いま人気の海外発インディータイトルには、和製ゲームの香りが漂う。
事実、日本でもヒットしている『UNDERTALE』を手がけたToby Fox氏が、さまざまなメディアで日本のゲームに影響を受けたことを明かしていることからも、その“芳香”は“図らずして香りづけされたもの”ではないようだ。
「MOTHER」シリーズのファンとして訪ねてきてくれたアメリカの青年が、大ヒットゲームの制作者になってインタビューされている。なんか、うれしいことだよねー。https://t.co/1dAGurrSsI
— 糸井 重里 (@itoi_shigesato) July 27, 2017
彼のような海外インディーゲームクリエイターは少なくない。
その多くは、ゲーム業界で身を立てた今日に至るまでに、間違いなく日本のゲームに触れているのである。
ではいかにして、彼らはゲーム的“ジャポニズム”の洗礼を受けたのだろうか。
電ファミ編集部は、海外でヒットしているタイトルを手がけた開発者6人に対して「これまでに影響を受けた作品・クリエイター」に関するアンケートを実施、生の声を集めてみた(おまけに来日回数や日本への印象なども伺った)。
そこには、我々ジャパニーズゲーマーと同じような“ゲーム遍歴”があった。そして、我々ジャパニーズゲーマーと同じような“日本ゲームへの愛”があった。
そんな彼らの言葉を──日本人として誇らしくもくすぐったい気持ちになる彼らの言葉を──読者の皆さんと共有したい。
証言1:「最も影響を受けた人物は三上真司」Emeric Thoa氏(『Furi』開発者)
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デベロッパー:The Game Bakers
公式サイト :http://www.furigame.com/
(画像はSteamより)
プロフィール(年齢・開発歴、出身地など)
36歳で、ゲーム業界でプロになってから12年経っているところだ。
パリで生まれたが、幼少時代はけっこうあちこちを回っていた。
ベルギー、ドイツに加え、フランスのいくつかの都市に在住したことがある。今はフランスの南部、モンペリエという街に住んでいる。フランスのもっともキレイな街のひとつだ。
自身が影響を受けた作品
子どもの頃、メガドライブのRPGに浸った思い出を鮮明に覚えている。『ファンタシースター』、『シャイニングフォース』、『LUNAR ザ・シルバースター』。
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(画像はSteamより)
ただ、開発者として 三上真司氏の『バイオハザード4』、『ゴッドハンド』や『VANQUISH』などで見られる“スムーズで絶妙な操作性”に憧れて、そういうボタン入力に優れた反応をするキャラクターのコントロールに力を入れている。
いちばん好きなゲーム(産地問わず)
いろんなゲーム機、いろんな時代のゲームへの愛情を拡散すべく皆さんに伝えたいのだ。『シャイニングフォース』、『ワンダと巨像』、『バイオハザード4』、『ペルソナ4』、『Bloodborne』。
尊敬するクリエイター(国籍問わず)
前述したとおり、自分が行うゲームデザインに関する観念に、誰よりも影響を受けたのはおそらく三上真司氏だ。
ただ、ヨコオタロウ氏のゲームに対する見解やライフスタイルも本当に素敵だと思う。
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(画像はSteamより)
『DARK SOULS』や『Bloodborne』で成し遂げた宮崎英高氏のゲームデザインもとても好きだ。それに小島秀夫氏、須田剛一氏、上田文人氏……何人もいるので、全員を並べて言うのが難しい。
日本人ではないクリエイターなら、『風ノ旅ビト』を作ったJenova Chen氏を目標にしている。いずれ私も、彼が手がけるような作品を作ってみたい。
来日回数・その目的とは?
今まで日本には8回行ったことがあるんだ。目的はまちまちだけど、主にビジネスのために行ったりしていた。
『Furi』のキャラデザインを担当されている岡崎能士さんとの打ち合わせや、東京ゲームショウで出展することもあったから。
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(画像はSteamより)
バカンスでは、ロードトリップとか自転車で旅をしたこともあるよ。
日本でいちばん好きなもの
難しい質問だね。好きなことがありすぎるから……料理、日本語、建設様式、景色の美しさ……。
ただ、絞ってみたら日本人が自然を都内で保護することがいちばん気に入っているかもしれないね。大都会でも公園に限らず、樹と茂みと植物が見られるね。心を和ませ、気持ちいいよ。
日本のゲームファンに一言
日本のゲームファンの皆さん、こんにちは! あなたたちを想って作った『Furi』というゲームは、どうして日本ではさほど人気になっていないのだろう?
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(画像はSteamより)
欧米ではヒットになって、たくさんのゲームファンが高い評価をしてくれているけれど、日本での売り上げがイマイチだ。スマホゲームを一旦休ませて『Furi』を遊んでみてください。昔の作品ではおなじみの“ボス戦ざんまい”なゲームにはなっていて、一般向けではないけれど楽しんでいただける方もいるかと思うよ!
すまん、アメリカンジョークをよせて……。とにかく、たくさん好きなゲームをやってほしいな。で、また日本に行ったらよろしくね!
証言2:「特筆すべき“影響を受けた作品”は『洞窟物語』」Raúl Rubio Munárriz氏(『RiME』開発)
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デベロッパー:Tequila Works
公式サイト :http://www.tequilaworks.com/en/projects/rime/
(画像はSteamより)
プロフィール(年齢・開発歴、出身地など)
HOLA! ラウルです。あと少しで41歳になります。はじめて遊んだゲームは、『PONG』。これは1979年に出会いました。
が、はじめて惚れたゲームは『ドンキーコング』。
1983年にはじめて自分のゲームを作ってみました。それは、木から落ちるココナッツをラクダが回避するゲームでした。で、2001年に、正式にゲーム開発のプロとしての人生がスタートしました。思えば、年を食いましたね!
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(画像はSteamより)
スペインのナバラ県にある、トゥデラという街で生まれました。聖フランシスコ・ザビエルが誕生したところに近いです。その後、プロになるために首都のマドリードに引っ越しました。長年、趣味の一環としてゲームを作っていたけれど、就職活動しているときに本格的なゲームを作りたくなって。あれから17年が経っていますが、まだ就活中な気がしていますね……。
影響を受けた作品
全部言っちゃっていいかな(笑)。
影響を受けた作品なら、まず頭に浮かぶのが『パックマン』、『ドンキーコング』、『ポパイ』、そして『ドンキーコングJR.』です。(ゲーム&ウオッチの)『マリオブラザーズ』、『魔城伝説II ガリウスの迷宮』、『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』、『クロノ・トリガー』、『ゴールデンアックス』、『アウトラン』、『魔界村』、『超魔界村』、『ソロモンの鍵』、『Pang』、『ストリートファイターII』、『スーパーメトロイド』、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』、『キャディラックス 恐竜新世紀』、『MOTHER3』、『スーパーマリオ64』、『ダンジョンズ&ドラゴンズ ミスタラ英雄戦記』、『メタルスラッグ3』、『グランド・セフト・オート』、『ICO』と『ワンダと巨像』(『ICO』は発売されたとき、すでに業界で働いていたが、あまりにも衝撃的で自分の限界を超えるため元気づけられた)。
特筆すべきなのが、伝説の開発室Pixel/天谷大輔氏による『洞窟物語』ですね。
いちばん好きなゲーム(産地に問わず)
ダントツ1位はÉric Chahi氏の『アウターワールド』です。他に好きなゲームが多すぎます……。
それでは、上記で言い切れなかったので、今言いますね。
『レミングス』、『モンキーアイランド』、『La abadía del crimen』、『テトリス』、『プリンス・オブ・ペルシャ』、『シムシティ』、『スーパーマリオ ヨッシーアイランド』、『フラッシュバック』、『ディアブロ2』、『フォールアウト』、『ポピュラス』、『Elite』、『Syndicate』、『Star Wars: TIE Fighter』、『スターフォックス64』、『ゴールデンアイ 007』、『Shadow of the Beast』、『マーブルマッドネス』、『ボクらの太陽』、『Deus Ex』、「ゼルダの伝説」シリーズ、『Grim Fandango』、『バイオハザード4』、『大神』、「逆転裁判」シリーズ、『ゴーストトリック』、『LIMBO』、『INSIDE』、『風ノ旅ビト』、『ドラゴンズクラウン』、『ハーフライフ2』、『Portal1&2』、『The Last of Us』、『Reigns』、『ウィッチャー3 ワイルドハント』、『人喰いの大鷲トリコ』。
他にもありますが、このへんで……。
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(画像はSteamより)
尊敬するクリエイター(国籍問わず)
アイドルや雲の上の存在みたいな人という概念は信じません。
しかし、Éric Chahi氏、上田文人氏、宮本 茂氏、Warren Spector氏、Peter Molyneux氏、故・横井軍平氏、須田剛一氏、三上真司氏、鈴木 裕氏、Tim Schafer氏、Kim Swift氏、Sid Meier氏、Will Wright氏、坂口博信氏、Michel Ancel氏、稲葉敦志氏、手塚卓志氏、神谷英樹氏、Jenova Chen氏の実績は信じます。
来日回数・その目的とは?
日本には、3回訪れたことがあります。
初めては2008年の10月。
理由は……あまり素敵じゃないですよ。初めて共同設立した会社「Mercury Steam」(『キャッスルヴァニア ロードオブシャドウ』、『メトロイド サムスリターンズ』のデベロッパー)で取締役をやっていたのですが、辞職した後、だんだん憂鬱になってしまったんです。
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(画像はSteamより)
奥さんが私のことを案じて、「日本で自分を見つけるために」と旅に誘ってくれました。彼女は念願の京都・伏見稲荷神社に、ついでに行きたかったからみたいですが……。
あまり日本語ができなかったけれど、1カ月間の旅行中はほとんど他人の力を借りず本州を周ることもできました。
そのおかげで、新しいゲームスタジオを立ち上げる喜びと勇気を見出し、Tequila Works(『RiME』、『The Sexy Brutale』を開発)を創設しました。あの旅は、とても濃厚でした。
2014年8月に東京に戻ってきましたが、暑苦しくて、無料のサウナの中を遊泳しているような感覚でした。
当時、ゲームファンから『RiME』への期待が高まっていましたが、自分がプレッシャーから逃れるように、現場からしばらく距離を置くことにしたんです。
『ゼルダの伝説 風のタクト』、『ICO』という不朽の名作に比較されていたのがおそろしかった……自分たちはちっぽけなゲームスタジオにすぎないのに……。力が及ばないだろうという不安を抱いていたんです。
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(画像はSteamより)
最近訪れたのは、昨年の2017年でした。この旅は、連発で4作(『RiME』、『The Sexy Brutale』、『The Invisible Hours』、『WonderWorlds』)を発売したことで溜まった疲労やストレスを解消するためのご褒美になったし、弊社で年に一度行われる「テキーラショットズ」【※】というイベントに参加する前に心身を浄化する効果もありました。
※テキーラショットズ
2週間に及ぶ社内ゲームジャム。自由自在にチームを運営しながら、メンバーズのありのままの発想力を放つ。自己啓発で分担作業を促す意識を生み出すとのこと
でも実は、初めての旅でできた、ある約束を果たすためだったんです。
それは、大阪を拠点にしているプラチナゲームズへの恩返しのために訪問すること。
プラチナゲームズさんが弊社までお越しになった際の優しさと真心をお返ししたいと思っていたのです。
日本でいちばん好きなもの
美しくて魅了される国ですね。自然が色鮮やかで手描きされたような景色が印象的ですね。日本人のマナー、優しさ、そして高い志も好きです。
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(画像はSteamより)
スペイン人として美味しい料理には目がないし、評価しますね。ですので、私にとって日本は母国の次に故郷のようです。絶品がたくさんあって困ります!
それに、伝統と現代美術が融合している雰囲気が、クリエイターにはたまりません。
その雰囲気に励まされたり、憧れたりします。しかも、スペイン語と日本語の発音が似ていますので、初級レベルの日本語なら覚えやすいんですよ!
日本のゲームファンに一言
応援を心より感謝申し上げます。
ゲームは国際的な現象です。大阪だの、バングラデシュだの、産地に問わずゲームの多様性を受け入れ、いいゲームを楽しんでください。日本は魅了的な国ですから、国内ならどこでも影響を受けられます。
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(画像はSteamより)
……ただ、思い出してください。真実は視角によって変わるものですよね。
ときに普通を「普通でない、特別」に変えるために、自分のコンフォートゾーンから出ないといけません。Tequila Worksのスタッフ一同、私たちが作ったくだらないゲームをエンジョイしていただければ嬉しいと思っております。
業界に「ガスト(風味)」を出すために、努力とノウハウを活かし、ゲームを作り続けたいと思います。
証言3:「自分の絵に対する流儀を形作ったのは、吉川達哉氏の存在」Simon Stafsnes Andersen氏(『Owlboy』開発)
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(画像はD-Pad Studioより)
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デベロッパー:D-Pad Studio
公式サイト :http://www.owlboygame.com/
(画像はSteamより)
プロフィール(年齢・開発歴、出身地など)
31歳です。気が遠くなるほど、昔からゲームを作っていたかもしれないが、業界では11年歴です。
トロムソという、ノルウェーの小さい街で生まれました。北極圏の上部に位置しているところ。現在、私たちの事務所はベルゲンにあります。
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(画像はSteamより)
自身が影響を受けた作品
自分がゲームを作りたくなって、そしてその思いに火を点けたのは、おそらく日本のゲームだと思います。
絵を描くきっかけのひとつは「ロックマン」でした。自作のロボットのナンバーズや、新しい鎧をよくデザインしたものです。
実際、自分がデザインしたロボットがあまりにも多すぎたから、その後カプコンさんが作った型式にカブったものも。言わずもがな、ダブったやつを仕方なくボツにせざるを得なかったなぁ。
『X6』に登場するゲイトは、驚いたことに小学生の頃に落書きしたやつに酷似しているよ!
初期の「ロックマンX」シリーズのゲームは、ユーザーを駆り立て、プレイするモチベーションを上げる要素とは何かを教えてくれたんだ。
このシリーズは時が経つにつれていろんな姿を見せてきたけれど、このゲームたちに見習って、同じように“明瞭にキャラクターを際立たせる”ことを試しているよ。
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(画像はSteamより)
初めて持っていたゲーム機はファミコンでした。『光神話 パルテナの鏡』、『スーパーマリオブラザーズ』と『スーパーマリオブラザーズ3』は、『Owlboy』の土台になったと言えます。
このゲームの初期企画では『スーマリ3』の「たぬきスーツ」で空中を舞い降りるよりも飛躍させることをゲームの基準にして、『パルテナの鏡』みたいな縦になっている世界で旅をするコンセプトにしたんです。
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(画像はSteamより)
これを言っても誰も驚かないと思うけど、「ゼルダの伝説」シリーズも自分にとって不朽の名作で、ゲームデザインについてとても考えさせてくれました。スーパーファミコンで初めて遊んだのは『神々のトライフォース』だったし、自分のお金を使って初めて買ったゲームは『夢を見る島』だったなぁ。
『ムジュラの仮面』と『風のタクト』を通して、ストーリーの構造や形でキャラの特徴を表現することについて色々発見できたんだ。『ムジュラ』で漂う憂鬱であやふやな設定は、どうしても自分のゲームに反映させたかった……。
ということもあって、駆け出しの頃に初めてやってみたプロジェクトは「ゼルダ」的なもので、『ワールド』と名付けたゲームでした。
『クロノ・トリガー』の存在も大きいです。最後までプレイした、数少ないRPGの中のひとつ。ストーリーは一本道ではないことにびっくりしました。それにくわえて、登場人物と音楽が魅了的で、もう虜に! 「これは、自分の目で最後まで見届けなけないといけない」と思ったゲームですね。
『ブレス オブ ファイア』も子ども時代にクリアできなかったひとつだけれど、音楽とドット絵に魅惑されました。吉川達哉氏の影響を受け、自分の絵に対する流儀が形作られたと思います。
いちばん好きなゲーム(産地に問わず)
これは選びにくいな。なにもかもが影響を及ぼしているから。でも、強いて言えば、私にとってのべストは『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』、『ロックマン3』、『ロックマンX』、『ブレス オブ ファイアIV』と『クロノ・トリガー』。
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(画像はSteamより)
尊敬するクリエイター(国籍問わず)
任天堂の幹部を、常にリスペクトしています。宮本茂氏、青沼英二氏、そして故・岩田聡氏。
作ってきた実績があるからといって尊敬するのではなく、会社を運営する面で注目するべきでしょう。
第三者の視点から、古い歴史を持つ任天堂は不思議で無謀な挑戦をしているかのように見えるけれど、任天堂はお客さんを楽しませることを重視し、すぐに利益につながりそうなものや流行り物に左右されない。
あくまで自分の解釈だけど、彼らは、そんな任天堂のスタイルがカッコイイからこそ任天堂に導かれ、同じ目的を成し遂げようとしているんじゃないかな。
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(画像はSteamより)
小島秀夫氏も、称賛しないといけない。彼は、奇妙で複雑で哲学的な概念を、「設定」の中にしっかり採り入れることができたから。
ユーザーに対して、繰り返し単純な選択肢しか与えられない=“安易なゲームデザイン”となるけれど、簡単に答えにたどり着かないような彼のゲーム作りには、特別に洗練された“攻め”がかなり必要だろうな。
『Iconoclasts』のJoakim Sandberg氏と『Heart Forth, Alicia』のAlonso Martin氏の名前も挙げないといけないな。
2人とも同じ頃にそれぞれのプロジェクトを立ち上げたし、完成するには10年近くに及んだ努力をかけたんだ。とてつもなく長い開発期間を生き抜いている彼らを、私は自慢に思っているよ。
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(画像はSteamより)
業界では普段、数々の名作を作った監督やプロデューサーという職種だけを絶賛するけれど、好きなゲームに関わったみんな──分担作業を可能に編成されたチームのメンバー一人一人──と、いずれ握手できるといいな。みんなの名前は、残念ながらわからなくて言えないけど……。
一丸になって突き進んだチームがあったからこそ「ゲームをプレイできる」と思えば、彼らのことを称えたくなるのは当然だよ。
来日回数・その目的とは?
2回です。初めては15歳の時、お父さんと来たんです。
そう、父と2人でよく旅に出ていたなぁ。シベリア鉄道にも2回も終点まで乗ったことがあって、その2回目に、その終点から旅行が続いて日本を目的地にしたんです。結局、日本がすごく気に入って、滞在が3週間も延長してしまいました。
2017年に、また久しぶりに来日しました。初回からずっと「もう一度行きたい」という願いを胸に秘めていたんだけど、仕事のために去年まで叶えなられなかったんだ。開発を終えて、「Bit Summit」でゲームを出展するオファーを頂いたので、迷わずチャンスをものにして念願の2度目の来日ができた、というわけです。
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(画像はSteamより)
日本でいちばん好きなもの
欧州と比べると、日常の微妙な違いがとてもチャーミングだと思います。人があまり意識していないという“微妙なところ”が一番好きなんです。
たとえば──車道から歩道に移動する部分に段差がないトコロを見ると、すぐ「日本にいるな」と実感したり。都会の通りを歩いて角を曲がると、隠されていたかのようにお寺があったり。道路の狭い幅を走れるぐらいコンパクトにデザインされた車があったり。そういった思い出がずっと頭から離れなかったんです。
その“微妙なところ”のものが、日本人の制作する芸術品などに影響を与えるから非常に面白いと思います。あと、食べ物がすごく美味しい!
日本のゲームファンに一言
私たちが作ったものをエンジョイしてくれたらうれしいな。
やはりゲームの嗜好って十人十色なので、『Owlboy』はすべてのゲームファンには向いていないかもしれないけれど、どのゲームで遊ぶにもかかわらず、少しだけでも見てくれたら幸せです。
証言4:「グラスホッパー・マニファクチュアに入社して、新たな人生がはじまった」Massimo Guarini氏(『Last Day of June』開発)
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(画像はMassimo Guarini | Profileより)
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デベロッパー:Ovosonico
公式サイト :http://www.lastdayofjunegame.com/en/
(画像はSteamより)
プロフィール(年齢・開発歴、出身地など)
42歳です。20年のゲームデザインの経験があります。
ミラノ出身ですが、カナダのモントリオールや東京で長らく住んだことがあります。現在、イタリアの北部の、湖を含む地域にあるヴァレーゼという古い町に在住。
自身が影響を受けた作品
80年代からゲームをやってきて、ほぼすべてのファミコン、スーパーファミコン、メガドライブとNEOGEOでリリースされたゲームを体験して影響を受けたから、ゲーム開発者になろうと思ったんです。
新ハードが出る度に驚愕して、「自分が構想した世界でみんなを遊ばせたい」という欲求が強くなりましたね。
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(画像はSteamより)
いちばん好きなゲーム(産地に問わず)
順を追っていないけれど……私の好きなゲームは『ICO』、『シェンムー』、『ゼルダの伝説 風のタクト』、『風ノ旅ビト』、『バイオハザード4』、『The Last of Us』です。
尊敬するクリエイター(国籍問わず)
また、順不同ですが……須田剛一氏、上田文人氏、小島秀夫氏、David Cage氏、Jenova Chen氏。
来日回数・その目的とは?
日本文化への情熱と愛が、自分を日本へ旅立たせました。ずっと日本の視覚芸術、映画、伝統とゲームソフトに興味を持っていたのです。
若かった頃、輸入していたマイナーなゲームを理解できるように日本語を自習していました。日本人が作るゲームの流儀に魅せられ、 日本人がシュールやミニマリズムと隣り合わせていることに気づき、自分の“アーティストとしての成長”につながりました。
ある時期、欧米のゲームデザインが現実に寄りすぎたため、クリエイターとして呆れていましたが、自分の“新しい挑戦への欲望”は半端じゃありませんでした。
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(画像はSteamより)
自分の価値観が潤うことを目指し、日本のゲーム業界で就職するまで諦めずにがんばりました。やっとグラスホッパー・マニファクチュアに内定が決まったとき、新しい人生が始まったんです。
もう東京には住んでいませんが、過ごした時間で吸収できた文化が、この世を去るまでずっと私の中で生きると確信しています。
日本でいちばん好きなもの
コントラストだね。私からすると日本は差異と矛盾の地だと思います。といっても同時に調和、伝統と信仰心の地でもあります。私が日本で生活した日々に明暗があり、上辺の調和に均衡が保たれていた気がしました。すべての色、味、雑音と音を愛していました。
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(画像はSteamより)
刺激を受けたこともあれば、がっかりしたこともありました。平和の心を持てるようになったり、不満になったりして。
対立している強力な感情に満ちていました。それは、私の忘れられない日本で過ごした日々。
日本のゲームファンに一言
好奇心を持って。通い慣れた道から出て、新しいことをやってみて。恥ずかしがらないで。英語がしゃべれなくても心配しないで。私も日本語のゲームをやり始めた頃は、日本語を理解できなかったしね。
世の中は面白いゲームで溢れています。今はデジタルストアで入手しやすくなっています。あなたたちのためにも、ゲームを作りたい! 日本人のゲームファンを愛しているから!
証言5:「すごいアイデアと素敵なアートで成り立っている『ボクらの太陽』に影響を受けた」Alex Preston氏(『Hyper Light Drifter』開発)
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(画像はThe Heart Machine | Teamより)
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デベロッパー:Heart Machine
公式サイト :http://www.heart-machine.com/
(画像はSteamより)
プロフィール(年齢・開発歴、出身地など)
33歳です。デベロッパーになってから5年が経ちます。
ハワイ州で生まれましたが、ロスに拠点を置いています。
自身が影響を受けた作品
『ボクらの太陽』がすごかったです! すごいアイデアと素敵なアートで成り立っていると思います。
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(画像はSteamより)
いちばん好きなゲーム(産地に問わず)
たくさんありますが、最近では『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』、『オーバーウォッチ』、『ショベルナイト』がとても好きです。
尊敬するクリエイター(国籍問わず)
故・横井軍平氏と故・岩田 聡氏です。
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(画像はSteamより)
来日回数・その目的とは?
ずっと子どもの頃から日本へ行く夢を見ていますが、残念ながら健康上の理由で、長い旅はできません……万が一のときの対策が難しいからです。いずれ叶えたいですが……。
日本でいちばん好きなもの
壮大な歴史に基づいた文化と、国を彩る素晴らしい景色です。
日本のゲームファンに一言
僕らのゲームを遊んでいただいて、本当にありがとうございます! 皆さん、すごいです!
証言6:「いちばん好きなゲーム? 多くて選べない……」Toby Fox氏(『UNDERTALE』開発)
BTW, this mask was actually made by my friend @splendidland from the UK. I brought it to US. Now it's in JP mag. International dog head… pic.twitter.com/njQUwaB14v
— tobyfox (@tobyfox) July 6, 2017
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デベロッパー:tobyfox
公式サイト :https://undertale.com/
(画像はSteamより)
プロフィール(年齢・開発歴、出身地など)
26歳です。初めて製品としてのゲーム(『UNDERTALE』)をリリースしたのは2015年ですが、10歳の頃からゲーム制作プログラムで遊んできました。
生まれてから今まで、ずっとボストンに住んでいます。
自身が影響を受けた作品
(日本のゲームがなみなみと入ったバスタブでくつろぎながら)……えっ? なんでそんな質問するんですか……?
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(画像はSteamより)
いちばん好きなゲーム(産地に問わず)
好きなゲームはたくさんあって、それぞれ理由も違うので、「特に好きなもの」と言われても、選ぶことはできないですね。とりあえず、好きなゲームの例を挙げます。
『MOTHER 2』
『東方妖々夢 〜 Perfect Cherry Blossom.』
『大乱闘スマッシュブラザーズDX 』
『洞窟物語』
『Brandish』
尊敬するクリエイター(国籍問わず)
え……? 僕が……憧れている……ゲームクリエイター……ですか?
えっと……その……
僕が……いちばん好きな……ゲームクリエイターは……
(感動的なBGMが流れ始め、画面が白くフェードアウトする……)
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(画像はSteamより)
来日回数・その目的とは?
日本には、4、5回行きました。1回は旅行で。あとは、(日本のローカライズを担当した)ハチノヨンのスタッフと会ったり、SONYの「PlayStation Awards」の授賞式に出席したり、何かしら仕事の用事で行きました。
日本でいちばん好きなもの
旅行するうえで、という意味なら、おいしいものがたくさんあるところですね。日本風のカレーとか、つけ麺とか、すき焼きとか、おいしい料理が手軽に食べられるし、コンビニで売っている食べ物ですら、アメリカよりもぜんぜんおいしいです。
でも、いちばんの魅力は、日本で会える人たちですね。大好きな友だちが何人も住んでいるし、日本に行くと、ゲーム業界で活躍する刺激的な人たちにたくさん会えますから。
日本のゲームファンに一言
『UNDERTALE』をプレイしてくれた皆さんへ
『UNDERTALE』をプレイしてくれて、どうもありがとうございます。
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(画像はSteamより)
『UNDERTALE』をプレイしていないのにコレを読んでいる皆さんは、いったいどういうつもりなんですかね?
だって、僕が作ったゲームをプレイしたことがないなら、僕がなんて答えようが、どうでもよくないですか……?
あ、なんか、そう考えたらムカついてきたぞ……この、薄汚いイヌめ……!
(鏡を見るToby)
あ……ごめんなさい、薄汚いイヌは、僕でした……。(了)
外国人ゲームクリエイター6人の証言。
彼らの言葉に接してわかったこと。
いま元気いっぱいの海外発インディーゲームのクリエイターは、日本のゲームに大きな影響を受けていた。そして彼らは、日本に対して並々ならぬ愛情を持っていた。
彼らが語る“日本への想い”に、なんだかプライドがくすぐられる一方で、「我々ジャパニーズゲーマーは、海外クリエイターが羨むような、とても恵まれた環境で生きているんだな」と、改めて認識することができたのではないだろうか。
和製ゲームに影響を受けたクリエイターは、これからも新作タイトルを続々とリリースしていくだろう。
「日本のゲームファンのことを想って作ったのに、あまり日本では人気になっていない……Why Japanese people!?」(『Furi』Emeric Thoa氏)という声もあるので、ここはひとつ、たくさんプレイして応援しようではないか!
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