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「必要なのは誠意(意味深)」にじよめちゃんは、いかにエロソシャゲ界に君臨する“最強”公式Twitterになったか? 意外とマジなコミュニティ運営術に迫る【インタビュー】

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 企業が広報活動をするとき、いまやTwitterなどSNSによる発信は有効とされる手段のひとつ。だが、コンプライアンスやリスクヘッジを考えると、なかなか企業としては踏み込めない領域があり、得てしてそのツイートも無味乾燥なアナウンスになりがちだ。

 その一方で、タニタシャープなど、その語りの大らかさが話題になる企業アカウントがある。じゃあ、ゲーム業界に、そんなアカウントがいるのか? その問いを考えたとき、一見ギリギリ“アウト”に見えるラインを軽やかに走り抜ける美少女の姿が思い浮かぶ。

 そう、現役ゲーマー世代のTwitterヘビーユーザーにはお馴染み──大人気アカウント“にじよめちゃん”
 エイシスが運営する美少女ソーシャルゲームのポータルサイト“にじよめ”に取り憑いているイメージキャラクターっぽい魔神のようなものだ。

 とはいえ、その名を知らない人も多かろう。一体、にじよめちゃんとは何者か? 概念? 抽象? 形而上的存在?
 だが彼女の最大の特徴は、その歯に衣を着せぬ語りにある。ふたことめにはユーザーに対して「誠意」と称して課金を要求するその姿勢、その一方での、きっぷのよさや面倒見のよさ、口の悪さ、ケンカの強さ、エゴサーチによる捕捉能力の高さ、目の濁りかた、背の高さ。そしてユーザー目線を活かし、ゲーム開発にまで入り込む八面六臂の活躍ぶり。まさに、にじよめちゃんを語る言葉は枚挙に暇がない。
 このご時世、普通には炎上必至の“にじよめちゃん”が、なぜ良くも悪くも愛されているのか? そこには、世の“ソーシャル何とかプランナー”的な人々からは絶対に聞けない、現代インターネットの「真実」がある。さっそく、にじよめちゃんに、その運営術の「妙技」を“いつもの口調”で語っていただこう。

取材/斉藤大地小山オンデマンド
構成/小山オンデマンド


「必要なのは誠意(意味深)」にじよめちゃんは、いかにエロソシャゲ界に君臨する“最強”公式Twitterになったか? 意外とマジなコミュニティ運営術に迫る【インタビュー】_001
にじよめちゃん

「話が聞きたい? いくら出す?」(にじよめちゃん)

ーー企業の公式Twitterが話題になることも多い昨今、「ゲーム業界で著名なSNSアカウントは?」と考えたとき、「業界広しと言えど、にじよめちゃんほど特徴的なアカウントは、ほかにないんじゃないか」と思います。

にじよめちゃん:
 そもそもだよ、「企業のSNSアカウントが消費者とコミュニケーションをうんぬん」っていうのがひとむかし前の話でしょ。古くない? もはや「SNSマーケティングなんかウソっぱち」的な言説が去年あたりから許されてない?

ーーいきなり手厳しい(笑)。ですが、そんなダメ出しも含め、にじよめちゃんの知見を伺うことによって、電ファミも何か得られることがあるのでは? と思う一心で今日はやって参りました。

にじよめちゃん:
 やるじゃん。知見な。つまり全人類を啓蒙できるメッセージをということだな。

ーー啓蒙できないなら、いっそ隕石でもコロニーでも落とす感じでお願いします。

にじよめちゃん:
 母になってくれたかもしれなかった女性を捜す【※】感じでか。よかろう。ドシバシ落そうじゃん。

※母になってくれたかもしれなかった女性を捜す
劇場アニメ『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』で、すでに死んだララァを指してシャアがアムロに言ってのけた、彼の最後の言葉。シャアの真意は他に委ねるとして、直前の「隕石やコロニーを落とす」というガンダムネタを受け、即座ににじよめちゃんが切り返している。

ーーまず読者に向けて、“にじよめ”【※】の説明から始めさせてください。ソーシャルゲームのプラットフォームとして独特の存在感を示すにじよめ成立の経緯って、にじよめちゃんから語れます?

「必要なのは誠意(意味深)」にじよめちゃんは、いかにエロソシャゲ界に君臨する“最強”公式Twitterになったか? 意外とマジなコミュニティ運営術に迫る【インタビュー】_002
※にじよめ……株式会社エイシスが運営するブラウザゲームのプラットフォーム。美少女ゲームを専門としており、全年齢対象の「昼の部」と18歳以上対象の「夜の部」がある。2013年にスマホ向けにサービスが始まり、2015年にPCも対象となっている。
(画像はにじよめより)

にじよめちゃん:
 いくら出す?

ーー(笑)。ええと、それじゃあ進まないです……。

にじよめちゃん:
 工夫しろ。

ーー工夫……。後ほど調整させてください……。でですね、にじよめの母体はDLsite【※】で、運営会社はエイシスという会社ですよね。そのあたりからぜひ。

にじよめちゃん:
 そもそも論で言うと、ディーエルサイト・コム(DLsite.com)という、創業20年のインターネットエロ本屋マンがありますと。

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※DLsite……株式会社エイシスが運営する、1996年に端を発するダウンロード販売サイト。同人誌を始め、同人ゲーム、PCゲームなどを扱う。全年齢、男性成人向け、女性向け、ゲイ向け、海外向けなどのカテゴライズがなされている。
(画像はDLsite.comより)

 まあエロは廃れないから、足元の業績は好調なわけだけど、エロ本ってね、パッケージ商売なんだよ。売ったら売ったきり。同じエロ本を二度買う馬k……お得意さまもそうそうおらず。……そういう理屈はお解りかな?

ーーわかります。

にじよめちゃん:
 だけど、こういうビジネスモデルはさ、「フリーミアム(基本無料)モデルにいずれ駆逐されるのではないか」という議論が、まあ世間的にもよく言われてたし、時期的に我が社でも行われていたわけですよ。

ーーそれはいつごろのことでしょうか?

にじよめちゃん:
 『ドリランド』【※】が月商20、30億? もっとか? なんかそんな景気のいいことを言ってたらしいから、2012年ぐらい? GREEやモバゲーが最高にイケイケだったあのころだな。

※ドリランド
GREEが配信しているソーシャルゲーム『探険ドリランド』。いわゆるガラケー向けのサービスとしてリリース。『釣り★スタ』、『踊り子クリノッペ』などとともに人気を博したゲームだったが、2010年にスマートフォンにGREEが対応したのち、2011年に『トレジャーハンター』と呼ばれていたゲームを新『探険ドリランド』として再リリース。旧作と新作のゲーム性は、ほぼ別物となっている。話題に上っているのは、新『ドリランド』。2012年にはアニメ化もなされている。

ーーではそのころ「うちも新しくソーシャルゲームのプラットフォームをやろう」となったわけですね。というか、そのころからにじよめちゃんって居たんですか?

にじよめちゃん:
 いないね。けど、そのへんは伝聞と想像で何とでもなるさ。
 で、後発で『ドリランド』に追い着き追い抜く方法を模索したら、「そうだ、うちにはエロがあるじゃないか!」みたいなことになったと。当時、エロを解禁してるプラットフォームなんて、ほぼなかったから。

ーー当時のDMM【※】はオンラインゲームのプラットフォーム事業をしていなかったんですか?

※DMM
石川県のビデオレンタル業に始まり、いち早くネットに対応した会社。アダルト分野を中心に急成長し、いまでは映像、書籍、画像などの出版・配信や、ゲーム、アプリ開発、通信、FXなど幅広く提供する一大企業グループ。(アダルト)ゲームや同人などの配信で、DLsiteやにじよめと競合する。

にじよめちゃん:
 なんか、やってはいたんだけど、ガラケーだけだったんじゃないかな? ボタンを押すとランダムで女の子のエロシーンがポロッと解放される、題して“エロガチャ”とか。もう失われてしまったロストテクノロジーですな。

ーーだははは(笑)。ダブったりするんでしょうかね。

にじよめちゃん:
 そこで「これならまだ追いつける!」と、DLsiteはスマホブラウザで優位性を保つため、「二次元の嫁」の名にふさわしい、萌えとエロを備えた悪魔超人を生み出したと。

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とはいえ羽根は天使っぽい

ーーなるほど。GREEやモバゲーにあるようなソシャゲの、エロ特化型ゲームを作ろうと。

にじよめちゃん:
 ちょっと違う。にじよめはあくまで小売りね。プラットフォームビジネスなので、決済と集客の仕組みだけを用意すれば、誘蛾灯に群がるがごとくコンテンツは向こうからやってくるはずだって考えたんですな。

ーー仕組みだけ。何か仕込まなかったんですか?

にじよめちゃん:
 ロンチタイトルのうち、エロのカードバトルRPG1本(『ばるはらばるきりーず』)は独占タイトルとして仕込んだんだけど、やっぱ基本的にはサードパーティのもので賑わう想定だったんだよねぇ。

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現在も好評運営中の『ばるはらばるきりーず』(※18禁タイトルのため、画像の一部にモザイクをかけています)
(画像はにじよめより)

 あとはGREEやモバゲーにゲームを提供している、萌っぽいのが好きそうな会社に、あくまで全年齢のほうで声をかけた……んだが、これがなかなか来なかったんだよな。

ーーではロンチは1本でしのいで……。

にじよめちゃん:
 さすがに無理だろ。というか調べるということをしろよ。ロンチタイトルは全年齢が4~5本、アダルトが3~4本くらい最終的にはあったはずだ【※】

※編集部注
リリース前のオープンβテスト時にアナウンスされたプレスリリースがこちら(PDF)

ーーすいません……勉強します。それらはプレスリリースを見て集まってきたタイトルなんでしょうか?

にじよめちゃん:
 いや、ほら……やつら【※】にはさ、まだ慢心しててほしかったから。じゃけん、プレスリリースは直前まで伏せてたみたいね。

※やつら
文脈からDMMのことと想像される。

ーーなるほど、水面下で(笑)。ではどうやって集めたんでしょう?

にじよめちゃん:
 「こういうサイトを始めるんで、モバゲーとかの既存のカワユスなゲームにエロシーン足して18禁版で出してもいいし、そのまま無添加で横展開でもいいし」と、いろいろな会社をおだてたりなだめたりして営業したみたいだな。でもさ、そこはやっぱり業界の横の繋がりやらで、やつらにも伝わるっちゃ伝わるだろ。たぶん知ってたとは思うぞ、さすがに。

“にじよめ”の運営実態を聞いてみる

ーーなるほど。では現在、“にじよめ”に関わっている人員ってどれくらいの数がいるんでしょう?

にじよめちゃん:
 細かい数は……まあ想像に任せようかね。ヒントだけ言うと、我が社の人間の半分くらいは、エロ画像にモザイクをかける係「モザイカー」だから。

ーー(笑)。それ、どこまでが本当なんでしょうか?

にじよめちゃん:
 ガチだって。この人たちは、同人サークルからの問い合わせや販売までの流れみたいなものを見ているコンテンツ管理部という部署にいる。即売会とかで売ってる薄い本そのままだとモザイクまで薄いんでな、「モザイクをかけ直してもらうか、できなければこちらでかけます」という話になるわけ。
 で、残りの半分強がエンジニアとデザイナー、さらにバックヤード(総務・経理などの管理業務)が数人。にじよめのプラットフォームを担当しているのも、まあ適当に数人という話だな。

ーーその中ににじよめちゃんは?

にじよめちゃん:
 にじよめちゃんは人間じゃないから、含みません。

ーー想像より少なかったです。そう考えると、農奴【※】の皆さんはたいへんそうですね。

※農奴
ここではにじよめちゃんの圧力を受けて働く労働力のこと。本来の意味は後述。

にじよめちゃん:
 そのための存在だから。プログラム的な開発以外のことはぜんぶやってるんじゃないかーーそうだよな?

農奴A:
 ハイ。

ーーあ、いらしたんですね(笑)。読者の皆さんに解説すると、農奴の皆さんは、にじよめちゃんの……奴隷というと語弊がありますか?

にじよめちゃん:
 「奴隷」って言うとね、なんか謎の棒みたいなのを回させられていたりとか、だいたいはガレー船に突っ込まれている人のイメージだったりするわけじゃない。あと人によっては薄い本的な文脈で興奮し始めたりで、つまり抱いているイメージがみんな勝手なんだよ。だからあまり解釈の余地が生まれないように「農奴」にーーなったんだよな?

農奴A:
 ハイ。

ーー(笑)。農奴は、実際どういうものなんですか? お仕事とか……。

にじよめちゃん:
 だから農奴というのは、帝政ロシア末期【※】の労働力で、字面とか響きは奴隷と似ているんだけど、土地移動の自由があるというところが決定的に違う。ここ、試験に出るから。

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※帝政ロシア末期……帝政ロシアにはモスクワ大公国の時代から形を変えながらも続く農奴制があった。支配階級だった貴族は、みずからは働かず、領民たる農奴などからの税に収入を頼っていたが、19世紀前半には行き詰まり、農奴の蜂起が立て続けに起こる。こうしたいくつかの段階を経て1861年には農奴解放令が発布され、1880年代ごろには迫る資本主義社会を前にロシアは経済的に乗り遅れ、領地を没収された貴族は没落し、1917年以降のロシア革命を迎えることになる。画像はグリゴリー・ミャソエードフによる『1861年勅令を読む農奴たち』。
(画像はWikipediaより)

ーーええと(笑)。土地移動の自由があるにも関わらず、にじよめちゃんのもとに自発的に留まり、主体的に働いていると。

にじよめちゃん:
 そうなるな。ある種の主体性を持って動いているけれども、ひとたび、にじよめちゃんに言われれば大都会岡山だろうが九州だろうが飛ぶところも含めて、高い移動性がある。

ーー(笑)。飛んで何をしているんですか?

にじよめちゃん:
 まあそらいろいろよ。チャリティーで格ゲーしに行ったり【※】とかの軽いことから始まって、「にじよめにもタイトル提供してください」っていう提案営業から、出資してるタイトルの進捗確認やらコンサルやら。

※チャリティーで格ゲーしに行ったり
縁遠からぬ岡山のゲームセンターで催されたチャリティーゲーム大会に、大人げないメンバーを見繕って「にじよめJAPAN」と称して刺客を送り込んだ件。概要はinsideの記事などに詳しい。

ーーそう思うと農奴がんばってないですか?

にじよめちゃん:
 がんばらないのはそもそも論外では? そのうえでもうちょっと開発に半身ぐらい入れたりしてがんばってもらったほうが、いろいろなゲームの立ち直りも早かっただろうなというところはある。

ーーそれはさすがに農奴に対して欲張りな気が。

にじよめちゃん:
 そこは欲張っていかないと。好きなことで、生きていく【※】なら。

※好きなことで、生きていく
YouTubeのCMのキャッチコピーだが、にじよめちゃんが何をもって引用したのかは不明。

「シコシコ」に反応しないユーザーを呼び戻すには?

ーーそして話題はにじよめちゃんの秘密に移っていきます。

にじよめちゃん:
 おう。いくら出す?

ーーですからそれはのちほど……。にじよめちゃんという存在が、表向きに現れたのはいつぐらいなんでしょう?

にじよめちゃん:
 にじよめみたいなプラットフォームビジネスって、放っておくと1回訪れただけで二度と来なくなるユーザーが多いわけ。身に覚えあるでしょ、登録だけして二度とアクセスしてないサイトとか。だからメルマガで呼び戻しをかけるのが定石なわけ。

ーーええ、ああ、はい。

にじよめちゃん:
 ゆえにサービスが始まって1ヵ月とか経って、「とりまメルマガとか行っときますかー」という話になったとき、メルマガの書き手として事後的に生まれ出たというのが、いちばん実態に即しているかもしれんな。

ーーなるほど。その当時から、口調は煽りテイストだったんですか?

にじよめちゃん:
 煽ってなどいない。にじよめちゃんのこれは、煽りとかじゃないから。基本的に、疑問を呈しているだけ。

ーーというと?

にじよめちゃん:
 勘違いしてる輩がたいへん多いけれども、にじよめちゃんはさ、「これはダメ」とか「クソ」とか、そういう偉そうな価値判断をしたことはないわけですよ。一度ツイートを遡って見てごらんなさいよ、あなた。褒めはするけど、貶しはしてないから。
 ただ「これはなんでいいと思ったの?」っていう疑義は提示していく。そもそもサービス開始当初のアプリのラインナップが「ツッコミどころ満載だな」とユーザーから言われまくっていたので、いわゆるユーザー目線でね、ユーザーといっしょにまずそこに疑問を呈していたら、まあ自然にそうなったと。

ーー疑問を呈してばかりになってしまったと。

にじよめちゃん:
 おう。さらに言っとくと、その突っ込みどころってのもだよ、納得したうえで受け入れれば本当は楽しめる要素なのに、割合に多くのお客がさ、なんていうかビビっちゃってる気配を感じてね。アプリとの接しかたが、ひどく及び腰だったんだよな。

ーー「これはその突っ込みどころを楽しめていないんじゃないか」と。

にじよめちゃん:
 それな。だからにじよめちゃんは先に「このゲームは(一見して特殊な事情があって)、確かに開発者が何を考えてこのようにしたのか疑問だけど、それはそれでおもしろいところもある、みんな違ってみんないいんだ。もともと特別なオンリーなんとか【※】」という方向へ導いたわけですよ。ゲームとユーザーの溝をどうにかね、こう……埋めようといろいろしたわけさ。農奴を投げ込んだりとかね。

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※みんな違ってみんないいんだ。もともと特別なオンリーなんとか……前半は、大正~昭和に活躍した詩人金子みすゞの詩『わたしと小鳥とすずと』の一節。後半は一世を風靡した曲に似ているフレーズ。
(画像はAmazonより)

ーーそこをどうにかしようとしていたら、そういうキャラクターになったと。

にじよめちゃん:
 「豪華声優が彩る!」とか「シコシコが止まりません!」とか、とおりいっぺんの正当なゲーム紹介はさ、運営側がすでにやっているわけだから、それを読んで反応しなかったやつらに二度三度同じことを言ったって、その切り口ではダメなわけだよ。

ーーそれはわかります。

にじよめちゃん:
 じゃあ「メルマガで呼び戻しをするなら、別の切り口でゲームを説明しなければ意味がないよね?」と、おそらく業界初の、疑問を投げかけるタイプのメルマガが誕生し、にじよめちゃんが憑依したという流れでご理解いただけるかな。

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めずらしいラフ画その1:ミニチュアにじよめちゃん

にじよめちゃんは“にじよめ”の一般意志だった…?

ーーその書き手の名前が、サイト名に“ちゃん”を付けたものになった理由は?

にじよめちゃん:
 たとえば「ももいろクローバーZ」ってのがある。あれなんか“ももクロちゃん”って名乗ったり呼ばれたりしてるわけだろ?

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画像は2013年〜 2014年にテレビ朝日で放送されていた、ももいろクローバーZの冠番組「ももクロChan〜Momoiro Clover Z Channel〜」
(画像はももクロChan~Momoiro Clover Z Channel~より)

 要はあれみたいなもので、そういう団体名に“ちゃん”を付けるっていう意味のわからなさが、かえって「わかってる」感になってて楽しいみたいな、集団の帰属意識みたいなものに訴求してるんじゃない?

 つまりね、にじよめというサイトから発せられるにじよめたちの主体こそが“にじよめちゃん”みたいな話だな。民主主義の根幹ですよ。

ーーな、なるほど(笑)。集合的無意識としての人格、みたいなものでしょうか。

にじよめちゃん:
 うーん……? 無意識……うーん。主体……とか、アレだ、主権みたいなものでは?

ーー主権かあ!(笑)。概念なんですね。国家精神みたいな。

にじよめちゃん:
 民族精神とかさ。切り口はいろいろだわな。大和魂とかゲルマン魂みたいな。

ーーツァイトガイスト(時代精神)【※】的な感じですね? にじよめ魂。その主権たるにじよめちゃんには、最初のメルマガのときからビジュアルが設定されていたんですか?

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※ツァイトガイスト……知的分野を始め、社会の動向や政治の傾向などを含め、その時代や社会を支配するような精神。19世紀にヘーゲルらのドイツ観念哲学が世界的に流行したことにより他国にも広がる概念となった。画像はドイツの哲学者ヘーゲル(1770-1831)。
(画像はWikipediaより)

にじよめちゃん:
 いや、メルマガの中にだけいた。姿も声も何も定まっていない、不定形の……。

ーー主権(笑)。

にじよめちゃん:
 そう、姿なき主権。怒ったときは、形のない暴力。

ーー(笑)。その主権がユーザーに認知されていって、キャラクター化していったんですか?

にじよめちゃん:
 何回かメルマガを送ってるうちに、途中で「やっぱ絵があったほうがいいべ」となって、農奴たちの知り合いをたどって、プロの作家に肖像画を描いてもらい、にじよめちゃんはいまの姿を得たという。

ーー受肉【※1】したわけですね。イコン【※2】があったほうが信仰心が深まるとか、そういう意図ではない?

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※1受肉……神性が人の形となって現れること。本来はキリスト教用語で、神の子キリストが人間ナザレのイエスとして生まれたことを指す。画像は1500年頃ピエロ・ディ・コジモによって描かれた『キリストの受肉と聖人たち』。
(画像はWikipediaより)

※2イコン
ロシア正教において聖像(救世主の姿を写したもの)のことを指す。

にじよめちゃん:
 なんだったっけな? 「案外人気が出てきたし、にじよめの登録時の注意書きやらそのへんにも顔くらい出しとこう」とか、そういう話。だったら絵があったほうが親しみが出るだろうと。そうだ、あととりあえずTwitterに登録したときにデフォルトの卵アイコンのままだと、なりすまし臭いから絵とか欲しいとーーそんな感じ?

農奴A:
 ハイ。正しい経緯です。それは。

ーー(笑)。そして爆誕と。すばらしいデザインなんですが、「なんで目が死んでるんだろう?」という疑問が、まず最初に浮かびます。

にじよめちゃん:
 「エロサイトの看板を背負って目が澄んでちゃおかしいだろ」って、叔父貴がバッサリ言ったそうで。「目はもっとドブのように濁っているべき」と。

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たしかに、にじよめちゃんの目はドブのように濁っている

ーー叔父貴って……DLsiteのエラい人ということですね、さすが(笑)。

にじよめちゃん:
 同時にエロい人でもある。これは完全な余談なんだが、その叔父貴一派が今年の夏のオタコン【※】に招聘されていて、“最近の日本のHENTAIダウンロードアーキテクチャーにおける人気のトレンド”をトークするらしい。大丈夫なのか。

※オタコン
1994年以来アメリカで開催されている東アジアの文化を紹介するイベント、オタク・コンベンションの略。

ーーえええ、どんな話になるんですか? そのトーク(笑)。

にじよめちゃん:
 「ジャパニーズ トレンド イズ ペトリフィケーション、石化ジャンルが人気です」って話がメインらしい。つまり「女の子がだんだん石になっていくんですよ」って話ね。性的な意味で。

ーーえっ。ホントにそんなトレンドあるんですか?

にじよめちゃん:
 にじよめちゃんが嘘言ったことあったか? オモコロに、みさくらなんこつ先生【※】にエロマンガの指導をしてもらうという、にじよめの記事広告があって、そこにも若干載せている。その延長線上にあるフリーキーなエクストリーム性癖の話をすると目されてるわけだな。

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※みさくらなんこつ……萌え、エロの領域で活動するマンガ家、イラストレーター。両性具有の題材の多さ、絵の水分の多さ、そして舌足らずの独特な言葉遣いをする登場人物の多さで知られるベテラン。「らめえええええ」などのいわゆる「みさくら語」や、アヘ顔Wピースの生みの親とされている。画像はアヘ顔Wピースの元となった、DLsiteのみさくら作品紹介ページから(18禁タイトルにつき、画像は一部修正しています)。
(画像はフタレター公式サイトより)

ーーあっ、単純におもしろそう。

にじよめちゃん:
 帰りに読んどき。

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