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3年連続でTGSに出展した『リミットゼロ ブレイカーズ』インタビュー。NCSOFTとKADOKAWAが支える“王道のアニメ系RPG”が目指す、グローバルIP育成戦略とは【TGS2025】

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VIC GAME STUDIOSが開発中のアニメ系の新作RPG『リミットゼロ ブレイカーズ』は、東京ゲームショウに3年連続で出展された珍しいタイトルである。

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この長期開発の背景には、韓国の大手メーカーであるNCSOFTと、メディアミックスに長けたKADOKAWAが加わったことによる異例の3社協業があったという。

開発元であるVIC GAME STUDIOSは、創業間もないにもかかわらず、なぜこの強力なタッグを実現できたのか。NCSOFTは、経験の乏しい「アニメ系のRPG」市場に、いかなる戦略的意図をもって参入したのか。また、KADOKAWAは、ゲーム本編のリリースを待たずに「世界観を広げる」メディアミックスを先行展開することで、何を狙うのか。

競争が激化するアニメ系のRPGジャンルに、あえて「大人から子供まで安心して楽しめる王道ファンタジー」で挑む本作の魅力と、グローバルサービス開始を目指す未来について聞いてみた。

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左からNCSOFT 事業責任者 アン・ジンホ氏、VIC GAME STUDIOS 統括プロデューサー イ・ドンジュン氏

文/kawasaki

KADOKAWAやNCSOFTとの協業を経て3度目のTGS出展へ

──『リミットゼロ ブレイカーズ』は、3年連続で東京ゲームショウに出展しました。珍しいケースだと思いますが、開発当初から大幅なスケジュール変更などがあったのでしょうか?

イ・ドンジュン氏:
VIC GAME STUDIOは2020年に設立したスタジオで、リミットゼロ ブレイカーズのプロジェクトは2021年に立ち上げました。ですが、その当時の弊社は『ブラッククローバーモバイル』の開発作業も並行しており、社内のリソース的にかなり厳しかったんです。

──2タイトルを、ほぼ同時に開発されていたと。

イ・ドンジュン氏:
そういったなか頑張って開発を続け、2023年に本作をお披露目したところ、さまざまな良い反響を得られました。

なかでもNCSOFTさんやKADOKAWAさんとの協業は、弊社にとって大きな転機といえるもので、ゲーム内容もそれに見合うようクオリティを高めた結果、開発が長引いてしまった形です。

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──その協業についてですが、まずはKADOKAWAが展開しているメディアミックスに関して聞かせてください。

KADOKAWA 宣伝プロデューサー 西川仁朗氏:
我々としては、リミットゼロ ブレイカーズをゲーム単体ではなく、IPとして盛り上げることを考えています。

その観点で考えると、マンガ、小説、アニメといったメディアミックスを行うことで、ゲーム以外を含めた幅広い層のお客様に対してコンテンツを届けられるわけです。そうやって、このIPに興味を持ってもらうための“入口”を増やしたいと考えています。

──しかも正式サービス開始よりも前に、先行で公開しているのがすごいなと思います。

西川氏:
東京ゲームショウは、大勢の方にアピールする絶好の機会なので、このタイミングに向けて頑張りました(笑)。

マンガ、小説、アニメは現在無料で公開しているので、ゲームショウの会場に来られなかった人も、これらを楽しんでくれると嬉しいですね。

──マンガを拝見しましたが、ゲーム本編とはストーリーの切り口が違っていて、さすがKADOKAWAさんだなと。

西川氏:
まだ全貌が明らかになってはいませんが、この作品にはとても深い世界観や重厚な設定があるんですよ。そういった作品のメディアミックス展開を行うにあたり、メインストーリーの流れを単純になぞるような内容ではなく、その世界観をより広げる方向性で展開したいと考えました。

その考えにVIC GAME STUDIOSさんやNCSOFTさんも理解を示していただき、一緒に作り上げてきた結果、良いモノができた応えがあります。

イ・ドンジュン氏:
KADOKAWAさんが手がけたメディアミックスは、韓国向けのライブ番組でも紹介したのですが、非常に好評でしたね。ゲーム単体ではなく、リミットゼロ ブレイカーズというIPを育てるという方針は間違っていなかったなと思いました。

──今後はどのようなメディアミックス展開を予定していますか?

西川氏:
たとえば4コマ漫画やアンソロジーコミックなど、さまざまな可能性があります。また、それらと合わせてマーチャンダイジング(商品化)も検討していきたいです。この場でお話できていないものも含めて準備していますので、ぜひ楽しみにお待ちください。

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アニメ系のRPGジャンルに参入するNCSOFTの思惑

──次に、NCSOFTとの協業について聞かせてください。VIC GAME STUDIOSは設立から数年しか経っていませんが、韓国で最も有名なゲームメーカーであるNCSOFTと協業しています。

イ・ドンジュン氏:
たいへん光栄なことだと思っています。
さまざまな面で支援をいただいているほか、逆にNCSOFTさんから提案を受けることもあり、ゲーム開発と会社経営の両面において、これ以上考えられないほど強力なバックアップです。

──これまでNCSOFTがリリースしたタイトルは、基本的に韓国・板橋(パンギョ)にある本社で開発作業を行っていると思うのですが、今回のように外部の開発会社とタッグを組むこともあるのですか?

アン・ジンホ氏:
いえ、こういった形での協業は、NCSOFTにとっても初めてだったりします。

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──では、どういった理由で、NCSOFTは協業したのでしょうか?

アン・ジンホ氏:
NCSOFTはオンラインゲームにおいて長年の開発・運営経験がありますが、いま人気が高いアニメ系のRPGは経験が乏しいです。そして現在、このジャンルは競争が非常に激しく、仮にNCSOFTが新規参入しても厳しい戦いになるでしょう。

いっぽうでVIC GAME STUDIOSさんは、アニメ系のRPGに特化した新興の開発会社ですが、資金面や開発ノウハウが潤沢ではありません。

そこで、この2社が協業することで、お互いの弱点を補ってリミットゼロ ブレイカーズを成功に導けると思ったんです。

イ・ドンジュン氏:
VIC GAME STUDIOSは始まったばかりの会社で、足りないところがまだまだ多くあります。NCSOFTさんと協業することで、開発・運営だけでなくインフラやグローバル展開など、さまざまな面でサポートを受けており、会社として短期間に成長ができている実感があります。

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大人から子供まで誰でも楽しめる王道ファンタジーを

──近年はアニメ系のRPGの競争が激しいとのことですが、確かにそれを実感します。今回の東京ゲームショウでも、少なくとも15タイトルが出展されています。

イ・ドンジュン氏:
そんなにあるんですか(笑)。

──そういったなか、同ジャンルの他タイトルにはない、リミットゼロ ブレイカーズならではの大きな魅力について、あらためて聞かせてください。

イ・ドンジュン氏:
そうですね……。
ひとつ申し上げるなら、“大人から子供まで誰でも楽しめる、王道のファンタジーRPG”であることです。

操作方法をはじめ、各種ゲームシステムは極端に難しくしていません。キャラクターデザインも万人受けすることを意識しており、安心して楽しめます。それを踏まえたうえで、コアなユーザーに向けたコンテンツも幅広く用意しているのが、本作ならではの魅力だと考えています。

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アン・ジンホ氏:
その部分は、NCSOFTとしても重視しています。

これはどの分野にもいえることですが、競争が激しくなると、次第に刺激が強いコンテンツを求めるようになりがちです。アニメ系のRPGのジャンルも、たとえば性的なキャラクターを前面に出すような作品が増えるかもしれません。

──会場内を取材しながら、「これを来場客の子供に見せても良いのだろうか……」と感じることは何度かありました。

アン・ジンホ氏:
リミットゼロ ブレイカーズは、そういうタイトルにはしたくないんですよ。

クラシックな王道ファンタジーの世界観の魅力を、本作を通じてグローバルに向けて広めたい。むしろ、そのポテンシャルを本作に対して感じたからこそ、NCSOFTは協業したんです。

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2026年上半期の正式サービス開始を予定

──現在の開発状況や、正式サービス開始に向けて重点的に行う作業についてお聞かせください。

イ・ドンジュン氏:
メインストーリーや各種コンテンツ、そして追加キャラクターといった、RPGとしての基本的な部分は、じゅうぶんに準備ができています。現在重点的に行っているのは、マルチプラットフォームやグローバル展開を踏まえての、サービスの安定性ですね。

このあたりはNCSOFTさんが膨大なノウハウを持っているので、綿密にコミュニケーションを取りながら、着々と進めているところです。

──今後のサービススケジュールはどのようになっていますか。

イ・ドンジュン氏:
2025年末にクローズドβテストをグローバルで行う予定です。そのときのフィードバックを反映し、2026年の上半期の正式サービス開始を目指しています。

──それでは最後の質問ですが、来年の東京ゲームショウ2026への4回目の出展は……?

イ・ドンジュン氏:
来年の今頃には、皆さんゲームを楽しんでいるはずです(笑)。
今後の展開にぜひ注目してください!

<了>

編集者
元4Gamer。『Diablo』 『Ultima Online』 『EverQuest』 『FF11』 『AION』等々の、黎明期のオンラインRPGにおける熱狂やコミュニティ、そこから生まれたさまざまな文化は今も忘れられません。

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