PCゲーム販売プラットフォーム「Steam」を運営するValveは、太平洋時間で5月2日(月)から5月9日(月)にかけて、“ローグライク”および派生ジャンル作品を対象にしたセールイベント「ローグ:不屈の祭典」を開催すると発表した。あわせて、Valveは“ローグライク”や派生ジャンルの歴史や由来、および定義にまつわる議論の要点をまとめたガイド記事を公開している。
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発表によると、今回の「ローグ:不屈の祭典」セールではアクションゲーム『Dead Cells』やデッキ構築の要素を含む『Slay the Spire』などの“ローグライク”作品から、対象タイトルを特別価格で購入できるようだ。セール対象となっている作品はいずれも“ローグライク”に加えて“ローグライト”、“ソウルライク”、“メトロイドヴァニア”などのサブジャンルタグが付けられており、ほぼすべての作品にロールプレイングと死んだ際に進捗状況がリセットされるパーマデス(恒久的な死)の要素が一定の割合で含まれている。
しかし、上記の各ジャンルには類似点も多く、ゲームファンの間でしばしば「これは“ローグライク”じゃない」だとか「“メトロイドヴァニア”の呼び方はおかしい」など、さまざまな切り口で議論が挙がるほどに紛らわしいものである。Valveが公開したガイド記事でも「正直なところ、その判断は皆さんにお任せしたいと思います」としており、上記のジャンルを簡潔に切り分けるのは非常に困難だ。実際のストアページでも、検索性を優先するために該当する複数のサブジャンルを付けているケースが非常に多い。
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では、上記のジャンルにどのような歴史や由来、そして違いがあるのだろうか。ガイド記事では最初に“ローグライク”ジャンルの由来となった1980年のファンタジー作品『Rogue』が紹介されている。『Rogue』自体にも源流となる作品はあるが本記事では割愛されており、プレイごとに変わっていくランダム生成のダンジョンや中断セーブがなく完全にやり直しとなるパーマデス要素が紹介されている。そして、ランダム生成コンテンツやパーマデスなどの要素を受け継ぐ『Rogue』のフォロワー作品として登場したものが“ローグライク”である。
しかし、すべての点で共通するわけではなく、現状での“ローグライク”はアクションゲームとして制作された「ローグライクアクション」などのサブジャンルも含む上位のジャンルとして扱われている。一方、時間の経過とともに現れた“ローグライト”は従来の“ローグライク”と異なる思想で設計されている。基本的には獲得したアイテムやアップグレードを死亡時に維持するなど、パーマデス要素の緩和によって遊びやすさや異なる側面の面白さを追求したものだ。
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(画像はSteam『Rogue』より)
冒頭に示した定義にまつわる議論は、近年における“ローグライク”作品の多くが厳密に“ローグライト”であるとの意見から発生している。2008年のイベント「国際ローグライク開発会議(IRDC)」へ参加した開発者らが提示した「ベルリン解釈」と呼ばれる8つの要素で“ローグライク”はいちど定義されたのだが、批評家の間では開かれたジャンルにおいて下記のような狭い定義を不要とする意見も存在する。
- ランダムマップ生成
- パーマデス
- ターン制コンバット
- グリッド移動
- 複数の攻略法が可能な複雑さ
- 非モーダル(すべてのアクションがいつでも実行可能)
- 資源管理
- ハックアンドスラッシュコンバット
上記のほか、本記事ではフロム・ソフトウェアが開発した『Demon’s Souls』および『DARK SOULS』シリーズから高難度のアクションやダークファンタジーの物語、永続的な能力値の向上を要素とする“ソウルライク”に関する説明も存在。アクションゲーム『メトロイド』と『悪魔城ドラキュラ』の両タイトルに由来し、行動の自由を制限されないノンリニア・ゲームプレイやSF要素、段階的なゲーム進行などの特徴をもつ“メトロイドヴァニア”も紹介されている。
“メトロイドヴァニア”や『悪魔城ドラキュラ』のみの流れをくんだ“ローグヴァニア”に至っては“ローグライク”からかなりかけ離れており、ガイド記事の執筆者も「気が抜けませんね!」と複雑な分類への心情を漏らしているが、記事の最後ですべての共通点として「RPGのファンタジーやアクションの要素が根底にあり、不屈の精神が成功へとつながる」ものであると締めくくっていた。
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批評家にとっては“最も優れた作品”を公平な基準で選ぶために必要なのかもしれないが、ゲームファンにとって自身や友だち・家族との思い出も含めてそれぞれに“大切な作品”を持っている事実は、批評家や他者の評価をもってしてもゆるぎないものである。
Steamのセールイベント「ローグ:不屈の祭典」は太平洋時間で5月2日(月)から5月9日(月)にかけて開催される予定だ。興味があればぜひ“大切な作品”を新たに探してみてほしい。