3月11日、Valveは、アメリカ・ニューヨーク州の司法長官から提起された「ルートボックス」機能に関する訴訟に対し、同社の見解を示す公式声明を発表した。
声明内において同社は、ゲーム内のミステリーボックスが違法なギャンブルにあたるという州側の主張を明確に否定。くわえて、州側が解決策として求めているゲーム内アイテムのユーザー間取引の禁止や、過剰な個人情報の収集といった要求に対しては、消費者の権利やプライバシー保護の観点から断固として応じない姿勢を明らかにし、全面的に争う構えを見せている。
今回の声明が発表されるに至った経緯として、2月25日にニューヨーク州のジェームズ司法長官がValveを提訴した背景がある。州側は、同社が提供する『カウンターストライク 2』や『Team Fortress 2』、『Dota 2』といった人気ゲームに組み込まれたルートボックス機能が、スロットマシンに類似した違法ギャンブルに該当すると主張していた。
また、Valveが排出確率を意図的に操作して極めて高い資産価値を生み出しており、第三者の取引市場を介して現金化できる仕組みが未成年者らに深刻な悪影響を及ぼすとして、機能の提供停止や罰金の支払いを求めていた。

こうした訴えに対しValveは、自社のゲームに実装されているルートボックス(声明内での呼称は「ミステリーボックス」)が、野球カードやポケモンカードといった現実世界で広く親しまれているブラインドボックスと同様のものであると反論している。
排出されるアイテムは純粋な装飾を目的としたものであり、プレイヤーはボックスを開封しなくてもゲームをプレイできるため、課金をしないことでゲームの進行において不利になることは一切ないと説明している。

また、サードパーティのギャンブルサイトとの関連についても、Valveは協力関係を持たないことを強調。これまでに、規約に違反してゲーム内アイテムをギャンブルサイトで利用した100万件以上のアカウントを停止するなど、長年にわたり対策を講じてきたとしている。
さらに、詐欺や盗難からユーザーを守るための取引制限機能の導入や、ギャンブル関連企業によるゲーム大会への参加およびスポンサーシップを禁じるなどの取り組みも行っていると明かしている。

くわえて、ニューヨーク州司法長官が求めている具体的なゲームの仕様変更について、Valveは強い懸念を示し拒絶している。州側はデジタルアイテムの譲渡やユーザー間取引を禁止するよう求めているが、Valveはアイテムを売買・交換できることは消費者にとって有益であり、奪われるべきではない権利であると主張した。
また、VPNなどを使用して位置情報を偽装するユーザーを特定する世界規模での監視技術の導入や、年齢確認を目的とした追加の個人情報収集といった要求に対しても、同社は反対の立場をとっている。
多くの決済方法にはすでに年齢確認が組み込まれており、事業運営や法令遵守に必要な最小限の情報のみを収集するべきだというのが同社の主張だ。

さらにValveは、ゲームが現実世界の暴力や子どもへの悪影響に結びついているとする州側のコメントに対して、今回の訴訟の本筋とは無関係であると言及している。
同社はこうした主張を、これまでにも幾度となく繰り返されてきた「論点ずらしであり、誤った決めつけ」であると強く批判。映画やテレビ、書籍、音楽、そしてゲームといったあらゆるメディアと、現実世界の暴力との間に直接的な関連性がないことは、長年の数多くの研究によって結論づけられていると指摘。それどころか、ゲームがユーザーにもたらす有益な影響を強調する研究も数多く存在すると反論している。
同社は声明の最後で、最終的な判断は裁判所に委ねられるとしつつも、ニューヨーク州やその他の地域のユーザーに及ぶ潜在的な影響を周知するために今回の声明を発表したとしている。

なお、ニューヨーク州の動きに前後して、3月9日にはワシントン州でも全国の消費者を代表した同様の集団訴訟が提起されている。ルートボックスを開けるための鍵の販売やコミュニティマーケットでの手数料徴収が、カジノ的な違法ギャンブルにあたり未成年から不当に利益を得ているとして、損害賠償や機能の提供停止を求める内容だ。
ルートボックスの法的位置づけについては、過去にベルギーやオランダなどで違法なギャンブルと認定され規制の対象となるなど、国際的に長らく議論の的となってきた。
今回のニューヨーク州の訴訟に対してValveは、安易な妥協を拒み、自社の正当性を主張して法廷で全面的に争う姿勢を鮮明にしている。プラットフォーマーとして業界を牽引する同社が司法の場でどのような闘争を展開するのか、今後の行方に大きな注目が集まる。
