やっぱりスマゲーで1,200円は高い!?『マリオラン』の”ツラい”状況をゲーム開発者が語ってみた【「島国大和のゲームほげほげ」第三回】

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 人気ゲームブログ「島国大和のド畜生」管理人の、島国大和さんによるコラム「島国大和のゲームほげほげ」。第三回となる今回は、先日発売された『スーパーマリオ ラン』について、ゲーム開発者の視点で語っていただきました。
 任天堂の看板タイトル&『ポケモンGO』の大ヒットもあり注目されたものの、「1,200円が高い」ということで評価が割れている本作品。しかし、スマホゲームとしては一見”ツラい道”である買い切り型かつ高額なゲームを作った理由も、開発者の視点でみるといろいろと見えてくるみたいで……?

連載記事:
新連載コラム「島国大和のゲームほげほげ」第一回:ゲーム開発は座組みで決まる
話題のVRを開発者が見ると……キビシー現実!?【「島国大和のゲームほげほげ」第二回】

『マリオラン』が1,200円とかその周辺のお話を。

 みなさんデスマーチしてますかー!(挨拶)
 私はしてません。わっはっは。お久しぶりの島国大和です。

 さてさて。今回は『スーパーマリオ ラン』(以下、『マリオラン』)とその周辺の話をしてみたいと思います。

12月15日に公開されたスマホ向けゲーム『スーパーマリオ ラン』。
(画像は『スーパーマリオ ラン』公式サイトより)

 12月15日に鳴り物入りで公開になった『マリオラン』。みなさんプレイしましたか?
 任天堂の看板タイトルですし、大ヒットした『ポケモンGO』の後なので注目度合も最高潮でしょう。

 しかし無料で遊べるのは最初の3面まで、その先は1,200円買い切り型ということで「タダじゃないので★1」みたいな評価も多くあり、なかなかヒートアップしていますね。

 ではさっそく触れていきましょうー。

1,200円は高いのか

 まず1,200円は高いのかどうか、みたいな話ですけれども。

 ゲームの値段の常識というのはずいぶん変わりました。

 自分が一番遊んだゲームはアーケードですが、あれは1回100円です。『ドンキーコング』で3回ジャンプをミスったら10秒かからずに100円パーです。
 『スーパーリアル麻雀』ならば、相手が天和上がったら、プレイする間もなく一発終了で100円パー
 『ギャプラス』とか『ゼビウス』とかは極めると無限にプレイできましたけども。
 最近は、カードが出て来たりして付加価値が増していたり、通信機能がついて単価が上がったりしてますね。

アーケード版『ドンキーコング』は1981年に稼働開始したマリオのデビュー作。ジャンプをミスすれば簡単にゲームオーバーとなってしまう。
(画像はWikipediaより)

 コンシューマーゲームの値段は、たとえばファミコンのカセットは4,500円ぐらいでした。『ドラゴンクエスト』(1986)が5,500円(当時消費税なし!)ですね。

 個人的に高かったなーと印象が残っているのは、スーパーファミコンあたりのソフトです。『ファイナルファンタジーVI』(1994)が11,400円。シリーズ一作目の『三國志』が確か14,800円だったような。うっは。お高い。
 最近だと、PS4の『FINAL FANTASY XV』(2016)が、8,800円ですね。

 そしてみなさんご存知の、最近のスマホゲームですが、基本無料で、ガチャが300~500円。体力回復などが数百円という値付けが基本的なところでしょうか。

 だいたいそんな値段が昨今までのゲームですが。
 さて、それでは『マリオラン』の1,200円は高いんでしょうか。

光栄(現・コーエーテクモゲームス)より発売されたシミュレーション・ウォーゲーム『三國志』は定価14,800円という非常に強気な価格設定だった。
(画像は「三國志」30周年記念 特設サイトより)

「いくら稼ぐか」から考えてみる

 遊ぶのに「いくらかかるか」の次に「いくら稼ぐか」を考えてみましょう。

 『マリオラン』は今のところ、9,000万DL、売上は3,000万ドルとかみたいです(編集部注:2017年1月4日時点の推定値。http://iphone-mania.jp/news-150482/)。3割ぐらいがプラットフォーマー(この場合はApple)に持ってかれて、えーと超ザックリで20億円ぐらいの儲けですかね?

 ちなみに『スーパーマリオ 3Dワールド』は、2016年9月末時点で519万本の売り上げです。ものすごくざっくり計算すると200億円ぐらいの儲けですかね?(適当に諸経費引きました。卸し値わかんないし。Wii Uは任天堂のプラットフォームなのがいいですね。ロイヤリティ支払いがない)

 この辺の数字は本当に大雑把ですし、見る角度でいろいろ変わるので参考数値程度に見てください。
 そもそも開発費が全然違うでしょうしね。

 も一つ参考までに、『アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ』『グランブルーファンタジー』『Shadowverse(シャドウバース)』等を持つ、サイバーエージェントの15年10月~16年9月のゲーム事業の数字は、売上高1,226億円で営業利益304億円だそうです。

サイバーエージェントのゲーム市場の売上は伸びている。(画像は公式サイトより)

 サイバーエージェントの例を出しましたが、このあたりの最近のソシャゲが大きい利益を出すのは、プレイヤー一人当たりの課金額が頭打ちしないからというのも大きいでしょう。

 ファミコンや、スーファミ、PlayStation等のゲームは一人が買えばそれで商品としては終了です。『マリオラン』も同じですね。ゲーム人口以上には売れません。

 一方ソシャゲは、ガチャや体力回復などで、同じユーザーが何度も課金してくれます。またイベントやガチャの更新などで継続的に課金を促すことができます。
 すごい例では、『戦国炎舞 -KIZNA-』では3億円近く課金したユーザーがいて殿堂入りになったといいます(本当かいな;)。なんという凄まじさ。

『戦国炎舞 -KIZNA-』
(画像は公式サイトより)

 ちなみに、運営型コンテンツ(イベントやガチャを定期的に更新しているもの)は、運営コストもかかるからその分回収しないといけないので、売り切りタイトルと簡単に比べることはできませんね。
 基本無料をタダで遊んでる人と、高額課金してる人では、1,200円の価値も変わってくるでしょうし。

 あーもー、お金の話は面倒くさいですね。

 『マリオラン』は、1,200円払う前に「これを払えばあとどれだけステージが遊べますよ」ってのも公開されているし、確率でもないし、結構誠実な商売だと思います。

『スーパーマリオ ラン』は一度購入すれば、追加課金なしで全24ステージ全てを遊ぶことができる。
(画像はApp Storeより)

 とはいえ、スマホの買い切りゲームで1,200円という単価は、『三國志』を思わせる値付けではありますね。
 だいたい買い切り販売だと、600円ぐらいが限界じゃないかっていう話もよく聞きます。他にも、1,200円ぐらいの単価のゲームがいっぱいあればまた違うのでしょうが(だからいっぱい出てくれば面白いと思っていますが、なかなか)。

 プレイヤーとしては気に入れば買えばいいし、嫌なら買わなきゃいいので。
 各自が、「高っけぇ」とか「こんなもんだろ」とか「高いと思うが買う」とか「特に高くもないけど好みじゃないから買わない」とか、好きに判断でいいと思いますが。さて。

「安く多く」を揃えたいプラットフォーム側の論理

 ゲームの価値はそれぞれ勝手に決めればいい、という話をしましたが。ちょっと視点を変えてみます。

 ユーザーから見ると、ゲームは1円でも安く、一人でも多くプレイしているのが望ましいです。安い方が良いのは当たり前ですし、他にもプレイヤーがいないとつまんないですし。
 ゲームメーカーから見ると、1円でも高く、一人でも多くプレイしてくれるのが望ましいです。商売ですし。

 では、プラットフォームから見るとどうでしょう。
 プラットフォーム視点では、ゲームは1円でも安く、一人でも多くプレイしてくれるのが望ましいんですね。なんとユーザーと一緒。

 なぜかといえば。
 プラットフォームにとっては、1つのゲームの売り上げではなく、総体の売り上げの方が重要ですし、プレイヤーはとにかく多い方が良いからです。
 何はともあれ、多くの顧客を囲い込むことがプラットフォームの基本戦略ですから、ゲームは無料でも客寄せになれば十分なわけです。自社ゲームの売り上げにすべてをかけているような商売じゃないですから。

 古い話では、ビデオデッキのVHSベータマックス。ちょっと前では、Blu-ray DiscHD DVD。これらは、ソフトウェアの充実と値段の安さで戦ったわけです。ゲームよりシンプルでわかりやすいですね。

VHSとベータマックスの熾烈なシェア競争は映画にもなった。
(画像は2002年公開の映画『陽はまた昇る』)

 プラットフォームとは、とにかく「安く多く」を揃えたいわけです。家電量販店みたいですね。ユーザーもその方がうれしい。
 なんだー、プラットフォームとプレイヤーの価値観が一緒なら万歳じゃーん。

 ……かというと、そうでもない

プラットフォームとゲームメーカーの”価値”の違い

 なにしろ、安売り合戦はゲームメーカーが疲弊します。「商品が安くないと売れない」という土俵ができると、どんどんジリ貧になります。
 ジリ貧になるとつぶれたり撤退したりします。場合によっては市場ごと細ってしまいますね。

 特に今のスマホ市場は、ゲーム以外にも本体、音楽、動画、その他アプリと、売り物はいっぱいありますから、プラットフォーマーにとっては、ゲームの価値を守るメリットはないわけです。ゲーム以外の利益も大きいので、これまでのゲーム機戦争とはまた違う戦いになります。

スマホ市場ではゲーム以外にもたくさんのアプリがしのぎを削っている。

 でもゲームソフトを作っている側からすると、ゲームの価値は”最重要項目”です。
 「ゲームは安い」「ゲームはタダ」が常識になってしまうと困るわけです。ゲームはタダでは作れないですしね。

 この辺は、2011年のゲームデベロッパーズ カンファレンス(GDC)の講演で、任天堂の故・岩田聡氏がそのものズバリ的な発言をしてますね。

 しかし、ビデオゲームのビジネスを全く異なった方法で見る第2の方法も存在します。スマートフォンやソーシャルネットワークのプラットフォームの目的は、そのプラットフォームがつくられた目的もそうですが、私たちとは異なっています。

 これらのプラットフォームには、ビデオゲームソフトの高い価値を維持する動機がありません。彼らにとっては、コンテンツは誰か他の人が作るものであり、彼らのプラットフォームにより多くのソフトを集めることが目標となります。より多くの量を集められればお金が流れるのです。量こそ利益の手段であり、価値は大した意味を持たないのです。
(中略)
我々はその価値を守るべきなのです。

(※岩田聡 2011年GDC講演内容より引用)

 さらに言えば、プラットフォームとゲーム会社の関係というのは、微妙で難しいものです。

 プラットフォームは顧客を囲い込む為にゲームを出してほしいわけですが、ゲームメーカーに主導権は渡したくないんですね。
 はるか昔、ファミコン初期の頃のサードパーティーだったナムコ(現・バンダイナムコエンターテインメント)ほか数社は、任天堂との契約において優遇されていたそうです。んで、ナムコはその優遇に対して不義理的なアレコレをして任天堂との関係が険悪化。
 そしてナムコはPlayStation陣営に巨大タイトル(「リッジレーサー」とか「鉄拳」とか)を引っ提げて登場。PlayStationのプラットフォーム戦争の勝利を強くアシストしたわけです。

 ほか、任天堂はハードウェアが変わるたびに契約を刷新していますし、SCEも『FINAL FANTASY VII』をPlayStation陣営に持ってくるためにハードなネゴシエーションがあったと聞きます(この辺りは諸説ありまくるので、その手の本読んでね。ウソ本も多いけど!)。

『FINAL FANTASY VII』
(画像はファイナルファンタジーシリーズ ポータルサイトより)

”ゲームの価値”に挑戦した『マリオラン』

 こういった、ロイヤリティや市場への影響力などの調整は、プラットフォーマー視点だと当然ですね。

 今の2大プラットフォームである、AppleやAndroidの規約も、メーカーが力を持ち過ぎないように意図しているように見えます。ストアで、会社単位で大きくアピールする手段とかが限られますし。
 モバゲー、GREE時に流行った、囲い込みユーザーの流し込み(あのゲームをここまでプレイしたら、このゲームのアイテムあげますみたいな手段色々)も、やりにくいですし(似たようなことはやってますが)。

 大会社も弱小メーカーも毎回スタートラインが一緒というのは、大手メーカーとしては大変ですね。
 弱小にとっては一見ありがたいんですけども、いまのところ星の数程ゲームがあるのでそもそも勝負に持っていけません。宣伝しまくるか、巨大IPを買うか。これは大手にしか難しい。

 このあたりは、Amazonが「電子書籍読み放題」や「一部動画見放題」をやっていて、出版社とモメたりしてるので、色々な力学が透けて見えると思います。

Amazonの電子書籍読み放題サービス「Kindle Unlimited」。
(画像はAmazon.co.jpより)

 先に触れたように、プラットフォームは最大目標が「ユーザーの囲い込み」で、次が「その中でのコンテンツ流量」です。
 とにかくユーザー数が多くなければプラットフォームは滅びますし、ユーザー数獲得にコンテンツの流量は重要ですし安売りは効果的です。流量が増えれば掛け算で儲かりますねー。

 なので、値段が安くなるのもコンテンツ同士の競争が激化するのも、メリットなんですね。他のプラットフォームに対して勝つためにはそれが必要。市場を制覇するために安くしたいし、制覇したら買い叩く。

 プラットフォームとしては利益最大化の為にはそうしていくし、だからこそプラットフォームが力を持つと、コンテンツ側は価格決定権すらなくなっていきます

 ポケモンGOが基本無料だったりしたので、任天堂もゆっくりと方向を修正しているところだと思いますが。『マリオラン』は、この”ゲームの価値”を意識したものだったかもしれませんね。

 一度「ゲームはタダだ」という認識をユーザーが持つと、どんな値付けでも高く感じるわけなので、時すでに遅かったかもしれませんが。

無料に慣れてしまうとどんな値段でも高価に感じてしまう。

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