アメリカ・イリノイ州のノースウェスタン大学とオランダ・デルフトのデルフト工科大学による共同研究チームは、“電池の要らない”ゲームボーイ互換機「ENGAGE」をインタラクティブデバイスの研究成果として公開した。
本デバイスは前面に太陽光パネルを備えているほか、ボタンを押す際の振動を電力へ変換する振動発電の技術が活用されている。本研究の最終的な目標は社会のバッテリーへの依存度を下げ、持続可能な社会の実現に貢献することのようだ。
リリース文によれば「ENGAGE」はゲームボーイと同じサイズや部品の物理的寸法を確保している一方、本体側のCPU基板にオリジナルのものは使われておらず、より多くの計算能力と電力を消費する。ただし、エネルギー効率については再設計されており、太陽光発電と振動発電の組み合わせで処理動作に十分な電力をまかなっている。
また、本デバイスでは設計にあたって常に電源を供給しなくても記憶を保持できる不揮発性メモリを使用。処理時間を短縮し、夢中になってセーブを忘れたとしてもやめたタイミングからゲームを再開できるようになっている。
なお、本デバイスの「電力の大部分は太陽光へ依存する」ため、曇りや雨の日では10秒ごとに1秒未満の電力不足状態になる点を問題点として挙げている。電力をあまり必要としないチェスやソリティアなどの一部のゲームは悪天候でも動作するようだが、アクションゲームなど動きの多い作品は天気の良い日にしか遊べないようだ。
「ENGAGE」の発表に際し、ノースウェスタン大学のマコーミック工学院で電気工学およびコンピューターサイエンスの助教授を務めるJosiah Hester氏は「私たちの研究は、バッテリーを内蔵したデバイスが数多く存在する“モノのインターネット”へのアンチテーゼです。」と語った。
また、共同研究に参加したデルフト工科大学のPrzemyslaw Pawelczak氏は「ユーザーへ楽しさと喜びをもたらす持続可能なゲームシステムを作成できることを私たちのプラットフォームで証明したいと思います。」とのコメントを述べている。
共同研究チームは9月中旬に開かれる国際会議イベント「UbiComp 2020」の場にて、本デバイスの研究発表を実施する予定だ。電池の要らない自家発電技術がゲーム分野へどんな影響を及ぼすのか、行く末をゆっくりと見守りたい。
ライター/ヨシムネ