セガより、2026年初頭にリリースが予定されているスポーツ育成シミュレーション『プロサッカークラブをつくろう!2026』(以下、『サカつく2026』)。本作は1996年から続く『サカつく』シリーズの最新作で、今回はPS5とPS4、スマートフォン、PC(Steam)など幅広いプラットフォームで展開されるだけではなく、クロスプラットフォームでゲームが楽しめるところも特徴となっている。
この『サカつく2026』のもうひとつの特徴のひとつが、ユーザーの投票や意見によってゲームの方向性を決めていくシリーズ初の「共創プロジェクト」を採用しているところだ。今年の8月にはクローズドβテストも行われたが、そこからのフィードバックを受けてどのようにゲームが進化していくのか、本作のプロデューサーである久井克也氏にお話をお伺いしてきた。

複数メディアを交えての合同インタビューとなった本取材では、ユーザーの反応を受けての具体的な改善点のほかに開発初期の裏話、リリースに向けた今後の展望などが語られている。根強いファンを多く抱える『サカつく』シリーズ最新作への期待が高まる内容となった。
昔の『サカつく』を現代に。ユーザーからの反応は好感触
──セガのサッカーゲームといえば、Sports Interactiveの『Football Manager』シリーズが世界的に人気です。そうした中で、あえて『サカつく』シリーズの新作を発売することについて、どのような狙いがあるのでしょうか?
久井克也氏(以下、久井氏):
もともと『サカつく』と『Football Manager』って全然違うゲームだと思っています。特に日本の市場では、『Football Manager』のほうはあまり日本を意識しておらず、『2024』からようやく日本での展開に本腰を入れてきました。
日本のユーザーは、昔から『サカつく』にやり慣れていたところもありますが、本質的なシミュレーションゲームにはあまり馴染みがないと思っています。
僕は『サカつく』はシミュレーションゲームだとは思っておらず、ロールプレイングゲームみたいな形でデザインしており、ゲームデザインの差別化はそもそもありました。
自分自身が『サカつく』のいちファンでもあり、改めて昔のような『サカつく』を現代でも遊びたいという気持ちもあって、そこから本作を立ち上げています。
──本作が発表されたときのファンの反響はいかがでしたか?
久井氏:
発表直後、正直コメントなどは荒れていましたね。王道の『サカつく』ということでプラットフォームに家庭用ゲーム機を選んでいますが、ビジネスモデルがガチャの課金モデルというところに対して批判的な意見を多くいただきました。その一方で、発表会だけでは伝えきれてなかったゲーム内の要素もありました。
そこで、マーケティングの人間とも話し合い、しっかりXなどを使って本作のことを伝えていかなくてはならないと考えました。ガチャのビジネスモデルではありますが、昔の『サカつく』が体験できることを赤裸々に情報を出す形でやっていこうと決めています。
そこから、僕の個人アカウントと公式アカウントのそれぞれで情報を出していき、ユーザーの反応も良好に変わっていきました。どちらかというと今は応援してくださっているような形になっています。
特にクローズドβテストは開発者がかなりドキドキしていたタイミングでしたが、結果としてはかなり良好で、しっかり受け入れていただけました。今は「早くリリースタイミングを教えてくれよ」みたいな意見が届いており、徐々に良好になっているという実感があります。

──8月に行われたクローズドβテストでは、ユーザーからどのような要望がありましたか?
久井氏:
特に日本からの応募は、コンシューマーゲーム機時代から『サカつく』を愛してくれていたユーザーが多かったので「昔はあったけれど今なくなってしまった要素」に対して多くの意見がありました。例えば「留学」がすごく言われていましたね。
意図的に留学を外すと言っていたわけではありませんが、実装の優先度が落ちてしまい入っていませんでした。これらの意見を踏まえてというのもありますが、留学という要素は、名前を「期限付き移籍」に変えて同じ体験ができるような形で実装しようと考えています。そうした要素はいくつも出てきましたね。
──リリース後にそうした要素が追加されていくようなイメージでしょうか?
久井氏:
クローズドβテストで頂いた意見から、計画を立て直してリリース時に入れていきます。
──海外での反応はどうだったのでしょうか?
久井氏:
おかげさまで、という感じで良かったですね。クローズドβテストはタイと香港と韓国、インドネシア、あとイギリスとアメリカでも実施しました。
海外は場所によって結構まちまちではありますが、短期の継続率は特にアジアの地域は良かったです。香港もかなり熱量が高く、日本に匹敵するぐらいの成果が出ています。タイも同じような結果になっており、インドネシアも割と良く、それぞれの地域で手応えは感じています。
イギリスとアメリカは元々のプレイヤーの特性上の違いもあり、『Football Manager』という名前に惹かれて参加した人は、ちょっと体験が思っていたものとは違うかもということで、多少初期の継続率が落ちていました。それでも、戦えないような数字ではないと思っており、それぞれに対してもう少し間を開けて強化していきたいと考えています。
海外の方はやはり『Football Manager』と比べる方が多かったですね。すごくカジュアルなゲームだったということで遊ばなくなる人もいますが、逆に「これぐらいの方がやりやすい」みたいな意見もありました。
──やはりタイの人はタイのリーグを選んでいるのでしょうか? タイの方は、僕らがスペイン代表やイングランド代表を見ている感じで日本の代表を見ているような印象です。
久井氏:
しっかり分析しきれていませんが、タイは今回東南アジアリーグってまとめられているので、香港から始める方が多かったみたいですね。今回はJリーグを推していますが、それ自体はタイの方々にそれなりに効いているのかもしれません。
──クローズドβテストはPCとスマートフォンで実施されましたが、PS5などでも実施される予定はございますか?
久井氏:
現時点では、テストはもう大丈夫かなと思っています。
今回のクローズドβテストでネガティブな意見が多かったり、これは回収してもう1回見ないと、と思うことがあったりしたら、またやらなければいけないと思っていました。
しかし、そこまでネガティブな意見はありませんでした。どちらかというと、過去作からのこういう機能が欲しいという要望に対して、どうポジティブに向き合っていくか組み立てていこうと思っているので、テスト自体はするつもりはありません。
──クローズドβテストで、特に良かった点などポジティブな意見にはどんなものがありましたか?
久井氏:
テンポのデザイン上、スマートフォンなど現代的になっているため昔の『サカつく』よりもサクサク進むようにしています。過去の作品ではロードが長いこともあったので、そうしたテンポ感がポジティブに受け取られています。
皆さんの期待値が元々低かったのかもしれませんが、意外とちゃんと『サカつく』しているだとか、過去の『サカつく』レジェンド選手みたいな架空選手たちもしっかり入れているというところに関しては、すごくポジティブに受け取ってもらえた感じでした。
──ネガティブな意見で印象に残ったものはありましたか?
久井氏:
これは対応することにしていますが、成長期が短いというのはすごく言われました。特に、ガチャの選手の方がどうしても伸びる設計になっている中で、「サカつくモード」【※】だけで得られる無料の選手たちが1年しか伸びず成長期がないというのは過去作と比較しても短くなっています。そこは長くするように調整をかけています。
※サカつくモード
『サカつく2026』には、監督としてチーム運営や試合采配を行う「サカつくモード」とPvPが楽しめる「ドリームチームモード」の2つのモードがある
──ただ、なんとなく円熟期が長いですよね。そのため使えなくなるまでが早くなっている印象です。
久井氏:
そうなんです。本当は育成ゲームとして伸びる時期とメリハリをつけた方がいいなというのもありますし、円熟で残りすぎたりするので早く引退してくれよ、みたいなところは、調整をしています。
『Football Manager』との関係について
──本作が発表された際のトレーラーはインパクトがありました。というのもその中に「Powerd by Football Manager」という文言が出てきたからです。これはどのような意味なのかということと、セガが手掛けるサッカークラブ系シミュレーションゲームとして、『サカつく』と『Football Manager』はどのように協力しているのかをお聞かせ願えますか?
久井氏:
我々としては『Football Manager』のブランドを使わせていただいているというのはすごく大きいですね。これは僕からそうしたいと言って、開発元のSports Interactiveにも打診して快諾していただきました。
特に海外の東南アジアを重点市場として目指しており、タイとかインドネシア、韓国などは『Football Manager』が強いので、そうしたところで本作を広めるためのきっかけとして欲しいと思い打診しました。
それを使うにあたり、何かしらちゃんとした理由も必要です。その取り組み事例でいうと選手データですね。選手データの緻密さは、過去の『サカつく』で我々が自力で作っていたものと比べたら全然レベルが違っています。
ゲームのロジックが違うためそのままコピーはできませんが、『Football Manager』のデータを『サカつく』のデータに変換して入れています。
──『Football Manager』は詳細なデータが特徴です。ただ、『サカつく』は全項目マックスが20段階で、比べるとシンプルですよね。
久井氏:
はい。ですから、主要な部分を参考にしているというのが近いです。そのまま全てをコンバートすることはできません。
分かりやすいところでいうと、ポジション適正みたいなものは割と似通ったように作ることができます。昔の『サカつく』だと結構間違っているポジション適正もあったので、『Football Manager』を参考にしてデータを入れていますね。
──知名度とデータ面で『Football Manager』と協力しているというお話でしたが、試合の動きやグラフィック面についてはどうでしょうか?
久井氏:
そこは『Football Manager』と全く関係ないです。彼らは彼らで独自で発展して作っていますし、我々は我々でという感じですね。今回の試合シーンはゼロから我々で作っています。
総勢7~8000人の選手が登場!架空選手は過去の攻略本を総ざらい
──「サカつくモード」内で手に入る選手のランクは、どこまで育てることができるのでしょうか?
久井氏:
Aには届く形にはしようと思っています。そのために、覚醒ポイントが溜まったときに練習ができるという要素がありましたが、そこも実は内部的に何段階か成功段階を持たせています。その設定がうまくいってなくて、ノーマルしか出ないような感じになっていました。
練習でパーフェクトを2回連続で引くと結構伸びるような設計にしたかったんです。それがクローズドβテストでは実現できていませんでした。そちらをしっかり引き当てると、無料の選手もAやトップクラスになれるように設計しています。もちろん全員ではないですけれども。
元々ポテンシャルはそれぞれの選手にあるので、強い選手たちに匹敵するような形にはしたいな、という感じです。
──クローズドβテストでも懐かしい名前の選手がたくさん登場しました。そうしたシリーズでおなじみの選手たちは本作で、どの程度登場するのでしょうか?
久井氏:
意識的に入れていきたいと思っています。開発チームも20年前の『サカつく』を開発していた人間はほぼおらず、私自身も17~8年目で『サカつく6』からなんですよね。名作と言われている『サカつく04』を作っている人間ではなかったりします。その頃有名になった架空選手を開発の人間でも知らないんですよね。
クローズドβテスト直前のロムを見ると、そうした架空選手は少なかったんです。ただ、クローズドβテストのいろんな情報を発表していく中で、ユーザーから「この選手いるのか」とかという質問がありました。僕はピンとくる選手もいましたが、一部の開発のメンバーからすると「えっ? 誰ですか、これ?」という感じで(笑)。
「こいつは入れなきゃダメだよ」みたいなことを言ったのですが、ひとりずつピックアップしていってもなかなかそれが伝わらない。まずは、とにかく過去の攻略本を総ざらいして全部網羅していきました。今はDiscordで僕から「入れてほしい架空選手はどんな人がいますか?」というアンケートを取っています。そこで、ものすごくたくさん名前が出てくるんですよね(笑)。
もう本当に初代『サカつく』の時しか出てこなかったよ、この人はなんで消えたんだろうか? みたいな選手がいっぱい出てきて、僕らも興味深く見ていますし、そういう選手をできる限り入れていこうと思っています。
ただ、量が膨大なので、徐々にアップデートで増やしていこうかなと、今はその優先度付けをしている感じです。いずれはほとんど網羅していこうという気持ちでやっています。
──リアルの選手に加えて架空の選手も登場するということで、だいたいどれぐらいの選手がゲーム内に登場するのでしょうか?
久井氏:
実名だけで5000人を超えていると思います。それに加えて架空だけで3000人ぐらいいるかもしれませんが、その中で500~600人ぐらいが、過去作からいたような有名な選手になっています。そのため、総勢7~8000人ぐらいの選手リストになっていますね。
──発表会の時から「サカつくをつくろう!」【※】という企画が始まりましたが、こちらはサービス開始まで行われるのでしょうか?
久井氏:
やっていくつもりです。クローズドβテストから今までのタイミングで、ずっとどのように意見に向き合うか続けてきました。
なかなか発信できるものがなかったので少しおとなしめになっていましたが、クローズドβテストの結果を皆さんに共有するほか、「共創企画」と呼んでいますが、また「○○をつくろう!」みたいなものはいっぱいやっていこうと思っています。
※「サカつくをつくろう!」
ゲームシステムの仕様・要素などをユーザーの投票や意見によって決めていくという企画。ゲーム内に登場するJリーグ選手の個性を決めるサポーターからの投票や、オリジナル選手の募集などが行われた。
──この「サカつくをつくろう!」みたいな企画は、リリース後も続いていくのでしょうか?
久井氏:
やりたいなって思いますね。事業的にうまくいけばシーズンごとに選手データを切り替えていくつもりです。その都度Jリーグの選手で新しく入ってきた選手に対しては、ファンの方に投票してもらったりとかしながら、こういうスキルつけたいよねとか、こういう能力がいいよねみたいなのものはぜひ聞いていきたいなと思っています。
リリース後についてはまだ決めてはいませんが、特別な選手が追加されるときに実施するなど、シーズン切り替えのタイミングなどプロモーションの一環として使っていく予定です。
──ゲームを10年進めていくと、ガチャの選手が衰えて引退すると思います。その後、1回引いたガチャの選手って、別のチームを起ち上げたときに選べるのでしょうか?
久井氏:
あらためて入れ直すことは可能です。20歳から育て直すことになりますが、設計上は「サカつくモード」のゲームが進んでいくと、自分のクラブがどんどん強くなったり、より強いクラブに移籍したりとかします。そうすると、練習レベルなどがどんどん上がっていくので、練習効率も良くなっていきます。
あと、特別練習のカードもより良いものが得られるようになるので、最初に始めた時の育ち方と10年くらい進んだ後の育ち方はかなり違います。
──シーズンが終わるとリーグレベルが上げるのがすごく良かったんですけど、それをどんどん続けていくことでたとえばJリーグのレベルが上がっていき海外リーグをも超えたりしますか?
久井氏:
そうですね。追いつくような形にはしています。
──従来の作品だとリーグ戦が消化試合になるので、国外カップだけを狙うためにリーグ戦がある、みたいにならないといいなと思うのですが。
久井氏:
そこは何とか変えたいと思ったところですね。リーグレベルのアイデアを出したのはディレクターですが、実は『サカつく』をめちゃくちゃ知っている人間ではないんですよ。
いろんなゲームをやっているからいろんな引き出しがあるんですが、過去作にあった変わった補正とか知らないんですよ(笑)。昔は裏補正みたいなのをかけていたり、燃え尽き症候群とかで勝手に補正で弱くなったり、すごく理不尽な仕様があったんです。
そういうもので最終バランスを取っていたんだという話をレクチャーしていたときに、彼から「ストレートにレベルにしたほうがわかりやすくないですか?」と言われて、確かにそうかと思いました。でもちょっと、内心ヒヤヒヤしていたんです。
蓋を開けてみると結構ポジティブな意見が多くて、あの仕様はそのままいこうと思っています。ただ、レベルデザインがピーキーになりすぎているというか、相手がいきなり強くなりすぎます。あと、レベルを上げても何のメリットもないので、そこの設計は今変えているところですね。
「思い残すことがない形でリリースしたい」リリースに向けての展望
──買い切り型のゲームから運営型の基本プレイ無料のゲームになったことで、『サカつく』の新しい価値が出たところがあれば教えていただけますか?
久井氏:
『Football Manager』みたいに毎年リリースを計画して継続すべきIPだと僕は思っていましたが、なかなかできなかったんですよね。それがオンラインゲームになることで、今度は事業性を担保しなければいけない側面が出てきます。
そこができていれば、毎年新しい選手データを皆さんに提供することができますし、それに加えてアップデートで「サカつくモード」をもっと面白くできることも考えられます。そこが大きかったですね。
こうしたところは、ユーザーにとってはメリットに感じていただけると思っています。
──運営型のタイトルとしては、どのような強みがありますか? たとえば現実の世界では1シーズンのなかでもいろいろなことが起きます。それを今回の『サカつく2026』では、どのように反映していくのでしょうか?
久井氏:
運営タイトルなので、まずやりたいと思うのはガチャのピックアップになると思います。
僕自身もJリーグのファンで応援していますが、自分の見ている選手たちがすごく活躍した、マンオブザマッチになるなどすごく嬉しいタイミングの時には、ガチャの選手や場合によっては『サカつく』内の無料で取れる同じ選手でも能力を引き上げたり、今回はこの選手がフォーカスされてます、みたいなことを提示してあげたりするのは、ライブオペレーションゲームでやりやすいなと思っています。
──同じ選手でも別バージョンが出る感じでしょうか?
久井氏:
はい、そうです。どこまでラグを抑えて実装できるかというところの勝負だと思っています。
──ピックアップガチャはどれぐらいのスパンで切り替わっていくのでしょうか?
久井氏:
大体2週間に1回は大きめのガチャが更新されることになると思います。
運営が進んでいくと、過去に出したピックアップも入ってくるので、2週間に1回の大きなイベントの合間に1週間に1度差し込まれているみたいな感じになります。
ですから、最初は1ヶ月に4回ぐらいガチャ更新みたいなのが入ってくるのかなと。また、2週間に1回ぐらい特別練習のカードみたいなものを更新していく予定です。
──選手が急に活躍して、それがゲーム内に反映されることはありますか?
久井氏:
シーズン途中で活躍する選手はすごくいるので、その能力を反映するタイミングはどうしようかなと考えています。
ガチャでピックアップするのはわかりやすい手段ですが、「サカつくモード」全体の選手を再評価するのは、基本的に1年に1回シーズン更新で全選手のデータを変えるので、その時に反映させようと思っています。
──ここまでお話をお聞きしてきたなかで、結構ユーザーの意見を取り入れているという印象です。本作は「シリーズ初の共創プロジェクト」となっていますが、こちらを掲げようと思った最初のコンセプトを教えていただけますか?
久井氏:
現代的な作り方にトライしてみたかったということがあります。特に欧州などのスタジオから話を聞くと、彼らは作るものがある程度決まった段階からDiscordサーバーなどを開き、意見を聞きながら作っていくのがスタンダードになっているんですね。その方法をやってみたいなと思ったのが、理由のひとつでした。
また、『サカつく』はそれが比較的セガの中でもやりやすいタイトルなんですよね。例えば私のチームでやっているゲームでいうと、『ペルソナ5: The Phantom X』はアトラス側の監修も発生するので、開発チームだけで勝手に決めることはできません。この『サカつく』は我々のところにあるタイトルなので、確認などもあまり発生せずスピーディーにいろいろユーザーと向き合えるというのが、やりやすかったポイントです。
──クローズドβテストの話に戻りますが、結構運営がファンタジーでした。選手の取り方やお金に困らなかったのですが、この辺りの要素は継続されますか? 毎月選手が取れるのは新鮮でした。
久井氏:
昔から『サカつく』はずっと移籍期間がないゲームです。ここは、リアルサッカーを求めると何か変だみたいな意見は確かにあります。
最近は『Football Manager』などもあり、皆さんのリテラシーもめっちゃ上がっていますが、やはり僕は『サカつく』のひとつの楽しみ方は、人を取って売るってことだと思っています。そこが制限されるのはちょっと違うかなと思ったんですよ。だから、そこはある種ファンタジーでいいかなと割り切りました。
実は裏話的に言うと、初期はリアルに寄っており移籍期間が定められていて、夏と冬の移籍期間しか人が取れなくなっていたんです。
それ以外はどちらかというと交渉期間みたいな感じで、裏で交渉して実際に選手を獲得しにいくのは、6月とか7月のタイミングじゃないとできないようになっていたのですが、プレイしていて面白く感じなかったんですね。人を取るところはすごく重要なゲームだよねということで、チームとも話し合ってそういう仕様にしました。
──昔の『サカつく』は、年俸をせこく削り合ったというイメージがありますが、今回はそういうのはなかったですね。
久井氏:
そこはまさにユーザーから強く意見を頂いているところなので、僕もあった方がいいなと思いながら、面倒くさい要素でもあるなと思っていて、その中でどう決着させようか考えています。
──あと、仕様が変わってオートセーブ式になっています。昔の『サカつく』では年奉交渉でやりすぎてリセットすることがありましたが、それができなくなって難易度が上がっていると思いました。
久井氏:
セーブデータに関しては、複数保存できるように変える予定です。
失敗した時のやり直しもそうですし、今回要望としていただいたのが、ガチャの選手たちで構成したチームを作ってみたいけど、昔ながらの『サカつく』としてガチャには全く頼らずにゲームを進めたい、という意見を両方持たれている方が結構いました。
セーブデータを分けてあげたほうがそういう遊び方できるということで、設計をし直しているところです。
──クローズドβテストでは「ドリームチームモード」にあまり触れることができませんでしたが、こちらはどのようなものになるのでしょうか?
久井氏:
流れとしてはツアーをやってもらってそこで慣れてもらい、その後にすぐに「ワールドプレミアシップ」という対人戦ができるようになります。そちらに流していきたかったのですが、今回そのツアーが難しすぎたという問題がありました。
そこで滞留してしまい、「ワールドプレミアシップ」を体感したいただいたユーザーは少なかったんです。それによって、監督レベルも上がりづらくなりました。そこはもう手を入れています。
ツアーで勝っていかないとレベルがなかなか上がらないところもあったので、そこがサクサク進まないと「サカつくモード」の方もサクサク進められなくなっていました。
そこで、まずツアーの難易度を下げています。ツアーをそれなりにやったらすぐに「ワールドプレミアシップ」が開いて対人戦に流していき、あとはランクをどんどん上げていくみたいな世界になっていくという感じですね。
【ドリームチームモード⚽ツアー編】
— サカつく2026【公式】 (@sakatsuku20xx) August 1, 2025
ドリームチームモードでは選抜チームを率いて、ツアーや他のユーザーとの対人戦をプレイすることができます。
選抜チームは、サカつくモードのチームが毎シーズン自動で保存されます。… pic.twitter.com/DappUnNZXM
──「ドリームチームモード」ではポリシーによって数字がチームの総合力が上がったり、下がったりしますが、「サカつくモード」では表示されていませんでした。
久井氏:
ポリシーの扱いを「ドリームチームモード」と「サカつくモード」の間で変えていて、ポリシーをより意識させるのは「ドリームチームモード」と決めました。
これはビジネス面の話になりますが、ポリシーの要素って今4すくみにしていますけど、属性みたいなものじゃないですか。ああいうものがあるから、売り物のトレンドが作れるという意味で入れたい要素だったんです。
その属性ごとの優劣がどうしても出てくるので差が出てきますが、究極的には全部のポリシーのチームを作るという要素にしています。
【サカつくモード⚽編成 フォーメーションコンボ編】
— サカつく2026【公式】 (@sakatsuku20xx) July 23, 2025
選手は個々に、「ポリシー」という戦術相性を持っています。
チームもポリシーを持っており、チームのポリシーと選手のポリシーが一致することで、その選手はより能力を発揮しやすくなります。… pic.twitter.com/hfhQlHmWTi
──『プロサッカークラブをつくろう!ロード・トゥ・ワールド』がそうですね。
久井氏:
まさにそこを踏襲しています。最初はこれを「サカつくモード」に適用していたんですけど、そうすると自由度がかなり狭まってポリシーに縛られてしまいます。
「サカつくモード」はそういうゲームにしたくないので、効果の出し方を分けました。「サカつくモード」を遊ぶだけだと、実はそんなに意識しなくてもいいのですが、「ドリームチームモード」をしっかり遊ぼうとするとポリシーをかなり意識しないと強いチームにならないという感じです。
──過去作にエディット選手を作る機能がありましたが、今作ではそういうものはないのでしょうか?
久井氏:
エディット選手は今回まだ実装していません。積極的に外したわけではありませんが、リリースの決定には入っていません。どこかで検討できればいいなと思います。
──開発にはどれぐらいの期間掛かっているのでしょうか?
久井氏:
立ち上げたのは4年前。2021年に企画の骨子みたいなのを、数名のプロデューサーで話していたのが最初でした。
本当はこんなに時間をかけたくなくて、2年くらいで作りたかったんですよ(笑)。僕の昔の企画書を読み直してみたんですけど、2022年ぐらいにリリースしているつもりでした。ワールドカップ【※】でスパイク(数値が上がる)しますというようなことが書いてあったので、当時はそれぐらいで作りたかったんです。
しかし、ちょっと間違った方向性で試合を作り始めてしまったんですよ。これは会社の中で企画を通すためみたいなところもありました。
シミュレーションゲームとして見られると「何が変わったの?」みたいなことを問われます。シリーズゲームはだいたいそうですが、変わったところを見せ続けるのは難しいです。逆に変わらないことの良さってあると思いますが、決済者側からするとそこはなかなか受け入れてもらいづらいんですよね。
何かしら違いを作っていかなければならないというのがすごくプレッシャーになり、今回は試合を頑張ろうという方針になりました。トレンドや他社の傾向を見て、シミュレーション系のゲームで対戦機能を入れたらKPIが上がったという話を聞いていたので、今回はちゃんと同期対戦ができるゲームをまず作り、その後シミュレーションの要素をしっかり作ってという順序にしてしまったのが問題でした。
一応、試合を最初に作ってなんとなくできた。しかし、なかなか同時同期対戦のゲームとして仕上げるのが難しくて、あまり面白くなかったんです(笑)。
そこで1年ぐらいロスしているんです。そこからやっぱり『サカつく』を作ろうよという話をしてから3年ぐらいですね。
※ワールドカップ
2022年のサッカーワールドカップはカタールにて11月20日から12月18日にかけて開催された
──そんな背景があったんですね。現在の開発状況はどんな感じでしょうか?
久井氏:
クローズドβテストから出てきた意見に向き合って。いくつか追加しなければいけない要素に対応しているという感じです。
デバッグを進めていて、かなりできています。リリースの目標は2026年初頭となります。
──最後に、本作のリリースを楽しみにしているファンに向けて、メッセージをお願いします。
久井氏:
まずクローズドβテストで参加いただいた方は、本当にありがとうございました。その結果は我々としてはポジティブに受け取っています。
じゃあ、早くリリースしてよっていう話もあると思いますが、僕のエゴみたいなところも含めてまだ完成度を上げられるところもあるし、クローズドβテストで皆さんからポジティブにこういうこともやれるんじゃないという意見を頂いたからこそ、やりたいと思っちゃったんですよね。
僕としても思い残すことがない形でリリースをしたいという思いもあったので、今開発チームと多くの声に向き合えるように要素を出して検討しています。それをやりきって皆さんのところにちゃんと届けられるように、そんなに長くは待たせないつもりですので、ぜひお待ちいただければと思っております。
──ありがとうございました!(了)
以上、『サカつく2026』プロデューサーの久井克也氏への合同インタビューの模様をお届けした。印象的だったのは、久井氏の「ユーザーの意見に向き合う」という姿勢だ。クローズドβテストによって得られたユーザーの意見から、選手の育成面やリーグレベルの調整、セーブデータの追加など具体的な改善点を多数考慮していることが語られていた。
「シリーズ初の共創プロジェクト」を掲げているだけあって、『サカつく』シリーズを愛するプレイヤーたちの声を大切にしていることが窺える。また、『サカつく』らしさを出すために開発をやり直したり、架空選手を網羅するために攻略本を総ざらいするなど、気合いのほどが伝わってくる開発時のエピソードも飛び出した。
新たな局面を迎えるシリーズ最新作『サカつく2026」はPS5、PS4、iOS、Android、Steamにて2026年初頭リリース予定だ。
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