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「好き」が高じて溢れんばかりのキャラクターグッズと生活する“堕落部屋”を女子はなぜ作るのか? 「好き」って何?

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 部屋とは住人の“城”であり、誰にも邪魔をされずに秘めたる思いを表現できる“不可侵領域(テリトリー)”です。

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(撮影:川本史織、部屋:Bunny Bissoux)

 写真の部屋は、住むためにはちょっぴり不便だけれど、住人にとっては最高に居心地のいい空間。
 一見すると“マニアックで極端な愛情”に溢れた部屋もまた、住人にとっては唯一無二の安らぐ場所なのです。

 写真家の川本史織氏(以下、川本氏)は、このようなマニアックな住人の部屋を捉えた写真集『堕落部屋』(グラフィック社)を2012年に発表。この本は日本のみならずアジア圏でも話題となり、2016年には『作画資料写真集 女子部屋』(玄光社)を刊行しています。

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 この“堕落部屋”と名付けられたマニアックな部屋を紹介する理由は、堕落部屋の住人であるナナイ氏から、「これまでにも“堕落部屋”は各所で取り上げられてきましたが、“否定”から始まるものがほとんどでした。コンテンツに傾倒する女の子個人個人もまた魅力的で面白いので、クリエイターの皆さんから浴びた光を受けて芽生えた小さな芽を是非、紹介させてください」とのメールが電ファミ編集部に届いたからです。

 そこで、川本氏とナナイ氏のふたりに、“堕落部屋”とは何か、そして“好き”の情熱はどこにあるのかに迫ってみました。

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左:堕落部屋の住人でもあるナナイ氏、右:写真家の川本氏

 そして、“堕落部屋”に対する情熱のありかを探るうちに、インタビューが思いも寄らない方向に変化し……。後半では記者が自分の情熱(=堕落っぷり)を逆に訊ねられる顛末となりました……。

取材、文/かなぺん


堕落部屋は無造作に荒れているわけではない!

──アイテムが収集された部屋は、これまで“オタク部屋”と呼ばれていたと思うんですね。それをあえて“堕落部屋”という名前にしたのには理由があるのでしょうか? またオタク部屋と堕落部屋に違いはありますか?

川本史織氏:(以下、川本氏)
 以前から僕は、アキバアイドルの女の子たちを撮影しているのですが、彼女たちに密着していると、「働くのは夜。寝るのは昼……。でも、衣装や小物で部屋は物だらけ、しだいに片付ける暇がなくなって “堕落部屋”になる」という風に、自虐をこめて自分たちの部屋を“堕落部屋”と呼んでいたんです。そこに由来しています。
 もちろんアイドル全員が堕落部屋なわけではありませんが、写真集にもアイドルたちの実際の部屋が登場します。

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(撮影:川本史織、部屋/諌見友風)

──しかしそれだと、片付けられない部屋=堕落部屋になってしまいませんか?

川本氏:
 たしかに、そう思われてしまいがちなのですが、僕が撮影している女の子たちには本人なりのコンセプトがあり、決して無造作に“荒れている”わけでありません。
 アキバアイドルに由来しているので、漫画、アニメ、ゲームというジャンルが好きな人はもちろんですが、音楽や芸術家の女の子たちも同じような部屋に住んでいるので、何かに激しく傾倒している人が作り上げた部屋が“堕落部屋”だと考えています。

 たとえばユゥキユキさんの場合は、部屋にパルテノン神殿の柱に出てくるような柱やウィッグなどがあるのですが、これは“仕事道具のひとつ”なんですよ。じつは、ユゥキユキさんは芸術家として活躍しており、いろんな賞も受賞していたりするんです。……何かをつくっているうちにものが溢れてしまい、堕落部屋になったそうです。

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(撮影:川本史織、部屋:ユゥキユキ)

──なるほど。アニメやゲームというジャンルに限らないから“オタク部屋”ではなく“堕落部屋”ということですね。

川本氏:
 そうです。“堕落部屋”の由来を写真集の編集者に話したら「おもしろい!」と興味を持っていただけたんですよ。もともとは、アイドルの写真集やアイドルがモデルのポーズ集に関する企画の打ち合わせだったのですが……、“堕落部屋”の企画がが採用されました(笑)。
 そして、その取材を進める過程で、ナナイさんに出会いました。

ナナイ氏:
 初めて部屋の撮影に川本さんが部屋に来たときは「うぉ、女じゃねー!」って思いましたね。名前が史織だから女性とばっかり思っていました(笑)。

川本氏:
 名前が紛らわしいので、メールに「男です」って記載しても、よく間違われるんですよ。

──(笑)。ナナイさんは自分が堕落部屋に住んでいる自覚はあったんですか?

ナナイ氏:
 なかったですね! ただ、自分の好きなように部屋を作って、完成させて。「ふ~っ、私のお城、満足!」って感じでした。ところがそれが、川本さんに撮影してもらい、“堕落部屋”として写真集が出来上がると“自分の部屋がコンテンツとして見られる”ということに驚きましたね。

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(撮影:川本史織、部屋:ナナイ)

川本氏:
 ナナイさんの部屋は“混沌”というよりも“整然と並んでいる”んですよ。まぁ、みんな並んでいるんですけども……。

ナナイ氏:
 みんないちおう“自分なりに”並んでいますね。いまは引っ越してしまったのですが、このとき住んでいた部屋は、書店でもポップとして使ってもらえることが多かったんですよ。

川本氏:
 窓から光がきれいに入るから、明るい写真に仕上がったしね。 部屋主には“遮光カーテン”の人が多いから、部屋が基本的に暗いんですよ。
 写真集を撮るときはストロボを使ってリビング雑誌のように整然と撮るのではなく、自然光で撮影したいので可能な限り窓を開けてもらうんですが……それにしても、暗いんですよね。

ナナイ氏:
 私は少女趣味だから、部屋を作るときにプリンセス的なものを入れるんです。遮光カーテンで締め切ってしまうと空間的にかわいらしくならないので、レースカーテンにもこだわって、代わりに窓にUVシートを貼る派ですね。昔、UVシートを貼らず窓際に『エヴァンゲリオン』の綾波レイのフィギュアを飾っていたら、半分だけ焼けちゃったのがショックだったんですよ。

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(撮影:川本史織、部屋:ナナイ)

──たしかに、白とパステルカラーの部屋に仕上がっており、エアコンカバーにいたるまでプリンセス感が漂っていますね。その中に、ビビッドカラーの『ペルソナ』が見事に溶け込んでいるというか……。

ナナイ氏:
 写真集に掲載されたときは、「こういう部屋に住んでたんだ!」って周りからの反応がすごかったんですよ。でも、「ちゃんと並んでるんだね」と褒められましたね。ちゃんと、きれいに収まるように作品ごとにコーナーを決めて、自分でDIYして棚を作ったりしますから。賃貸だから出来ることは限られるけど、そのなかで模索して部屋を作ります。

 数が多くなってしまうチャームなどは、100円均一で販売されている木製のボックスに色を付けてシールを貼り、中にコルクボードを何重にか敷き詰めて、立体的なアイテムを飾っています。

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──おぉ、すごい。いろんな工夫があるんですねぇ。

ナナイ氏:
 他には、シャンデリアは電気だからピカチュウ! と思いつき、グルーガンでマスコットをシャンデリアに飾っていますよ。以前使っていたPCはシールを駆使してデコレーションしてました。

──撮影のときは、そういうこだわりの部分に注目しているんですか?

川本氏:
 僕はあえてフラットに撮影することを心がけています。一点に集中してしまうと、見どころが浮き上がってきて画面全体に視線が移動しにくいからです。画面全体をくまなく見てほしい。点ではなく面で見るというか。感情、思い入れみたいなものも排除するようにしてます。なんというか……独自のルールで「淡々と記録する」って感じです。

──なるほど。だから“生っぽさ”があるというか、今朝まで女の子がそのベッドで寝ていたんだろうなっていう“生活感”が漂ってきますね。

川本氏:
 撮影前には、「部屋を片付けず“温存”していてね」とお願いしています。僕は基本的に現場に手を加えることはしていないので、だから写真からも“沸き立つ何か”を感じていただけるんだと思います。
 たとえば南さんの部屋は、さすがに今回はヤバい?? と思いましたが、よく観察すると、大人買いされたコレクションであったり、畳まれた洗濯物が積んである様子でした。

川本氏:
 ロフトの上はきれいにマットレスが敷いてあって、同人誌などが並んでいましたね。

ナナイ氏:
 たぶん、本人としてはどこに何があるか解ってるから、すぐに物は出てくるほうだと思いますよ。

川本氏:
 アニメなどのグッズを収集したり、音楽に傾倒したりしている子だと、また少し雰囲気が変わって……。ギターなどが多くなるんですけど、メタルバンドをやっていた渡部きこさんは、自室にスプレーで“ROCK”って描いていました。

ナナイ氏:
  芸術的でかっこよく仕上がってるのが素敵ですよね。とはいえ、部屋にスプレーで“ROCK”って描かれていたら、母親はびっくりしちゃうだろうけどね。

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(撮影:川本史織、部屋:渡部きこ)

──いろいろな部屋がありますが、何か共通している点などあるのでしょうか?

川本氏:
 「生活するのに適しているか」と言われたら違いますが、“堕落部屋”はアートの世界で言う“インスタレーション”になっているんですよ。だから、それぞれに違ったコンセプトがある。たとえば……さくらこさんの部屋は、パソコンの前に座ったときに“キャラクター全員と目が合う”状態になっています。

ナナイ氏:
 みんな“ホームポジション”があるんだと思います。パソコンの前とかソファーの上とか。私はゴロゴロするのが好きなのでベッドの上がホームポジションなんです。その場所にいて見晴らしがよい状態にする人が多いんじゃないかな。

偏見は一般人だけではなく、メディアにもあった

──ナナイさんは、「堕落部屋に住んでいるという自覚がなかった」とのことですが、マニア気質のない人からすると、やはり“堕落部屋”状態は理解しがたいものだと思うんですね、こういう文化軸に触れていない人からすると、あきらかに異質であり奇異な目で見られそうです。

ナナイ氏:
 仰るとおりで、写真集が発売されたころは、「ひでぇ」とか「こんな部屋は存在しないだろ!」ってさんざん言われましたよ。

川本氏:
 「やらせ」だとか「作り込んだセットだ」とかはすごく言われましたね。

ナナイ氏:
 写真集を作るためにこれだけグッズとか用意してたら、お金がいくらあっても足りない。

川本氏:
 1冊に50人ぐらいの部屋が掲載されているんですよ……それがシリーズで2冊。つまり100人以上の部屋が載っています。全部セットで作ったら、何千万円どころじゃ済まないかもしれません。

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(撮影/川本史織、部屋:まゆら)

ナナイ氏:
 昔、飲み屋さんでオタクを特に理解していないおじさんと飲んだことがあって……、「私の部屋カッコいいから見てよ!」って部屋の写真を見せたら、「お前、マジでこんな部屋に住んでんのか!? 男と酒飲んで寝て、目を覚ましたときにこの部屋だったら、男は裸足で駆け出して逃げるぞ!」って言われたことがあったんですけど、すごくショックでした。

川本氏:
 まぁ、ガチャポンのフィギュアが1体でも部屋にあったら受け入れられない人もいますからね……。それが、たまたまもらった物だったとしても。

 とはいえ、テレビメディアも似たようなもので……これまでに、いくつかインタビューを受けてきたのですが、バラエティー番組の場合だと“写真集”の内容などではなく、おもしろおかしく紹介したがるというか……。
 「片付けられない女」、「汚部屋に住む女たち」というように、この本に出てくる女の子たちをひと括りにするんですよ。そして……芸人を呼んで笑い者にして、というストーリーがだいたいある。

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(撮影:川本史織、部屋:ナナイ)

──このインタビューをするにあたり、ナナイさんからいただいたメールにも「否定から入ることが多い」とありました。

ナナイ氏:
 コンテンツに傾倒する“堕落部屋”の女の子たちはそれぞれに魅力があり、違うんです。個人のアイデンティティを声高に尊重するこの時代に、「どうしてそれをメディアが否定するのかな?」と。

──メディアの取材からも感じたり?

ナナイ氏:
 「いちばん高いものはどれですか?」とかも訊かれるんだけど、高い安いという問題ではない。「高いといったらこれですが、思い入れがあって大切なのはこっち……」みたいな。ほかにも「この部屋の総額は?」みたいな感じで訊ねられますね。

川本氏:
 「すべてを数字で表したくなるのはメディア的だな~」とは思うよね。ヨーロッパなどのメディアは少し違っていて、写真集に登場する女の子ではなく、撮影しているフォトグラファーのほうに興味を持ってくれるんです。台湾をはじめとするアジア圏だと、日本の女の子たちにすごく興味があり、“真似したい”という風に広がっていきました。

ナナイ氏:
 日本のメディアだと女性が女の子のキャラクターを収集しているのを見ると、LGBTに言及し始めたりもします。“堕落部屋”に住む意味を、論理的根拠や、住人の思考回路や性的指向などから、言い方は悪いのですが“下世話に”深く追求したがるんですよ。

──なるほど。ではあえて訊きますが、ナナイさんはどうして部屋を“堕落部屋”にしているんですか?

ナナイ氏:
 それはこの作品とキャラクターが好きだからです。言葉にすると「好きなキャラクターに囲まれたいから」で終わってしまい、薄っぺらくなっちゃうんですけど……。その裏には言葉にはできない混沌としたマグマがあるわけです。部屋ってそもそも“私の延長線上”のものだと思うんですよね。

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(撮影:川本史織、部屋:ナナイ)

──つまり「好き」という作品愛やキャラ愛が先行しているので、学術的に幼少期の生きかたやら、性的指向を論じられても違うぞと……。

ナナイ氏:
 好きだから……。それ以上でも以下でもないんです。
 ただ、もしかしたら細かく紐解いていくと、すごく論理的な何かがあるかもしれない。けれど率直に聞かれると、純粋に「なぜ趣味に傾倒して部屋まで変えるの?」と問われると、「み、見てると幸せだから……」「そこに好きな物があることが、自分にとって当たり前だから……」としか言えないですよね(笑)。

──川本さんは、たくさんの女の子の部屋を撮影してきたわけですが、そういう女の子たちの想いを理解できるのでしょうか。

川本氏:
 僕、ガンプラを買うのがすごく好きで、同じものを一度に3~4個ぐらい買っちゃうんですよ。ひとつは作る用、もうひとつは保存用……あとは何だろう……予備?

ナナイ氏:
 改造用とか?(笑)。破損したバージョンを作る人とかいますよね。ガンプラを作ってきれいに飾ってある男の人の部屋も素敵だけど、買うだけ買って箱を積み上げているのも「いいな~」って思います。

川本氏:
 僕はガンプラは素組み派! 塗装はしないんですよ。そのかわりペーパーを丁寧にかけてマットな仕上げにするんです。ほかにもギターのピック収集にハマった時期があったり……。ともあれ、僕も昔からいろいろと収集しちゃうクセがあるので“好きなものは周りに置きたい”という気持ちは分かります。

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(撮影:川本史織、部屋:天沢みかん)

──多かれ少なかれ、人には「好きなものを集めたい」という“欲”があると思うんですよ。ナナイさんの記憶に残る発端はどこにあるんですか?

ナナイ氏:
 なんだろ……。明確には思い出せないのですが、『週刊少年ジャンプ』が好きだから、何気ないグッズが最初の入り口だったと思います。
 中高生のころには『封神演義』の太乙真人が大好きで、コミックスのカットを超拡大コピーして、等身大ポスターを作って飾っていましたね。

川本氏:
 やるやる(笑)。僕はロックバンドが好きだったから、バンドのメンバーを切り抜いてコピーして部屋中に貼っていたな~。

ナナイ氏:
 まぁ、やるよね(笑)。そこから紆余曲折あって、ダンボールひとつの生活をすることになったんだけど、そのとき唯一手もとに残したコレクションが、『ペルソナ2』の七姉妹学園の鞄でした。
 当時は、制服やジャージも発売されていたんですけど、学生だからお金もなく、買えなくて……。それから月日が流れて『ペルソナ4』にハマり、アニメ化してグッズも大量に販売され、若いころ、欲しかったアイテムを買えなかった悔しさや、好きだったものを捨てなければいけなかった辛さ、そして「いっぱいグッズ化ありがとー!」という気持ちが相まって爆発し、全部買っていたら……すごいことになっていました(笑)。

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(画像はペルソナ2七姉妹学園スポーツバッグ [ペルソナ2] | 二次元キャラクターグッズ製作販売の二次元コスパ|NijigenCOSPA | COSPA,inc.より)

──家族や彼氏などに、「捨てなさい」とか「片付けろ」とか言われませんでしたね。

ナナイ氏:
 何も言われたことがないんですよ。それはいままで付き合ってきた彼氏も同じ。というか、そういうことを言うような人とは付き合えませんから。だって、「捨てろ」とか言うってことは“否定されている”ってことになるじゃないですか。自分の趣味は自分の趣味。相手の趣味は相手の趣味。お互いに否定し合わないのがいいんです。

──相手にマニア的な趣味がなくてもオッケー?

ナナイ氏:
 あ~……。ゲーマー男子以外とはあまり付き合っていないかも。なかにはサバゲー好きの人とかもいたけれど、何かに特化して熱を傾けている人が多かったかな。

川本氏:
 そして、男が変わるたびに引っ越している感じだもんね。

ナナイ氏:
 いままで全部ね。

川本氏:
 引っ越すたびに定点観測のような感じで撮影させてもらうんですけど、いつも男性が違うから「アレ?」って。訊いていいのかわからなかったから、「ふ~ん」って感じで済ませていたけど。

ナナイ氏:
 そこまで付き合いが短い人はいないけど、4回くらい引っ越していて、いまは東京を出ちゃいました。

──引っ越しをすると、前の部屋とはまたガラッと変わるものなんですか?

川本氏:
 女の子たちが引っ越すと、部屋を再撮影させてもらいに行くんですけど、基本的にほとんど変わりませんね。前の部屋をそのままスライドさせている人が多いかな。先ほどの桜子さんの部屋も多少の移動はあったけれど、レイアウトやコンセプトは変わっていなかったですね。

ナナイ氏:
 私は今の部屋に引っ越して、メインジャンルが『ペルソナ』から『FINAL FANTASY XV』(スクウェアエニックス)に移ってから一気に変わりました。でも、『ペルソナ』で捨てられないほど大切なものはここ、うたの☆プリンスさまっ♪』(ブロッコリー)はここ、『FINAL FANTASY XV』はこっち、みたいな感じで収めています。
 長年愛していた作品に対して、良くも悪くも……いろんな想いが爆発して見るのが辛くなったとしても(笑)集めてきたものを全部捨てることはできませんでした。

──現在の部屋はどんな感じなのでしょうか?

ナナイ氏:
 寝室は星と月が『FFXV』のモチーフになるかなと思い、ハリにぶら下げたのですが、現在、猫にほぼすべてむしり取られました……。同様に、枕元に飾っていたノクトたちの写真も、猫にすべてむしり取られました……。他は前の部屋から変わっていない、かな?

──こうしてみると“少女趣味”というベースのコンセプトは変わっていないんですねぇ。

ナナイ氏:
 変わらないですね。ちなみに居間は……ディスプレイ何個あんのっていう状態ですね。

ナナイ氏:
 そうですね。ちなみに、『FFXV』の祭壇も作って……、棚のサイズに合わせて、ケースを特注で制作したアクスタの祭壇です。コールマンのガチャポンのおもちゃも一緒にそっと飾っています。

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──なるほど、“好きな作品”が増えると、コーナーがどんどん増殖していくんですね。

ナナイ氏:
 そういえば、先日すごく高い買い物をしましてね。いまから到着が楽しみなんですよ。

──何を買ったんですか?

ナナイ氏:
 『女神転生』のレジェンドとして知られている、ゲームデザイナーの鈴木一也さんと、サウンドクリエイターの増子津可燦さんがタッグを組んだ『十三月のふたり姫』という開発中のゲームがありまして。そのおふたりが童話『眠れる森の王女』を超解釈したゲームを作るために、クラウドファンディングをしていたんですよ。
 500万円で達成だって書いてあるのに、私がサイトを見たときは200万円しか集まっていなくて、「全然ダメじゃん! よっしゃ、100万円入れたろ」って、ポーンと。

川本氏:
 へっ? 100万円入れたの?

ナナイ氏:
 うん。入れた!

──全体で700万円ちょっと集まったようですから……7分の1……。

川本氏:
 お金があるんだなぁ……。

ナナイ氏:
 いや、これをもちまして、なくなりました(笑)。でも、イラストレーターのアオガチョウさんによるA2サイズの肉筆イラストがリターンされる!

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(画像は十三月のふたり姫 /The 13th month :Visual novel Game by Bumbleman — Kickstarterより)

川本氏:
 原画が届くなら100万円も妥当か? 世界にひとつだもんな。

ナナイ氏:
 うん。世界にひとつだけのイラストだから、最高のコレクションになる。だから、それを自分の部屋にどう飾るかをいまから考えているんですよね。
 友達たちから「本当に大丈夫?」って訊かれちゃったけどね。正直に言うと「あんま大丈夫じゃねーなー(笑)」って感じているけど、なんとか生きているから大丈夫。
 100万円を払って生活が苦しくなることよりも、ゲームが発売されないほうが問題だから、私はとっても満足ですよ。

川本氏:
 それは、また部屋を撮影するのが楽しみだなぁ。

ナナイ氏:
 でしょ! まだまだイラストが届くのは数年後だろうけど、今からすごく楽しみ!

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