『ぷよぷよ』不定形47連鎖の挑戦──15時間かけて成功した秘訣は「息をするようにぷよぷよ」

 落ち物パズルの代表作は何かと聞かれると、ロシア生まれの『テトリス』に続き、日本国内で根強い人気を持つ『ぷよぷよ』の名を挙げる読者が多いだろう。

(画像はPlayStation.Store | ぷよぷよBOXより)

 コンパイルのダンジョンRPG『魔導物語』の世界観を踏襲した1作目が1999年にリリース。異なる色のぷよとぷよの掛け合わせることによって「連鎖」が生まれるという戦略性の高いシステムは、発売から25周年を経た現在でも新作がリリースされるなど楽しまれており、今年に入ってからはeスポーツタイトルとしてプロゲーマーの認定もついに始まっている。

 そんな中、『ぷよぷよ』で47連鎖をやり遂げるというツイートが今年の夏に大きな注目を集めた。

 理論値最高連鎖数47を、15時間という長丁場の末この挑戦に成功したのは、徳島在住の“ぷよらー”である「あず」さんだ。すさまじい連鎖映像を見るだけでも驚異的だが、その裏には実は“不定形”であることや、あずさんの並々ならぬ熱意が隠されていた。電ファミニコゲーマーでは、あずさんに本動画の裏に隠された苦労や工夫を聞いてみた。

取材・文/Nobuhihko Nnakanishi
取材・編集/ishigenn


──そもそも47連鎖に挑戦しようと思ったきっかけを教えていただけますか。

あずさん
 誰もやったことがないし、僕がやろうかなと。

──そこはシンプルに(笑)。

あずさん
 やろうと閃いたら、やりきらないと嫌なんです。

──そもそも『ぷよぷよ』の47連鎖とはどういう挑戦になるんでしょうか。

あずさん
 普通の『ぷよぷよ』は横6列しかないんです。横6列の縦13列。でもこの挑戦では横10列の縦20列くらいの「ちびぷよ」ルールを採用しているんですね。ぷよが小さいので見づらくて、置きミスでぐちゃぐちゃになるんですよ。一度のミスでやり直しになってしまうので、メンタルが折れてもうやめようかなと何度も思いました。

 ちなみに配置は事前に計算しつくしていて、考察を重ねてできたのがあの形。普通の積み方なら簡単にできるんですけど、人間が理解できないような積み方が注目ポイントだったりします。

(画像は『ぷよぷよテトリス』公式サイトより)

──なるほど。では、あの積み方は通常と違うんですね。

あずさん
 普通は折り返し【※】というのがあるんですが、僕のはあえて折り返しがどこかわからないように複雑に積んでいるんですね。簡単なパターン積みを採用していない。

【※】折り返し:『ぷよぷよ』には階段積み、カギ積みといった積み方のパターンが存在するが、画面端に来てしまった際に積みを反対側へと伸ばしていくのを折り返しという。

──曲芸的な積み方、つまり不定形な積み方だと。実はそこが一番すごい点なんですね。

あずさん
 そうですね。事前に積み方は考えていますけど。

──ということは、事前に考えた積み方になるように、ぷよを消したり落としたり。

あずさん
 ただ、あまりにも消してしまうと落ちる速度が自然に上がってしまうんです。見えるのは見えるんですけど、操作が追い付かなくなるんですよ。限界の速度だと端まで持っていけなくなってしまうので、極力ぷよを消さないで綺麗に積んでいくというのをずっと繰り返すんですね。置きミスでも、早くなりすぎても、もちろん連鎖繋がらなくても、なんでもやり直し。

──お話をお聞きしているとドミノみたいな挑戦みたいですね。

あずさん
 そうですね。途中どこかで止まってその後に動かないこともある。やっとここまできたというところで自滅したりすると、本当に心が折れますね。「うそだろ?」って何度も叫びました。

──15時間のあいだに何度やり直されたか記録されましたか?

あずさん
 それはもう数えきれないくらいですね。ツモが悪くてやり直し、置きミスでやり直し、早くなってやり直し。一度で成功すれば30分から1時間くらいで済むんですが。

──まるで賽の河原の石積みみたいです。15時間ずっとやっていたんですか?

あずさん
 ごはんは食べたりするんで休憩は挟みました。明け方くらいまで挑戦し続けました。

──200個くらいの5色のぷよを間違いなく並べる作業を15時間……。並べる道中も大変そうですが、決まったと思って失敗することもありそうですよね。

あずさん
 あります、あります(笑)。13連鎖くらいで切れて「え?なんで切れたの?」と発狂していました。決まったと思ってどや顔で撃ったら切れてしまったり。実際に成功したときも、「これ成功しているのか?これ繋がっているよな、大丈夫だよな」と、最後までドキドキしていましたね。

──諦めない心が必要ですね。

あずさん
 そもそも、このゲーム自体が強靭なメンタルを必要とされているんで。しかもこのゲームは死んでしまったら0なので、ここまでやりましたよと言っても何も残らないですよね。実際に連鎖しないと結果が残らないんですよ。そこまでやらないと意味がない。

──その一瞬のためだけに。

あずさん
 その一瞬の快楽のためだけに十数時間やり続けるんですよ。で、やった瞬間は「もう二度とやらない」と思うんです(笑)。47連鎖は涙がでるくらい疲れましたね。

──泣くほど「疲れ」たんですね(笑)。

あずさん
 でも、達成感は感じますよね。逆に達成感がなければ何も残らないんで、向き不向きはそこにでるかもしれないですね。普通の人はやろうと思いませんよね。僕も始めてから「なんでこんなことやっているんだろう」と思いました。

 ただ、始めたからには費やした時間を無駄にはしたくなかったんです。それが報われるように頑張ったって感じですね。それ以外に理由はいらないすね。

──アスリート感がありますね。

あずさん
 大抵のことはどうでもいいんですけど、負けたくない分野は絶対負けたくないんですね。学校でも数学とか英語とか、誰かに負けたくない科目はがんばってトップとって、後の科目はどうでも良かったです。

──その性格がプレイに表れていますよね。

あずさん
 『ぷよぷよ』をやるために生まれてきたような気ではいます。

──そもそも、あずさんはいつごろから『ぷよぷよ』をプレイされているんですか?

あずさん
 9歳ごろに女子の友だちの『ぷよぷよ! 15th Anniversary』を遊んで以降、ずっとプレイしていますね。今ではトッププレイヤーを目指してプレイしていて、今年になってプロライセンスが発行されるようになったので、プロを目指す気持ちがより強くなっています。

(画像は『ぷよぷよ』公式ポータルサイトより)

──十五周年作が2006年とのことで、それから12年間ずっとプレイされてきたんでしょうか。

あずさん
 そうですね。親からの規制が強くてゲーム自体はあまりできなかったんですけど、『ぷよぷよ』だけはベッドの中に潜り込んでまでずっとやっていました(笑)。

──大会にも参加されたり?

あずさん
 オフライン大会はリーグ戦が多くてあまり参加できていません。オフの大会は東京が多くて、なかなか……。僕は徳島在住で、以前は『ぷよぷよ』のために上京したいと思っていたんですよ。

──『ぷよぷよ』のために上京。どちらかといえば対人戦にはめぐまれていない環境にいたんですね。

あずさん
 そうなんですよね。オンラインでの対戦環境も中学生になってようやく整ったくらいなんで。だからそれまではひたすらCPU戦を繰り返し何時間もずっとやっていました。今考えたらちょっと狂ってますよね(笑)。

 でも不思議と飽きなかったんですよね。高校生のころに一時離れていたんですが、ニンテンドー3DS版が発売された日に友達の家に遊びに行ったら、その友達が「お前はこのゲームやらなあかん」と買ってくれたんですよ。『マリオカート』もやり込んでるんですけど、『ぷよぷよ』が一番ですねやっぱり。

──今回のチャレンジにふさわしいエピソードな気がします。今はどんなスタイルで『ぷよぷよ』と向き合われてるんですか?

あずさん
 息をするようにやっていますね。今は社会人なので空きの時間は少なくなりましたけど、47連鎖考察したいなと考え始めたら、5時間が一瞬で過ぎ去ったりします。

──発端は友達にやらされたり、一度辞めても謎のプレゼントされたりとか、『ぷよぷよ』に導かれてるような人生ではありますよね。今後も『ぷよぷよ』への挑戦は続けられる?

あずさん
 プロを目指しますね。僕このゲームは手が動かなくなるまでやるつもりなんで。死ぬまでやります(了)。


 余談ではあるものの、あずさんの今回の47連載に対しては、地震研究をしているユーザーから「地震のメカニズムに似ている」ということで、動画を送ってもらえないかという依頼があったという。それがどのようなメカニズムなのかはあずさん自身にもわからなかったようだが、それだけほかの『ぷよぷよ』にはない積み方であったという証左と言えるだろう。

 ほかにも驚いたのは、あずさんにインタビューをしているあいだ、あずさんがずっと『ぷよぷよ』をプレイしながら答えていたことだ。まさに「息をするように『ぷよぷよ』をプレイする」を体現した稀有な個性。熱意と努力が目に見えるという意味では、「アスリート」という表現が感触としてもっとも近いように感じられるのは、筆者の勘違いではないだろう。

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ライター
Nobuhiko Nakanishi
大学時代4年間で累計ゲーセン滞在時間がトリプルスコア程度学校滞在時間を上回っていた重度のゲーセンゲーマーでした。 喜ばしいことに今はCS中心にほぼどんなゲームでも美味しく味わえる大人に成長、特にプレイヤーの資質を試すような難易度の高いゲームが好物です。
編集
ニュースから企画まで幅広く執筆予定の編集部デスク。ペーペーのフリーライター時代からゲーム情報サイト「AUTOMATON」の二代目編集長を経て電ファミニコゲーマーにたどり着く。「インディーとか洋ゲーばっかりやってるんでしょ?」とよく言われるが、和ゲーもソシャゲもレトロも楽しくたしなむ雑食派。
Twitter:@ishigenn
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