシーンが加えられているという。
監督は1981年生まれの徐漢強(シュー・ハンチャン、John Hsu:ジョン・スー)。世新大学の映画テレビ学科を卒業後、テレビ業界を中心に活躍。2005年にはテレビ業界の優秀な人物に送られるゴールデン・ベル賞で、最優秀監督賞を最年少で受賞。2017年にはVRショートフィルム『全能元神宫改造王』を発表している。今回の『返校 Detention』が初長編映画となる。
主演は女優・歌手・作家として活躍している21歳の王净(ワン・チン、Gingle Wang)さん。中学生のときに『芭乐爱情』、2015年に『蟑螂哲学』と小説を発表しており、多彩な才能を発揮している。2018年の映画『斗鱼』ではメインヒロインに抜擢されるなど、注目株の女優だ。
ゲーム『返校 Detention』は、原作そのものが80年代から90年代にかけての「台湾ニューシネマ」と呼ばれる映画運動から影響を受けており、台湾ニューシネマには白色テロを背景とした映画が多数制作されている。
白色テロの引き金となった二・二八事件を始めて扱った台湾映画である、ホウ・シャオシェン監督の『悲情城市』は、ベネチア映画祭のグランプリである金獅子賞を受賞するほど高い評価を受けている。またエドワード・ヤン監督の『牯嶺街少年殺人事件』は、1960年代の白色テロを背景としており、『返校 Detention』の時代背景と共通している。こちらも日本含め、国内外に影響を受けたという監督が多い。これらの映画は日本でも公開され、映画評論家・蓮實重彥などが激賞したことにより、多数の映画ファンが詰め掛けた。
映画『返校 Detention』もこれらの台湾ニューシネマの映画から影響を受けているのかもしれない。映画の日本公開は未定だが、待ちきれないという人は、『非情城市』や『牯嶺街少年殺人事件』を観て、今のうちから映画で時代背景を予習しておくといいだろう。
ライター/福山幸司