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名作シューティングゲームを多数収録した『グラディウス オリジン コレクション』が発売。完全新作『沙羅曼蛇Ⅲ』の開発者インタビューもお届け

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上野亮作氏(文中は上野氏):
KONAMI『グラディウス オリジン コレクション』プロデューサー

堀井直樹氏(文中は堀井氏):
エムツー代表取締役社長

河内武博氏(文中は河内氏):
エムツー『グラディウス オリジン コレクション』ディレクター

久保田和樹氏(文中は久保田氏):
エムツー『グラディウス オリジン コレクション』ディレクター

『グラディウス』シリーズ最新作『沙羅曼蛇Ⅲ』が収録された『グラディウス オリジン コレクション』発売_006

綱渡りの『沙羅曼蛇Ⅲ』開発。ギリギリの現場が紡いだ渾身の面白さ

──新作として収録される『沙羅曼蛇Ⅲ』について詳しく聞かせてください。もともとエムツーさん側から提案があったのでしょうか? それとも、KONAMIさん側に青写真があったのでしょうか?

堀井氏:
正直に言うと、そういった、きちんとした段取りを踏めるほど本作の開発進捗は良くなかったんですね。いま振り返ると、薄氷の上をなんとか渡り切ったという状況でした。

先ほども少し申し上げましたが『沙羅曼蛇Ⅲ』は、『GRADIUS ReBirth』のプログラムをベースにしつつ、新たなマップエディターを使って開発しています。また、それと並行してグラフィックも描いてもらって、上野さんにも逐次進捗をお伝えしていたんです。

『グラディウス』シリーズ最新作『沙羅曼蛇Ⅲ』が収録された『グラディウス オリジン コレクション』発売_007

──『沙羅曼蛇』の完全新作ということで、エムツーさんとしてもかなりのプレッシャーがあったと思いますが……。

堀井氏:
ええ、それはもちろん。

もう本当に、マップを担当しているプログラマーさんに打開してもらう以外に、なす術がありませんでした。そのほかの準備を先回りしつつ、上野さんに対して何度、「マップが出ればあとは早いですから」と言い訳をしたことか。
あぁぁ……、もう思い出したくないですね(笑)。

──上野さんも、よく最後まで信じ切りましたね。

上野氏:
堀井さんと「締め切りとはなんぞや」という哲学を語り合った日々を思い出します。
……いま、かなり柔らかく表現しました。

一同:
(笑)。

堀井氏:
いまお話したように、マップができ上がってきてからは、比較的スムーズに開発できるようになりました。

でも、ゲームが問題なく動くことを最優先で考えていたので、ストーリーや世界観の設定はあと回しになっていたんです。この部分に関しては上野さんが、全部いい感じにまとめてくれました。『グラディウスⅢ』の裏で、じつはこういう出来事が『沙羅曼蛇Ⅲ』で起こっていた、みたいな。

上野氏:
アドリブでつじつまを合わせたような気もするけど(笑)。

堀井氏:
いやいや、すごく綺麗にハマっていると思いますよ。

──『グラディウス』と『沙羅曼蛇』がストーリー上で交わるというのは興味深いですね。

河内氏:
上野さんの頭のなかには、『グラディウス』シリーズの歴史が全部入ってるんですよ。

このプロジェクトを担当して、初めて上野さんとミーティングさせていただいたとき、各タイトルが時系列に並べられた年表とか、ビックバイパーの機体の変遷といったシリーズの系譜を見せていただいたことをよく覚えています。

だから、上野さんはアドリブだとおっしゃいますけど、これまで蓄積した知識がなければ、絶対に出てこない内容だと思いますよ。

堀井氏:
音楽で言えば、ジャズミュージシャンのアドリブ演奏も、じつはちゃんと考えて行っているじゃないですか。それと同じでしょう。

上野氏:
そういうことにしておきましょう(笑)。

一同:
(笑)

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堀井氏:
たとえばMSXで展開していた『グラディウス』のシリーズは4作品が発売されていて、アーケード版とはぜんぜん違ったストーリーや年表があるんです。「アレをもう1回掘り起こして、何かしたいですよね」なんて話も、上野さんになら通じますから。

河内氏:
本作のスタッフクレジットにおける上野さんの肩書きは「ヒストリアン」(歴史研究家)なんですよね。

──すごい肩書きですね(笑)。ただ、これまでのお話でとても納得しました。

久保田氏:
言い得て妙な肩書きにできましたね。

ハチャメチャなふたり同時プレイに、“わかっている”サウンド

──あらためてうかがいますが、新作の『沙羅曼蛇Ⅲ』における最大の見どころをお聞かせください。

堀井氏:
一番は『沙羅曼蛇』経験者がプレイすると、「それっぽい」と感じてもらえるところです。ファンが見たかった景色が次々と登場するし、「こう来るよね」といったお約束の展開や、思わず笑っちゃうようなところもあります。

久保田氏:
『沙羅曼蛇』や『沙羅曼蛇2』のさまざまな要素を、隅々にまで散りばめています。『GRADIUS ReBirth』もそうでしたが、詳しい人ほど、思わずニヤリとするようなアレコレがふんだんに盛り込まれていますよ。

『グラディウス』シリーズ最新作『沙羅曼蛇Ⅲ』が収録された『グラディウス オリジン コレクション』発売_009

堀井氏:
そのうえで、ファンの想像を上回る展開もあります。だからひと言でいうと「手堅いけどアナーキーな『沙羅曼蛇』」になりますね。

久保田氏:
確かに(笑)。ところどころで、だいぶアナーキーな感じの作りをしています。

「この設定をこういう風に使うんだ」とか、「そう来たか!」みたいな、遊んでびっくりするところが結構あると思います。

──『グラディウス』と『沙羅曼蛇』の違いについて、どういった分析をされているのですか?

堀井氏:
ひと言でいうと「『グラディウス』は繊細、『沙羅曼蛇』は大胆」です。

パワーアップのシステムひとつを取っても、『グラディウス』は集めたカプセルの使いどころをプレイヤーに委ねていますが、『沙羅曼蛇』ではパワーアップを直接取得できます。似ているようで、ぜんぜん違いますよね。

また、進行方向が縦横に変化する『沙羅曼蛇』は、ステージ構成や演出に大胆さが感じられます。そして『グラディウス』には、やられたあとの戻りを含めた、繊細なマップギミックのおもしろさが詰まっています。

上野氏:
どちらが良いというよりは、好みの問題ですよね。私は個人的には『沙羅曼蛇』が好きです。

堀井氏:
あとは『沙羅曼蛇』が登場した当時、グラフィックスのデザイン面は『グラディウス』を越えてきたという印象がありました。

たとえばステージを進めていくと登場する敵の基地などは、敵軍も向こうは向こうで、統一感を持ったデザイン性が感じられます。これらのデザインの向こう側から、敵軍の世界観や文化的な記号が透けて見えるわけです。

──『沙羅曼蛇Ⅲ』はふたりプレイにも対応していますが、バランス調整に苦労されたのでは?

堀井氏:
『沙羅曼蛇』に限らず、たいていのシューティングはふたりでプレイすると、ハチャメチャなバランスになるものです。しかも『沙羅曼蛇Ⅲ』では、従来のシリーズ作よりも多くのオプション(マルチプル)を装着できるなど、仕様を刷新しているんですね。

先ほど、『沙羅曼蛇』に対して“大胆”と表現しましたが、今回は開き直ってハチャメチャさを楽しめるように調整しています。

上野氏:
『沙羅曼蛇Ⅲ』のふたり同時プレイは本当に楽しいので、ぜひ体験していただければ。

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河内氏:
ふたり同時プレイの紹介用動画を撮ってほしいと上野さんに言われて、久保田と一緒に結構プレイしたんですよ。でも、ふたりともマニアックなシューターだからなのか、まったく同じルートを辿るんですよ。だから紹介用動画としては見栄えが悪いという(笑)。

上野氏:
「バラバラに動いてほしいのに、ずっと重なってるんですけど」とか、「ふたりともスピードを取ってくれない」などとお伝えした記憶があります(笑)。

──ちなみに『沙羅曼蛇2』は算用数字なのに、『沙羅曼蛇Ⅲ』がローマ数字なのは、何か理由があるのでしょうか?

上野氏:
『沙羅曼蛇Ⅲ』の時代設定は、『沙羅曼蛇2』よりも前となっています。過去に遡る作品なのに、算用数字の“3”を採用するのには違和感がありました。そしてストーリー面では『グラディウスⅢ』のバックストーリー的な意味合いが含まれている作品なので、ローマ数字でこじつけました。

堀井氏:
この、『グラディウスⅢ』のバックストーリーという設定が、すごく良いんですよね。

──『沙羅曼蛇Ⅲ』開発を振り返っての感想はいかがですか。

上野氏:
いやぁ〜、辛かったですね。
もちろん私のなかで、開発期間のバッファは設けていたつもりだったんですけど、それは一瞬で消え去りました。

一同:
(笑)。

上野氏:
でも、本来なら立場上、こういうことを言っちゃいけないんだろうけど……その辛さも含めて、めちゃくちゃ楽しい仕事でした。

河内氏:
見どころっていうか聴きどころになっちゃうんですけど。今回は弊社のサウンドスタッフがBGMを作曲しています。『沙羅曼蛇』の既存曲のアレンジが主なんですが、これがじつにいいところを突いてくるんですよ。すごく「あー、お前わかってるね!」っていうところを入れてきてるんで。ですのでサウンドは超おすすめです。

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<了>

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副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。
ライター
MOTHER2でひらがなを覚えてゲームと共に育つ生粋のゲーマー。 国内外問わず、キャラメイクしたりシナリオが分岐するTRPGのようなゲームが好き。『Divinity: Original Sin 2』の有志翻訳に参加し、『バルダーズ・ゲート3』が日本語化される前にひとりで全文翻訳してクリアするほどRPGが好き。 『ゴースト・オブ・ツシマ』の舞台となった対馬のガイドもしている。 Xアカウント(旧Twitter)@Tsushimahiro23

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