宇宙開発企業スペースXと電気自動車企業テスラのCEOであるイーロン・マスク氏は、サルの脳にゲームをプレイするための無線インプラントを移植したことを明らかにした。氏が音声SNS「Clubhouse」上で数千人のリスナーに伝えたもので、海外メディアブルームバーグなどが報じている。
※2019年に公開された「NeuraLink」の企業紹介映像
移植された無線インプラントは、先日Valveのゲイブ・ニューウェル氏も言及し話題となった「ブレイン・コンピュータ・インターフェイス」(BCI)と呼ばれるもので、脳波や電気信号でマシンと脳を繋ぐ役割を持つ。ゲームであれば、コントローラーを使わずに頭の中で念じることで操作入力をし、映像や音声出力も脳で直接受け取るといった使い方が考えられる。
マスク氏は実験の成否などについて語らなかったが、「彼は幸せなサルだ」と説明し、実験されているサルが世界でも最高の設備で暮らしているとした。また、「私たちは猿が互いに心で操作する『ポン』をプレイしてほしい」とその展望を伝えている。氏は今後1ヶ月ほどで、この猿を使った実験の成果を発表するとしている。
この実験を行ったのは氏の所有する2017年スタートの会社「NeuraLink」で、同社は埋め込み型の「ブレイン・マシン・インターフェイス」(BMI、機械と脳を繋ぐ装置)を開発している。2020年8月にこの技術を用いたチップを豚に移植したことも話題となった(動画リンク)。
なおビデオゲームと関連したニュースが続くBMIおよびBCIだが、主要な使用目的は脳や脊椎を損傷した人のため、チップを使って失われた機能を復活させることだ。
Twitter上ではマスク氏に対し、自動車事故で肩から下が麻痺しているというTwitterユーザーの「臨床試験に参加したい」という声が挙がった。氏は会社の取り組みが上手く進めば2021年後半には人体での臨床試験を行う可能性を示唆するツイートをしている。
NeuraLinkの公式サイトによると、当面は脊椎損傷を持つ人々のために研究開発が進められるという。一方で健常者に向けた製品も「長期ビジョン」に含まれている。億万長者たちの資金に後押しされ、障害を抱える人がより楽に生活できる未来、そしてエンターテイメントを新たな形で体験できる未来が研究されている。
ライター/古嶋誉幸