【更新 2020/8/18 15:00】 海外メディアThe VergeはAppleの声明を公開した。それによれば、AppleはEpic Gamesのアプリを変わらずApp Storeで提供したいという考えを示しながら、顧客保護の観点から例外を認めることはないとのこと。Epic Gamesに対し、アップデートで利用規約への批准を促している。
■Appleの公式声明
App Storeはユーザーにとって安全で、すべての開発者にビジネスチャンスが生まれるように設計されています。EpicはApp Storeでもっとも成功しているデベロッパーのひとつであり、世界中の数百万のiOSユーザーにリーチする数十億ドル規模のビジネスに成長しました。
私たちは同社をApple Developer Programの一員として、同社のアプリをApp Storeで提供していきたいと考えています。Epic が自ら生み出した問題は、アプリのアップデートを提出することで簡単に解決することができます。私たちはお客様の保護ガイドラインより同社のビジネス上の利益を優先することを正しいとは考えていないので、例外を設けることはありません。
【原文】 『フォートナイト』のiOS版を巡るEpic GamesとAppleの対立が深刻化している。8月18日にEpic Gamesは、Appleからメッセージを受け取ったことを発表。それによれば、Appleは現地時間8月28日にEpic Gamesの全ての開発者アカウントを停止し、iOSとMacからUnreal Engineの開発ツールを削除すると通告したという。
Apple removed Fortnite from the App Store and has informed Epic that on Friday, August 28 Apple will terminate all our developer accounts and cut Epic off from iOS and Mac development tools. We are asking the court to stop this retaliation. Details here: https://t.co/3br1EHmyd8
— Epic Games Newsroom (@EpicNewsroom) August 17, 2020
このAppleの行動に対しEpic Gamesは「この決定は取り返しの付かない事態を起こす」と反応、裁判所に新たなドキュメントを提出しており、英文だが内容は公式サイトにも掲載されている。
Gamasutraなど国内外のメディアが報じているように、Epic Gamesの開発者アカウントが停止されると、iOSやMacなどのUnreal Engineクライアントを同社が最新アップデートできなくなり、同ゲームエンジンを利用するゲームクリエイターがUnreal Engineの作品を開発したり更新することが難しくなる可能性があると考えられる。
ことの発端は8月13日、モバイル版『フォートナイト』がAppleおよびGoogleのストアアプリを迂回する形でゲーム内通貨V-Bucksを割引販売したことに始まる。それを受けAppleとGoogleは相次いで規約違反としてストアから『フォートナイト』を削除した。
それに対しEpic Gamesは「FreeFortnite」キャンペーンを展開し、かつてAppleが打ったCM「1984」を引用した動画を公開するなど、ユーザーを巻き込む形でAppleによる独占的な販売方法を非難しつつ訴訟を発表した。
Epic Gamesのバトルロイヤルゲーム『Fortnite』がApp StoreとGoogle Playから削除。同社はAppleへの訴訟を決定
Appleを筆頭とした業界の一般的な利益配分率である「70:30」は正しいのか、そもそもEpic GamesがAppleの規約を守っていない点に関して問題があるのではなど、同件については企業やユーザーを巻き込んで議論が起きている。各メディアも社説としてこの件に関した意見を掲載しているが、意見は別れている。
たとえばPolygonはEpic Gamesの行動は業界全体にとって意味があるとし、強欲と単純化することはできないという意見を発表。一方、IGNは「FreeFortnite」運動は見た目より利他的ではなく、Epic Gamesは『フォートナイト』ファンを武器化してAppleやGoogleに襲いかかっているという社説を掲載した。gamesindustry.bizも同様に「ゲームのファンである子どもたちを武器化している」と、Epic Gamesの行動を問題視している。
なおIGNの意見に対してEpic Gamesのティム・スウィーニー氏は、「ファンの武器化ではなく、スマートフォンメーカーが私たちの生活やビジネスの条件を決定する権利がないというアイデアを提供しただけです」と、『フォートナイト』のファンを武器化しているとの通告を否定した。
IGN says Epic is “Weaponizing Fortnite Fans”. But the armament being offered is simply an idea: That the maker of a smartphone does not have the right to dictate the terms of our lives and our businesses.
— Tim Sweeney (@TimSweeneyEpic) August 15, 2020
企業ストアを迂回する直接決済を拒否されたSpotifyはEpic Gamesへの支持を表明するなど、現在進行系で多くの場所で意見が交わされているEpic GamesとAppleの対立。巨大企業の激突で被害を被っているのは間違いなく『フォートナイト』ファンやUnreal Engineの利用者であり、一刻も早い解決が求められるだろう。
ライター/古嶋誉幸