SILENT HILL公式YouTubeチャンネルにて、NeoBards Entertainmentによる開発者映像「SILENT HILL f Developer Message」が公開された。映像では、1960年代の日本・昭和時代を舞台にした新作『SILENT HILL f』における主人公・雛子を中心に、物語とゲームデザインの裏側が語られている。
本作の雛子は、“普通の少女”として描かれる。特別な訓練や武装を持たず、町にある日用品や道具を手に取って怪異に立ち向かう。
開発チームは「雛子のような一般人でも現実的に行える戦闘アクションを設計した」と語り、集中して敵の隙を見抜く、渾身の一撃で状況を打開する、危機を回避してアドレナリンが上昇するなど、“極限下の人間の反応”をもとに戦闘を構築している。
銃や大掛かりな武器ではなく、身近な物を使って必死に抗う姿こそ、彼女の恐怖と現実味を強調するという。戦うか、逃げるかの判断そのものが、プレイヤーに彼女の感情を追体験させる要素として設計されている。

映像では、雛子の内面と密接に結びついた“謎解き”の設計も紹介された。特に郊外の田園地帯を舞台にしたステージでは、「方向を見失う」というテーマのもと、季節の移ろいと霧の演出を通じて、彼女の精神世界が徐々に深層へ沈んでいく様を描く。
象徴的な存在として登場する“かかし”は、竜騎士07氏の物語構成とkera氏によるビジュアルデザインが融合したキャラクターであり、“案内役”として、静かな田園に不気味さともの悲しさを添える存在として描かれている。
NeoBardsは「すべての謎解きの背後には、雛子の心理や物語的背景と強く結びついた意味を込めている」と語り、単なる仕掛けではなく心情表現の一環として設計されたことを明かしている。

映像後半では、雛子を演じる俳優・加藤小夏さんの収録過程が紹介された。加藤さんの演技はフォトスキャンとモーションキャプチャを通じて精密に再現され、彼女の繊細な表情や仕草がそのままゲーム内の雛子として息づく。撮影は日本国内で行われ、KONAMI、NeoBards、俳優、モーションキャプチャ制作会社の四者が緊密に連携。
プロデューサーやディレクター、シネマティクスチームのリーダーも現地で立ち会い、他の関係者がリモートで参加するなど、万全の体制で進められたという。

『SILENT HILL f』には90分を超える膨大なカットシーンが存在し、ストーリーボードや脚本、演出、データ処理を含めて、NeoBardsにとっても初の大規模挑戦だった。撮影現場では仕様が確定していない段階でも柔軟な対応が求められ、美術チームが安全性を確保しながらセットや小道具を準備、俳優たちは最小限の情報から感情を構築して演じたという。
撮影では“即時再生機能”が活用され、加藤さんが自身の演技をその場で映像として確認し、雛子としての感情表現を微調整することが可能になった。特に、雛子が“自分自身”と対面するシーンでは、加藤さんが「自身と演技を通じて対話する」ような形で臨み、その場で映像を再生しながら感情を探っていったといい、演者としても非常に特殊な体験だったことが語られている。
加藤さんはこの場面を「今回の撮影で一番というより、人生で一番苦しかった」と振り返り、自分が誰なのか、どこにいるのか、何をしているのか分からなくなり、涙が止まらなくなった瞬間があったと明かした。

加藤さんはまた、セリフの一語一句を正確に再現する難しさや、長い収録の中で心情を保つ苦労も語っている。特に印象に残ったのはエンドシーンであり、「長い時間雛子と向き合ってきたからこそ、どの終わり方も胸が熱くなった」とコメント。完成した映像を見たとき、「雛子に向き合ってきた時間を思い出して苦しくもなったけれど、こんな素敵な作品に携われて本当によかった」と述べ、「この先、自分がこの世からいなくなっても誰かが雛子を操作すると思うと不思議な気持ち」と締めくくった。
NeoBardsは竜騎士07氏との共同制作について、「先生が“物語を紡ぐ人”なら、私たちはその物語を映像とゲーム体験で語る“語り部”」だと形容。『SILENT HILL f』の中で雛子が見せる恐怖や孤独、そして微かな希望は、まさにその協働の成果として結実している。
