アメリカに拠点を置くテレビ放送企業Fox Corporationの傘下に属するFox Sportsは、メジャーリーグベースボール(MLB)の生放送にバーチャル観客を表示するシステムを発表した。新型コロナウイルスの感染拡大により無観客試合が続くMLBだが、放送される試合は観客が表示されるようになる。
Fox Sportsが公開したトレイラーでは、バーチャル観客は歓声をあげるだけでなく、ブーイング、ウェーブなどをする様子が紹介されている。また、チームカラーに合わせた服を着せることもできる。
No fans? Not on FOX Sports.
— FOX Sports (@FOXSports) July 23, 2020
Thousands of virtual fans will attend FOX’s MLB games this Saturday. pic.twitter.com/z9oQU0rYuC
バーチャル観客を表示するシステムは「Pixotope」と呼ばれるソフトウェアが利用されており、モーションキャプチャー技術を提供するSilver Spoon AnimationとSMTがチームを組んで製作した。海外メディアThe Vergeによると、このソフトウェアにはEpic Gamesが開発するUnreal Engineの技術が利用されているという。
Fox SportsはThe Vergeに対し、この技術はまだ発展途上であり、今後も発展させることを約束している。実際、今のところはまだ完璧ではないようだ。カメラアングルによっては観客が表示されないこともあり、観客の反応も2秒ほど遅れていることも指摘されている。
😮@ChristianYelich's first home run of 2020 for the @Brewers was a BOMB. pic.twitter.com/OHQBLaal07
— FOX Sports: MLB (@MLBONFOX) July 25, 2020
(カメラによって観客が表示されたりされなかったりする。)
Fox’s digital fans gotta go. Just a ton of dudes alternating resting their chin in their hand and then 2-second delayed reactions. pic.twitter.com/fLh7EYXTMX
— Matt Young (@Chron_MattYoung) July 25, 2020
(観客の反応が2秒ほど遅れているという指摘)
こうしたデジタルな方法だけでなく、もっとアナログな方法でファンを客席に呼ぶこともできる。同じくMLBの中継では、ホームランボールが外野席に座るファンの看板に直撃する珍事が起きたことが紹介されている。
This Will Smith home run ball nearly took the head off of a fan cutout in the outfield seats 😅 pic.twitter.com/CHpELn8ptW
— FOX Sports: MLB (@MLBONFOX) July 25, 2020
無観客試合をどうやって盛り上げるかという課題は、日本のプロ野球も同じように抱えている。福岡ソフトバンクホークスの試合では、Boston Dynamics社の四足歩行型ロボット「Spot」とソフトバンクのロボット「Pepper」が応援に駆けつけたことが話題となった。
ほかにも、欧州のサッカーチームを中心に、ファンがお金を払って自分の姿がプリントされた看板を設置する取り組みも行われている。
現実の変化はめまぐるしいが、技術の進歩も現実の変化を追いかけている。このバーチャル観客システムは、コロナ禍が終わった後もきっとなにかの役に立つはずだ。
ライター/古嶋誉幸